「LINE BOOT AWARDS 2018」グランプリ賞金は1000万円!──LINEとClovaで世界のコミュニケーションを拡大するアプリ開発を目指す

インタビュー
「LINE BOOT AWARDS 2018」グランプリ賞金は1000万円!──LINEとClovaで世界のコミュニケーションを拡大するアプリ開発を目指す

LINEが今年8月から応募受付を開始している「LINE BOOT AWARDS 2018」。
コミュニケーションアプリ「LINE」、AIアシスタント「Clova」をベースにさまざまな技術要素やアイデアを実装したサービスの創出を期待するイベントで、昨年の「LINE BOT AWARDS」を引き継ぎながら、内容がよりアップデートされている。
企画サイドのLINEプラットフォームエバンジェリスト砂金信一郎氏と、プラットフォーム兼Clovaテクニカルエバンジェリスト立花翔氏にその狙いを聞いた。

“BOT”から“BOOT”へ。アワードは進化する

LINEが6月28日に実施を発表した「LINE BOOT AWARDS 2018」は、LINEのAIアシスタント「Clova」の開発環境(Clova Extensions Kit)を使ったClovaスキル、または LINE Messaging APIを使ったLINE Botによるサービス開発を競うコンペティション。申込みの受付は10月10日まで、Final Roundは11月10日に開催される。グランプリ賞金は1000万円と高額だ。他にも協賛テーマ賞、部門賞が設けられ各50万円の賞金などが用意されている。

昨年の「LINE BOT AWARDS」は、コミュニケーションアプリ「LINE」のMessaging APIを使ったbotの開発を促進する目的で行われ、815組が参加した。グランプリには目や耳の不自由な人などをLINE Beaconとchatbotを介してサポートする「&HAND」という作品が選ばれ、賞金1000万円を獲得した。

「今回LINE BOT AWARDS 2018とせずに、あえてLINE BOOT AWARDS 2018としたのは、この1年の間にLINEがエンジニア向けに公開する技術やプロダクトが増えたからなんです。つまり、昨年のLINE Messaging APIに加え、今年はClovaの開発環境が公開されています。二つのうちいずれか、あるいは両方を連携させた新しい技術やサービスを期待しています」

と、その背景を語ってくれたのは、昨年もアワードに関わったプラットフォームエバンジェリストの砂金信一郎氏だ。今回は“BOOT”としたことで、LINEとそれを取り巻くエンジニアの技術開発環境が進展していく様子を表現している。

LINE プラットフォームエバンジェリスト 砂金 信一郎氏

さらに、bootにはコンピュータのOSを起動する意味もあることから、「イベントを通して新しい発想や情熱が生まれること」をも含意したネーミングだという。

LINE BOOT AWARDSへの応募作品は、LINEの「CLOSING THE DISTANCE」(世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮める)という理念を体現するものであることが求められる。作品評価にあたっては、さらに3つの評価軸が設定されている。

一つは「Loved by Users」=ユーザーに継続的かつ日常的に愛されるサービスであること。二つ目が「LINE as a Platform」=既存サービスの拡張ではなく、LINEやClovaの特徴やユーザー接点を活かし、双方向かつ能動的な新たなコミュニケーションを生み出すサービスであること。そして、最後は「Quality」だ。LINEおよび他企業のさまざまなAPIやプラットフォームを組み合わせながら、単純な機能追加ではなく、サービスとまで呼べる完成度が必要になる。

ソニーモバイル、オムロン、RIZAP鎌倉市などが協賛テーマ賞を設定

サービスとしての完成度を求めた背景には、昨年のLINE BOT AWARDSの反省がある。

「優れたアイデアがたくさんありましたが、そのビジネス的な発展を我々はそれを十分に応援できなかった。ハッカソンなどの開発イベントはデモやプロトタイプまでで終わってしまうことが多いのですが、それを越えるためにパートナー企業との取り組みが重要です。

個人や小さなスタートアップの提案も、企業が継続して支援しないと社会的に拡大していきません。逆にLINEを使ったサービスを展開したいと思いながらも、それを開発するエンジニアにリーチできなかった企業もある。今回はそうしたミスマッチを取り除くために、『協賛テーマ賞』を設けました。企業が提出したテーマにふさわしい完成度の高い作品があれば、その後の共同開発・実装へとさらにステージが進むことを期待しています」(砂金氏)。

協賛テーマ賞を出す組織は、8月時点でソニーモバイルコミュニケーションズ、オムロン ヘルスケア、RIZAP、そして鎌倉市の3法人1自治体が確定している。例えばソニーモバイルが授与するのは「Xperia Ear Duo賞」。Xperia Ear Duoのようなヒアラブルデバイスでの利用を想定して、徒歩・電車・バスなど移動中のシーンにおいて、日常生活を便利にしたり、ユーザーがワクワクするような体験を行うことができるサービスの提案を求めている。鎌倉市の場合は、観光客や市民の不便を取り除くというような地域独自の課題をいかにLINEとClovaで解決するかがテーマになるはずだ。

昨年のLINE BOT AWARDSでも、乗合タクシーアプリを提案したインドネシアのスタートアップが作品ごとLINEのインドネシア法人に買収されたというケースがあった。LINE自身が、優秀作品に対して何らかのアプローチを試みることは十分ありうる。

技術・サービスに高い品質を求める一方で、LINE BOOT AWARDSには参加者の裾野を広げるという狙いもある。

「各企業のハッカソンイベントを見ていると、どこにでもエントリーして賞をかっさらっていく歴戦の勇士という人たちがいます。もちろんベテラン勢の挑戦も大歓迎ですが、一方で、こうしたイベントには初参加という人もウエルカムです。

スマートスピーカーを使いこなしたくて、実はAlexaでもGoogle Homeでもよかったけれど、Clovaならハンズオンで開発技術を丁寧に解説してくれそうだからという動機の応募でも構いません」と、砂金氏は幅広い層への応募を呼びかける。

プラットフォームとしてのAPI活用。VUIならではのユーザーインターフェイスを

「実際、LINE Messaging APIの利用にしても、Clovaスキルの開発にしても決して難しい技術ではありません」と言うのは、テクニカルエバンジェリストの立花翔氏だ。

「ただ、LINE Messaging APIを単なるchatbotだと理解してしまうと、サービスの広がりがなくなってしまう。しかし、LINE Messaging APIはプラットフォームであり、画像やHTMLコンテンツも送ることができます

特に最近はLINEユーザーの情報をWebから取得できるなどWebとの連携も強化しており、レイアウトについてもほぼ制限がありません。botとユーザーが1対1の環境だけでなく、グループ全体で利用することも可能です。その機能的な広がりをぜひサービスに取り込んでほしいと期待しています」と、サービス開発にあたってのヒントを示してくれた。

LINE テクニカルエバンジェリスト 立花 翔氏

一方、Clovaスキルの開発については、こう指摘する。

「Voice UIは新しいUIなので、これを従来のGUIと同じように使ってしまうと、決してユーザーには優しくないサービスになってしまいます。例えばユーザーに何らかの指示をする場合、長文のテキストをしゃべらせると、Clovaは何分も勝手にしゃべり続け、ユーザーが飽きてしまう。Webのパンくずリストのような目に見えるものがないので、ユーザーがサービスのどの位置にいるかがわからなくなることもある。このあたりのUIをどう工夫するかが腕の見せどころですね」

「実装技術もさることながら、Clovaスキルを開発する前に、なぜこのサービスではスマートスピーカーを使うのがいいのか考えることが重要なポイントです」というのは砂金氏。

お年寄りや障害者、あるいは両手が塞がっていてスマホを使えない時のために音声インターフェイスのデバイスを活用するというのはありがちな解だ。しかし、普通にスマホを使いこなしているユーザーに向けて、スマートスピーカーを使う必然性を説明するのは、意外と難しい。

「スマートスピーカーを活用した優れたサービスの形というのは、現在はまだ模索中です。サービスのあり方を検討し、その具体例を示すことで Clovaスキルの開発レベルは上がっていきます。LINE BOOT AWARDSはそのためのイベントでもあります。さらに、スキルとBotの組合せで初めて課題が解決するというような例が出てくると、主催者としては嬉しいですね」と、期待を語る。

“WOW”のあるサービスで世界のコミュニケーションの総量を拡大

昨年のLINE BOT AWARDSには、LINEが普及しているタイ、台湾、インドネシアなどアジア諸国など海外からのエントリーが全体の25%を占めた。今回も海外勢の動向には要注目だ。

「アジア諸国でのClovaのローカライズはまだとはいえ、例えばタイでは生活のインフラとしてのLINEの定着度は日本以上。商品の配送を24時間スマートフォンから依頼できるアシスタントアプリ“LINE MAN”が普及するなど、新たなLINEサービスを考えるヒントが生活の中にあふれています。

一方、台湾にはコミュニケーションアプリと各種のデバイスをBluetoothでつなげるなどのハードウェア連携の実績がある。アジアのエンジニアにとって、賞金1000万円は日本人以上に魅力があります。だから今回のアワードにも彼らは本気でかかってくるはずです」

もちろん、このことは国内で優秀だと評価された作品が、アジアで支持される可能性をも意味している。人々の生活課題に密着しながらも、グローバルサービスという視点を欠かさないことも、作品のコンセプトづくりでは重要な要素になるだろう。

LINE BOOT AWARDS 2018に関して、立花氏はあらためてこんな期待も寄せる。

「普段スマホを使っていない人も使えて、IoTやスマートホームともつながるような、そして我々が思いつかないような、こんなコミュニケーションのスタイルがあったというような驚きのあるサービスが提案されることを期待しています。LINE社内でよく使う言葉でいえば“WOW”があるサービス。それが結果的には、世の中のコミュニケーションの総量を増やすことにつながればいい」

一方、砂金氏は、こう語っている。

「LINE BOOT AWARDSが終わった後に、その参加企業のリストを見れば、Botやスキルを作るにあたって有益な開発者向けサービスがすべて揃っているというような状態になれば理想的です。現状は有用なAPIがたくさんあるのに、あまり知られていないから使われていない。

そういった知らなかったがゆえに、開発の工数が増えるということをなくしていきたい。LINEのAPIやプラットフォームと組み合わせる技術をお持ちの企業には、API提供パートナーとしてぜひアワードに参加してほしいですね」

LINEでは今後、LINEのエンジニアも参加するハンズオンの勉強会やハッカソン、あるいは参加者に応募作品の精度を高めてもらうための“もくもく会”を各所で随時開催する予定だ。独自に各地で勉強会を開催したいという個人・団体にも支援を惜しまないとしている。

*「LINE BOOT AWARDS 2018」関連イベントのスケジュールはこちらから

賞金1000万円のグランプリを目指して、LINEとエンジニアたちの熱い秋が始まろうとしている。

7月24日にLINEオフィスで開催された「LINE BOOT AWARDS 2018」キックオフパーティの様子


取材・文:広重隆樹 撮影:馬場美由紀

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