【インタビュー】トレジャーデータの大規模分散処理を担当するエンジニアからみた魅力的な職場環境とは?
シリコンバレーで日本人が創業したトレジャーデータは、大量のデータを即時に収集・保管・連携できるクラウドのデータマネージメントサービスを提供している企業だ。扱うデータの柔軟性の高さ、外部システムと容易に連携できる拡張性、リーズナブルなコストなどが評価され、日本を代表する各分野の大企業をはじめ世界中のクライアントに採用されている。
2011年の創業以来、テクニカルなプロダクトとともに急激なスピードで成長してきた同社を、エンジニアはどのように支えてきたのだろうか。本稿では、トレジャーデータのソフトウェアエンジニアである田籠聡さんにお話を伺った。
田籠聡(たごもり・さとし)/トレジャーデータ株式会社 ソフトウェアエンジニア。1979年生まれ。島根県出身。東京大学卒。エヌ・ティ・ティ・データ先端技術株式会社、株式会社ライブドアなどでの勤務を経て、2015年にトレジャーデータへ入社。趣味は自転車。
ブログで転職?
―― まず、田籠さんのキャリアをご紹介ください。
田籠 大学在学時はいちおうコンピュータ関係の学科にいながら、あとは趣味でゲームを作ったりしていました。卒業後はJavaで業務システムを書く仕事を少しやって、その後は大手SIerの子会社でSEになりました。
これには理由がふたつあって、ひとつは大企業では働くことを経験したかったからです。もうひとつは、当時プログラミングだけで自分が食べていくことは無理だと思っていたからです(笑)。
ですから、プロジェクトマネジメントからプリセールス、それこそ見積りを書いたり、請求書を作ったりまでやったりしていました。
―― 純粋なソフトウェアエンジニアリングだけやっていたわけではないのですね。
田籠 そうですね。でも、結局知り合いと縁があってライブドアに入り、エンジニアとしてインフラ回りの領域を担当することになりました。
NHN Japan、LINEと会社名が変わるまで働いたのですが、この間に勉強会やカンファレンスに参加するようになったり、開発したものをオープンソースにしたりということがありまして、この経験は今にもつながっています。
その後は、2015年の3月にトレジャーデータへ入りました。
―― なぜ転職を考えたのでしょうか?
田籠 LINEを退職しようと決めたときには、次にどこで働くのかは全く考えていませんでした。ただ、ライブドア、LINEと自社でデータセンターを持って、自分たちの決まったやり方で、コンシューマー向けに大きなサービスを展開する企業の中で働いてきたので、全く違う環境へ行ってみたいとは漠然と考えていました。
そこで、「退職します」と自分のブログにエントリーしたんです。
―― 「ブログ」ですか?
田籠 周りにいたエンジニアは、創業者との出会いがあったり、ヘッドハンティングされたりという人もいるみたいですね。そのころ私にはそういったことは無かったので「ブログに書けば何か面白いことが起こるかもしれない」と思ったんです(笑)。
―― そもそもなぜブログをお持ちだったのでしょうか?
田籠 エンジニアが社外の同業者と知り合う機会は、単に業務をこなしているだけでは基本的にありません。ですから、ブログを書いたり、勉強会で登壇したりとアウトプットすることは、そのこと自体よりも「自分がどのような人間なのかを他人に知ってもらえる」というメリットがあると思っています。
私もブログで自分のバックグラウンドやスキルを発信していたからこそ、それが前提となりコミュニケーションがスムーズにできたと実感があります。退職エントリーを書いた後は、実際に様々な企業の方と話せる機会がありましたね。
―― トレジャーデータを選択されたのはなぜですか?
田籠 まず、トレジャーデータは前職と異なり完全にB2Bのビジネスモデルでおもしろそうだと思ったのが理由のひとつです。システマチックなサービスを作ってビジネスをする会社なので、B2Cのサービスを作るよりも、エンジニアリングはよりコンピューティングに寄っている印象を受けました。
―― 他にも理由があれば教えてください。
田籠 入社前にトレジャーデータのソフトウェアエンジニアの方から「これから解決しなければいけない技術的な問題が山積みになっている」と聞きました。それは技術的に難しい問題だったのですが、同時にエンジニアにとってはおもしろいと感じましたね。
また、その問題に対する考え方を様々な角度から伺うことができたので、エンジニアとして優秀な人が多いこともわかりました。コンピューティングに近い領域で、自分よりも高いスキルセットを持った方が多くいる環境に魅力を感じたんです。
トレジャーデータで働くメリット
―― トレジャーデータに入社してからはどのような業務に取り組んでいるのでしょうか?
田籠 基本的にはトレジャーデータのメインのサービスであるデータを収集して、分析するための仕組みづくりを担当しています。特にデータを集めて、大規模な分散処理にかけるという部分に注力しています。
ただ、時期によって色々とやることは変わります。例えば2016年は、トレジャーデータの創業者が開発したFluentdというOSSの大規模なバージョンアップに取り組んでいました。内部の全体的な再設計や、プラグインに関する機能調整を担当しましたね。
―― 現在はどのような領域を担当されているのでしょうか?
田籠 今はFluentdについて自分の仕事がひと区切りついたので、内部システムの改善に戻っています。お客様から送られてくるデータを受け取る部分の改修を行なっています。
―― トレジャーデータで実際に働いてみて、どのような印象をお持ちですか?
田籠 入社前に「おもしろそうだな」と考えた技術的な問題は、実際に取り組んでみてもやはりエンジニアとしておもしろいと感じています。
テクニカルな面でやりたいことは、まだまだ達成できていませんね。それでも、プロジェクトを成功させるために必要な、様々な分野の人的リソースがどんどん増えてきています。2017年に入ってから、やりたいことの準備がようやく整ってきています。
―― エンジニアとして今の環境をどのように感じますか?
田籠 難解なコンピューティングをクリアしてきた優秀なエンジニアが社内に多くいることは、エンジニアとしてトレジャーデータ働く大きな魅力です。
例えば、Rubyのコミッターとして言語の深い部分にまでコントリビュートしている人や、大企業では研究所で専門に研究しているようなレベルのエンジニアが各分野にいるんです。それくらいスキル的にとがっている人が隣にいるメリットは大きいですね。
もちろん自分の考え方を持つことは重要なのですが、自分より経験を積んできた人から、有用な知見や考え方が多彩なバリエーションで得られます。これはトレジャーデータのエンジニアリングチームだからこその大きなアドバンテージです。
―― 最後にどのようなエンジニアがトレジャーデータにマッチするとお考えなのかお聞かせください。
田籠 トレジャーデータのエンジニアに必須の条件はふたつあると思っています。
ひとつはビジネスの成功に向けて努力できること。トレジャーデータはスタートアップですので、ビジネスの成功をチームで一緒に目指せることが重要な条件です。
もうひとつは難解なコンピューティングに対して、その問題と周辺ソフトウェアについて突き抜けて考えられること。なにかの問題を突き抜けて考えている人はアドバイスを求めたときの反応などにはっきり表れてきますし、そういう意欲と能力を持った人と働きたいですね。