「AI-Ready都市」を目指す仙台・東北の学生たちの取り組みを紹介──仙台X-TECHイノベーションアワード2023

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「AI-Ready都市」を目指す仙台・東北の学生たちの取り組みを紹介──仙台X-TECHイノベーションアワード2023
仙台市では、AIを利活用できる企業・人材が活躍し、AI関連ビジネスが持続的に生まれる「AI-Ready都市・仙台」の実現に向けて、経営層向けAIハンズオンセミナーをはじめとする各種イベントやワークショップなど、AIを用いた課題解決やビジネスの高度化を支援する「仙台X-TECHイノベーションプロジェクト」を実施している。 3月3日に開催された「仙台X-TECHイノベーションアワード2023」最終発表会。午前中は、AIを通した地域課題・社会課題の解決推進に向けた最新動向や、仙台・東北の将来を担う高校生、高専生、大学生・大学院生の取り組みなどが語られた。

地域の課題を若者の力で解決へ──JDLA、高専DCONへの取り組みを紹介

最初に登壇したのは、日本ディープラーニング(IDLA)協会理事・事務局長の岡田隆太朗氏だ。全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト、通称DCON(ディーコン)の実行委員会事務局長も務めている。岡田氏は、JDLAおよび高専DCONでの取り組みについて語った。

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まず岡田氏は、テキストを打ち込むと絵になる画像生成「DALL・E2(ダリ・ツー)」というOpenAIが開発したAIツールや、OpenAIが2022年11月に公開したAIチャットサービス「ChatGPT」など、実演を交えながら、ディープラーニング活用の最新事例を紹介した。

公開と同時に大きな注目を集めたChatGPTについては、JDLAで「生成AIの衝撃~ ChatGPTで世界はどう変わるのか?」と題したオンラインイベントも開催したところ、2000人を超える視聴申し込みがあったという(2023年4月現在で18万回以上の視聴数)。

また、2012年にディープラーニングを画像認識に適用した精度が実証されたことをきっかけに急速に進化してきたAIの歴史や最新動向についても、Foundation Model AI、AlphaCode、AlphaFold2などの自然言語処理モデルや、OpenAIがリリースした高精度言語AI「GPT-3」などを例に挙げながら、わかりやすく解説された。

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一方で、こうしたAI技術やデジタル活用において、日本企業が遅れをとっているという課題もある。JDLAはこのディープラーニングを中心とする技術によって、日本の産業競争力向上を目指す産業団体だ。

ディープラーニングを事業の核とする企業や有識者が中心となり、日本企業の産業活用促進や人材育成、公的機関・産業界への提言、社会への理解促進などの活動を行っている。

2017年の設立当時は7社からスタートした正会員企業も、2023年3月時点で34社まで増えた。ディープラーニングの知見を提供する有識者会員も19名(2023年2月時点)、東北大学 大学院 情報科学研究科の岡谷貴之教授も参加している。賛助会員は製造業・IT企業に加え、金融や医療系の企業、コンサルティングファーム、行政会員も地方公共団体や育委員会の加入が増えている。

また、ディープラーニングの知識を検定する「G検定」や、実装する能力や知識を検定する「E資格」を実施し、日本企業のDXやディープラーニングの事業活用を推進する人材の育成を目指している。

さらに新たな技術や事例などの情報交換の場となるCDLE(シードル)というコミュニティも運営している。

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JDLAでは次世代のデジタル人材育成の一環として、高等専門学校生(以下、高専生)の起業支援も行っている。それが高専生がディープラーニングを活用したビジネスアイデアを考案し、企業の評価額を競うコンテスト「DCON」だ。Start Up 応援1億円基金を設立し、10年間で総額1億円を支援。高専生の起業を経営面でサポートしている。

2023年度の「DCON2023」は全43チーム(20校)がエントリーしており、本選は4月29日に開催予定だ。その模様は「JDLA公式YouTube」などでライブ配信される。

仙台からも仙台高等専門学校が本選に初出場する。次のトークセッションでは、出場メンバーと岡田氏の対談が行われた。

高専DCONに念願の初出場!仙台高専チーム「RDS LAB」の挑戦

続いてのトークセッションに登壇したのは、仙台高等専門学校 総合工学科 准教授、東北大学 加齢医学研究所 特任准教授の張暁勇氏、そして仙台高専広瀬キャンパスチーム「RDS LAB」より仙台高等専門学校3年生の田坂青輝さん、下澤心一さん、蝦名海(チームリーダー)さん、 菅煌真さんの5名である。

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リーダーの蝦名さんは、昨年テレビ番組の特集を通じてDCONを知り、入学する前から興味があったディープラーニングに挑戦したいと考えていたこともあり、出場を決めたという。前回は残念ながら、1次は通過したが、2次は通過できなかった。

だが、「今年はメンバーも集まり、ファイナルに初出場を果たすことができて感動している」と、その喜びを語っている。作品名は「Road Damage Scanner」。路面の傷みや白線の消失を検知するAIである。

「これから自動運転車が発展していく中で、路面の劣化を検知することで事故を防ぎ、地域の安全を守るためにディープラーニングを活用していきたいと思います」(蝦名さん)

ファイナリストにはプラットフォームやワークステーション、計算資源なども使い放題になるほか、有識者のメンターもつく。RDS LABのメンターは、さくらインターネットの田中邦裕氏。まさに高専出身の起業家でスタートアップのエンジェル投資家としても多くの実績を持つ。DCON本選はもちろん、今後の起業についても活躍も期待が高まるところだ。

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山形県の未来を高校生が変える!「やまがたAI部」の取り組み

続いての講演は、やまがたAI部運営コンソーシアムの会長 松本晋一氏による「高校生向けAI教育「やまがたAI部」の取り組みだ。

松本氏は旭化成、外資系ITベンダーのディレクター、コンサルティングファームのディレクターなどを経て、2004年3月に製造業特化型コンサルティング業務を行う株式会社O2、現在のオーツー・パートナーズを設立。製造業向けにコンサルティングを行っている。

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松本氏は、IMD(国際経営開発研究所)が発表した「世界デジタル競争力ランキング2022」によると、日本が世界28位とデジタル競争力が低いことを指摘する。そして、GDPが世界3位であるにもかかわらず、1人あたりのGDPと同じく28位であり、日本の経済力が低下していることに問題提起を投げかけた。

デジタルが強くなれば、日本の1人あたりの生産性と1時間あたりの生産性が上がり、日本人の給料を上げることにつながる。そのためにはデジタル教育が必要となる。高校生に着目した理由として、中学生にとったプログラムスキルに関する調査データを引用し、中高生のデジタルリテラシーの向上と可能性を挙げた。

「デジタル時代は、知の序列が劇的に変わっていくと思っています。教育は大人が子どもに教えるものだという固定観念を捨て、パラダイムを変えなくてはいけない。」(松本氏)

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やまがたAI部は、「デジタル人材育成を通じて、山形県のGDP向上に貢献」することをビジョンに活動している。目指すゴールとしては、若者のAI人口や女性のAI人口をトップにすることで、山形県のデジタル力を向上させることだ。

だが松本氏は、「こんなに世界は広いのだから、AI部の卒業生を地元に縛りつけたくはない」と強調する。「帰ってきたくなる魅力的な企業と魅力的な地域をつくるのは私たち大人の役目であり、まずはデジタルやAIに強いという強みをつくることが重要だ」と語った。

AI部の教育カリキュラムは生徒に伴走するコーチを地元企業の社員が務めており、社員教育や採用活動にも貢献している。

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2023年度のやまがたAI部の参加高校は、山形県が32校、東京都7校、大分県1校、福岡県2校、熊本県1校と、山形県外の参加高校も増えており、参加人数は150~200名くらいになる予定だ。課題となるテーマをAIを活用して競い合う「やまがたAI甲子園」の開催も今年で3年目となる。県内外の21校、総勢100人が参加するという。

松本氏は今後の展望の一つとして、女性のデータサイエンティストを増やしたいと語っている。結婚や育児で仕事を辞めて家庭に入る女性も、やまがたAI部のコーチとして活躍することで、収入も得られるし、育児所を設ければ子どもの面倒も見れる。オンライン授業であれば、在宅勤務も可能となるだろう。ANAの客室乗務員からリスキリングによってデータサイエンティストとして活躍している女性など、実例も出ているそうだ。

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東北大学におけるAI・データ教育とその成果を紹介

続いてのセッションに登壇したのは、東北大学データ駆動科学・ AI 教育研究センター 特任准教授を務める高橋蔵人氏だ。高橋氏は、東北大学卒業後、外資系コンサルティング会社を経て、株式会社ミヤックスの取締役、経営企画事業部長として戦略策定と実行に従事。現在は代表取締役社長を務めている。また、AIスタートアップのAI insideのVice Presidentとして、AI活用のコンサルティングや大学・企業の教育講師を務め、2000名以上のAI活用人材を育成している。

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東北大学データ駆動科学・ AI 教育研究センターで高橋氏は、AIの基礎知識を学んだ学生が地元企業に対して、AIを活用した課題解決や事業創造を提案する「PBL型授業」を行っている。AIの知識やデータ活用をよりビジネスや社会でより役立てるための教育スタイルだ。実際に講義を受けた学生の9割が、「講義に満足している」「AIを理解できた」「さらに高度分野を履修したい」と答えている。

地元企業との「実践型データサイエンス(DS)教育」の取り組み事例として、高橋氏のもとで学んでいる東北大学経済学部経営学科3年生の吉村悠希さんも登壇。その成果を語ってくれた。DXやデータサイエンスなどに興味を持ち、自然言語処理やディープラーニングを学んでおり、G検定も取得したばかりだという。

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取り組み事例として紹介されたのは、文系の学生でも簡単に扱うことができるAI・機械学習やBI、RPAなどのノーコードソフトウェアを使い、地元企業のデータ分析、機械学習を用いた予測、施策立案を行う取り組みだ。

仙台市で多くの飲食店を展開しているハミングバード・インターナショナルの来客数や客単価、売上金額などのデータを分析し、利益改善に繋がる施策を立案。施策結果のデータも効果検証を行い、PDCAを回しながらさらに改善を図っていく。

例えば、時間帯別客数比率を分析し、午前中と夕方の時間帯が数値が下がっていることを定量的に示し、その時間帯の業務効率化や集客施策を提案するといったことを行う。また、毎月の定量データから、6月にレモンスカッシュの売上が上がっていることがわかれば、PRを告知したり、SNSで評判の良かったチーズケーキの原産地をメニューの記載に入れて、さらに売上を上げるなどの施策も功を奏したという。

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これまで現場では経験と勘で行っていたことを、データから可視化・予測し、KPIの数値の達成を目指した対策を考え、PDCAを繰り返すといった流れだ。こうした経験は、ビジネスの現場でなければなかなかできないこと。学生時代から地元企業でデータ活用や施策立案など、現場での経験を積んでおくことが社会に出てから役立つと高橋氏は強調する。

「ある学生が百貨店のデータを見ても何もアイデアが浮かばないと悩み、示唆を得るためにデパートでアルバイトを始めた例もあります。ただデータを取得して、分析方法を学ぶだけではなく、何が目的で何が課題なのかに向き合うということを学ぶことも重要なのです」(高橋氏)

また、吉村さんは「現場に出て難しかったこと、気づいたことは何だった?」という高橋氏の問いに対し、分析するデータの絞り方だったと振り返っている。

「売上や客数、客単価、原価率など、データが膨大にありすぎて、何から手をつけていいのかわからなくなったこともありました。グラフを作りすぎたり、迷走したりしたこともありましたが、現在は目的に合わせてデータを絞って分析できるようになってきました。 経営学科で学んだビジネス知識に加え、データサイエンスや統計学を学ぶことができたので、社会に出てからもデータ分析やDXを推進したり、データを活用したコンサルティングなど、現場との架け橋となる人材になりたいと考えています」(吉村さん)

高橋氏は地域の企業や店舗に対し、勘や経験に依存しないデータに基づいたビジネスモデルに学生と一緒に向き合っていきたいと語っている。高橋氏と吉村さんの取り組みに、会場からは大きな拍手が送られ、午前中のセッションは終了した。 ⇒「仙台X-TECHイノベーションアワード2023」最終プレゼンテーション編に続く

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