ボストン コンサルティング グループ(BCG)が仕掛ける デジタル産業イノベーション事例【ビジネス(経営)×データサイエンス】
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●登壇者プロフィール
ボストン コンサルティング グループ
マネージングディレクター&パートナー ド・ロービエ ロマン氏
BCGデジタルアナリティクス組織”GAMMA” のNortheast Asiaのリーダー。産業財グループのグローバルリーダーシップチーム、およびコーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。
ボストン コンサルティング グループ
マネージングディレクター&パートナー 植田 和則氏
BCGハイテク・メディア・通信グループ、コーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。2020年に開設した京都/大阪オフィスのコアメンバー。 電機、FA機器、輸送機器等製造業、および運輸など幅広い業界の企業に対し、トランスフォーメーション、ビジネスモデル変革、ターンアラウンド、新規事業開発などのプロジェクトを数多く手掛けている。
ボストン コンサルティング グループ
マネージングディレクター&パートナー 折茂 美保氏
BCG社会貢献グループの日本リーダー。 通信、小売、消費財など幅広い業界の企業に対し、新規事業戦略の策定、新規事業立ち上げ支援、アライアンス、マーケティング戦略、人事・組織・業務改革などのプロジェクトを手がけている。また、中央官庁や自治体向けの中期戦略の立案や実行支援の経験も豊富。
ボストン コンサルティング グループ
アソシエイトディレクター 関根 正之氏
先進技術活用支援を中心とするコンサルティング業務に従事すると共に、東京大学工学部松尾研究室でAIの研究・開発に携わる。
ボストン コンサルティング グループ
アソシエイトディレクター 泉 晃氏
データサイエンス・AI・先端技術のR&Dを専門とし、複数の企業でデータプラットフォーム構築やCoE組織の立ち上げを主導した。医療・製薬などヘルスケア領域を中心に製造・通信・官公庁などの各産業のデータとデータ活用プロセスの標準化にも積極的に取り組む。京都大学大学院医学研究科特命准教授を兼任しデータサイエンスの講義を担当。
ボストン コンサルティング グループ
データサイエンティスト 鹿野 英明氏
GAMMA のコードクオリティ・アセットチームの立ち上げメンバー。機械学習を専門とし、物流、小売、ヘルスケア業界のプロジェクトに従事。
戦略とデジタルは切っても切り離せない
事例紹介に先立ち、泉 晃氏がBCGのDigitalチームの概要や特徴について説明した。2018年5月に設立したDigitalBCG は2つのチームからなる。
先進的なデータアナリティクスに基づき組織変革支援を行う「GAMMA(ガンマ)」と、デジタル戦略立案/グランドデザインから、CXデザイン/コンセプト策定、サービス/プラットフォーム設計・構築、継続的なグロース、ケイパビリティ構築支援まで、企業におけるデジタル活用をEnd to Endでサポートする「Platinion(プラティニオン)」だ。
またDigitalBCGに先んじて2016年4月に設立した「Digital Ventures」では経営サポートや事業の創出だけでなく、新規事業を展開するベンチャー企業をクライアントと一緒になって創出し、そのグロースからイグジットまでコミットする。
そして現在BCGジャパンでは、DigitalBCGも含め全体で約250名のデジタル人材を擁する。特に、GAMMAについて泉氏は詳しく説明した。
「GAMMAにはデータサイエンティストなど、データアナリティクスの専門家がグローバルで850名以上在籍しています。このようなBCGのデジタル人材の規模は、デジタルに強い企業やアカデミアと同等の水準を目指しており、連携もしています。
その中でも、我々はコンサルタントですから、デジタル人材ならびに最新の技術を、ビジネス現場に実装する能力やオペレーションの中で変革していてくノウハウを併せ持っています。戦略とデジタルは、切っても切り離せません」(泉氏)
つまり、DigitalBCG・BCGのインパクトは、従来からの戦略サポートとデジタルテクノロジーによる新たなビジネスの創出や課題解決を、両アセットを連携・活用しながら進めていくことなのである。そしてこの連携は当然、BCGの強みであるグローバルにおいてさらに力を発揮する。
海外の先進事例と経営コンサルタントとして培った、ビジネスのグローバルな理解や知見。これらが両者一体となり、インパクトのあるビジネスモデルやデジタルテクノロジー、そしてオペレーションの実装に繋がっていくからだ。
泉氏はこれら一連の業務を進めるプロセスや体制が重要であり、そこでもBCGは強みを持つと付け加えた。
「BCGでは、戦略の策定、構想の実現、拡大・発展のサイクル(パフォーマンスの最適化)を繰り返すことで、より強いビジネスインパクトを生み出していきます。つまり、クライアント企業の組織づくりやカルチャーの変革など、ビジネスにおける一連の課題をサポートできます。そしてこのような体制は、デジタルにおいても同じです」(泉氏)
泉氏が言わんとしていることは、先進技術をビジネスに活かすことは重要である。だが、先進技術だけではバリューは発揮できない、ということだ。
「戦略とデジタルテクノロジーが一緒になり、対等に価値を創出していくのがポイントです。言い方を変えれば、経営コンサルタントとしてビジネスをまず理解する。そこからインパクトを出す仮説を設計。同時に、データドリブンによる仮説も設計し、それら両方を融合し、デジタルテクノロジーで実現していきます」(泉氏)
AIを活用してビジネス・社会課題を解決できる人材を育成する
続いては折茂 美保氏と関根 正之氏が登壇し、2019年から経済産業省が行っているAI×ビジネス人材育成プロジェクト「AI Quest」について紹介した。
「企業や社会においてAIを活用するニーズは高まっています。しかし、導入や実装することのできる人材がまったく足りていないのが現状です。これは、日本全体に言えることです。
このような背景や危機意識から、AIの技術的な知識を持つ人材に現場への導入や実装に必要なビジネススキルを身につけてもらう。これが、経済産業省が進める「AI Quest」プロジェクトです。BCGは教材の作成から事業全体の設計・運用まで任され、実務に深く携わっています」(折茂氏)
先の泉氏のセッションでも度々触れたが、同プロジェクトにおいても、戦略チームとデジタルチームが連携し、プロジェクトを進めた。さらにAI企業もパートナーとして参画した。
「何を、どのように学ぶかが重要」と折茂氏。実際、設計された教材を見ると、まさにその想いが反映されていることが分かる。まずは、何を学ぶかについて。AIにおいては、実際の現場で活用できることがプロジェクトの目的であるため、学ぶ対象も、まさに実践に沿った内容となっている。
具体的にはスライドで紹介したとおりだ。「材料調達や需要・予測の最適化」「機械・施設の予知保全」「小売価格の最適化」など。まさしく、BCGが日常的に実務で行っているテーマであることが窺える。
受講生はこれらのAIスキルを身につけた上で、AI技術が実際のビジネス現場のどのような課題解決に寄与するのか。そのようなフローやスキルも併せて学んでいく。そして特筆すべきは、まさに実践である。そこから先のステップでは、協業パートナー企業のビジネス現場に入り、経営層から意思決定を取り付けるまでのフローも含め、リアルデータを使って実装かつオペレーションを、3カ月間にわたり、じっくりと学べる内容となっている。
つまり、AI知識、課題解決スキル、実装。この3つのスキルを一気通貫で学べるプログラムなのだ。そしてもうひとつの特徴、どのように学ぶかについて、その意図も併せ次のように説明した。
「与えられた教材や講師から一方通行で学ぶのではなく、まさに実ビジネスで行われているように、仲間、メンバーと一緒になって学び合うことで、参加者全員の能力が高まっていく。このようなことを意識した構成としました」(折茂氏)
具体的には参加必須の会議に加え、参加が任意のサロンを組合せ、柔軟かつ自発的なコミュニケーションの醸成を狙った。すると、折茂氏たちが期待した以上の成果が得られた。
「私たちが用意した以外に、いくつかのコミュニティの場が、参加者たちから自発的に立ち上がったんです。驚きと嬉しさ、両方の感情が同居しました」(折茂氏)
今年度の参加者は730名、昨年度も含めると受講者の累計は1000人以上になる。高校生から社会人、上は70歳代まで。地域も45都道府県からと属性は多様で、現在もプロジェクトは継続中であり、先述したようなコミュニティの場で、今まさにスキルを高め合っている。最後に2人はプロジェクトの感想を述べ、セッションを締めた。
「エンジニアがビジネスを学ぶことが大きなポイントです。AI、ビジネス両スキルを備える人材が増えることで、まさに冒頭お伝えした、企業や社会の課題解決に繋がる、机上の空論ではない、現実的で意味のあるAI導入が進みます」(折茂氏)
「教材を作成することで自分自身の勉強になったことが、学びとしてありました。ビジネスの現場では、ビジネス、テクノロジーは、それぞれ別のメンバーが持っていることが多いと思います。しかし今回のプロジェクトにより、1人のメンバーが両方を持つことができます。その結果、これまで足し算であったものがかけ算になり、よりスピーディーかつ強いビジネスインパクトが発揮できると期待しています。BCGではまさに、そのような両方のスキルを持つ人材を求めており、またBCGはそういった人材に成長する最適な環境と自負しております」(関根氏)
ヘルスケアデータを活用し新たなビジネスを多領域で創出する
続いては泉氏が再び登壇し、沖縄で今まさに行っているヘルスケアデータに関する取り組みについて紹介した。
「ヘルスケア領域では様々な医療データを活用しAIを作成したり、先端テクノロジーを利用することで、医療の仕組みの再構築や改革はもちろん、個人の健康増進など、新たな産業の創生が期待されています。遠隔診療、各種IoTデバイスやスマホアプリを活用し、血圧の測定などのいわゆるデジタル療法、デジタルセラピューティクス(DTx)などです。
BCGではこのような背景から同分野に着目し、医療の統合サービスはもちろんですが、生活全般、薬から日用雑貨といった分野にまで活用することで、健康で長寿命な人たちが暮らす世界の実現をイメージしています。
本日はその中から、沖縄のステークホルダーや国内外の企業と連携し、産業で実利用が可能なリアルワールドデータ(RWD)に関するプラットフォーム実現にむけた取り組みや事例を紹介します」(泉氏)
泉氏は同プロジェクト(領域)に取り組む目的、つまり具体的なビジネスや産業として以下を挙げた。国内ではもちろん、海外では既にホットな分野であり、ある企業はRWDの活用により1000億円規模の価値あるビジネスを創出している事例もあるとも紹介。同領域での期待と、BCGが取り組む意図を改めて強調した。
①患者アウトカム(成果)の向上:生活習慣の改善提案や病気の早期発見
②医療システムの効率・最適化:診断支援、治療期間の短縮など
③イノベーションの加速、新産業の育成:より効果の高い製品やサービスの開発など
なお「リアルワールドデータ(RWD)」とは、臨床現場から得られる匿名化された患者データのことで、具体的には「レセプト(診療報酬明細書)」や「電子カルテ」データを指す。
100万人による520万件のファイルデータ、470万点の画像データが対象
長寿というイメージの強い沖縄だが、昨今は生活習慣病に罹患する県民が特に男性で多く、寿命が下がってきているという。また観光事業への依存度が高いため、新たな産業創出に対して積極的だ。さらに県民の特性として、このようなプロジェクトに寛容である。このような理由から、沖縄でプロジェクトを進めることになったと泉氏は経緯を説明した。
対象となるデータは約100万人の検診、検査、処方・調剤、ゲノム、生活などのデータで、具体的に医療データファイルとして約520万件、医療画像データで約470万点のRWDが、沖縄の大学や医師会などの協力により揃った。だが、ここからビジネスを創出するには、様々な壁があると泉氏は話す。
「データの種類がバラバラで、データ統合が難しいとの課題がまずありました。また患者さんから利用目的に応じた厳密な使用許可の同意を得ること。
どのような成果が得られるのかが不明瞭のため、医療現場から理解を得えるかなど、様々な課題があります。そこでまずはこれらの課題を多様なステークホルダーで解決していくためのコンソーシアムを、2020年の11月に立ち上げました」(泉氏)
「EHR」データからグローバル標準規格の「HL7 FHIR」に変換
続いて、データサイエンティストの鹿野 英明氏が登壇。泉氏の説明を踏まえ、現在の状況や技術的な課題・解決策について説明した。
「沖縄県のRWDは、複数の医療機関から20年にわたり集めて蓄積された電子カルテデータ、「EHR(電子健康記録:Electronic Health Record)」と呼ばれるものです。具体的には2000年から2020年までのデータで、患者の年齢は0歳から103歳まで。乳幼児検診、特定健診、臨床検査など約4500種類の検査項目からなっています」(鹿野氏)
沖縄県のEHRデータは、年齢、性別、検査日といった、検査時の患者の情報が書かれたテーブルや、検査項目の一部もしくは全てが書かれた3つのテーブルから構成されている。 ただ現状のEHRデータでは大きく3つの課題があり、予測モデルの開発やその先、実際にプロダクトとして実装するには難しいと鹿野氏は説明し、具体的に次の3つの課題を挙げた。
①表現の違い
②検査の違い
③粒度(構成単位)の違い
①表現の違いとは、検査日の日付で西暦・和暦が混同しているケースがあること。既往歴データにおいては「あり・なし」「はい・いいえ」「有・無」のように、医療機関や医師により表現方法が異なっている点である。
②の検査の違いとは、検査した年代や保険組合により検査項目が異なること。③の粒度の違いは記入する医師の専門性により、記載内容が異なることだ。
「我々で判断できる内容に関してはこちらで処理しましたが、医師でないと判断が難しいデータに関しては、医師の方たちと議論しながらデータをクレンジングし、標準化を進めています。
技術的な流れとしては前処理とマッピングを行い、グローバルで広く用いられている医療データの交換規格『HL7 FHIR』に変換することで、標準化を実現していきます。HL7 FHIRデータになれば、FHIR Works on AWSなど、同じくグローバルで使われているメジャーツールとの連携が可能になるからです」(鹿野氏)
「FHIR」はFast Healthcare Interoperability Resourceの略であり、まさしく鹿野氏が説明したとおり、医療に関する情報を交換ならびに実装するためのグローバな標準規格である。
沖縄の事例をモデルケースとして広めていきたい
元データから実際にプロダクトがデプロイするまでの流れは、以下のスライドのとおりだ。データを用意する、問題を定式化する(訓練データの作成)、予測モデルを開発する、インサイトの提供、となる。
先ほど泉氏が説明したように、既にデプロイしているプロダクトやサービスもあるようだが、本セッションではモデル開発の手前、データをもとに具体的にどのような課題解決ができるのか、このドメインについて鹿野氏は詳しく解説した。
「どのような問題を解くことができるのか、今あるデータから推測できる短期的な問題だけでなく、これから先得ることのできるデータも含めた中長期的な問題も考えることが重要です。そしてある程度明確になったら、どのパラメータを説明/目的変数とするのか。
同時に、先の表現や粒度の違いといった“ゆらぎ”や個人が特定できることのない、プライバシーなども加味しながら定式化を進め、訓練(学習)データに変換していきます。具体的には、ラベルエンコーディングやワンホットエンコーディング、スパースモデリング、時系列解析などの手法やアプローチを試みます」(鹿野氏)
最後に再び泉氏が登壇。BCGが同プロジェクトを手がける目的を改めて紹介し、セッションを締めた。
「プロジェクトはまさに進行中で、既にデータを活用し新たな産業創出の実証段階に進んでいるケースもあります。今後の展開としては、沖縄での事例や取り組みをモデルケースとして、他の地域に展開したいと考えています。
そして、企業や大学はもちろん、オープンイノベーションとして様々なステークホルダーを巻き込み、RWDプロジェクトを広げていくことで、企業や地域の新産業創出と同時に、健康の続伸を実現するのが目標です。もし同プロジェクトに興味を持った方は、ぜひとも積極的にご参加ください」(泉氏)
【Q&A】参加者から寄せられた質問を紹介
■セッション後、Q&Aタイムにて紹介・回答された質問
Q:「解決したい課題→必要なデータ検討」よりも「既存データ→何ができるか」パターンの方が多いか
関根:BCGの場合は経営のトップ層からの依頼が多いこともあり、課題ありきでプロジェクトが進むことが多いです。ただ一般的には後者のパターンが多いと聞きます。
Q:DigitalBCGはどのような人材を求めているか
人事:データサイエンティストならびに、ソフトウェアやデータドメインのエンジニアを募集しており、東京に限らず新設の京都・大阪でも求めています。
詳しくはこちらのサイト(https://digitalbcgjapan.com/careers/)をご覧ください。
関根:専門分野の知見があることはもちろんですが、BCGはもともとビジネス/マネジメントコンサティング会社のため、思考能力、コミュニケーション能力、ビジネスセンスも期待します。もうひとつ、弊社のカルチャーや価値観、目指していることなどに共感できる人だとフィットすると思います。
泉:個人的な意見ですが、BCGでは成長意欲を求められます。そのため新しい手法にトライするなど、自己成長意欲の高い方だとフィットしやすいと思います。
Q:分析設計、データ基板設計、モデリング、レポーティングなど。BCGにおけるデータサイエンティストの業務範囲を知りたい
関根:挙がっている業務は全てカバーしています。加えて、BCGの場合はさらに業務範囲が広いと思います。具体的にはアナリティクスだけではなく、お客さまと直接話して課題を探るような、かなり上流からコンサルタントと一緒に業務を行っています。
泉:データを用いてプラニングや戦略策定を担うメンバーもいます。
関根:先ほどのデータ・課題ありきの質問と重なりますが、BCGではビジネスインパクトが出せるかどうかが重要であり、データサイエンティストもそういった意識で仕事をしているのが特徴だと言えます。
Q:自動運転やロボティクスのプロジェクトも手がけているか。またそれに伴い、データサイエンティスト以外、画像処理やロボティクスのスペシャリストはいるか
関根:自動運転やロボティクスをどのようにビジネスに応用するか、というプロジェクトはBCG本体でよく手がけています。ただ、ゼロではありませんが、いわゆる純粋な技術開発は多くないと思います。弊社のアナリティクスチームはサプライチェーンの最適化やマーケティングでのデジタルの活用など、ビジネスとの接点が強みだからです。
■イベント中には紹介・回答できなかった質問
Q:BCGではデータサイエンスとビジネスの両方スキルを持つ人材をどのように育成または獲得しているのでしょうか?
A:最初から両方持っている方は少ないので、それぞれの特徴を持つ人材が連携しながら、お互いに染み出して行く形で成長しているといった形です。
DigitalBCG/GAMMAでは両方のスキルが求められるので、両方に少なくとも関心のある人であれば、自然に育成できることが多いです。しかし、関心がない場合は難しいです。
Q:BCGの中に学術的な組織などありますでしょうか。(tech laboratoryみたいに普段のプロジェクトより実験性があることをやる組織)
A:経営戦略に関してはBostonにHenderson Instituteという研究組織を有しております。Data scienceに関してはMIT、東大などとの協業は盛んに行っております。
Q:AIのモデル開発で精度を1%上げるために多くの試行錯誤が必要になったり、開発期間内に要求させる精度が達成できるかはやってみないとわからないケースもあるそうですが、そのときにどのようにコンサルティングしていますか?
A:弊社ではモデル作成ではなくビジネスインパクトが目標ですので、実現できる精度の中で何ができるかというふうに考えますね。
Q:医療領域でAI技術を使うことはよくモラル・責任関係の課題がよくディスカッションになると思いますが、貴社は医療xAIのプロジェクトを取り組んでいるときにそういう討論になったことはありますか?
A:難しい問題ですが、一例として、臨床の診断支援AIの開発支援をさせていただいたこともありますが、そのときはやはり医療のサポートとしてのAIの位置づけをしようという議論でした。ここらへんは医療情報学会でも議論されており、同じ様な方向性だったかと思います。
Q:大きな経営判断にかかる部分のデジタル化(例:店舗の統廃合や配置最適化など)には説明性・解釈性が導入の障壁になるのかなと思いますが、そういったケースはございますでしょうか。また、どう対応されておりますでしょうか。
A:その様な場合には、より説明性や解釈性が高い手法を用いることと、またそれを説明・視覚化するビジュアライゼーションを行うことが多いです。
Q:プロジェクトの成果について、論文としてまとめあげ広く発表する機会等はあるのでしょうか(先日の東芝-統計数理研究所のTransfer Lassoなど)
A:はい、グローバルでは論文化の事例もありますし、国内でも特許出願なども行っております。今後よりこの流れは加速するものと考えています。
Q:AIをはじめとしたデジタルテクノロジー全般を使った変革を進めるにあたり、変革を推進する能力を持つ人材が求められていると感じています。このような人材を自社で育成するケース、また外部から調達するケース、双方の人材確保の可能性と注意点について伺えたらと思います。
A:非常に大事な問題かと思います。各会社様の状況や目標によっても取りうる戦略は異なりますが、社内のサービスや状況をよく理解していて組織を動かせる内部人材を育てるのと、豊富なデジタルの経験と知識を持つ人材を外部から招聘して、それらを組み合わせて行くのは一つの典型的なパターンになっていると思います。
ただ、多くの企業でデジタル人材と内部人材の待遇の格差が出ており、そのままでは上手く組織に取り込めない場合も多いので、その場合は組織の変革を伴う対応が必要となります。
Q:データサイエンティストとしての中長期的なキャリアにおいて、DigitalBCGさんに在籍することのメリットを教えて頂きたいです。例えば、Web系の事業会社などと比較して、他では得られにくいものがあれば教えて頂きたいです。
A:色々とあるかと思いますが、例えばとして2つを挙げますと、①ビジネスや経営においてデータサイエンスを使って価値を出すスタンス/スキルが得られる、②グローバルのエンジニア/データサイエンスと最先端の技術に触れ、それを実装する機会が得られること、かと考えております。