【レポート】必見!デジタルトランスフォーメーション最前線!
2017年5月20日13時30分より、「【アクセンチュア社×SAP社 勉強会】必見!デジタルトランスフォーメーション最前線!」が開催されました。
近年、デジタル化の波はあらゆる業界で急速的に加速しています。つまり、企業・組織はデジタルへ対応するためのシームレスな変革を求められているのです。
「デジタルトランスフォーメーション」をテーマに、アクセンチュアテクノロジーが開催する本イベントには、エンジニアやITコンサルタントなど130名近くの方が参加しました。
当日の内容は次の通りです。
「共創によるイノベーションへの取り組み」
SAPジャパン株式会社 吉越輝信さん
「結局デジタルでビジネスってどう変わるの?どう変えるの?」
アクセンチュア株式会社 入澤裕己さん
アクセンチュア株式会社 宮脇栄志さん
それでは内容を紹介します!
「共創によるイノベーションへの取り組み」
1人目のご登壇はSAPジャパンの吉越さんです。吉越さんは「共創によるイノベーションへの取り組み」をテーマに、SAPが挑戦したイノベーションの最新事例を紹介します。
吉越輝信(よしこし・てるのぶ)/SAPジャパン株式会社 社長室 エヴァンジェリスト ネクストイノベーションデベロップメント シニアマネージャー。1970年生まれ。IT企業複数社での勤務を経て、2007年にSAPへ入社。現在、IT業界25年目。趣味は映画鑑賞とスポーツ観戦。
スポーツ × IT = ?
吉越さんの勤めるSAPでは「Help the world run better and improve people’s life(世界をより良く、人々の暮らしを豊かにする)」を社是に掲げています。同社はドイツに本社を置くビジネスITプラットフォームベンダーであり、その社員数はグローバルで約8万人、そのうち日本には約1200人の社員が在籍。業界を問わず、世界中のお客様のビジネス支援を展開しており、世界のGDPの約7割のお金の流れにSAPのシステムが使われているといわれています。
現在、あらゆる企業で「デジタルトランスフォーメーション」が課題となり、イノベーションを起こし続けていくことかが重要な使命となっています。吉越さんが担当するスポーツ・エンタテインメント業界において、SAPでは「スポーツ× IT=ワクワク」の実現へ向けて邁進。 クラブや選手、そしてファンに「ワクワク」する価値を提供するために、具体的には次の3つの領域で事業を展開しています。
・オペレーション
スポーツといえども事業を運営するのは企業です。その企業が持つお金と人、モノを管理する業務アプリケーションを導入しています。
・チーム
テクノロジーがコモディティ化して安価になったことで、多くのデータが生まれたり、データを意図的に発生させたりすることがこの数年で可能になりました。そのビッグデータを用いて選手のパフォーモンス向上に活用します。
・ファン
また、取得したデータを加工することでファンとの結びつきを強くする領域作りにも取り組んでいます。
SAPのこうした取り組みの中でも代表的な事例が、2014年に開催されたFIFAワールドカップのドイツ代表チームです。SAPでは、ドイツチームの練習場に大型のタッチスクリーンを設置。代表チームの全試合の分析データを埋め込み、選手がタブレットを操作するように簡単に活用できるツールを提供します。ワールドカップ開催直前の合宿期間に行われたこの取り組みは、チームのコミュニケーションを促進させ、「優勝」という最高の結果につながりました。
SAPではこうした成功事例をひとつ作ると、その知見を標準化します。そして、他スポーツ・他業界へも横展開できることが大きな強みとなっています。例えば、この成功は同じドイツのサッカークラブであるバイエルン・ミュンヘンや女子テニス、バスケットボールへも展開されました。
SAPがグローバルで特に注力しているのが「コネクテッドアリーナ」。スタジアム中心の街づくりを通して、その地域を発展させることを目的にしています。
サッカーの試合が開催される当日の最大の課題は「試合開始時刻までに全員を席に座らせること」。人の流れを管理するために、「どのタイミングでどこのゲートを開けるか」「どのタイミングでどこの売店の電子クーポンを発行するか」などの施策を考えています。トイレを待つ行列をリアルタイムで取得し、空いているトイレの近くのショップのクーポンを発行することで、トイレに並ぶ大行列も近いうちに解消されるかもしれません。
また、スタジアムの集客力はその地域の経済にとって大きなチャンス。年に何十回も行われるイベント情報をデジタルで事前に把握できれば、来街者のひとりひとりにOne to Oneのオファーを効果的に出せるようになるのです。
SAPの創業者やCEOはスポーツ好きとしても知られています。しかし、SAPがスポーツに注力するのはもちろんそれだけの理由ではありません。
SAPはスポーツ・エンタテインメント業界を含め25業界のお客様とビジネスをしています。そして、各業界でイノベーションを起こすために提案しているのが「インダストリー・スワッピング」。
「インダストリー・スワッピング」はある業界での成功事例を、他の業界へ持ち込む手法です。なぜ他の業界の事例を持ち込むかといえば、同じ業界の競合企業の事例では、改善はできても革新できないからです。この際、スポーツ業界の事例であれば、他の業界の経営陣もよく耳を傾けてくれる傾向があるのだそうです。
スポーツ業界での最新テクノロジーを使った事業展開は、世界中10億人もの人々に大きなインパクトを与えられるといわれています。SAPが特に注力しているのは機械学習。
SAPの機械学習エンジンでは、今まで2ヶ月に1度程度しか実施できていなかったモデルの構築を、数時間から1日程度で構築できるように自動化。年間365回モデルが構築できるという驚くべきスピードでPDCAを回すことが可能になっています。
この機械学習エンジンを採用している事例として、吉越さんはガストにおけるクーポンの発行、カルチュア・コンビニエンス・クラブでのTポイントキャンペーンメール、ANAが実施している1年後の空席予測、スポーツの分野でも日本女子バレーで活用法などを紹介しました。
デジタル時代にイノベーションを起こすには?
10億人以上の人々がソーシャルネットワークで繋がり、51%のワークロードがクラウドで処理されている世界。デジタル化の潮流はどんな企業でも避けられず、必要なテクノロジーをうまく組み合わせてビジネスを推進することが重要です。
例えば、ある海外企業は自社製品である水量計のセンサーをビールサーバーに応用したことで、イノベーションを起こしました。ビールサーバーを流れるビールの量とPOSデータとを組み合わせ、分析結果をレストランにアドバイスしたところ好評を得たのです。
さらに、この企業は分析したデータに基づきビール会社へコンサルティングサービスを始めました。これまでビール会社は「ビールがなくなっているのかどうかがわからなくても補充にいかなければいけなかった」のですが、同社のコンサルティングサービスを導入した後は「ビールがなくなっているところのみに補充にいく」という最適な営業ルートの構築が可能に。無駄な訪問が無くなったことにより、1店舗に掛けられる時間は増え、よりきめ細やかなサービス提供を実施しました。
吉越さんはこの他にも、工場の圧縮空気を生み出す装置を開発する「KAESER」や自分でスニーカーの色を選択できる「mi adidas」などの事例を紹介します。
様々な事例が生まれているデジタル時代ですが、吉越さんによるとデジタル化による強みは下記の3つ。
・顧客接点の大きさ
デジタルを活用することでソーシャル上の10億人に繋がるチャンスがあります。
・マスカスタマイゼーション
趣味趣向が細分化している現代においては、デジタルを活用していかに個々が求めるサービスを提供できるかが重要です。
・リードタイムの短縮によるコスト削減
トレンドを把握した商品を開発し、売れる商品を作ることができるので、実質、納期の短縮にもつながります。
デジタルを中心とした「インダストリー4.0」の時代では、「3.0」までに築いた基盤をもとにビジネスをきちんと回しながら、別の業界から参入してくる新たな競合に対してデジタルを活用した事業を立ち上げていくことが求められます。ここでキーとなるのが、外部の人と共創するオープンイノベーションです。外部の人と接することで新たな視点、知見を獲得するわけです。
SAP自身も、2010年における売上のほとんどはERPの領域でした。しかし、2015年には新規事業の売上はERPと同じ規模に到達します。SAPがイノベーションのジレンマを乗り越えたときに鍵となったのは、次の3点だと吉越さんは説明します。
・「異邦人」と関わる
ベンチャー企業アントナープレナーなどのノウハウやマインドを吸収してオープンイノベーションを実施。
・「城下町」から離れる
新規事業は、本社ではやりにくいこともあるので、物理的に場所を分けることも必要になる場合があります。
・共通言語フレームワークとしての「デザインシンキング」
営業や開発など全てのメンバーが「デザインシンキング」を共通認識として持ちます。お客様に新たな提案をするときにはデザインシンキングワークショップを行い、顧客が誰かを再認識、共感し、課題発見などにつなげています。
実際にSAPはドイツの企業であるにも関わらず、新規事業はシリコンバレーを中心に展開しています。さらに、広いシリコンバレーにおいて、イノベーターが集まれる場所として「HanaHaus(ハナハウス)」を設立。企業の垣根を超えた交流が生まれる場所となっています。
このシリコンバレーでの取り組みを日本で展開したのが福井県鯖江市での事例。日本の自治体で初めてオープンデータを推進した街である同市で「JK課」「Hana道場」などの新しい試みに取り組んでいます。
すでにテクノロジーは高いレベルにあり、活用できるデータも揃っている現代。「最大の制約は人の想像力であり、その制約を取り払ってイノベーションを起こしていきましょう」と吉越さんはまとめました。
「結局デジタルでビジネスってどう変わるの? どう変えるの?」
続いては、アクセンチュアの入澤さん、宮脇さんの講演です。お二人の講演ではデジタルトランスフォーメーションにおけるビジネスアプリケーションがテーマです。まず、入澤さんのパートではアプリケーションに関する課題認識と戦略について紹介します。
入澤裕己(いりさわ・ひろき)/アクセンチュア株式会社 シニアプリンシパル テクノロジーコンサルティング本部。2005年に中途でアクセンチュアへ入社。趣味は学生時代に出会ってから18年にも及ぶ付き合いになるSAP。
アクセンチュアが掲げる3つのアプリケーション戦略
IoTやAIを始めとするデジタル技術は、いままでのビジネスをまったく新たな形に変えつつあります。しかし、デジタルそのものが勝手に事業を変革することはありません。イノベーションを起こすにも、ビジネスとテクノロジーを融合させるための基盤や手法がもとめられます。
アクセンチュアではその時代に応じたニーズに取り組み、「戦略」「デジタル」「テクノロジー」「オペレーション」の領域で業界ごとにソリューションを提供しています。
ある調査によると「テクノロジーの進化によって社内に混乱が生じている、もしくは近いうちに生じる可能性があるか?」との問いに、3分の2以上の企業が「YES」と回答。他の調査でも、多くの企業がビジネスのスピードにシステムが十分に対応できていない状況にあるとの回答が多く見られています。これは、ビジネス戦略全体に占めるビジネス・アプリケーション戦略の割合が高まっていることを表しています。
しかし、その戦略を実現するにはいくつかの障壁が存在します。そのひとつが「老朽システムの足かせ」。過去に設計されたアプリケーションは時間を余計に要するにもかかわらず、企業のIT部門の予算は6割ほどが既存システムの保守に投下されているのが現状です。そのため、イノベーションにはわずかな時間しか割けていない企業が多いのです。また、「変化のスピードとアプリケーションの複雑性の高まり」「パートナー・エコシステムの拡大」も障壁となっています。
これらの課題に対して、アクセンチュアが掲げているのが「リキッドアプリケーション戦略」「インテリジェントアプリケーション戦略」「コネクテッドアプリケーション戦略」。これら3つの戦略を実践し、企業はビジネスのスピードに合わせたアプリケーションの導入・拡張が加速でき、超高速エンタープライズシステムへの変革が実現できると入澤さんは解説します。具体的にそれぞれの戦略は次の通りです。
・リキッドアプリケーション戦略
「変幻自在な」という意味で、時代の変化に対応するために必要なスピードと俊敏性、流動性を伴った新しい開発アプローチです。再利用可能なコンポーネントによって、迅速なアプリケーション構築を実現し、ビジネスニーズに合わせた変化が可能になります。
・インテリジェントアプリケーション戦略
「自律的な知識を持つ」という意味で、機械学習などを活用することでアプリケーションが自ら理解し、行動し、学習します。
・コネクテッドアプリケーション戦略
「相互に接続された」という意味でソフトウェアを利用して、組織の境界線を取り払います。企業が収益を拡大しながらマーケットでの事業を維持するためには新たな展開が求められ、そこにはIoTの活用が必要になります。
アクセンチュアの超高速アプリケーション開発
上記の3つの戦略を含め、アクセンチュアがお客様の課題解決に取り組んでいる場である「アクセンチュア・リキッド・スタジオ」を紹介します。「アクセンチュア・リキッド・スタジオ」は、アイディエーションやデザイン思考などを通じて、アジャイルで高速なアプリケーション開発によってアイデアを形にし、体験を生み出す場。東京を含めた世界各国に設立されています。
「SAPソリューション向けアクセンチュア・リキッド・スタジオ」から生まれた事例として、入澤さんは「スマート・フリート」を紹介します。
「スマート・フリート」は、工事用車両の販売・アフターメンテナンスを行う企業向けに開発されました。顧客が保有する車両状態を管理してカスタマーサービスの向上を実現させるサービスです。
システム構成はSAPクラウドプラットフォームから開発され、GPSからの車両の位置データやや、各種センサーからの車両に関する様々なIoTデータを取得します。そして、整備士のマスターデータや車両部品の交換履歴、顧客や車両などのトランザクションデータを基幹システムと連携。アプリケーション上での見える化を実現します。その結果、例えば月間のアラート数を管理したり、異常値を検知した場合に顧客に通知ができ、周辺の整備士に直接連絡を可能にしたりと活用しています。
機器の故障は事前にわかる?
後半では宮脇さんが、上記の戦略を実務としてどのように実践していくのかについて紹介します。
宮脇栄志(みやわき・えいじ)/アクセンチュア株式会社 テクノロジーコンサルティング本部 SAPビジネスインテグレーショングループ マネジャー。Webシステム開発会社など経て、2007年にアクセンチュアへ入社。趣味はIoTグッズ集め。
SAPの主力商品である「SAP ERP」は、統合的に経営資源の情報を管理し、経営資源の効率化を図るためのパッケージシステムです。アクセンチュアでは、お客さまへの導入時には要件をヒアリングし、Fit&Gap分析を実施。パッケージの初期設定と足りない機能のアドオンでの追加を行います。この手法は、ゼロからシステムを構築するよりもはるかに安価で期間も短く運用開始できることが特徴です。
従来までの「SAP ERP」は、項目や機能が淡々と並んでいるものでした。しかし、最近ではUIが直感的で使いやすく改善しています。オープンな技術・テクノロジーを積極的に採用し、環境としてもウェブ上でPaaSによる開発ができるようになっています。
SAPのテクノロジーを使ったデジタル化で現在重要な役割を果たすのが、「SAP Cloud Platform(SCP)」です。開発や実行環境の役割を担い、開発時のソースコード管理も可能なプラットフォームです。また、標準でIoTがサポートされているので、データの収集も即座に開始できるわけです。
集めたデータはSAPの「HANA」を活用して分析します。「HANA」には「Predictive Analysis Library」という機能があり、クラスター分析やアソシエーション分析、外れ値検出などを標準としています。関数が含まれているので、アプリケーション側からはSQLをたたくだけでそれらの機能が利用できるのも大きなメリットです。さらに、それらの処理はデータベース側のインメモリーで行われるためとても速い速度を誇ります。
ここで宮脇さんは「スマート・フリート」の事例を再び紹介します。いままでは機器が故障した際、お客様への対応のリードタイムは長引き、満足度は高いものではありませんでした。
しかし、故障原因を分析すると、定期的にメンテナンスしていればそもそも故障をしなかったのではないかと仮説が成り立ちます。そこで、データ活用による補償の予測を行いました。
その結果、センサーからデータを集めて異常値を分析していくことで、故障前に対策を施すことが可能になりました。また、故障時の調査コスト削減や部品の寿命の把握もでき、最終的にはERPデータと連携することでレポーティングも可能になっています。このように、アクセンチュアではSAP製品を活用することで業務における課題の解決を推進しています。
懇親会!
講演の終了後は懇親会です!
ケータリングされた料理を食べ、お酒を飲みつつ参加者と登壇者で交流が繰り広げられました。
またの開催をお待ちしています!