エンジニアが海外で働くにはどうすればいい? ──サンフランシスコで働くエンジニアがリアルな話を大公開!

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トークセッション「海外でエンジニアが働くには」

続いてのトークセッションは、「海外でエンジニアが働くには」をテーマに、近澤氏と上田拓也氏が登壇した。モデレータは引き続き、和田氏が務めた。

▲ 株式会社メルペイ エキスパートチーム 上田拓也氏
メルカリ/メルペイ所属。バックエンドエンジニアとして日々Goを書いている。Go Conference主催者。golang.tokyo、Goビギナーズ、GCPUG Tokyo運営。 大学時代にGoに出会い、それ以来のめり込む。社内外で自ら勉強会を開催し、Goの普及に取り組んでいる。マスコットのGopherの絵を描くのも好き。人類をGopherにしたいと考えている。

和田:上田さんは海外のカンファレンスに参加されることが多いそうですが、今年はどんなカンファレンスに参加されるのでしょう。

上田:5月8~10日にカリフォルニア州マウンテンビューで開催された「Google I/O 2018」に参加しました。

今後の予定としては、7月24日から26日にサンフランシスコで開催される「Google Cloud Next '18」、8月27日~30日にデンバーのコロラドコンベンションセンターで開催される「GopherCon 2018」への参加を予定しています。今年は米国開催のカンファレンスが多いですが、昨年はインドや英国のカンファレンスにも行きましたね。

和田:上田さんも海外で働くことを希望しているのでしょうか。

上田:もちろん、一度は働いてみたいというのはありますね(笑)。メルカリはサンフランシスコとロンドンにオフィスもあるので、希望を出すこともできます。

和田:その理由を教えてください。

上田:世界の最先端が集まっていることですね。すべての情報は英語から始まりますから。一次ソースに近づけば近づくほど得られるモノが大きいと考えているからです。

近澤:僕も30歳までに日本は出ようと思っていました。DeNAを辞めた後に、CTOとして共同創業した会社がありましたが、思ったようにいかず、抜けたんです。もっと、エンジニアとしてもっとやりきりたい、海外でもまれたいと思い、それならばシリコンバレー、やサンフランシスコに行くのがいいだろうと思い、今に到っています。

日本のエンジニアが米国企業に転職するのは難しい

和田:日本人のエンジニアは海外でも通じると思いますか?

近澤:日本人のエンジニアは超優秀です。東京はテック系のイベントも多く、コミュニティも活発ですからね。OSSコミッターもたくさんいる。海外でも心配ありません。

上田:Goという言語の側面からですが、海外のGoのコアコミッターはたしかにレベルが高いですが、一般のデベロッパーのレベルは変わりません。

和田:レベルがそう変わらないとすると、どうすれば日本人のエンジニアが現地企業に転職できるのでしょう。

上田:私は海外で働いていないのですが、先ほどのセッションでも話が出たように、現地の人とつながりを持つことではないでしょうか。どんなきっかけでもとりあえず海外のエンジニアが集まる場に行ってみるのが良いと思います。

和田:海外のカンファレンスで友達ができるものですか。

上田:できると思います。日本が好きな人もたくさんいますからね。

近澤:そう、結構多いです。以前、「GitHub Universe」に行ったとき、いきなり「日本人ですか?」と日本語で話しかけられたことがあります。特に東南アジアは日本が好きな人が多い。アニメはもちろん、日本のお笑い番組も人気があるんですよ。東南アジアの人にとって、日本は面白い国なんですよね。日本食も好きだし。

和田:でも、個人でカンファレンスに参加するのはなかなかハードルが高いですよね。さらに、交流するとなると難しいような。

上田:メルカリに入る前は自費で有休を取って行っていました。大きなカンファレンスに行くとわかりますが、その周辺の日程で小さな勉強会などがたくさん開催されるんです。それに参加するといいと思います。

和田:そういう勉強会の情報はどのように仕入れるのでしょう。

近澤:Meetup.comを見るといいですよ。小さな勉強会はカジュアルでオープンなので、参加しやすいと思います。

和田:海外拠点に転籍する場合のビザはどうなっているのでしょう。

近澤:ビザの種類が違うんです。海外拠点への派遣はL-1という駐在員ビザが使われます。グローバルに展開している大きな企業であれば、包括申請をしているのである程度の数を持っているんです。また、日本人が創業した企業であれば、E-2(投資家ビザ)で駐在させる可能性も出てきます。

和田:日本の企業から米国拠点に派遣されて、転職はできないのでしょうか。

近澤:グリーンカード(永住権)が取れていれば別ですが、L-1では転職できません。

和田:抜け道はないのでしょうか。

近澤:米国で起業するしかないですね。先ほども話したとおり、大変なことはありますが、ビザは取得できます。

和田:メルカリの場合、海外拠点への異動は多いのですか?

上田:それなりにありますが、現地採用も積極的に行っていると聞いています。

和田:日本からあえて異動させる必要はないですものね。

フルスタックエンジニアが求められるのは本当?

和田:日本のスタートアップではフルスタックエンジニアが求められます。米国ではいかがでしょう。

近澤:これも会社のステージによります。最近、募集が増えているのが、React Nativeのエンジニア。米国でもアーリーな状態だとフルスタックデベロッパーが求められますね。

和田:日本のスタートアップの場合、サーバサイドの技術スタックとして求められるのがRuby on Railsというイメージですが、米国ではいかがでしょう。

近澤:Node.jsやJavaScriptでしょうか。もちろん、Rubyも使われています。

和田:たしかにFirebaseだとNode.jsは使いたくなりますね。GoはWebアプリで使われているのですか?

上田:日本のスタートアップではGoで書く人が増えています。その背景には、Webサービスのスケールが大きくなっても、最初からパフォーマンスが出やすいので書き直しが発生する可能性が低いからではないでしょうか。メルカリも現在、PHPからGoに移行していっています。

海外に行ったからこそ得られた経験

和田:海外のカンファレンスに参加したからこそ得られた経験について、聞かせてください。

上田:Goを開発したエンジニアに会えることですね。登壇すれば、スピーカーディナーなどでGoのコアコミッターと話をしたり、名前や顔を覚えてもらうこともできます。とにかく何回も登壇することが重要です。同じ系統のカンファレンスだと、毎回同じ人が登壇するので、仲良くなれるんです。

和田:でも、海外のカンファレンスに行かせてもらうのはなかなか大変なのでは?

上田:最近は増えていますが、自分で行くこともできます。というのも海外のカンファレンスの場合、登壇すると渡航費や滞在費、イベントのチケット代をすべて出してくれることが多いんです。登壇すれば無料で参加できるものが多いです。あとは有給の取得とパスポート、現地での食事代を用意するだけです。

和田:そんなに簡単に登壇できるものなのでしょうか。

上田:ホームページにCFP(プロポーザルの募集)が出ているので、それに応募すればOKです。もちろん、簡単ではないですが、応募するのはただですからね。それをきっかけに発表して現地の人とつながるのはありだと思います。たまに渡航費や滞在費、イベントのチケット代などを出してもらえないものもあるので、その辺は十分、チェックしてください。

和田:近澤さんはいかがでしょう。海外で働くことで得たことについて教えてください。

近澤:いくつかありますが、一番は、自分が書いたコードがより世界にインパクトを与えられることです。日本のソフトウェア企業だと海外までターゲットにしている企業は少ないですからね。世界のユーザーからフィードバックをもらえるんです。

和田:働いてみることが良さそうですね。

近澤:また人間としての幅が広がり、ものの見方が変わると思います。ランチ一つとっても面白い発見があります。例えばシンガポールは3割が外国人の多民族国家です。だから多様性がすごいんです。イスラム教徒の友達が増えたことで、イスラム教に対する考え方が変わりましたから。シンガポールはビザも下りやすいし、いいですよ。

米国で働くためには長期スパンで考える

和田:今日のテーマは「サンフランシスコで働く」なので(笑)。やはり米国で働くのは難しいですよね。

近澤:本当に米国で働きたいのなら、長い視点を持つことです。3年~5年ぐらいのスパンで計画しないと、途中で心が折れると思います。とにかく絶対に行くんだという心構えが必要です。

和田:エンジニアで米国の企業に転職して、生涯現役で働き続ける人もいるのでしょうか。

近澤:ロールモデルはあります。IT業界でも何人かいます。前職の超人エンジニアはFacebookに引き抜かれて転職し、おそらく今も米国で働いていると思います。彼のような卓越した能力がある人は、O-1(アーティストビザ)が取得できるんです。

O-1が取得できると、そのままグリーンカードの取得プロセスに進む事例もあります。いずれにしても本当に米国で働きたい人は、対外的な成果を残すこと。そういうことを仕込みつつ、コネクションを作っていくことです。

和田:アメリカで働くのであれば、情報収集した上で、年単位で計画することが大事だということですね。ありがとうございました。

Q&Aタイムでは具体的な質問が多数投げかけられた

最後に質問タイムで「なぜ、海外でスタートアップを始めることを決めたのでしょうか」という問いがあった。サンフランシスコで起業している3人が次のように回答した。

「私が展開しているペットのサービスは、言語は関係ありません。展開については日本発でも海外発でもどちらも考えられたと思う」(哘崎氏)

「日本で不可能ではないが、日本から海外への展開が難しいと言われている理由の一つが、海外の人は日本のスタートアップをみていないという現状があること。TechCrunch.comに掲載されるのであれば、日本でも海外でも関係ない。サービスとしてユーザーが評価するのにどこの国かは関係ないが、情報発信が米国からされることが大事だと思っている」(近澤氏)

「日本のユーザーに対して使い続ける形にするのと、米国のユーザーに使い続ける形にするのとはまったく別のこと。米国のテクノロジートレンドは日本よりも早い。つまり米国の最先端の人たちが求めているものに合わせて提供できるかどうかが大事になる。日本ではその調節は難しいと思う」(小林氏)

米国の企業に転職する、米国で起業するのは、かなり難しいことだが、それ以上にエンジニアにとって米国、特にサンフランシスコは魅力的な街であるようだ。長期スパンとはいえ3年。社会人にとっては、あっという間の時間。米国で働きたいと考えているエンジニアは、ぜひこのトークセッションを参考に、計画を立ててみてほしい。


取材・文:中村仁美 撮影:延原優樹

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