【イベントレポート】テクノロジースタートアップのためのピッチイベント「7 minutes Pitch vol.3 -AI編-」
2019年9月19日、ピッチイベント・7 minutes Pitchシリーズの第3回目が開催されました。
今回のテーマは「AI」。スタートアップ5社が登壇し、資金調達を目指して7分間ピッチに挑戦していただきました!
※「7 minutes Pitch」とは…資金調達を目指すテクノロジースタートアップが毎回登壇し、ビジネスプランを7分に凝縮したピッチを行うシリーズ。ピッチイベント後は交流会も合わせて開催し、スタートアップとのマッチングの場として活用いただけます。
1.株式会社アイエクセス(代表取締役/山崎 邦利氏)
AIエンジンの開発及び、プラットフォームの新規開発を行うアイエクセス。自然言語処理エンジン、つまり人間が自然に使う言語をAIで処理し、英語、中国語等の言語を問わずに可視化する技術をお持ちです。
言語の分野としては一番難しいとされる「医療」「医学」に取り組まれているアイエクセス。例えば、英語で書かれた専門性の高い医学論文を日本人が読解するのは非常に大変ですが、これらを機械に読み込ませ、取り込んだワードを一つの画面にマッピングし時系列に解析することで、情報のグループ化を可能にしています。
<コメンテーターからの質問>
Q:他社が持つ自然言語処理技術との違いはどういうところですか?
山崎氏:世間に出回っているパッケージをいくつか組み合わせてプログラムにしている会社が多く見られますが、弊社はフルスクラッチでプログラムを組んでいます。単純によく出てくるキーワードを抽出するだけでなく、キーワードのペアリング、つまり一緒によく出てくるキーワードとして抽出することもできます。それを作文にすることで、AIから文章のアウトプットができるようトライしています。
Q:御社の技術で解決したい課題はなんでしょうか?
山崎氏:弊社のプロダクトは汎用性が高いため、具体的に何に使うかは議論中です。例えば、論文を読み込ませ、重要な単語をピックアップすることができます。また、キーワードを時系列に読み込むことで、トレンド分析や過去から現在におけるキーワードの推移などを抽出することができます。人間だと手作業で行うのは大変なので、AIが必要とされます。
株式会社アイエクセス |
2.株式会社IP-RoBo(代表取締役社長/岩原 将文氏)
AIを使って類似商標のチェックをするシステム「TM-RoBo」を開発するIP-RoBo。
現在、専門家は申請された商標の「外観(見た目)」「観念(イメージ)」「称呼(読み)」の3要素について類似商標が存在するか、検索サービスを利用しつつも目視で判断しており、多くの手間と時間を要しています。また、商標登録をしたい企業にとっても様々なコストがかかっているのが現状です。
これらの課題を解決するために開発された「TM-RoBo」は、最終判断権者である特許庁・裁判所の判決等を網羅的に集めて機械学習することで、専門家と同等に商標のオリジナル性を判断することが可能です。商標にまつわる一連の作業の効率アップに繋がります。
<コメンテーターからの質問>
Q:どうせ作るなら、特許庁のプロジェクトとして開発できるとインパクトがあるように感じました。
岩原氏:特許庁も実証実験を行っていて、シンポジウムを共同でやることもあります。それらの実験は特許庁の中での処理効率を高めることに重点がおかれていますので、一般ユーザーとなる企業や弁理士にとって機能の実験はもう少し先のことになるかもしれません。この点は今後の課題にしたいと思います。
Q:特許審査結果について、審査を通るかどうかは審査官次第ですが、そこについてはどのように担保するのでしょうか?
岩原氏:弁理士も通常、審査の結果までは保証していません。あくまで煩雑な調査をより簡単、正確、迅速という効率化のメリットをユーザーに提供しています。既存の検索データベースでも、特許庁でさえその審査結果を担保することはできません。機械学習で結果が担保できないということとは別問題として、審査結果についての担保はそもそも難しいかと思います。
株式会社IP-RoBo |
3.株式会社アジラ(取締役/三村 完氏)
視覚野の代替システムに関する技術開発、およびサービスライセンスアルゴリズムの開発を行うアジラ。AIを社会で広く使ってもらえるようサービスとして提供することを追求されています。
サービスは、大きく分けて2種類。一つ目は、姿勢推定技術「AsillaPose」。ディープラーニングを用いてより複雑な人物・動体の行動予測を可能にしています。医療・介護現場での転倒検知、製造現場での危険検知など幅広いシーンでの活用が期待されます。
二つ目は、手書き文字認識サービス「Jijilla(ジジラ)」。AIを搭載した文字認識エンジンが手書き文字を高精度でデジタルデータ化します。
<コメンテーターからの質問>
Q:人の目を代替するプロダクトで解決できる課題はなんでしょうか?
三村氏:行動認識については、基礎技術的な要素が強いです。これまでの事例だと、病院での転倒事故を減らす取り組み、変わったものだと保険の営業の研修にて「手を頻繁に動かすと好印象」というようなスコアリングを行うプロダクトの提供もしています。
株式会社アジラ |
4.株式会社efit(代表取締役CEO/宮原 勝利氏)
個人投資家がゲームのように楽しく、ヘッジファンドのように本格的な分与ができる投資プラットフォーム「QUOREA(クオレア)」を開発するefit。日本の政府が“貯蓄から投資”へというスローガンを掲げてから約17年、金融教育のない日本において個人投資が進んでいない現状を、投資の障壁を下げることで打開していこうとされています。そのためには、営業員から投資を教わるような身近さ、偏った金融商品提案にならない中立性、そして繰り返し遊びたくなるようなゲーム性が必要だと、代表の宮原氏は説明しました。
<コメンテーターからの質問>
Q:タンス預金をお持ちの人より、スマホでゲームをやっている人をリアルな投資の場に引っ張り込むという方針の方が面白いと思うのですが、いかがですか?
宮原氏:プロジェクトの導入として、まずはマスを狙ってゲーミフィケーションを売りにデータを集め、高齢者の方にリアルチャンネルでアプローチしていくことを計画しています。仰った辺りは長期ビジョンとしては検討しています。
Q:いまいちサービスにおけるゲーム性がわからなかったのですが、どの辺りにあるのですか?
宮原氏:未着手の部分もあるのですが、株式市場自体が投機性が高く面白いと思っています。そこにアルゴリズムを挟むことで、なるべく合理的な投資を可能にし、株式投資の面白さを、ゲーミフィケーションすることによって気軽さを演出し、投資へのハードルを下げていきます。
株式会社efit |
5.HoloAsh.Inc.(Co-Founder & CEO/岸 慶紀氏)
ADHD(注意欠陥性多動障害)患者や潜在的精神疾患のためのAIフレンドを開発しているHoloAsh。自身も患者である代表の岸氏が孤独を抱えるADHD患者を救いたいという思いで事業を行なわれています。
主なマーケットであるアメリカでは、約2000万人の成人のADHD患者がおり、高額な診療費、診療予約の取り辛さなどの課題があります。それらを解決する手段として、24時間いつでも話を聞いてくれるホログラムのAIフレンドを提供しています。
<コメンテーターからの質問>
Q:AIフレンドはホログラフィックが最適なのでしょうか?
岸氏:スマホ上でAIフレンドと対話しようとすると、他のアプリからの通知が多く集中できないという問題が発生します。また、ADHD患者にとってはソーシャルキュー※を用意することが重要で、AIフレンドに表情やジェスチャーがあることによって対話の理解促進が進みます。そこが抜けてしまうと会話の成立は難しいため採用しています。
ホログラフィックはそれぞれの患者に最適なAIフレンドを表示でき、かつ表情をつけられるのが利点です。こちらについては、研究機関と連携して製作を進めています。
※注意・注視を向ける先のこと
Q:ADHDの方とAIフレンドの会話はどういったタイミングで終了するのでしょうか?
岸氏:一つは、ユーザーが会話を辞める時。もう一つはAIが文脈を失う時です。コンテクストを保つ技術は発展途上であり、会話を繋ぐための問いかけ-例えば「Tell me more about it?」「I understand」などの相槌や質問を行うことで補っていきます。
HoloAsh.Inc. |
ピッチ後は交流会を行いました!
ピッチ終了後、懇親会を開催。登壇者、コメンテーター、参加者の皆様が入り混じり、和やかな雰囲気の中で行われました。また、参加者はスタートアップやベンチャーキャピタルをはじめ金融関係者、大企業新規事業開発担当者やスタートアップ支援者等多岐にわたり、参加者同士で活発に情報交換され、新たなネットワーク構築の場となりました。
今後も「7 minutes Pitch」シリーズは順次開催予定。スタートアップのピッチ、シード・アーリー投資に興味のある方はお気軽にご参加ください!
K-NICでは、引き続き起業や経営に関する役立つ知識をイベントにて、みなさまにお伝えしていきます。創業に関するサポートも実施しておりますので、ぜひ足をお運びください。
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