アビームコンサルティングが明かす「ビッグデータ活用」を失敗させない3つのポイント

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アビームコンサルティングが明かす「ビッグデータ活用」を失敗させない3つのポイント

テクノロジーを駆使した事業改革やマーケティング戦略の見直し、新規事業の創出などで、「データ活用」が経営の議題に挙がるシチュエーションは日に日に増えている。

しかしその際、こんな「あるある」に遭遇したことのある人は意外と多いのではないだろうか?

経営陣:わが社も固有のビッグデータを使って何か新しいことができないか?

部長:当社は現状、部門ごとに違った形式でデータを管理していまして...。

経営陣:じゃあ、まずはデータ基盤を整えるプロジェクトを立ち上げよう!

部長:ご意向は分かりましたが、データ分析後の成果は...!?

経営陣:そこから考えるのが君の仕事だよ!

部長と現場:(どこから手を付ければいいのやら......)

こうしたパターンになりがちなのは、「デジタルトランスフォーメーション」や「デジタルマーケティング」といった言葉ありきで物事が進み、データを活用した経営改革の具体例やそのプロセスが普及していないことにも一因がある。

そこで3月17日、アビームコンサルティング(以下、アビーム)は同社のビッグデータ活用手法を披露する勉強会「データ分析&活用最前線!ものづくり、CRM、社会問題、etc. 各業界の事例を公開します! #アビームコンサルティングMeetup」をTECH PLAYで開催。グローバルファームとして幅広いクライアントに提供してきたコンサルティングの具体例を用いながら、ビッグデータ活用のノウハウを明かした。

そこには、大きく3つのポイントが隠されていた。

1. データ分析・活用で最低限必要な「3大知識」を学ぶ

会の冒頭で「コンサルティング会社におけるデータサイエンティストとは」をテーマに講演したデジタルトランスフォーメーションビジネスユニットの赤石朗さんは、デジタル革命による新たな価値の創出が求められる中で、大前提として必要なことを次のように語った。

2000年にアビームに入社して以来、SCMや業務改善、グローバル経営基盤構築系のプロジェクトに多数関与してきた赤石さん

「90年代に始まった情報のデジタル化によってERP導入なども進み、各企業の『データ保有への意識』は飛躍的に高まりました。しかし、デジタルトランスフォーメーションを推し進めるには、データを持っているだけでは無意味。事業部間、グループ企業間で保有データの粒度をそろえることも含め、デジタライズしきった状態にするのが大切です」(赤石さん)

まずはこの土台を整えてはじめて、データを「サイエンス」するスタート地点に立てるというわけだ。

赤石さんによると、まだこのフェーズで止まっている企業も少なくないという。そのため、アビームがコンサルティングを提供する際も、この部分から着手するケースが多いそうだ。

そして、データサイエンティストが実際にデータを分析・活用する際に持ち合わせているべき知識を

  • ビジネス
  • データサイエンス
  • データエンジニアリング

の3つだと続ける。

「とはいえ、どんなに優れた人でも、これらすべてを独りで持ち合わせるのは難しい。ですから、アビームではそれぞれに精通した専門家がチームを組んでプロジェクトを組成し、価値を生み出すようにしています」(赤石さん)

データドリブンな発見・示唆は社内に100名近く在籍するデータサイエンティスト側から、経営視点のイシュードリブンなお題は各産業に精通したコンサルタント側から出すことで、「分析」と「提言」の両面から新しい価値の創出を支援している。

また、データエンジニアリングの部分では、SAPやOracleなどのベンダー製品を駆使するほか、人工知能を使った多次元解析ツール『HyperCube』製品を提供している仏HyperCube Research社とライセンス使用契約を締結し、高速でアウトプットを出す仕組みも構築しているという。

「コンサルティングの現場では、長年その事業に携わってきたクライアントでも気付かなかったような改革の糸口を、短期間で見いださなければならないこともあります。そのため、体制面でもツール面でもデータ分析にベストな仕組みを構築し、活用のきっかけを作っていかなければなりません」(赤石さん)

2.最上流の「分析テーマ」から検討するアプローチ

では、具体的にはどんなアプローチでクライアントのデータ分析と活用を支援しているのか?

これについて、アビームのデータサイエンティストである松井博史さんは、実際に自身が過去に手掛けた自動車保険会社の事例を基にプロセスを明かした。

データサイエンティストになる前は心理学者としてアカデミックな世界で活躍していた松井さん

そのプロジェクトではインターネットで自動車保険を提供する企業がクライアントで、以前は価格面で競合優位性を保っていたものの、マーケット自体が成熟し売上の伸びが鈍化していた。

そこで次の成長戦略を模索していたが、「男女別契約数」や「地域別契約数」など基本的な数値しか分析しておらず、顧客データは持っているものの宝の持ち腐れになっていたそうだ。

まさに冒頭で書いた「どこから手を付ければいいか分からない」という状況で止まっていたクライアントに対して、松井さんは以下のようなプロセスでアプローチしたという。

(1)分析テーマの検討
(2)分析設計
(3)データ整備
(4)分析実行
(5)分析評価・施策検討

「データ活用プロジェクトで一般的に多いのは、(1)の部分はクライアントの経営ボードですでに決まっていて、現場では(2)〜(4)しかやれないというパターンです。しかし、本当にインパクトのあるインサイトを導くには、分析テーマそのものから考えなければなりません」(松井さん)

それゆえ、アビームが手掛けるコンサルティングでは(1)から入り、(5)まで一貫して支援するのが通例だと話す。今回取り上げた自動車保険会社向けのプロジェクトでも、最初に売上UPをゴールにしたロジックツリーを作るところから始めたという。

「まず新規契約料UPと更新契約料UPに分岐させて、それらを叶えるために必要な打ち手は何か...とブレイクダウンしていきながら、分析するべきテーマと手法を探っていきました。そもそも論から入ることができるのが、コンサルティングの良さだと感じます」(松井さん)

このロジックツリーの作成で出てきた数多くの売上UP施策のうち、クライアントが納得できるテーマかどうかを確認しながら、実現性を踏まえて分析設計〜実行へと進んでいった。

「最後の分析評価・施策検討でシステム開発が必要なら、そのシステムの開発にも関与できるという点も、アビームでコンサルティングを行うメリットです。さらに、(3)のデータ整備では『今ある顧客データ』で成果を出すプランを考えつつ、先々のために『今ないデータをどう取得し、活用するか?』なども提案することで、クライアントのさらなる成長に貢献することができます。」」(松井さん)

逆に言えば、このように一歩先を見据えた分析提案をしていくことがコンサルティングの価値とも言えるだろう。

3. 分析・活用のやり方を定着させる運用の仕組みづくり

この「一歩先の分析提案」なり「分析テーマの検討」をしていく上で必要になるのが、赤石さんの言うビジネス面での知見である。

産業ごとの特徴はもちろん、SCM(サプライチェーン管理)やCRM(顧客情報管理)といったビジネス領域についての専門性があって、初めて効果的な施策を導くことができるからだ。

そこで、今後はコンサルタント側からの提言で重要な点について、SCMセクターの飯田薫子さんは次のように語る。

SCMの領域を専門とし、メーカーの需給業務改革を15年にわたり支援してきた飯田さん

「最近ではどのメーカーも、現場の改善力に頼っていたところからデジタル改革で生産性の向上を図らなければならないという認識を強めています。SCMは大きく『計画業務』と『実行業務』の2つに分かれますが、現状分析をして施策を練る際、この双方に対して効果のあるデジタルシフトを提案することが求められるのです」(飯田さん)

計画業務とは、顧客満足とコスト削減の両方を見据えた供給計画を立てることを指す。例えば食品メーカーの場合なら、調達・生産の最適化はもちろん、売れ残りや期限切れ食品などで本来は消費されたはずの食品が廃棄される「食品ロス問題」の解消なども、この供給計画の見直しによって促進できると期待されている。

また、モノを供給(サービスの提供)をする実行業務でも、最近は恒常的なトラックドライバー不足のような課題と向き合いながらベストプラクティスを見いだす作業が求められる。

「複雑に絡み合う課題に対して、AIや自動化を駆使しながら高精度な需要予測と運用負荷軽減の両立を目指すモデルを構築するのが大切です。その一方で、現場に定着して効果が出る施策にするのも非常に重要です。なので、シンプルな予測ロジックを採用することや、適用するモデル数そのものを少なくすることにも気を配る必要があります」(飯田さん)

ここまで練り込まれた施策に落とし込む力が、データ活用のコンサルティングに求められるということだろう。CRM領域におけるアナリティクス・ソリューションについて説明した内藤征吾さんも、分野こそ違えど似たような注意点を明かす。

銀行、損保、流通・小売、製造業など幅広い企業のCRM戦略における情報活用の高度化を長年支援してきた内藤さん

内藤さんによると、顧客データ分析の高度化に向けたアプローチには5つのフェーズがあるという。

(1)データの収集・蓄積(分析準備)
(2)データの可視化(事実の把握)
(3)「予測」による顧客特性の理解~ 経済性試算に基づく施策の実践(打ち手)
(4)予測モデルの自動学習化(仕組み化)
(5)顧客軸へのアプローチの統合(最適化)

(3)以降のフェーズは、昨今ブームとなっている所謂「AI」の領域とも重なってくるが、「AIや最新の予測テクノロジーを駆使しながらモデルを確立していくこと自体よりも、これらのテクノロジーをいかにCRM業務に落とし込み、持続的に使える物にすることが重要」と説明する。

「いくらAIや予測テクノロジーといった技術の進歩があっても、そのソースとなるデータが適切なものでなければ効果を発揮しませんし、ビジネス・イシューが明確でないままにいくら高度な分析を適用しても業務に使えるものにはなりません。重要なことは現状を正確に理解し、適切な課題設定から最適なテクノロジーを選択し、トライアンドエラーを繰り返し、業務に落とし込むまでのプロセスを着実に踏んでいくことです。 データ分析に必要なテクノロジー自体は10年前くらいからあるものの、多くの企業に根付いていなかったのは、この地道なプロセスを実践し、仕組み化する難しさが理由だと思っています」(内藤さん)

例えば(4)の自動学習化が欠かせないのは、消費者の購買傾向や競合環境等、マーケットの動向は常に変化しており、定期的に新しいデータを取り込みながら予測モデル自体をアップデートし、かつ、前のモデルと予測精度が違うかどうかも検証するのが大事だからと内藤さんは言う。

この話は、単にデータを分析するだけでなく、分析・活用のやり方を定着させる運用の仕組みづくりも大切だという好例だ。

「幾多ある分析や予測のテクノロジーを、クライアントとのコミュニケーションの中で具体的な成果に繋がる業務として『どう使うのか?』まで落とし込んで考える。これが、コンサルタントの大きな役割になります」(内藤さん)

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