富士通のSAPコンサルタントが伝授する、SAPプロジェクトにおける課題と解決策

イベント 公開日:
ブックマーク
富士通のSAPコンサルタントが伝授する、SAPプロジェクトにおける課題と解決策
事業の多様化、データの利活用などに対して、ERP(基幹システム)案件における課題に直面する場面が増えてきた。その中でも一筋縄ではいかないSAPの導入プロジェクトに対する課題に悩むコンサルタントも多いのではないだろうか。今回のイベントでは、SAP導入プロジェクトを多く手がける富士通のSAPコンサルタントが、SAPプロジェクトを成功に導くための課題対策やノウハウについて語った。

アーカイブ動画

企画・導入・保守をOne-Teamで推進する富士通流SAP導入の方法論

一柳さん
富士通株式会社 ジャパン・グローバルゲートウェイ
エンタープライズアプリDivision Division長代理 一柳 孝志氏

最初に登壇したのは、国内・グローバル、大規模案件も含め、約20年にわたりSAP導入に携わり、現在はチームを統括する立場にある一柳 孝志氏だ。

富士通では、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」をパーパスにビジネスを進めている。2021年秋にはサステナブルな世界の実現に向け、社会課題解決にフォーカスしたビジネスを推進する「Fujitsu Uvance」という事業モデルを発表した。Fujitsu Uvanceでは、注力すべき7つの領域を示している。

1-1

SAPビジネスは「Business Applications」領域に属し、インダストリーに寄ることのないビジネスを展開していく。このFujitsu UvanceにSAP社が掲げるSAPの包括的なサービス「RISE with SAP」をかけ合わせることで価値を最大化し、顧客にSAPを導入している。

準備から定着フェーズまで、ライフサイクル全般を一気通貫に組織を横断し、ワンチームで価値提供するのも富士通ならではの取り組みだ。そして、富士通自身もERPを導入しているユーザーである。

1-2

どれだけ準備・対策を講じても課題は発生する

続いて一柳氏は、「SAPプロジェクトで起きるあるある問題」を実際のプロジェクト事例をもとに紹介した。

例えば、要件定義フェーズで要件がなかなか定まらず、プロジェクトを延伸させようとした結果、品質問題をはらむとの課題が生じがちだ。実現化やテストフェーズでは、スクラッチ開発した周辺ソフトとの結合テストや、データ移行などで問題が起きることが多い傾向にあるといった問題が挙げられた。

1-3

多くのプロジェクトで起こるトラブルに対して、「工程管理をしっかりと行う」「横串連携のチームを作る」「マスタークレンジングはチームを構成し早い段階から行う」など、SAPの導入経験が豊富な富士通においても、様々な対策も講じている。

しかしどれだけ準備をしても、課題が多く発生するのがSAPプロジェクトだと一柳氏は指摘する。そして、課題やトラブルが発生する理由を、以下の3つのキーワードとして挙げた。

  • お客様とベンダーという垣根
  • プロジェクトの巨大化
  • システム統合の難しさ

この3つのキーワードに対し、富士通では、「技術・方法論」「チーム・文化」という2つの要素で対応している。技術・方法論では、SAPの導入方法論である「SAP Activate」をベースに、富士通が長年培ってきたシステム構築プロセス体系要素を取り組んだ導入フレームワークを重ね合わせ、「富士通版Activate」としている。

チーム・文化では、コンサルタントやマネジャー層がお客様とどのように接するかを検討した上で、ハード・ソフトウェア両面で価値を提供している。

1-4

「富士通流SAP導入」の極意を導入事例も踏まえて解説

大久保さん
富士通株式会社 ジャパン・グローバルゲートウェイ
エンタープライズアプリケーションDivision シニアディレクター 大久保 学氏


関さん
富士通株式会社 ジャパン・グローバルゲートウェイ
エンタープライズアプリケーションDivision 関 圭介氏

続いて登壇したのは、富士通の大規模ERP(SAP)導入に関するプロジェクトマネージャーを務める大久保氏と、SAP導入に10年以上携わり、チームリーディングのポジションを担務する関氏だ。上記に挙げた3つのキーワードに対し、SAP導入プロジェクトの極意を事例を交えて解説した。

キーワード1:お客様・ベンダーという垣根

最も大きな原因は「双方の期待値の相違」だと大久保氏は指摘。実際にプロジェクトでのやり取りなどを紹介しながら、ゴールを明確にすることや確実な進め方の重要性について説明を行った。

「富士通では作業標準はありますが、お客様の体制や意向により、カスタマイズすることが重要だと考えています。このカスタマイズの事例を各プロジェクトの担当コンサルタントが持ち寄り、共有する場を設けています」(関氏)

2-1

技術・方法論で示したのは「Fit to Standardの推進」。だが、個々のコンサルタントだけでは打開が難しい。そこでアドオン開発するのかどうかについては、顧客とはもちろんコンサルタント同士、さらには経営層とも深く話すことを心がけることも必要だ。

ディスカッションの際には、仮にアドオン開発するなら10年先もその機能は標準であるか、コストパフォーマンスはどうかを見極めるための議論が重要になってくる。

「富士通では『のりしろ』というキーワードをよく使います。お客様と富士通との間で線を引くのではなく、まさにのりしろのように線を超えた踏み込みとアプローチが重要です」(大久保氏)

2-2

キーワード2:プロジェクトの巨大化

ERPはそもそも基幹システムであるため、携わる企業やスコープも多様になりがちである。当然、チームも多数構成される。その結果、チーム間での意識の齟齬ならびに「誰かがやっているだろう」との考えが生まれ、結果的にプロジェクトの“抜け漏れ”につながる。

プロジェクトが苦しくなってくると、優秀な人材がアサインされることが多い。だが、一人で頑張って孤立状態になったり、結果を出しても「ポテンヒット」に終わってしまうことがほとんど。そのため、チームで取り組むことが重要だと強調した。

2-3

解決策となる技術・方法論では、「富士通版Activateの継続的な見直し」が紹介された。スクラッチ開発の方法論を展開したり、変わり続けるソリューションを追加するなどして、日々、エンハンスの見直しが必要だ。

プロジェクトを進めていくと、チーム間がコミュニケーションする業務やイベントが発生してくることも、タスク抜け漏れの要因のひとつとなる。

「コミュニケーションが増えるからこそ、各人やチームのタスクや役割定義を行うことは必須であり、標準作業として組み込むようにしています。タスクの押し付け合いによる、関係悪化を防ぐ効果もあると思っています」(関氏)

また、タスク定義や役割分担を示す際には、業務全体の中での役割、どのような価値を生むのか、システム全体に対する寄与などを明確に示すことが必要となる。各人が主体性を持って臨む動機付けをPMとしての観点から、大久保氏はポイントを説明する。

コミュニケーションの活性化については、YammerやTeamsなどを活用。プロジェクトで起きた技術・マネジメント両方の課題に対して、誰でも発信・回答できる体制、ノウハウの共有ができる環境を整える。

「プロジェクトが巨大化すると、どうしても担当領域が限られます。そこでこのようなツール活用、環境整備を行い、プロジェクト全体の標準機能やノウハウを確認することが重要です」(関氏)

富士通では情報・ノウハウの共有はグローバルレベルで行われており、SAP以外の技術や業務知見を共有している点、他社では類を見ない技術やノウハウを横連携できることが強みであると、大久保氏も語っている。

2-4

キーワード3:システム統合の難しさ

大久保氏はシステム統合のそもそもの難しさや、プロジェクトが巨大化することで全容が分かる人がいないという問題について言及する。数多くのSAP導入プロジェクトに携わってきたコンサルタントであっても、詳しいのはあくまでSAP領域であり、顧客の既存業務やシステムを熟知しているわけではない。

2-5

技術・方法論では、マスターデータの精度、移行品質、全体整合まで踏み込む必要があるため、両社の合意形成が重要だ。実現するためには、工程の前半フェーズ、要件定義やアドオンの設計レイヤーで、提示した要件で業務がスムーズに進むことを実際に見せること。その結果、現場が理解することで、統合の難しさが軽減する。

チーム・文化においては「パトロール活動」が重要だと大久保氏は語る。パトロール活動とは、余計なアドオンを開発しないなど、先を見据えた恒久的なシステムを組むために何が必要なのかをチェックし、判断していく。

具体的にはERPの肝とも言えるマスターデータの品質担保であり、早い段階から顧客とコミュニケーションを取り、足りない箇所があった場合には指摘したり、場合によっては業務の変革も促す。加えて、業務マニュアルに記すこともポイントだ。

2-6

最後にディビジョン長の杉本氏が、次のように富士通流のSAPコンサルティングのポイントを総括し、セッションをまとめた。

「お客様と一緒に進めることは大事です。一方で、お客様に寄り過ぎない姿勢も大切です。仮にコミュニケーションギャップが発生した場合、他社事例も踏まえながら、状況に合わせた提案を行うことが必要だからです」(杉本氏)

【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答

セッション後はイベントを聴講した参加者からの質問に、登壇者が回答した。その中から、いくつか紹介する。

Q.社内ノウハウについてより詳しく聞きたい

:お客様の要望にどうアプローチしたらいいのかといった内容から、技術的な質問まで、何でも共有しています。QAでやり取りが行われ、後からリファレンスできるようになっています。

杉本:アクセス数をカウントしていて、月間ランキングなども出しているので、今知りたいQAが分かるようになっています。質問・回答者を表彰する仕組みも設けています。富士通版Activateは、まさにこのようなノウハウを集結したものであり、目指せナレッジドリブンだと思っています。

Q.腹落ち度評価を深めるほどFit to Standardから遠ざかるのではないか

大久保:腹落ち度評価は現場の改善ツールではなく、経営に寄与するものです。つまり、アドオンを開発する場合は、経営層も含めて戦略的に行う必要があり、そういった意図で活用しているため、ギャップにはなっていません。

杉本:お客様の経営層も含め、会社をどのようにマインドチェンジしていくのか。その上で、お客様にとってのFit to Standardは何かを可視化することが大事だと考えています。

Q.Fit&Gap分析する際に気をつけていること

:基本的な考えとしては、標準機能を説明して、お客様の業務と合わすことができるかどうかを行います。一方、ギャップは業務変革ポイントであると説明しています。アドオン開発を行う場合には、一人で決めることは難しいため、お客様側で検討できる体制を作ってもらうように提案し、長期的な効果なども検討した上で、お客様に判断していただきます。

杉本:現在業務に携わっている方のお話を聞き、共感することがまずは大事だと考えています。その上でギャップがあるのだとすれば、他のお客様事例も含め、しっかりと見える化した状態で、ギャップの価値を提供します。

:SAPの導入は初めてというお客様も多いので、他社事例の紹介はアドオンの判断も含めて大切だと考えています。

富士通株式会社
https://www.fujitsu.com/jp/
富士通株式会社の採用情報
https://fujitsu.recruiting.jp.fujitsu.com/

テクノロジーと共に成長しよう、
活躍しよう。

TECH PLAYに登録すると、
スキルアップやキャリアアップのための
情報がもっと簡単に見つけられます。

面白そうなイベントを見つけたら
積極的に参加してみましょう。
ログインはこちら

タグからイベントをさがす