ガンダムの世界観でプログラミングを学ぶ─バンダイが取り組むSTEM教材「ジオニックテクニクス」とは

インタビュー
ガンダムの世界観でプログラミングを学ぶ─バンダイが取り組むSTEM教材「ジオニックテクニクス」とは

ロボティクスとプログラミングをガンダムの世界観の中で楽しみながら学習することができる、バンダイのSTEM教材ジオニックテクニクス(ZEONIC TECHNICS)が、いよいよこの10月から「受講申込み受付」を始める。 「ザク(II)」をモデルに、サーボモーターを17基搭載した本格的なホビーロボットを、自在にプログラミングして動かしながら、機械工学やソフトウェア・プログラミングの基礎が学べる。子どもたちだけでなく、ガンダムの世界に夢中になる大人をも魅了するに違いない。

モビルスーツ開発を支えたエンジニア・メカニックをリスペクト

スペースコロニーへの植民が始まってから半世紀以上経った宇宙世紀0077年。地球連邦政府に対して独立戦争を挑むジオン公国では、有人操縦式のヒト型ロボット兵器モビルスーツの量産型「ザク(II)」の開発に成功した。ザクの機体構造はその後たびたび改良が加えられるものの、頭部のモノアイ(単眼)カメラに、左肩のスパイク、右肩のシールドが基本的な特徴だ。

駆動方式は、油圧よりもスピードが早く、電動モーターよりも重量が小さい流体パルスシステムを採用。各部にレーザーや赤外線センサーによる探知装置を内蔵し、正確な射撃を得意としていた。このモビルスーツの登場によって宇宙戦争の戦略・戦術は根本から変わるのだった。

アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズはこうして始まる。地球連邦軍の「ガンダム」に乗り込むアムロ・レイと、専用ザクを操るシャア・アズナブルの対決はシリーズ最大のハイライトだが、開発を担うエンジニアやそれを支えるメカニックの存在を忘れてはいけない。

例えば、人類史上初めてモビルスーツを開発したのはジオン公国の重機メーカー、ジオニック社。多くのエンジニアやメカニック(整備員)が、モビルスーツ開発を縁の下で支えていたのだ。

バンダイが、2019年10月から購入予約受付を始める「ジオニックテクニクス(ZEONIC TECHNICS)」は、このアニメの世界観を再現し、ジオニック社のモビルスーツ開発を体感しながら、ロボティクスの基礎や、プログラミングの概念を学べる、画期的なSTEM(科学・技術・工学・数学)講習キットだ。

Alt text ▲ジオニックテクニクス(ZEONIC TECHNICS)

「これまでのガンダムの物語は、エースパイロットたちの活躍がメインでした。しかし、『ジオニックテクニクス』では、徹底的にエンジニアやメカニックの視点に立っています。全高18mのモビルスーツを動かすのがいかに大変か。 どれだけの技術と苦難に満ちていたのかを、ぜひ想像してみてください。ロボットの組み立てや、ポーズやモーションのプログラミングを通して、ガンダムの世界にダイブして遊びながら、ロボットを開発するというのはどういうことなのかを体感し、学んでほしいのです」 と語るのは、バンダイ新規事業室のデピュティゼネラルマネージャー・原田真史氏だ。

Alt text ▲株式会社バンダイ 新規事業室 デピュティゼネラルマネージャー 原田真史氏

ジオニックテクニクスがユーザーに提供するのは、単にホビー用ロボットの購入体験ではない。ユーザーは組み立てやプログラミングを学ぶSTEM講座の受講生という位置付けとなる。従って、購入予約は「受講申込み予約」、購入者が実際に手にとれる出荷開始日は、「受講開始日」である。バンダイはこうした新たな体験価値を「STEM PLAYER」という言葉で呼んでいる。

パーツ単位でステップアップしながらロボットの構造を学ぶ

ザク(II)を1/60スケールで再現した全高約30cm、重量約1.1kgのロボット本体は、ホビーロボットで定評のある近藤科学が製作。頭部に1個、腕部に6個、脚部に10個、全体で17個のサーボモーターが内蔵されている。

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胴体部にはバッテリユニットの他、BLE通信ユニット、ジャイロセンサー、対物センサー、スピーカーを内蔵。頭部のモノアイは可動・点灯し、もちろん腕も脚も動き、二足歩行する。同社の「KHRシリーズ」などに携わった、bloomakeLabの吉村浩一氏がモデルデザインを担当した。サーボやセンサーなど部品点数が多いので、全体を組み立てるだけでも数日はかかるだろう。

「組み立てはドライバ1本あれば大丈夫ですが、まずは頭部を組み立てて、モノアイを動かしてみる、次には機体上部を組み立て、対物センサーを使用した動作制御が可能かどうかを試してみるなど、パーツ単位でステップアップしながらロボットの構造を学んでいくことをお薦めします」と、原田氏は言う。

別売りのオプションも充実しており、ザクを保持・運搬する専用のハンガーも用意される。ジオニックのメカニックの小さなフィギュアまであるのが楽しい。まさにユーザーはこのフィギュアに自分を重ね、ハンガーの上で次第に組み上がっているザクを下から眺めることができるのだ。

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ロボットの構造や動作原理を学ぶ教本も充実している。なかでも付属する教本の内容が斬新だ。例えばセンサーの項目では、そもそもセンサーとは何かの解説から始まり、現在のリアルな世界で達成されている技術と、ガンダムの世界の技術との差異も紹介される。

「宇宙世紀といえども、エンジニアは工学や物理学の初歩から勉強しているはずです。教本では基本を理解することの大切さを重視しました」(原田氏)

宇宙世紀には実現しているとされる架空の理論「流体パルシステム」や「ミノフスキー粒子」にも科学的な裏付けはある。ガンダムの世界観を通して現代科学を考察することができるはず。このあたりについて、教本ではどんな解説がされているかも楽しみだ。

「SmartBridge」基板を、スマホアプリでコントロール

「組み立てる、学ぶ、動かす」の3つの要素がジオニックテクニクスには詰め込まれている。本体には近藤科学のロボット・コントロールボード「RCB-4mini」をベースに新たに設計された基板「SmartBridge」が搭載されているが、それを「動かす」ためにはプログラミングが必須になる。

まずは、スマートフォンやタブレットに専用アプリをインストールする。GUIでロボットの動きをプログラミングしたり、リモートコントローラーとして使えるアプリだ。アプリでは各サーボの位置を設定するポーズメイク、ポーズを組み合わせるモーションメイクを行う。それができれば、各種のトリガーとアクションをブロックのように並べて、ロボットを自律的に制御できるようになる。

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これらのプログラムをロードすると、スピーカーからは機械の駆動音と共にアナウンスが流れる。

「全機能起動準備に入ります、全サーボシステム初期化中、コックピット内部正常、慣性航法装置作動開始!……」

単なるナレーションではなく、実際の起動時の初期化作業を説明するアナウンスだ。ここまでやってくれると、往年のガンダムファンならずとも、その臨場感に心がしびれてくるのではないだろうか。

こうして組み立てと基本動作が終了すると、ジオニック社から「受講証明書」が発行され、初級講座は修了ということになる。

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上級へステップアップして、ロボットの複雑さを知る

受講生は、さらに上級段階へステップアップすることもできる。「SmartBridge」は近藤科学が提供する無料のPCソフト「HeartToHeart4(HTH4)」と、別売のDual USBアダプターを使用することで、より高度なプログラミングを行うことができる。

例えば、センサーの値を読み込み、その値を元にセンサーの角度を変えることができる。モーションを分岐したり、繰り返し動作を数字で指定したり、他のモーションを呼び出してつなげたりすることも可能だ。ジャイロセンサーの値をモニターしながら、機体の姿勢が崩れた時に足首やひざのサーボの角度を少しずらして姿勢を保つなどの制御も行える。

ただ、高度な制御技術とはいえ、HTH4は基本的には画面上のパネルをマウス操作するだけでほとんどの作業が完了する。コードの書けないプログラミング初心者でも扱うことができる一方で、プログラミングの基本概念を理解することができるのだ。

バンダイでは、ザクモデルが好評であれば、「ザクタンク」など別のジオニック社製品をベースにした次の教材を追加する構想がある。

「サーボモーターを増設して可動軸を増やしたりする自由度の高いオプションパーツが近藤科学から提供されています。これらを利用して機体をカスタマイズするコンテストや、より複雑なプログラミング学習の機会も提供できればと考えています」(原田氏)

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さて、肝心のジオニックテクニクスの価格だが、2019年9月27日に発表される。ただ、原田氏は「サーボモーターを17個搭載した本格的なホビーロボットとしては、エントリーしやすい価格になる」と仄めかしている。それを聞くと「10万円前後」という線が浮かんでくる。

9月27日には「バンダイ公式チャンネル」でジオニックテクニクスの特別番組も開始される。ジオニックテクニクスに関する質問や最新情報などが配信される予定だ。ジオニックテクニクスは原則12歳以上・中学生以上を対象としたSTEM学習コースだが、もちろん、2020年度から必修化されるプログラミングの授業に触れる小学生と親子で楽しく学んでもらうのも大歓迎だ。

実際の購入決定権はその親たちにあるが、ガンダムファンはもとより、子どもたちをSTEMの初期教育に触れさせて、将来はエンジニアにと考える親にとっても、これは得がたいキットになるはず。むしろ大人がハマって、ザクを子供と奪い合うという光景も思い浮かぶ。

「ソフトウェアで制御できるとはいえ、ハードウェアを思い通りに動かすのはけっして容易なことではありません。物理世界に存在するロボットである限り、コメ粒一粒でも障害物があれば倒れてしまうというリスクがあります。しかし環境変数が多いほど、ものづくりは面白いし楽しいはず。子どもたちには、ぜひその複雑さを楽しんでもらい、技術の限界に挑んでほしい。その中から将来、リアル世界に高性能なモビルスーツを生み出すようなエンジニアが生まれてくることに期待しています」 と、原田氏は語っている。


ジオニック社公式MS講習コース「ZEONIC TECHNICS」
https://p-bandai.jp/item/item-1000136116/

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