「金融業界は遠くない未来、破壊的イノベーションが起こるだろう。 そのときわたしは、破壊される側ではなく、破壊するほうでありたい。」 - 株式会社クリプタクト代表アミンが、Fintech分野で勝負を仕掛けた理由 -
エンジニアからファンドマネージャーへ、そしてエンジニア起業へ
-アミンの経歴とは-
わたしは生まれはイランでして、5歳の頃に両親と共にアメリカに移住しました。その頃イラン・イラク戦争が起きており、戦乱から逃れるためアメリカに来たというわけです。移住後は両親は昼夜を問わず働いており、わたしは一人で留守番をすることが多かったのですが、その中で家にあったパソコンでプログラミングをしたり、パソコンを組み立てるなどをして過ごしたことで、自然とエンジニアリングに興味を持つようになりました。
高校に入学すると、わたしの興味に理解を示してくれた教師の推薦で、ロッキードマーティン社(航空・宇宙技術の開発製造企業)にてインターンとしてGPSシステム刷新などの開発を経験しました。その後メリーランド州立大学にてコンピューターサイエンスを専攻し、大学2年次に約1年半の日本での留学も経験。帰米後は大学を卒業し、ゴールドマン・サックス証券東京支店にエンジニアとして入社をいたしました。
ゴールドマン・サックスでは、様々な金融ITシステム構築に携わりましたが、学生時代の奨学金や留学費等の返済目途もついたことや、「金融」そのものに興味を持ち始めたことから、実際にフロントとして収益を上げる職種にチャレンジしたいという気持ちが芽生え始めました。そして縁があって、入社2年目に、自己勘定投資チームのファンドマネージャーに転身しました。以後は運用担当者として株式、債券、為替、デリバティブの投資を行い、ポートフォリオのリスク管理なども担当。2014年1月にマネージング・ディレクターに昇格も果たすことができました。
そして2018年1月にクリプタクトを設立し、現在は起業家兼エンジニアとして、経営と開発を進めています。
「破壊されるのであれば、自分は破壊する側に回りたい」イノベーターである道を選んだ理由
わたしが運用業務をはじめた12年前は、証券市場の動きから他の投資家がどのように行動できるのかを予測できましたし、変化を起こしているのも人間であろう、と想像することができました。しかし、過去5年の間、証券市場から人間の気配がどんどんなくなっていくことを感じました。またここ数年では気配のみならず、機械学習を使った超高速取引が増え、いよいよ人間が戦える分野ではなくなってきた、という強い危機感を抱いた事がきっかけです。
同時に、ITへの大きな可能性を感じていたため、2年前ころから、夜の時間をつかって鈍っていたコーディングの腕を磨き始め、新しいプラットフォームや技術で遊び始めました。
ブロックチェーンにも興味を持ち、すでに開発を行っている人のブログを読んだり、実際にやりとりをはじめたところ、その可能性を面白いと感じ、同時に自分が所属する金融業界の仕組みが破壊される、ということも強く感じました。
破壊されるのであれば、自分は破壊する側に回りたいと思って会社を立ち上げることを決意しました。
「IT vs 人」の勝敗が決まった決定的瞬間を体感
例えば、場中(=株式売買が行われている時間のこと)に決算発表をする会社があります。
10年前ですと、ロイターやブルームバーグから配信された情報(以下、コンセンサスと呼びます)を投資家がキャッチし、決算は期待より良いのか悪いのか、を判断し株式が売買される。つまり、発表から株売買が行われるまでに人間が「情報を読み解き判断する」という時間があったのです。
しかし最近では決算発表と同時に株価が動きます。なぜか。
回帰分析で行った過去の数値、コンセンサス、予想値などの膨大なデータに基づき、人工知能を搭載したシステムが、発表から1秒未満で株の売買を始めるからです。
そして人工知能の判断により上昇した株価を見た人間は、あわててその株を買いに行きます。するとすでに株価は最高値になっている。言い換えれば「売り」の状況です。瞬時に察知したシステムは人間が買ったタイミングで売りだしはじめており、人間はしっぺ返しをくらっているわけです。
投資の世界では、分析に基づく判断が正しいか正しくないかでは勝者は決まりません。金融商品の売買により利益をもたらすことが正義である運用業務において、人間より大きな利益をもたらすことができたテクノロジーが評価されるのです。
あえて、エンジニアとして起業したわけ
前段で申し上げた通り、現在のIT技術にはとても面白味を感じています。
ファンドマネージャーの仕事は確率的に勝敗が決まるため、確率を上回って勝てた時の達成感が醍醐味でしたが、エンジニアは自分の手でつくったものが世に出るときに確実な達成感を得ることができます。今はエンジニアとしての達成感にやりがいを見出しています。特にクリプタクトではBtoCサービス開発を行っていますので、数字としての反応のみならず、メールやSNSなどを通じて直接的なフィードバックを受けることも多く、この思いはなおさらです。
また繰り返しになりますが、わたしはかつて金融業界のフロントの仕事をしたくてファンドマネージャーになりましたが、今後は金融業界のフロントは「エンジニア」になる可能性がある、というのも魅力ではないでしょうか。
ローンチ初日にユーザー数が1400に
3日に1回のペースの追加リリースし続けた「tax@cryptact」の開発秘話
わたしのような無名の人がいきなりサービスをやっても誰も振り向いてくれないと思ったので、まずは少しでも多くの人に知ってもらうために「BtoCサービス」「無償」「簡易登録のもの」という観点から今ある「[tax@cryptact]」(https://www.cryptact.com/tax/)を昨年(2017年)の秋に企画し、同年の12月にローンチをしました。
ちょうどクリスマスイブに公開したのですが、 といってもTwitterで呟いた程度なんですけどね、初日で1400人、3日で3000ユーザーに膨れ上がり、現在では約3万人が利用してくれているサービスにまで成長を遂げました。tax@cryptactは、当時目前に迫った2017年度の確定申告(2018年3月15日締切)で多くの人が使えるサービスにしたいと考えていため、必要最低限の機能でローンチしましたが、その後も3日に1回は機能追加をリリースしていきました。
幼少期からシステム開発をしてきたアミンだからこその「サービス開発」をするときに大事にしていること
サービスを企画するときに重要視していることが3つあります。
- スケーラビリティ
- セキュリティ
- フレキシビリティ
です。
これまで一度もシステムがダウンしたことはありません。また、最初から完全にモジュール化できる、つまり新機能を簡単に付け加えられるような仕組みを設計し実装していましたので、ローンチ後ユーザーからの多くのリクエストを受けましたが、問題なく機能追加に応えることができました。
幼少時代から開発するときには必ずこの3つの観点を意識していたことが、今のサービス開発に繋がっていると思います。
ビジネスも開発も、フル回転で進める
これまで開発は4名で進めていました。わたしと、取締役の増田と業務委託の方2名という構成です。わたし自身は現在開発に取れる時間があるときは、開発に集中しています。
役割は、増田は主にバックエンド担当、データ分析や計算に必要なデータの収集などを行っています。
わたしはビジネスロジックを考えてサービスのバックエンド、フロントエンド、加えてインフラを担当しています。最初から弊社の活動に興味を持ってくださった業務委託の小玉と中村にもコア部分、バックエンド、フロントエンドの設計と実装も手助けてしてもらっています。
もちろん、事業サイドの業務もいろいろ入っているため、開発と経営の割合としては半々くらいでしょうか。
サービス企画は様々あり、開発の人手が足りていないため、一緒に開発を進めていただける方を正社員で募集しています。
常に仲間と相談をしながら開発を進めています。
金融×IT×グローバル、そして他分野への技術横展開も視野に
目下、次のサービス展開に向けて計画を進めており、そのためのインフラ強化やセキュリティ強化を行ったところです。ここから、一気に開発を進めていきます。長期的な話をすると、仮想通貨、ブロックチェーン、スマートコントラクト関連のサービスを展開しようと考えています。
わたしたちの強みが「金融」ですので、まずは金融業界向けのサービスを開発していく予定です。我々はIT企業であり、税金計算をするためだけに会社をつくったというわけではありません。既存サービスの深化はもちろん、IT企業としてテクノロジーを世の中に提供していきたいと考えています。利用している技術に関しては金融業界以外の分野へ展開できるものも沢山あるため、ゆくゆくターゲット業界は広がっていくだろうと構想しています。さらには、起業当初よりグローバル展開を前提とした開発を行っているため、日本発のグローバルIT企業として成長していくつもりです。
クリプタクトでは一緒に開発を進めてくれるエンジニアを積極的に募集しています。
ご応募お待ちしております!