オープンソースの自動運転OS「Autoware」で世界をリードする ティアフォーが「TECH PLAYER OF THE YEAR賞」を受賞

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オープンソースの自動運転OS「Autoware」で世界をリードする ティアフォーが「TECH PLAYER OF THE YEAR賞」を受賞
圧倒的な技術力で自動運転業界をリードする、大学発スタートアップのティアフォー。世界初のオープンソースの自動運転OS「Autoware」を中心に、様々な自動運転技術やプラットフォーム技術を開発している。自動運転業界をグローバルレベルでリードするディープテック企業として、その技術力とビジネスモデルの先見性から「TECH PLAYER OF THE YEAR 賞」を受賞した。

要素技術ではなく、自動運転のコア技術を開発したかった

ティアフォーが開発をリードするAutowareは、同社創業者兼CTOの加藤真平氏が名古屋大学の准教授時代に長崎大学や産業技術総合研究所などと共同開発したオープンソースの自動運転OSで、その導入実績は国内外数百社以上にのぼる。

また、同社は自動運転技術を用いた旅客サービスや物流サービスの展開にも力を入れており、2019年3月には完全自動運転EV「Milee(マイリー )」のパイロットサービスをローンチした。また今年3月には、自動搬送ソリューション事業を行う合弁会社「eve autonomy」の設立をヤマハ発動機と発表している。

「ティアフォーはテクノロジーに特化したスタートアップ。自動運転というテクノロジーによって既存の価値を壊し、新しい価値を創っていきたい。それが本当のディープテックを目指す私の最大のモチベーションです。ティアフォーの技術力への評価が今回の受賞に繋がったということで、率直に嬉しく思っています」と、加藤氏は語る。

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▲株式会社ティアフォー 加藤真平氏
1982年神奈川県生まれ。ティアフォー創業者兼CTO。慶應義塾大学で博士課程修了後、渡米。現地大学での研究員、名古屋大学准教授を経て2016年4月に東京大学准教授に着任。自動運転OS「Autoware」の生みの親であり、現在はThe Autoware Foundationの代表理事も務める。


慶應義塾大学で博士課程修了後、渡米。自動運転発祥の地とも言われるカーネギーメロン大学での研究員を経て、名古屋大学 大学院情報科学研究科の准教授時代に世界初のオープンソースの自動運転OS「Autoware」を開発した。その技術をビジネスとして展開するため、2015年12月にティアフォーを創業。現在は東京大学 大学院情報理工学系研究科の准教授も務める。

Autowareは「市街地の公道での自動運転」を目的に開発されたソフトウェアで、市街地でも自車位置や周辺環境を認識でき、交通ルールに従った操舵制御が可能な機能が搭載されている。LiDAR等で取得した車両周辺の3次元地図情報は、無線通信を介してクラウド上のサーバーに蓄積できるようにもなっている。

世界中の技術者がAutowareを使って自動運転システムを開発するようになれば、世界各国の地図情報を自動的に集めることができる。国境を越えた共同作業によって新しい自動運転の世界が拓けるのだ。

「要素技術ではなく、自動運転システム全体の中核となる技術の開発がしたかった。そしてその技術をオープンソースにすることで、世界を巻き込んで自動運転の研究を一気に加速させたいと考えました」と、加藤氏はAutoware開発に情熱を注ぎ込んだ理由を語る。ティアフォーの挑戦は、自動運転社会の未来を世界レベルで切り拓くものと言っても過言ではない。

2017年12月、ティアフォーは一般公道における遠隔監視型自動運転システムによる走行を国内で初めて実施し、自動運転レベル4相当の運転席無人の実証実験に成功している。2018年2月にはKDDI・ソニーなどから出資を受け、KDDIとは次世代移動通信システム「5G」を活用した自動運転の実証実験を進めている。さらに同年11月には、名古屋大学次世代モビリティ研究センター・日本交通・JapanTaxi(現:Mobility Technologies)と共同で、ティアフォーの開発する「AIパイロット」(自動運転に必要となる様々な技術を集約したシステムユニット)を都内を実際に運行するタクシー車両に設置し、3次元データを収集する実験にも着手している。

今秋には、Mobiity Technologiesとの自動運転タクシーサービスやKDDIの5Gの試験波を用いた大規模な実証実験を都内の一般公道で実施予定だ。

このように、Autowareは単なる概念モデルではなく、実機への搭載も進んでいる。例えば、ゴルフカートをベースにした4人乗りの完全自動運転EV「Milee」にはハンドルやアクセルなどのペダルがない。乗客は、車載アプリを利用してMileeの発車・停車指示などを簡単に行うことができる。他にも、物流ロボットの「Logiee(ロージー)」やラストマイルデリバリーのための低速完全自動運転EV「Postee(ポスティー)」も開発している。2019年末には、自社独自で自動運転システムを開発中のトヨタも、東京オリンピック・パラリンピック仕様の自動運転バス「e-Palette(イーパレット)」のOSにAutowareを採用すると発表し、世間を驚かせた。

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▲完全自動運転EV「Milee(マイリー)」

自動運転業界のLinuxを目指して

Autowareの最大の特徴は、やはりオープンソースという点にある。加藤氏がAutowareの開発当初からモデルとしていたのが、Linuxだ。オープンソースOSのLinuxは世界中のエンジニアによって改良され、完成度を高めることで、無償のOSとして瞬く間に世界中に普及した。

「オープンソース化することで、誰でも開発に携わることができる――それはつまり、世界中の技術者によってAutowareの透明性や信頼性が担保されるということです。データの改ざんなどは必然的に生まれにくくなります。

オープンソースのもう一つのメリットは、カスタマイズとメンテナンスがしやすいという点です。ティアフォーが手掛けるすべての自動運転車両のベースは共通のAutowareですが、それぞれのお客様が自社の事業に合わせて自由にカスタマイズできるため、他の自動運転ソフトウェアとは比べものにならないほど拡張性が高く、応用範囲もはるかに広くなります。

また機能拡張やバグ修正もすべてオープン化されているため、メンテナンスにも透明性を保てます。カスタマイズからメンテナンスまで一気通貫したこのサービスこそがティアフォーのコアビジネスの1つです」

無論、自動運転ソフトウェアについては、グローバルで激しい競争が進んでいる。Googleはもちろんのこと、欧米の完成車メーカー、大手部品メーカー、さらにIntelやNVIDIAといった大手半導体メーカーもこぞって手がけるようになった。

「ただ、私のバックグラウンドはコンピュータサイエンスなので、一つの企業で完結して、そのノウハウを独占するような技術ではなく、基盤を押さえたうえで、オープン化することを最初から目標としていました。こうした私のバックグラウンドが他社のソフトウェアとの差別化につながっていると思います」

2018年12月には、Autowareの標準化を推進する国際業界団体「The Autoware Foundation(AWF)」をApex.AI、Linaroと設立した。代表理事も務める加藤氏は、AWFを「OSSの世界連合軍」と呼ぶ。

ティアフォーのビジネスとは一旦切り離し、世界のエンジニア連合軍で米中のビックプレイヤーと渡り合うという戦略。「何十社もの企業と合意形成を図りながら進めていくのはたしかに大変ですが、これが米中の大企業と肩を並べるための唯一の方法だと考えています」と語る。

Autowareの開発者コミュニティは現在2,000人弱。そのうちアクティブに開発に関わっているのは1割程で、そこにティアフォーのエンジニアを加えると、常時300人程のエンジニアが世界中から開発に携わっていることになる。

自動運転のプラス面だけでなく、マイナス面も考慮した技術開発

テクノロジーによる「創造と破壊」は、ティアフォーのミッションでもある。加藤氏は「創造」という側面について、自動運転システムの以下3つの要素を挙げている。

 ①新しい移動手段
 ②新しい時間と空間
 ③人間の代替手段

2つ目の「新しい時間と空間」については、スマートフォンを例に挙げてみる。以前は、人々は電車での移動中に新聞や雑誌を読んでいたが、スマートフォンの登場によりゲームをするという新しい時間の使い方が生まれ、生活スタイルを大きく変化させた。「自動運転もそれと似ていて、自分で運転する必要がなくなるため、移動という概念を超えたプライベートな時間と空間を生み出すことができる」というのだ。

3つ目の「人間の代替手段」については、世界中の人々がコロナ禍で苦しむ今こそ必要だったかもしれない。人と人が接触を避けなければならない時代だからこそ、無人のデリバリー車両が意味を持つ。

「残念ながら、2020年には開発が間に合いませんでしたが、このような状況だからこそ、今後また起こりうる大規模な自然災害や感染症の蔓延に備えて、研究開発を急速に進めることが大切だと思っています」

もちろん、創造には破壊が伴う。例えば、AIがこれまでの人間の職業を奪うというのも、破壊の側面ではある。この点に関して加藤氏の発言は示唆に富んでいる。

「自動運転技術が100%人間に取って代わることは難しいです。例えば、ドライバーが不要となる代わりに、自動運転車をサポートセンターから見守る遠隔監視オペレーターが必要になります。人間とテクノロジーが協調して新しいサービスを展開することで、逆に新しい職業も生まれるのです。

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とはいえ、今都心に自動運転タクシーを導入してしまうと、ドライバーをしている方々の職業を奪ってしまう可能性が高いです。何も考えず闇雲に事業を生むのではなく、テクノロジーが本当に必要な人のために価値を「創造」していきたいと思っています。社会的にマイナスとなる影響は最小限に抑え、いかにプラスを最大化できるかを考えるのが私たちの仕事です」

その意味で、加藤氏が無人自動運転タクシーを、人口減少や高齢化に悩む過疎地や中山間地域でまず導入したいと考えるのは頷ける。公共交通機関やタクシーに代わって、病院に通う高齢者を乗せる無人運転タクシーほど、いま日本の地域社会が実現を待ち望みしている技術はないのだ。

開発者に求められるオープンソースマインド

ソフトウェアをオープンソース化することによって、開発スピードを加速させ、エコシステムを構築するという手法。これを、自動運転の世界にも持ち込んだことは、審査員に高く評価されたポイントだ。

TECH PLAYER AWARD 審査員の及川卓也氏(Tably株式会社 代表取締役)は「ティアフォーの技術は自動運転のOSSとして世界をリードしており、アカデミアや企業の研究を加速させる貢献をしている。日本が苦手としていたコミュニティ形成の成果も著しい」と審査評の中で述べている。


ただ、エコシステムの拡大にあたって、どの企業をパートナーとして迎え入れるかについては慎重な判断が必要だ。

「まずパートナーとして組みたいのは、ティアフォーと同じことができる人たちです。自動運転システムには地域性があるので、海外で展開する際にパートナーも同じことができないと、その都度私たちが世界各国に飛んでいく必要が出てきてしまい、非常に効率が悪いです。

同時に、私たちにはできないことをできる人たちも必要です。例えば、センサー開発や車両設計をできる人たちです。いずれにせよ、敵に回ってしまったら競合他社となり得るパートナーをいかにエコシステムに招き入れ、開発を統括していくかが、Autowareの開発をリードするティアフォーの課題であり挑戦です」

グローバルな開発競争が激化する中、リーディングカンパニーとしてこのような立ち位置にある日本企業は他の産業分野を見てもそう多くはない。そういった意味で、ティアフォーがこれからどのような人材、とりわけエンジニアを求めているかには興味津々だ。

「自動運転システムの開発には、様々な技術、様々なタイプのエンジニアが必要です。AIやWebの技術はもちろん、安全性の検証に携わる人も必要不可欠です。これはティアフォーに限った話ではなく、自動運転技術を開発している企業はどこも同じだと思います。

あえてティアフォーのエンジニアに必要な要素を1つ挙げるとしたら、それはオープンソースのマインドです。ソフトウェアを一般に公開する以上、内部の人間だけでなく、外部の人たちにもわかる美しいコード、明晰なドキュメントを書かなければなりません。

たしかに手間はかかるのですが、「世界中の人にAutowareを使ってほしい。そのためなら手間も厭わない」という想いを持ったエンジニアと一緒に仕事をしたいと思っています。全員がティアフォーに来てくれる必要はなく、AWFの活動に世界中から参加して、開発に貢献してもらえたら嬉しいです」と、加藤氏は語った。

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