仙台を盛り上げる!官民連携で生み出される ビジネス事例とテクノロジーコミュニティ

イベント
仙台市をフィールドに先端技術を活用した新事業の創出や、先端IT人材の育成・交流によりイノベーションを生み出すプロジェクト「SENDAI X-TECH Innovation Project」。今回のイベントでは、仙台市と官民連携で生まれるビジネスイノベーション事例や、なぜテクノロジーコミュニティが必要なのかをテーマに、仙台にゆかりのある登壇者たちが熱く語り合った。
仙台を盛り上げる!官民連携で生み出される ビジネス事例とテクノロジーコミュニティ

仙台市がハブとなり、都市体験のアップデートを目指す

オープニングで登壇したのは、本イベントの主催者である、仙台市産業振興課の白岩靖史氏。白岩氏はまず、東北6県の都市の中で仙台だけが人口が増えているものの、東京圏への人口流出も多く、差し引きでは転出超過になっている人口減少問題を挙げた。


▲仙台市 経済局 産業振興課長 白岩 靖史氏
1998年10月仙台市役所入庁。企画、施政方針、PFI/PPP、市長秘書を経て、2010年経済局産業プロジェクト推進課配属。2011年より、仙台フィンランド健康福祉センタープロジェクト担当。2016年より現職。

白岩氏はこの問題に対しては、それほどネガティブには捉えておらず、それくらい人の行き来が盛んであると考えている。とはいえ、仙台市は東北地方の中で経済・政治の面ではキャピタルとしての立場に立ち、それにふさわしい役割をしなければならないと意識しているという。

では、そのために仙台市としては何をやっているのか。仙台市は、「仙台市経済成長戦略2023」という2019年度から2023年度まで対象期間5年間の戦略を立ち上げ、地元企業や産業の競争力強化や経済成長と社会的課題解決の両立、そして東北の持続的発展への貢献を目指す。


白岩氏は、さらにその先には日本全体の発展にも貢献したいと強調し、7つのプロジェクトを紹介した。その中でも、Society5.0を実現する「X-TECHイノベーション都市・仙台」では、仙台市がハブになってイノベーションを生み出し、オープンなコラボレーションをやっていこうというもの。

これまでGoディープラーニングGCPReact Nativeのハンズオンイベントを仙台市で開催してきた。地元仙台のエンジニアや秋田からも学生が参加し、一人もかけることなく、熱意をもって取り組んだ。

仙台市と楽天イーグルスがコラボレーションしたアイデアソンでは140人近くの応募があり、約40名・10チームが参加し、様々なエンターテックのアイデアを生み出した。発表して終わりではなく、採択されたプロジェクトは今後スタジアムなどで、実証実験を進めて実際のサービスにしていく予定だ。


その他にも、地元学生を対象に市内企業のエンジニアがメンターとなって、半年間技術を教える人材育成プロジェクト「GLOBAL Lab SENDAI」や、新規事業の支援を行うアクセラレーションプログラム「TOHOKU GROWTH Accelerator」を紹介。今後もどんどん新しいことに始めていきたいと語った。

【パネルディスカッション①】官民連携で生まれるビジネスイノベーション事例

続いて、「官民連携で生まれるビジネスイノベーション事例」をテーマにパネルディスカッションが実施された。


モデレータを務めたのは、東京と仙台を拠点にビジネスを展開するスティーブアスタリスク 代表取締役社長兼CEOの太田伸志氏。東北学院大学の非常勤講師も務めている。


▲株式会社スティーブアスタリスク 代表取締役社長兼CEO/クリエイティブディレクター 東北学院大学 非常勤講師 太田 伸志氏
1977年宮城県丸森町生まれ。クリエイティブディレクターとして、サントリー、楽天、SONY、資生堂、Honda、サッポロビールなど、大手企業のブランディング企画を多数手がける。武蔵野美術大学、専修大学、東北学院大学の講師も歴任。作家、イラストレーター、利酒師としても活動中。雑誌『Pen』で「日本酒男子のルール」連載中。文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品、グッドデザイン賞、ACC賞をはじめ、受賞経験多数。

パネリストは、楽天野球団 経営企画室 室長の江副翠氏、Showcase Gig 代表取締役 CEO 新田剛史氏、仙台市 経済局 産業振興課長 白岩靖史氏の3名が登壇した。

江副氏は、東京出身で楽天野球団に転職するまでは、仙台にゆかりはなかったのだそう。楽天イーグルスの本拠地スタジアムである楽天生命パーク宮城では、メリーゴーランドや芝生があってピクニックもできるような、野球観戦のみならず家族や友達と一日楽しめるエンターテインメントな観戦体験の提供を目指しているという。


▲株式会社楽天野球団 経営企画室 室長 江副 翠氏
2002年に新卒で外資系大手証券会社に入社。その後、スポーツを通して地域を盛り上げることを実現するため、2009年に楽天野球団へ入社。現在は経営企画部門で活躍中。

新田氏は仙台出身で、JR東日本グループと提携し、ネット接続されていない店舗でもセルフ注文決済できる「O:der(オーダー)」をはじめとする、テクノロジーで飲食・小売サービスの現場での課題を解決し、イノベーションを生み出すビジネスを展開している。


▲株式会社Showcase Gig 代表取締役 CEO 新田 剛史氏
日本初のモバイルファッションECサイトを経て、東京ガールズコレクション立ち上げ期のプロデューサーを務める。その後、株式会社ミクシィ入社。新規責任者として、数々のヒットサービスを生み出す。2012年、株式会社Showcase Gig設立。“O:der”はモバイルオーダーシステムにおける特許を取得。


▲仙台市 経済局 産業振興課長 白岩 靖史氏
1998年10月仙台市役所入庁。企画、施政方針、PFI/PPP、市長秘書を経て、2010年経済局産業プロジェクト推進課配属。2011年より、仙台フィンランド健康福祉センタープロジェクト担当。2016年より現職。


太田:まずは白岩さんに、「SENDAI X-TECH Innovation Project」の目的についてお聞きしたいと思います。


白岩:新しい技術と様々な産業を掛け合わせて、今までなかったものを生み出すというプロジェクトですね。それを通じて、新しいビジネスをどんどん生み出していきたいと考えています。プロ野球の楽天野球団さんとスポーツエンターテインメントと最新技術を組み合わせて、新たなサービスを生み出したりしていますが、まだ掛け合わせてないネタはたくさんあるので、いろいろ仕掛けていきたい。こうした取り組みで地域だけではなく、他県からもいろんな人が集まってきたくなるんじゃないかと思ってやっています。


太田:X-TECHのX(クロス)というのは掛け合わせというニュアンスなんですね。


白岩:「これとこれを掛け合わせたら面白いことが起きるんじゃないか」と興味をもって周りを見渡すと、ネタってたくさんころがっているんですよね。震災前はその仕掛けや一緒に動く仕組み・機会をつくることを、あまりやれてなかったんです。震災後は復旧・復興で大変でしたが、最近はこうした新たなものを生み出す取り組みに、時間が使えるようになってきました。


太田:江副さんと新田さんは、こうした取り組みの中で、仙台とどんなコラボレーションを起こしていきたいと考えていますか?


江副:情報もテクノロジーもすごい早さで進化している中で、我々も自分たちだけで何かやろうとすることに限界があって、最新のことに追いつけていない。もっとエンターテインメントの世界で我々も進化していかなければならないのに、自分たちの人材リソースでは限界があると感じていました。

そんなときに仙台市さんから「オープンイノベーションでエンターテックアイデアソンを一緒にやりましょう」と呼びかけていただき、スタジアムそのもののサービスはもちろん、スタジアムと街中をつなげたサービスなど、もう一歩新しい世界にいけるかもしれない、すごくいいなと思いました。楽天イーグルス単体だけにとどまらず、街中を一緒にアップデートしていきたいと考えています。

スポーツチームとして、自分たちの存在意義にもつながるんですが、新しいテクノロジーを使って次世代のサービスを生み出すことで、街と楽天イーグルスが一緒に盛り上がるきっかけになればいいなと思い、コラボレーションを決めました。



太田:一般的な企業と考え方がちょっと違いますね。僕が東京に出てきた頃はまだ球団がなくて、プロ野球が仙台にあるという実感が全然なかったんです。でも仙台に帰るたびに居酒屋に行くとイーグルスのポスターが貼ってあったり、スポーツ中継していたり、僕からすると仙台がそれだけで全然違う街に思えるというか。

企業のビジネスとしてどう発展するかを第一目的とするより、仙台市に住んでいる方や、仙台市で街自体とどう付き合っていくか、そして街と一体化しながらスポーツが根づく街を育てていくことが、球団の成功につながるという考え方もあるんでしょうか。


江副:そうですね。もちろんスポーツをビジネスとしてとらえることは必要なのですが、ただそのビジネスとしてとらえたときに、街にプロスポーツチームがあり、そのことでとコラボして街自体の魅力が上がるといった流れを作ることも存在意義に繋がりますし、また逆に楽天イーグルスと一緒に何かやってみたいと思ってもらえることも我々にとってメリットがにつながるメリットがあると考えています。


新田:僕らが提供しているサービスは、飲食店などの人手不足に対して、人手を介さずにデジタルオペレーションで回すことができる課題解決のソリューション。しかもキャッシュレスにもつながるので、東北の人口減という課題に対しても貢献したいし、地元である仙台だと土地勘もあってイメージしやすい。

東京では、大手町にある上島珈琲店の完全キャッシュレス店舗で、僕らのサービスを提供しているんですが、地方展開するときはまず仙台でやりたいと思っていました。この20年で仙台は東京にある店舗も増えて都会になった。楽天さんみたいな球団も来られて、土壌も整ったし、機運が高まっています。仙台市の方と会って、そういうことが伝わったのも大きかったですね。


太田:仙台市としてもいろんな企業と組んでやっていきたいという気持ちがあると思いますが、とはいえ、行政って固い考えばかりで、ぶっちゃけ大変なことも多いのでは?


白岩:その質問、結構グサっと来るんですけど(笑)。こういう連携・共創するときにはそれに合った形でやらないといけないと思います。例えばですけど、自動運転車はいろんなところで実証実験をやってるし、ニュースもどんどん出ますけど、なかなかすぐに実用化に至らない。何が理由かというと、道路には道路法や規制があるから。

僕らの強みは、やりたいことを実現するための法律や規制のどこがネックになってできないのか、規制する側の気持ちもわかるし、どうやってそこを乗り越えていくか考えることができる。「世の中がこう変わっていくよ」というベクトルを示して、一緒に解決していきませんかと働きかける。役所側も現場が上がってくる情報を欲しがっているのですが、法律がからむと時間がかかることもあるし、省令や規則でなんとかなる場合もあります。

それらを実現するために、知恵を絞って動いていくというのが僕らの仕事。変えようと思わないと、今の運用だけで仕事が終わっちゃう。最近は、それじゃつまらないよねという雰囲気になってきました。なぜかというと困っていることがたくさんあるからです。それをポジティブに変えるためには、今の仕組みを変えなくてはいけない。僕らがこういうことをやらないとだめじゃないかという雰囲気に、市役所全体が変わってきているのが事実です。


新田:僕も仙台市さんと組ませていただいた経験でいうと、「こういう原因があるから解決していきましょう」と相談したら、大変かもしれないけど、やってみようという気になってくれる。そういうクリアのやり方があると思いました。


太田:とはいえ、仙台にまだ足りないことって何でしょう?


新田:情報発信量ですね。例えば、福岡はこんなことやったとか、あんなことやったとか、ニュースがすごく多いんですよね。逆に仙台は調べてみるとベンチャーも含めて参入しまくっているのに、発信量が少ないからあまり知られていない。

仙台は震災以降、いろんな人や企業が入って大分変ってきて、東京からも近いし、いい点もいろいろあるんですけど、まだまだ荒らされてない。一方でまだ受け皿としてこれからという面は、いい意味でも足りない面でもあるんだろうなと。助成金などもあるし、ビジネスとしてもチャンスがある。仙台は今ならゼロからいろんなことができると思います。



江副:東北の中では仙台は圧倒的に都心で、住みやすい街。恐らく、これまでは比較的イノベーションを積極的にしなくても、それなりに困らない都市だったのではないでしょうか。それが最近では、仙台市が今後を見据えて動きが変わり始めているのを私たちも肌身に感じています。外を見たり、変わってきている。これからチャンスがある、これまであまり何も変わってないからこそ、これから変えられる場所なのかなという気がします。


太田:仙台はそれだけポテンシャルがあるというか、伸ばそうと思えば伸ばすところはたくさんありますよね。最後にこれから将来的にやってみたいということをお聞かせください。


江副:楽天イーグルスは今年2019年から完全キャッシュレス化して、現金が利用できえないスタジアムになるんですね。とてもハードルの高い取り組みですが、これについても、ただキャッシュレス決済できれば終わりとは思っていません。その先にスマホだけで便利で楽しい観戦体験を新しいテクノロジーを使って作り上げていくか。お客様にどうワクワクわくわくしてもらうか、次世代の観戦体験を作っていけるかがテーマになってくると考えています。

楽天自体もいろんなテクノロジーを持っていますが、それだけでは足りないので、仙台市の皆さまや外部の方のお力を借りながら、いろんなサービスやとかホスピタリティをとかアップデートしていきたいと思います。仙台や宮城、東北の皆さまが、他の都市や他の国にあるスタジアムを訪れた時に、やっぱり仙台にあるあのスタジアムが一番便利で楽しいよね、そいういうものを目指していきたいです。


新田:僕らはスタートアップなので、まずは事業の足元をちゃんと固めた上で、攻めていきたいですね。仙台に東北支社のオフィスも立ち上げましたので、順調に大きくしていきたい。大それたことを言うと、地元還元というものをやれるならやってみたい。故郷なので、受け入れてくれる素地は一番あると思うし、僕らのサービスを使って仙台をテクノロジー都市として発信できるような取り組みを一緒にできるとしたらやっていきたいです。



白岩:これまで、社会課題を解決したい起業家や、短期間で成長を目指す起業家、その両方を東北中から集めて、ステージに上げるスタートアップの創業支援、今回の成長分野の産業、そして海外都市との連携、この3つのサイクルを常に回して仕事をやってきました。では来年はどうかというと、もっとアクセルをふかしていきたいと考えています。今年度もいろんな取り組みを発信するので、ぜひ見ていただけるとうれしいです。


太田:仙台市がいろんなことを仕掛けている街、いろんなことをやろうとしている街というのは伝わったと思うんですけど、そもそも仙台という街の雰囲気って結構独特なものがあります。日本酒も美味しいし、一度旅行がてら仙台に行ってみて、リサーチした上で、ビジネスのチャンスを見つけてもらえると、実感としても湧きやすいんじゃないかなと思います。今後も仙台市が発信する情報にご注目ください。

【パネルディスカッション②】なぜテクノロジーコミュニティが必要なのか?

続いてのパネルディスカッションは、仙台にあるテクノロジーコミュニティ事情や、そもそもエンジニアにコミュニティとはどのようや位置づけと役割があるのかなどについて、語り合われた。モデレータは、マイクロソフトやGoogleで活躍した後に独立し、現在はテクノロジーで企業や社会の変革を支援するTably株式会社を設立した及川卓也さん。


▲Tably株式会社 代表取締役 Technology Enabler 及川 卓也氏
早稲田大学理工学部を卒業後、日本DECに就職。営業サポート、ソフトウエア開発、研究開発に従事し、1997年からはマイクロソフトでWindows製品の開発に携わる。2006年以降は、GoogleにてWeb検索のプロダクトマネジメントやChromeのエンジニアリングマネジメントなどを行う。その後、スタートアップを経て、独立。2019年1月、テクノロジーにより企業や社会の変革を支援するTably株式会社を設立。一般社団法人情報支援レスキュー隊 代表理事を務める。


及川:まずは、自己紹介から。今回はコミュニティがテーマなので、私とコミュニティの関わりを少し補足すると、20年くらい前に、Windowsのエンタープライズ版がまだWindowsNTと呼ばれていた時代に、日本WindowsNTユーザーグループ(JWNTUG)の技術顧問をやっていました。

当時はまだインターネットもそれほど出ていなかったので、NIFTY-Serveのフォーラムをメインに活動していました。そこからWebに移行したときもその時のメンバーが立ち上げのメンバーになりました。その後、Googleに入ってからは、HTML5コミュニティの立ち上げメンバーになって、今でもそのコミュニティの運営に少し関わっています。


半谷:僕の出身は福島で、学生の時に東京に出てきました。2010年に楽天に入社し、今は楽天の仙台支社で、楽天の店舗から送信されるメールやチャット機能などのコミュニケーションシステムを担当しています。僕の部署は仙台・東京・大阪・福岡に拠点があって、場所に関係なく働いています。テクノロジー領域はPHP、Java、Go、Spring、Node.js、React、MySQL、Kafka、Hadoop、ELKなど。最近はNode.js、Reactをよく使っています。

コミュニティ活動はスクラムマスター、スクラムプロダクトオーナーの資格を持っているので、すくすくスクラム仙台というコミュニティを立ち上げ、運営をやっています。あとはDevLOVEという開発(Develop)コミュニティ仙台のAdminや、Agile Japanの仙台サテライトの実行委員長、レッツゴーデベロッパーという開発者コミュニティの実行委員をやっています。


▲楽天株式会社 半谷 充生氏
ECカンパニー ECマーケットプレイスビジネスサポート開発部 ECビジネスエンパワーメント課 ビジネスコミュニケーションプラットフォームグループ マネージャ 福島県出身。家電量販店の販売員・プログラマ・QA等を経て2010年楽天にJoin。入社以来楽天市場のデータをビジネスに生かすためのいろんなツールを作ったりする仕事をしている。Certified Scrum Professional、Cloudera Certified Hadoop Developer。


sinmetal:コミュニティ活動はGoogle Cloud Platformユーザーグループ、通称GCPUGでAdminをしています。出身は岡山県で、岡山にいた頃からGoogleのコミュニティのスタッフをやっていました。その時にGoogle App Engine(GAE)という開発用のクラウドサービスが好きになり、趣味でよく使っていました。

ただ、岡山にはGAEを使う仕事がなかったので、5年前に東京に来て、それからは東京で仕事とコミュニティ活動をしています。仕事はメルペイのソリューションチームで開発や、社内のGoogle Cloud Platformコンサルティングのようなことをしています。


▲株式会社メルペイ ソリューションチーム sinmetalさん(※写真中央)
GCPUG Admin、Google Developers Expert。2011年にGoogle App Engineに出会ってから、ずっとGoogle App Engineを使い続けている。特に好きなのはGoogle App Engine, BigQuery, Cloud Datastore, Cloud Firestore, Google Kubernetes Engine, Google Cloud Build。最近のマイブームは Application Performance Management。


上田:コミュニティ活動としては、プログラミング言語Goのコミュニティを運営しています。初心者向けのGoビギナーズ、Goをプロダクト開発に使っている企業が集まるコミュニティgolang.tokyo、GoのカンファレンスGo Conferenceの主催、GCPUG Tokyoもスタッフとして参加しています。

メルぺイ エキスパートチームでは、50%以上時間をこういった技術コミュニティへの貢献や発展に充てています。社外のコミュニティに自社の技術を提供したり、逆に社内に新しい技術を取り込むといった取り組みをしています。


▲株式会社メルペイ エキスパートチーム 上田 拓也(tenntenn)さん
メルカリ/メルペイ所属。バックエンドエンジニアとして日々Goを書いている。 Go Conference主催者。golang.tokyo、Goビギナーズ、GCPUG Tokyo運営。 大学時代にGoに出会い、それ以来のめり込む。 社内外で自ら勉強会を開催し、Goの普及に取り組んでいる。 マスコットのGopherの絵を描くのも好き。人類をGopherにしたいと考えている。

なぜ、エンジニアはコミュニティを必要とするのか?


及川:では、「なぜ、エンジニアはコミュニティを必要とするのか?」というテーマで話していきたいと思います。まずは、皆さんがコミュニティと関わることになったきっかけについて教えてください。


上田:私は大学が愛知県豊橋で、結構長くいたんですけど、エンジニアリングについて話す友だちがあまりいなかったんですね。それで、技術コミュニティで最新技術を学んだり、自分の技術知見を発表したりして、反響を楽しんだりしながら関わっていました。


sinmetal:私は社会人になったときに、勤務先にコミュニティを運営している人がいて、その人に誘われて行ったのがきっかけです。


半谷:私は前職でアジャイルやスクラムを導入したくて、インターネットで調べていたら、すくすくスクラムという勉強会があることを知ったんです。最初は東京の勉強会に参加してみて、仙台に行ってからは一緒にやる人を探して、自分で立ち上げました。


及川:多くのエンジニアは技術コミュニティと接点を持つと思いますが、私の観測範囲ではそこからコミュニティに深く関わる人と、あまり参加しない人に分かれるじゃないかと。その分かれ目ってどんな違いがあるんでしょうか。もしくは、ご自身がコミュニティに深入りすることになったきっかけがあれば、ぜひお聞かせください。


sinmetal:私は岡山のWeb系のコミュニティに関わったのが最初で、はじめは普通に参加者だったんですね。東京のコミュニティは人数がすごく多いので、すぐ仲良くなるのは難しいのですが、地方は人数が少ないので、だいたい仲良くなります。

その他だとGoogleはコミュニティ支援が大きくて、アドボケイトというエバンジェリストのような役割の人が、毎週火曜日にハングアウトで質問に何でも答えてくれてたんです。そこでかなり育てられました。

ほかにも岡山のコミュニティのオーガナイザーと二人で、毎週カフェでライブラリのソースコードを読む会を30回くらい続けていました。私自身がそうやって引っ張り上げてあげもらって育ってきたこともあり、別の人に返してあげたくて、Adminをやっています。

もう一つは、アウトプットをしている人のところにインプットが集まっていくので、こうやってしゃべっていると、いろんな事例や相談も勝手に集まってきます。自分の知見にもなるので、コミュニティをやっている大きな理由の一つですね。



及川:その千本ノックにずっと付き合ってくれた方は、なぜ、教えてくれたんでしょうね。


sinmetal:どういうモチベーションだったのか、最初の源流は何だったのかを語るのは難しいですね。その時は教えるというよりは、一人で活動するのは大変だから、二人で一緒に学んだり、教えたりできると分担できて楽しい、くらいのニュアンスだったのかもしれません。


及川:人に教える場合、自分自身が勉強して理解していないと教えられないから、理解が深まることはたしかにありますね。


上田:私はGoのコミュニティを運営しているんですけど、最初はおそらくsinmetalさんのような方と、インターネット上で音声チャットしながら、Goの情報をやりとりすることから始まったんじゃないかと思っています。

Goが出たばかりのときは、周りにGoをやっている人なんて一人もいない状況で、自分だけで勉強するって結構大変で。ネット上の情報も少ないですし、そういった状況で情報交換する相手がいたことは大きかったと思います。


半谷:僕は変な話ですけど、たぶん東京にずっといたら、イチ参加者でしかなかったかなと思います。仙台で何か勉強会に参加して、「アジャイルとかのって無いですかねー」って話をしたら「今はないけど、やれば?興味ある人はいっぱいいるし、やるなら応援するよ」って感じでして。それまであんまり自分が運営側に回るっていう意識は無かったんですけど、やり始めるハードルが低いので、やり始めた感じですね。


及川:東京都内では、IT系のコミュニティや勉強会が平日休日問わずすごい数開催されていますが、技術者にとってコミュニティが大事な理由はどこにあると思いますか?


上田:さっきsinmetalさんが言ってたんですけど、一つの会社や一人のエンジニアがチャレンジできることって、限られていると思うんですね。ただ知識としては、知っておいた方がこれからのためにいいことはたくさんあるのに、チャレンジする時間やリソースは限られている。だから、他の会社の知見とかチャレンジした結果を共有する場があった方が、一人や一社でチャレンジするより、コミュニティは効率よく知識を得られる場として、かなり有効なんじゃないでしょうか。


及川:多様性みたいなものですね。自分がいる会社がいくら大きかったとしても、その会社が使っている技術や社員としか触れ合えないよりは、いろんなところとの接点を持ち、そこから吸収した方が生存能力も高くなる。


半谷:単純に仲間ができるというのも、すごくいいことだなって思います。私はアジャイルやスクラムといった文脈が多いんですけど、悩みって結構みんな似てるんですね。それを共有し合って、勉強会の後のビアバッシュで一緒に盛り上がりながらお酒を飲むみたいなことも、楽しい。必要なのは楽しいから、ですね。


及川:AWSのイベントで、開発で苦労した点は全部共有しますと言い切った人がいました。めちゃくちゃ苦労したことって、普通はそれが競合との差別化になったって考えるんですけど、同じ苦労を他の人がする必要はないからと。たぶん同じような話だと思うんですよね。


sinmetal:技術はとても進化が早くて、最悪のパターンとしては1年経ったらもう古くなってしまって使えないくらいの勢いで動いていきます。そして、日本じゃないところでその進化は起こっているパターンが多い。日本のエンジニアは英語が読める人が少ないので、そうした知見をガンガン共有していかないと、海外のサービスにテクノロジー的に勝つのは難しい。

あとほとんどの人が単純なテクノロジーでビジネスを回しているわけじゃなく、テクノロジーを使ったプロダクトでビジネスを回しているので、その技術の知見を共有しても会社のビジネスを損なうことにはならないと思っています。コミュニティがないと誰にどこで話しかければいいかわからないので、共有の場としても役立ちますね。


及川:社員が社外のコミュニティに参加したり、技術知見の勉強や共有をしたりすることで、情報漏洩を気にされたりする、もっというと社員のコミュニティ活動が会社にどんな利益があるのかと考えたりする会社もあるかもしれませんが、実際には技術やプロダクトのクオリティを全体的に底上げしていくために、非常に大事だったりします。

ところで、メルカリはコミュニティ活動に対してかなり理解があるとのことですが、なぜそんなに理解があって、そこまで力を入れているんでしょうか。


上田:私たちのチームは技術をアウトプットするところに技術は集まるというスローガンを掲げています。アウトプットすると、フィードバックも集まるし、エンジニアも集まってきて、またさらに面白いことが起きるというような好循環もある。それで推奨しているところもあります。

あとは無料で公開しているOSSのソフトウエアを使わせてもらってるので、社会貢献的な意味も含めて、私たちが持っている情報も無料で提供した方が業界自体に貢献できるし、盛り上がる。ひいては会社の得にもなるという考え方でやっています。


及川:アウトプットするところにインプットが集まるという話や、技術は非常に進化が早いという話は、実はすべての産業クラスタで起きています。例えば、自動車産業は今100年に一度の変化期と言われているんですね。Googleが自動運転で自動車業界に参入したり、電気自動車が普及したら部品点数が1/3になるなど、自動車メーカーやサプライヤーでも激震が走っています。

でもコンピュータ業界やIT業界では、この程度のことは10年に一度のペースで起きているんですね。進化が早いというのは、技術に限った話ではなく、非技術のところでも起こりうる。社内だけではなく、社外にそういった情報を集める場を積極的に考えていってもいいんじゃないかなと思います。

仙台のどこに面白さを感じているか?


及川:続いては、皆さんからみて仙台の面白さをどう感じたか。仙台のつながりのところからお話いただきたいと思います。


上田:メルカリは仙台にオフィスがあるので、最初に仙台に行ったのは出張でした。その後、仙台でGoのハンズオンを行う話を頂いて、去年の12月に仙台に行きました。そのハンズオンで仙台の方たちとSendai.goというGoのコミュニティを立ち上げたんですけど、すでに4~5回くらい開催されています。運営は仙台のメンバーにお任せしていますが、それを見ていると仙台の勢いを感じています。

私の出身の宮崎と比べると仙台は大都会であり、新しい情報も入ってくる。東京にも行きやすい距離で、登壇者を東京から呼ぶことも可能な距離感です。それでも自分で立ち上げて運営しないと、自分の欲しい情報が集まらないからと、コミュニティが立ち上がっているのは仙台の面白いところだなと。


sinmetal:私が仙台に初めて行ったのは、2~3年前にGCPUG仙台が立ち上がって、その時スピーカーとして呼ばれたときです。

もともと仙台はITが活発なんだなと思ってましたが、行政というレイヤーでも支援してくれているので、地方の中ではITが発展しやすい都市なのではないでしょうか。東京はコミュニティという点ではレッドオーシャンなので、仲間内などの少人数の方がやりやすいということが、福岡や仙台などの利点だと思います。


半谷:仙台は、優秀なエンジニアが多いと思います。東京からも適度な距離感なので情報格差も少ないですし、良い感じに、、かつ実直にやってくれる人が多い。わざわざ海外に行くくらいなら、ぜひ仙台で開発会社を探した方がいいと思います。



及川:あとは、若者がいる大学や専門学校があるかというのも大事ですね。仙台は東北の中でも大都市なので、東北のいろんな地方から勉強をしにくる若者がたくさんいます。こうした条件面は全てそろっていることもあって、熱量が高かったり、自ら何かをやろうとする人も多いのかなと感じました。

ここまで結構まじめな話できてたんですが、仙台でこれが美味しかったという感想や、おすすめとかありますか?


上田:まぐろが美味しかったですね。


sinmetal:僕は毎回牛タン食べてます (笑)。


半谷:私の推しは、冬はせり鍋ですね。震災の後に流行り始めたんですけど、さっとゆでて、3回くらいくぐらせて食べるんです。しゃきしゃきの触感を楽しむというか。せり鍋は冬来ていただいたときはお薦めです。


及川:先ほど白岩さんの話にもありましたが、エンターテイメントとテクノロジー、スポーツとテクノロジーなどを掛け合わせるなど、いろんな取り組みをされているところも東北・仙台の魅力ですよね。

では、次に仙台市、テクノロジーコミュニティがさらにもっと盛り上がるために何が必要なのか話していきたいと思います。今仙台では、どんなコミュニティがあるのでしょうか?



半谷:最近はプログラミング言語にまつわるコミュニティが盛んになっています。PythonやGo、PHPなどの勉強会が月1回くらい。TECH PLAYで検索すると毎週何かしらの技術勉強会が開催されていますね。さらにデザインや仕事のやり方などの勉強会もありますね。3月はソニックガーデンの倉貫さんに来ていただいて、「管理ゼロで成果はあがる」のアクティブ・ブック・ダイアローグの読書会を開催しました。


及川:ちょっと脱線しますが、アクティブ・ブック・ダイアローグのような新しい手法も結構仙台から出ていたり、普及が始まっていることは多いんですよね。アイデアソンも実は仙台で行ったのが最初のころだったのではないかと思います。2011年の震災復興の時に、テクノロジーを通じて復興支援をしたくて、アイデア創発の専門家と被災地のアイデアをまとめるイベントを開催したんです。それをアイデアソンって名付けたのが最初なんじゃないかなと思います。


半谷:2年前に仙台IT文化祭という結構大きなお祭りをやったんです。それもアイデアソンから生まれたものなんですよ。


及川:あとは60歳以上の方が自身でプログラミングするシニアプログラミングというコミュニティも塩釜発祥ですね。神奈川に住んでいる若宮さんという80代の女性の方がプログラミングを習いたいというので、Skypeでプログラミングを教えたら、iOSのアプリケーションを作り上げた。

それがアップルの目にとまり、アップルのイベントに呼ばれて彼女が登壇したり、国連で発表したり、一躍時の人になったんです。その若宮さんに続けとばかりに、たくさんのシニアの人がプログラマの教育をやっているんですけど、それも仙台発であると言えますね。



sinmetal:地方コミュニティにスピーカーとして行くことが結構あるんですが、毎月行くのはやはり大変なので、オンラインもやりとりを強化していきたいんです。でも、会場の設備がないとなかなか難しいんですね。1対1ならお互いのパソコンがあればできるんですけど、大きな会場になると、だいたいオーガナイザーの私物のPCにつないでくれるんですけど、スピーカー側はみんなが見えないんです。手元しか映してないので会場の人の表情とか見えない。設備がもっと強化されれば、スピーカーも日本どこからでもやってもらえるし、海外でもやれる。そういうオンラインのやり取りが進化したらどこからでもイノベーションが起きるんじゃないかって思います。


及川:それはIoTデバイスでハックして作れそうですね。会場の問題は結構あって、小中大という会場がそこそこの数がないと、イベントってやりにくいんです。たしか、あるキャパ以上の大きな会場が仙台はそんなになかったと記憶してます。東北大まで行かなくてはいけないとか、そういうところは改善できるといいですね。


sinmetal:インターネット環境や電源などの設備もあると助かります。


上田:先日、福岡のFukuoka.goと大阪のUmeda.goでつないで、イベントをやってみたんですね。Google Hangouts Meetで各会場をつないでやってみたんですけど、東京で会場の様子も見れるし、スピーカーの様子もちゃんと見れました。福岡の登壇している様子も見れるし、会場の様子も見れる。特に場所を意識することなく、発表を聞けるような環境が、実現できました。設備ってやっぱり大事だなと思います。


及川:ちょうど仙台市とTECH PLAYに対するいいリクエストができましたね。皆さんのように面白楽しくテクノロジーを学んでる人たちを見せることが、若者を惹きつける一つの材料にもなると思いますので、こういうイベントを今後も東京でも仙台でもやっていきたいと思います。ありがとうございました。

TECH PLAYでは、今後も「SENDAI X-TECH Innovation Project」の取り組みをお伝えしていくので、ぜひ仙台市の発信する情報をチェックしてみてください。

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