仙台・東北のアグリテック・エンタメテックに触れる現地視察ツアー&仙台テック企業との交流会
1日のスケジュール
今回は仙台⇔山元町をバスで移動します。
仙台テック企業との交流を通じ「仙台のIT事情」を知る
午前中はコワーキングスペース『enspace』を会場に、仙台のテック企業を代表する6名との交流会を開催。前半のパネルディスカッションでは、6名から仙台でITを活用する意義や優位性などが語られました。
「少子高齢化など社会課題を多く抱える東北は、IT活用の余地が多い。すなわちそれはビジネスチャンスが多いということ」 「仙台は東京まで1時間半という好アクセスで、また台湾や韓国といったIT先進国への直行便もある。そのため最新鋭の技術にたやすく触れることができ、連携も取りやすいという地の利がある」 「首都圏と比べたとき、地方はどうしても資金や人的リソースに限りがある。そこを工夫や知恵で乗り切る中で、新規事業のヒントが見つかる」 など、仙台のITビジネス最先端に立てばこその知見に基づく、聞きごたえ満点のディスカッションとなりました。
それぞれの観点から仙台の可能性、暮らしやすさについてお話してもらいました。
さまざまな年代が参加。各社の話に頷きながら耳を傾けます。
後半は立食形式のランチ交流会へ。三陸直送の寿司と仙台牛のオードブルを食しつつ、参加者はパネリストたちと「課題解決に向けての悩み相談」や「技術的な質問」にはじまり、「好きなプロ野球チームについて」まで、ざっくばらんに交流を図っていました。
名刺交換をしたり、パネルに関するもっと深い話をしたり、各々で楽しみました。
【仙台テック企業交流会 パネリスト】
・トライポッドワークス株式会社 代表取締役社長兼CEO 佐々木賢一さん
仙台市出身。2005年に創業し、現在はオフィスソリューション事業を基盤としながら、IoTを成長エンジンに上場を目指す。
・株式会社コー・ワークス 代表取締役社長 淡路義和さん
秋田県秋田市生まれ仙台育ち。2009年に創業し、「DX推進」「スタートアップ創出」「人材育成・まちづくり」を柱に、現在はダム制御システム開発・運用保守から、スタートアップ企業向け自動車の洗車・研磨ロボット開発までを手掛ける。
・株式会社GROWTH JAPAN TECHNOLOGIES 代表取締役 我妻裕太さん
2022年に仙台で創業。ソフトウエア開発、AI開発、コンテンツ開発、SaaS事業などを手掛ける。特にChatGPTの利活用に精通し、ChatGPTに関する電子書籍も出版するほど。
・株式会社ワイヤードビーンズ 槙田健三郎さん
広島県廿日市市出身。富士通エフ・アイ・ピー(現富士通Japan)を経て、妻の実家がある仙台にIターン転職。全国の職人と連携したブランド運営やデジタルソリューション事業を手掛ける。
・東北電力株式会社 事業創出部門事業開発ユニット 渡辺 匠さん
塩釜市出身。東京の大学を卒業後、2011年に東北電力入社。2024年3月より現部門にて、「AI」「データ活用」を鍵に新規事業立ち上げをサポート。
・株式会社NTTデータ東北 法人事業部開発部 菅原 映さん
仙台市出身。金沢の大学を卒業後、ユーザ企業の開発部門として東京で11年勤めた後、子どもの就学を見越してUターン。2019年よりNTTデータ東北に。
IT×農業=「スマート農業」の最前線を知る
午後からはバスで山元町へ移動し、『農業法人株式会社GRA』の視察を行いました。 一粒1000円の高級ブランドイチゴとして今話題の「ミガキイチゴ」。その生産元である『GRA』は、ITを活用した栽培手法でも注目を集めています。 従来の“経験と勘”によるイチゴ栽培は、ノウハウ習得に長い時間がかかるため、産業拡大の視点で見たときに「参入障壁の高さ」がネックとなっていました。しかし『GRA』では苗づくりや温度・湿度の管理、土壌づくりなど栽培に必要な条件をすべて数値化し、ITでコントロールすることによって「形式知」化、すなわち“誰もが参入できるイチゴづくり”のノウハウ確立に成功したのです。 同社ではイチゴ生産とあわせ、これら栽培ノウハウの提供を行う『イチゴアカデミー』、観光イチゴ農園『イチゴワールド』を運営。さらに6次産業化の受け皿としてイチゴスイーツ専門店『いちびこ』を展開しています。
企業概要、技術についての勉強会。質問もたくさん飛びます。
圃場ツアー。夏なのでイチゴはありませんが、青々とした苗が広がっています。
歩きながらも質問。GRA山根さんも鋭い質問に嬉しそう。
視察では、ハウスの環境制御について説明を聞いた後、ハウスを見学しながらの質疑応答が行われました。参加者からは「ランニングコストはどのぐらいかかるのか」「イチゴ以外の作物への応用はできるか」「ハウスでの環境制御は露地栽培へも応用可能か」など、さまざまな質問が飛んでいました。
【お話を伺った人】
取締役副社長 橋元洋平さん
新規就農支援事業部事業責任者 山根弘陽さん
「フルキャッシュレス」の現場を目の当たりに
そしてバスで再び仙台市に戻り、次に向かったのは、東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地『楽天モバイルパーク宮城』です。同スタジアムでは最新テクノロジーの活用によってファンのエンゲージメントを高める「スマートスタジアム構想」を推進中で、その一環として2019年より「場内完全キャッシュレス」システムを導入しています。 まずは専用アプリでチケットのQRコードを読み取り、チケットレスで入場するところからスタート。チケットやグッズ、食べ物や飲み物など購入は全てキャッシュレス決済で行われます。利用可能な決済手段は、楽天ペイ、楽天Edy、楽天ポイントカード、クレジットカード。場内にはチャージコーナーを設置するほか、場内で利用できるEdyカードの販売も行っています。 決済がスムーズになることで混雑が緩和されるだけでなく、運営側ではレジ締めなどの管理作業も簡便化。さらに専用アプリのログインIDと、楽天が提供する他サービスのIDを紐づけることで、幅広い領域からビッグデータを得られるというメリットもあります。
スタジアムツアー。観覧車がシンボルの子供も大人も楽しめる屋外球場。
楽天イーグルスのグッズを販売しているチームショップ前にて。完全キャッシュレスのメリット・将来性について聞きます。
職員のアテンドの下場内を見学した後、ミーティングルームで「東北楽天ゴールデンイーグルス」としての取り組みについて説明と質疑応答が行われました。参加者からは「AIを使ったサービスなど、今後の展開について」といったIT技術関連以外にも「客層に対する疑問」「設備運用について今後の展開」などの質問が飛び交いました。
楽天野球団社員による座談会。ここでも質問がたくさん飛び交います。
丁寧に社員の皆さんにご回答いただきました。
一通り視察が終わった後は、そのままスタジアムでの野球観戦へ。東北楽天ゴールデンイーグルス 対 オリックス・バファローズの試合を見つつの懇親会が行われました。
野球観戦をしながら懇親会。ツアーの感想から人生のアドバイスまで。一日一緒だったので話題がつきませんでした。
【お話を伺った人】
株式会社楽天野球団
山縣さん、谷口さん、鹿野さん、山本さんの4名にお話を伺いました。
【参加者の声】
●仙台にゆかりがあるわけではないのですが、アグリテックに興味があり参加を決めました。「農業」と「IT」という、一見相反するものの融合に大きな可能性を感じています。今回はイチゴの栽培を見せていただきましたが「IT技術で農業をオートメーション化する」というわけではなく、データ取得や環境制御にITを活用しつつ「最終的な判断は人が行っている」という部分が見えたことは収穫でした。(データサイエンティスト/大阪府)
●出身は岩手県。現在は埼玉で働いていますが、将来的には東北に戻り、IT技術を使って転職または独立を視野に入れています。印象に残ったのは交流会で『コー・ワークス』社長の淡路さんがお話していた「東北で“ゼロからイチを生み出す人材”を育てたい」という言葉。東北はITで発展する大きな可能性をまだまだ秘めていると感じましたし、ベンダーの方々から得られるリアルな情報に刺激を受けました。(システムエンジニア/埼玉県)
●宮城県出身で、現在は首都圏に勤務していますが、近々仙台に戻ってくる計画があり「Uターン」を見据えて参加しました。実は成人式のとき今回視察した『GRA』の岩佐社長の講演を聞き、それをきっかけにエンジニアを目指した、という個人的な縁があります(笑)。それ以外にもIT業界で活躍する方の話を直接聞くという非常に貴重な機会でしたし、今後の可能性を感じてワクワクした一日でした。(Webエンジニア/東京都)