エンジニア向け情報サービス「TechFeed Pro」の正式版がリリース! ──“地上最強”を謳う、その理由とは。
一昔前であれば、情報を知っていることが価値であった。だがインターネットの台頭により、情報があふれかえり、今や「どう情報を収集するか」に比重が移ったとも言えるだろう。つまり、情報リテラシーやキュレーションといった能力が、求められるようになった。ただ、日々忙しいエンジニアにとって、キュレーションがいかに難しいかは、誰もが感じていることだろう。
そんなエンジニアの悩みを解決するのが、技術者向けの情報提供サービス「TechFeed Pro」だ。“地上最強”と謳う同サービスの概要や特徴、開発に込められた想いを、開発者である白石俊平氏に聞いた。
自分好みの情報を的確かつ簡便にキャッチアップできる
「TechFeed Pro」は、世界中の技術情報を自動的に収集・集約し、ユーザーに届けるサービスだ。技術情報はカテゴリ(チャンネルと呼ぶ)ごとに分類されており、現在のチャンネル数は約200。IoTやHRテックといったものから、AWS、GitHubといったコミュニティならびに技術スタック的なもの、JavaScript、jQueryといったプログラミング言語に関するものまで、幅広いジャンルが揃う。
利用方法は至ってシンプルだ。アカウントを作成すれば誰でも無償で使うことができ、最初のログイン時に、自分が欲しい情報チャンネルを選ぶだけ。あとは、選択したチャンネルの情報ダイジェストが、無数に表示される。利用者はその中から、気になった情報をクリックすれば、情報元にアクセスできる。
TechFeed Proの特長を、白石氏は次のように説明する。
「まず、情報のクオリティが非常に高いです。独自開発したアルゴリズムならびにエンジンにより、高度かつ専門的で質の高い情報のみ、情報収集しているからです。そしてそれらの情報を、リアルタイムで表示します。情報の量や技術レベルを利用者が選べるのも特長です」
2種類のフォローを使いこなしてエキスパートを目指せ!
TechFeed Proの最大の特徴とも言えるのが、チャンネルのフォローにノーマルモードとエキスパートモードの2種類があることだ。
ノーマルモードは、デフォルトのフォローモードで、興味ある人なら知っておくべきトレンド情報が表示される。
エキスパートモードは、海外のトレンド情報や、よりエキスパート向けのハイレベルな情報が表示される。
これらのモードは、フォローボタンを押すたびに切り替えられる。自分の関心やレベルに応じて、チャンネルごとに最適なフォローモードを選べば、快適な情報体験を追求することができる。
TechFeed Proの心臓部「MULQS(マルクス)」とは?
TechFeed Proの心臓部とも言える独自開発のエンジンは「Multi Curation Engine System(マルチキュレーションエンジンシステム)」、通称「MULQS(マルクス)」と呼ばれる。読んで字のごとく、複数の情報収集エンジンの集合体であり、利用者は、自分の技術レベルやそのときの状況などにより、エンジンを選ぶことができる。
(こちらの情報は、以前はサイト上で公開されていたが、「詳細過ぎる情報をユーザーに与えて混乱させないため」という理由で削除されている。今回は特別に解説してもらった)
現在のところ、エンジンは以下の4つ。
- Trend Watcher
- Expert Watcher
- GitHub Watcher
- Chikuwa
Trend Watcherは、人気の記事をチャンネルごとに収集するエンジン。人気度合いは、ツイート数やPocketの数など複数の指標を用いて分析される。
Expert Watcherは、海外のIT企業で働く最先端エンジニアがツイートした内容などから、エキスパート向けの情報を収集する。当然、英語の情報も多く、原文そのままの情報を知りたい人にとっては魅力的だ。
GitHub Watcherはその名の通りGitHubから得た情報。
Chikuwaは「質より量」を重視する特別なボット。実は、TechFeed Proが取り扱う情報の大半は、このボットがかき集めてくる。
前述の2種類のフォローモードは、これらのエンジンの詳細を包み隠す形で実装されたものだ。TechFeed Proに精通した方であれば、エンジンの設定を自前で行い、より細かく、得られる情報をカスタマイズすることも可能だ。
技術情報に特化した豪華版Twitterのようなもの
ユーザーへの情報提供だけでなく、TechFeed Proは、SNSとしての役割も担う。気に入った情報を「いいね」できる機能(ボタン)のほか、コメントの記入、Twitter、はてなブックマーク、Pocketといった、他のSNSにシェアする機能を有するからだ。
▲株式会社テックフィード 代表取締役 白石 俊平氏
つまり、情報のピックアップはもちろん、気になるユーザーがチェックしている情報を、知ることもできるのである。情報だけではない、気になるユーザーのコメントや、既にチェックした情報を知ることもできる。
このようにSNSとしての機能が豊富に備わっているため、利用者はより深い、あるいは自分のキュレーションでは知ることのなかった、新たな情報を手に入れることができる。
平たく言ってしまえば、TechFeed Proは、Twitterの豪華版のようなサービスだ。ただ、実際に使ってみて感じたのは、操作性、UXがとにかく心地よいこと。
各情報の見出しにはリンクがほぼ張っており、英語の情報においては、見出しの直下に通訳できるリンクが設置されている。そのためスムーズに情報先にアクセスできる。また、独自のアイコンや機能においては、ポインターを重ねると、説明文が自動で表示される。
世界最高レベルの技術情報を多くのエンジニアに届けたい
白石氏は、もともとエンジニアである。SIerでJavaを学んだ後、システム絡みでフロントエンド、JavaScriptを習得。その後はHTML5のエキスパートとなり、まわりから一目置かれるエンジニアに成長した。
すると今度は、自分が持つ知見を、他のエンジニアに提供することに興味がシフトしていく。ライターに転身し、記事を寄稿したり、書籍も数冊出版。Webメディアの編集長、技術者が集うコミュニティを立ち上げるなど、活躍の場を広げていった。
そしてこれらの活動の根幹には、国内エンジニアのスキルの底上げをすることで、日本を世界一のIT国家にしたい、との想いがあった。当時の様子を、次のように振り返る。
「毎日2~3時間は、海外のエキスパートの情報収集に充てていましたね。RSSリーダーを使い、1日3,000見出しほどはさらってました。その中から価値ある、日本のエンジニアに伝えたい情報を人力でキュレーションし、メーリングリストにいるコミュニティメンバーに流すことを、2年間やっていました。さすがに大変すぎて、2年でダウンしましたが(笑) 。ただ、楽しかったですよ。仕事というよりも、ライフワークという感覚でしたから」
一方で、このままの状態で情報発信を続けていても、自分が目指す、先の想いの実現には程遠いことにも気がついていた。仕方ない、情報が白石氏の得意分野に限られるからだ。そこで白石氏は、多様なジャンルの情報を発信できる、プラットフォームの開発を目指すようになる。
それがTechFeed Proの前進「TechFeed」だ。白石氏は、プラットフォームの実現に向け、仲間を集め、スタートアップを立ち上げる。そして改めて、会社のビジョンを掲げた。「世界最高レベルの技術情報に、どんなエンジニアでも容易にアクセスできる」。まさに、白石氏のライフワークを表したフレーズであり、現在のサービスTechFeed Proにつながっていく。
TechFeedは2016年にリリースされるが、思ったようなプラットフォームには成長しなかったと、白石氏は次のように話す。
「エンジニア全般に使ってもらうサービスにしたせいで、どうしてもやさしめの情報が多いプラットフォームになってしまいました。その結果、エキスパートエンジニアに関心を持ってもらえないプラットフォームになっていました」
彼の言葉を借りれば、TechFeedは“ぬるい”サービスだったという。だが、理念を諦めるわけにはいかない。そこで改めて、エキスパートエンジニア30人に取材を行い、どのように情報を得ているかをヒアリングした。
するとエキスパートエンジニアは、自分と同じような、エキスパートから情報を得ていることが分かった。そこで白石氏は、エキスパートから情報を得るアルゴリズムを実装した、新たなプラットフォームの開発に動き出す。
こうして完成したのが、TechFeed Proである。そこで思いついた具体的なアルゴリズムは、世界中のエキスパートのツイートを分析し、技術情報だけをピックアップするというものであった。そのためTechFeed Proの各情報のヘッダーには、どのエキスパートをウオッチしているのかも、分かるような仕様となっている。
利用者のレベルに合わせた情報が取得できるようチューニングエンジンを複数に
TechFeed Proの開発においては、もうひとつ、意識したことがあった。ノイズの削除である。
「エキスパートからの情報をキュレーションすると、確かに濃く、世界で最先端の情報であることは間違いありません。ただ、英語である場合が多かったり、内容が難しすぎるとの問題が、新たなに生じました。また、いくらエキスパートでも、専門分野以外は質の高い情報でないことも多く、それが結果として、利用者にとっては情報ノイズとなっていました」
そこで前出、マルクスならびにノーマルモードの開発・実装を思いつく。さらにノーマルモードのキュレーションエンジンであるトレンドウオッチャーは、チャンネル数の増加にも貢献していった。
2020年1月、TechFeed Proのβ版が出たときのチャンネル数は、わずか20だった。当然である、いくら個人から会社組織になったとはいえ、技術カテゴリすべてを網羅することは不可能だからだ。
そこで白石氏は、各分野のエキスパートに、プラットフォームのスケールに協力してくれないかと声をかけた。そして、どのエキスパートをフォローすればよいか、あるいは、自分たちが選定したエキスパートの情報は上質なのかアドバイスしてほしいとお願いした。
エキスパートは徐々に増え、現在約60名。彼らは「テックフィード公認エキスパート」と呼ばれ、白石氏と同じく、「世界最高レベルの技術情報を多くのエンジニアに届けたい」との共通理念のもと、利害関係なく、サービスの拡充に協力している。
ただ言い方を変えれば、このようなエキスパートの協力がなければ、チャンネル数は増えていかない。またエキスパートの選定は、情報の価値ならびにプラットフォームの質に直結するので、責務の重い業務でもある。
そこで、トレンドウオッチャーエンジンがピックアップしてきた情報も、ノーマルモードでの情報として発信することを決めた。そしてその情報も、チャンネルカテゴリに加えることで、チャンネル数はわずか2カ月のあいだに200にまでアップしたのである。チャンネル数は、今後も増え続けていくという。
ソーシャルサービスとしての価値を出していきたい
「テックコミュニティの運営に没頭していた日々から、学んだことがあります。 それは、人々が関心で集う場は『最高』だということ。楽しくて、多様で、平等。 そこには会社の垣根も立場の違いもなく、ひたむきな興味と、暖かい連帯感がありました。
そしてコミュニティという現象が、今世界的なうねりになっているのはご存知のとおりです。 だから私たちは、『世界中の人々を関心とテクノロジーでつなぐ』というビジョンに賭けてみることにしました。 私たちの挑戦を応援していただければ幸いです」
この一文は、テックフィード社のトップページの記載されている内容だ。白石氏いわく、情報収集のアルゴリズムにおいては、今回のTechFeed Proで搭載したエンジンをブラッシュアップしていくことで、満足のいく、目指すべきものに近づいていくと、手応えを感じているという。
そこで今後の展開としては、ソーシャルツールとしての価値が高まるような、仕様やサービスの開発に注力していくという。まさに、同社のビジョンの実現に向かっていくのである。具体的な施策としては、前出のSNS機能を充実させることだが、それだけではない。白石氏は次のように言う。
「エキスパート同士が集う場もつくっていきたいと考えています。ミートアップ、コミュニティイベントのようなイメージで、その場でエキスパートが参加者に最新技術を紹介したり。あるいは、エキスパートになりたい人にアドバイスをしたり。エキスパートは現在60名弱ですが、これからは毎月20名ずつ増やしていく予定ですので、コミュニティとしてもスケールしていきたいと考えています」
理念実現に向けた白石氏の挑戦は、これからも続く――。