「LINE BOOT AWARDS 2018」協賛テーマ賞について、詳しく聞いてみた──OMRON connect賞、Xperia Ear Duo賞、RIZAP賞、鎌倉市SDGs未来都市賞
LINEのコミュニケーションアプリ「LINE」、AIアシスタント「Clova」をベースに、さまざまな技術要素やアイデアを実装したサービスの創出を期待するイベント「LINE BOOT AWARDS 2018」。グランプリ賞金は1000万円、協賛テーマ賞・部門賞は各50万円の賞金や特典などが提供される。
今回は協賛テーマ賞を提供するオムロン ヘルスケア(OMRON connect賞)、ソニーモバイルコミュニケーションズ(Xperia Ear Duo賞)、RIZAP(RIZAP賞)、鎌倉市(鎌倉市SDGs未来都市賞)の担当者に、各賞の概要や評価基準・期待することなどを語っていただいた。
バイタルデータを活用して、世界中を健康にしてほしい(OMRON connect賞)
「OMRON connect(オムロンコネクト)」は、オムロンの健康医療機器やオムロンコネクトアプリ対応の健康機器で取得した体重や血圧、歩数などのバイタルデータを転送し、簡単に記録・管理できるサービス。無料でダウンロードできる。
「体重や血圧、歩数などのバイタルデータを計測し、記録することが、健康の増進や維持に役立つというサービスを作ってほしいと考えています。健康になるには自分の体のベースを知るということが大事です。ベストな体重、体脂肪率、血圧、消費カロリーなどを知ることによって、体調の不調や生活の乱れなどに気づいてもらいたいですね。『はかる。気づく。変わる。』といった好循環を創出できるようなアイデアを評価します」
と、OMRON connect賞の概要を語るのは、オムロン ヘルスケアの松田高明氏だ。
▲オムロン ヘルスケア株式会社 国内事業部 事業開発部 データソリューション課 課長 松田高明氏
想定するユーザー層は血圧や体重が気になり始める30代後半から50代男女、健康管理を効率的に行いたいが、ICTにあまり詳しくないシニア世代だという。
オムロンコネクトアプリは、デバイスで計測したバイタルデータをスマートフォンに送って記録・管理するアプリで、簡易にグラフ化もできるし、データも渡すことができる。アプリ対応の健康機器は、血圧計、体重体組成計、活動量計(歩数・消費カロリー・移動距離など)の3種類あるが、アプリ対応でなくても、市販されているオムロンの健康機器を使ったアイデアであれば評価可能とのこと。
高齢化社会の課題として、平均寿命はどんどん伸びているが、健康で生きられる健康寿命はまだ平均寿命ほどは長くない。「こうしたバイタルデータを活用することで、医療費や介護給付費の負担など、社会課題の解決にも役立ててもらえると嬉しい」と松田氏は言う。
「こうしたバイタルデータをビッグデータ、AIといった先端技術や、家電や位置データなどと組み合わせたりするIoT技術と連携させて、新しい価値を生み出してほしいですね。新しいデバイスであるLINEのClovaを使って健康づくりをサポートしたり、他社のサービスや製品とコラボレーションできるアイデアにも期待しています」(松田氏)
社会課題の解決に繋げるアイデアや、バイタルデータをマネタイズにつなげるアイデアがあるという人は挑戦してみよう。
日常生活を便利にしたり、ワクワクするような体験を(Xperia Ear Duo賞)
ソニーモバイルコミュニケーションズが提供するXperia Ear Duo賞は、2018年4月に発売された「Xperia Ear Duo」のようなヒアラブルデバイスでの利用を想定して、徒歩・電車・バスなど移動中のシーンにおいて、日常生活を便利にしたり、ユーザーがワクワクするような体験を行うサービスを対象に表彰される。
▲ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社 第3ビジネスユニット 事業推進1課 青山 龍氏
Xperia Ear Duoの特徴は、耳をふさがないソニー独自の音導管設計により、環境の音と機器からの音を同時に聞けるデュアルリスニングを実現しており、外音が自然に聞こえ、音漏れしづらく、自分の声もこもらないので会話もしやすいことだ。安定してはずれない下がけスタイルでケーブルレススタイルなので、耳が疲れづらいという利点もある。
また、スマート機能を搭載しているので、音声やヘッドジェスチャーでLINEのメッセージ送受信、音楽再生など、ハンズフリーで操作することができる。バッテリー内臓で連続音楽再生なら4時間、充電機能を搭載した専用ケースで3回分(12時間分)の充電が可能で、合わせて最大約16時間音楽を聴くことも可能だ。
「家に置いてエリア限定で活用するスマートスピーカーと違って、これは自分の体に付けて持ち運べるデバイスなので、スキルの活かし方の幅が広がってくると思います。耳元にClovaが付いているような感覚なので、オフィスに行ってからも家の中にいる家族と会話ができたり、ハンズフリーで調べたいことやパーソナルな情報を自分だけに届けることもできます。
今一番多く使われているのはLINEのメッセージや音楽再生ですが、ぜひ私たちの発想を超えた未来感のあるサービスを期待しています」と、ソニーモバイルコミュニケーションズの商品企画担当・青山氏とソフトウェア開発担当・セルジオ氏は、Xperia Ear Duo賞への期待を語っている。
特にLINEのClovaとの相性は抜群なので、日常生活や週末のアウトドアを楽しむ人や、情報や音楽にも感度高く常にアクセスしていたい人に向けたXperia Ear Duoの価値を高める新たなスキルが増えることを期待しているとのこと。ぜひ、Xperia Ear DuoとClova、スマートフォンを活用した未来的なサービスやClovaスキルを作ってみてほしい。
RIZAPを体験したくなる、より身近になるようなサービスに期待(RIZAP賞)
RIZAP(ライザップ)は美しく健康的なボディメイクをサポートするトレーニングプログラムが有名だが、ボディメイク以外にもゴルフ、英語、料理、キッズ向けなど様々な事業を展開している。
RIZAPのプログラムではトレーナーからマンツーマンで食事や運動の指導がおこなわれる。RIZAPは「結果にコミットする」というキャッチコピーでも謳っているように、結果で対価をいただいているので、「まずはサービスを体感してほしい」と訴えるのは、RIZAPの小野氏。
「RIZAPはわかりやすくいうとフルマラソンです。一人で走るのは辛くても、支えてくれる人がいればやりきれる。目標まで走りきったときの達成感や、いつまでも美しいプロポーションを保つことなどを楽しんでほしいと考えています」
▲RIZAP株式会社 新規事業ユニット 小野 博氏
今回のRIZAP賞では、RIZAPが提供するボディメイクを体験したくなるサービスや、トレーナーとのコミュニケーションやトレーニング・食事の管理などをより便利にするアイデアやサービスを表彰する。また、RIZAP自体やその考え方などが身近になるようなサービスにも期待しているという。
従って、想定するユーザーはRIZAPのプログラムに取り組む人や、RIZAPやトレーニング・ダイエットに興味関心がある人に加え、日々の健康や体調管理を意識した生活を送りたいという潜在層も含まれる。
例えば、RIZAPでは若い頃の体型を取り戻したい・昔より綺麗になりたいという女性や、50代・60代以上のシニア世代のカラダ作りや健康維持にも対応できるサービスも提供している。
RIZAPは160を超える提携医療機関やスポーツ科学・栄養学・美容などの専門家と連携し、トレーニング法、食事法を監修している。今後は先端テクノロジーを取り入れることでさらに手段を豊かにしていきたいと、RIZAPのスタジオ事業本部 アスリート事業ユニット ユニット長 比企雄二氏は語る。
「健康寿命が社会課題としてある中で、RIZAPはより多くの人々がこの先の人生を輝き、生き生きと過ごすためのサポートができるよう、成長を続けています。さらにこれまでの手段にテクノロジーを加えることで、楽しく便利でやる気が出る環境をつくっていきたい。RIZAPがより多くの人に身近に感じられる、ボディメイクを体験したくなるサービスのアイデアをお待ちしています」(比企氏)
例えば、ClovaとXperia Ear Duoを活用してトレーナーのアドバイスが自宅や遠隔地でも聞けたり、OMRON connectを活用して体重計のデータをRIZAPアプリに取り込めるようにしたりなど、協賛企業のサービスとの連携も考えられる。
「人は変われることを証明できるという理念の通り、人々の人生に良い形で影響を与えられるものが今回できたらうれしいですね」(小野氏)
市民の声を聞きたい、街のコトを知らせたい!(鎌倉市SDGs未来都市 賞)
国連サミットで採択された持続可能な開発のための国際目標である、「SDGs未来都市」および、「SDGsモデル事業」に採択された鎌倉市。今回の「鎌倉市SDGs未来都市 賞」では、SDGs未来都市かまくらの実現にふさわしい作品を表彰し、実証に向け協力するという。
鎌倉市は持続可能な都市の実現に向けて抱えている主な課題として「観光」「交通渋滞」「防災(津波対策など)」「様々な主体の共創によるまちづくり」「働くまち鎌倉の実現」の5つを挙げ、17の目標、169のターゲット達成を目指している。
「これらの課題を解決すべく、鎌倉市は市民の声を聞き、街のことを知らせるマーケティングをしっかりやっていきたい。自治体サービスはまだまだプロダクトアウトだと言われています。サイレントマジョリティ、声なき声をどう拾うかという課題は大きい。市民の満足度を上げつつ、年間2000万人の観光客もまちづくりに巻き込みたい」と、鎌倉市役所 共創計画部長 比留間彰氏は語る。
▲鎌倉市役所 共創計画部長 比留間彰氏
また、SDGsを実現させるために経済、環境、社会が互いに作用しあい、それぞれが向上していく体制という好循環をつくっていきたいという。
一般的な行政プロセスは、「市民意見聴取」→「政策検討」→「意見聴取」→「事業化」と進んでいくが、市民からの意見があまり寄せられず、また関心が低いというのが現実。しかし、いざ事業化する段階になると、聞いていなかった、もっとこうしてほしかったという不満の声が寄せられる。
こうした課題も解決すべく、鎌倉市では広報紙やホームページ、TwitterやフェイスブックなどのSNS、「てのりかまくら」という小さなチラシを職員が駅で配布するなど、様々なツールを活用し情報発信に取り組んでいるが、市民の参加意識がなかなか高まらないとのこと。このため、新たなチャレンジとして東京大学が主催する地域課題解決コンテスト「チャレンジ!オープンガバナンス」に参加したり、IT企業やベンチャーが鎌倉を活性化するために集まった「カマコン」とのイベント共催などにも取り組んでいる。
「日本とスウェーデンの共同研究による『鎌倉リビングラボ』の取り組みでは、活動地域で資料の全戸配布や、スウェーデン国王が視察に来られた際の広報なども行っているのですが、活動を知らない地域の方がまだまだ多い。リビングラボだけでなく、何年も前からお知らせし、検討してきた施策であっても、市が発信している様々な情報が、なかなか伝わらず、事業化の段階になってはじめて「説明が足りない」「反対」等の意見が出されることも多い状況です。
LINEのような広く普及して日頃から多くの市民の皆さんが使っているインターフェイスから入っていけるような有効な手段があれば、市民の皆さんの考えていることも伝わってくるし、行政の発信、特に市民の安全にかかわる防災情報なども効果的に配信できて、いいですね。市民と行政がインタラクティブにつながり、地域課題を共創で解決していくプラットフォームになる。そんなソリューションが挙がってくれることを期待しています」 と、鎌倉市役所 共創計画部 政策創造課の竹之内直美氏も、今回の期待を語る。
SDGs未来都市には横浜市や神奈川県も選定されているが、市(基礎自治体)と県(広域自治体)では住民とのかかわりかたが大きく異なる。
また、鎌倉市の人口は約17万人で、自治体と市民とのコミュニケーションをモデルとして示すには、ちょうどいい規模だ。鎌倉市は高齢化率が30%を超えており(全国平均は27%)、一部住宅団地では概ね二人に一人が高齢者となっている地域もみられることから、超高齢社会への対応といった面でも、先駆け的なモデルになりそうだ。
「自治体とのコミュニケーションを取りたいと思っている人は、潜在的には意外と多いのではないでしょうか。市民ニーズが多様化し、行政によるプロダクトアウトだけではマッチしなくなっています。生活者の声を活かし、新しいものやサービスをつくっていきましょう」(竹之内氏)
「LINE BOOT AWARDS 2018」では、LINEのエンジニアも参加する勉強会やハッカソンなどを随時開催していく。LINE社や協賛企業の話を直に聞くことで自身のアイデアが発見できたり、一緒にゴールを目指す仲間を見つけるきっかけができたりするかもしれないので、イベントスケジュールもチェックしてみよう。
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取材・文:馬場美由紀