社会革新に挑んだ仙台のリーダーたちが語る「産業・社会・事業の課題解決」にテクノロジーが必要な理由とは

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社会革新に挑んだ仙台のリーダーたちが語る「産業・社会・事業の課題解決」にテクノロジーが必要な理由とは
仙台には、社会課題・産業課題・事業課題の解決をテクノロジーで実現する企業が多く存在する。今回のイベントでは、コアなテクノロジーからAI・データサイエンスなどの最先端技術まで、広く活用することに挑戦している仙台企業で活躍するリーダー5人が、ソリューション開発事例や取り組みを語ってくれた。

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社会課題・地域課題解決のためのAI・データサイエンス

株式会社zero to one 竹川 隆司氏
株式会社zero to one
代表取締役CEO 竹川 隆司氏

最初に登壇したのは、東日本大震災を期に仙台・東北で各種事業を展開しているzero to oneの代表、竹川隆司氏だ。仙台市に本社を置く同社では、AI・データサイエンス分野に強い人材を育成するべく、各種教材の開発やオンライン授業など提供。大企業を中心に、大学や自治体などこれまで約600社、2万人以上のAI・デジタル人材を育成してきた。

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竹川氏は、東北大学の特任教授(客員)や日本ディープラーニング協会の人材育成委員、仙台市が進める「X-TECHイノベーションプロジェクト(以下、X-TECHプロジェクト)」の事務局も務めるなど、まさに産官学を舞台に、AI・データサイエンス人材育成に取り組んでいる。

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X-TECHプロジェクトは仙台市が主催するプロジェクトであり、2018年よりスタートした。既存の産業にITやAI、データサイエンスといった先端テクノロジーを掛け合わせることで、社会課題解決や新規ビジネス、関連人材の創出を支援することを掲げている。

各種セミナーやイベント、ワークショップなどを実施しており、仙台市が掲げる経済成長戦略の屋台骨でもある。仙台市としては、ここで支援した人材に、BOSAI-TECHをはじめとした各分野でも活躍してもらうべく、二階建ての事業構造でここにあるような各種事業を展開している。

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中でも、X-TECHプロジェクトでは「X-TECHイノベーションを軸に、日本一のAI-Ready都市を目指す」というミッションを掲げ、「AI人材人数 地方都市No.1」などの目標を掲げている。

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具体的なプロジェクトとしては、まずはAI人材を経営者、メンバーという順で育成する。

その後、ワークショップなどを通じて、AI関連のビジネスアイデアを創出。最後にアワードを行い、優秀なアイデアを表彰するという流れだ。

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竹川氏は直近のアワードを受賞した企業とそのテーマも紹介。次のように、成果と手応えを述べた。

「一次産業である農業、町づくり、自然を活かした地域創生など、まさに社会課題とAIが掛け算されていることが実証されていると思います。社会課題や地域課題解決のためにAI・データサイエンスといったテクノロジーを活用するのは、すでに当たり前の構造になっていると考えています」(竹川氏)

竹川氏は、具体的な事例も紹介した。紙ではなく、スマホ上でスタンプラリーが行えるデジタルスタンプラリー「番ぶら3.0」である。デジタル化することで浮いた費用を、トークンやWeb3.0といった技術を活用し、参加者に還元する仕組みを盛り込んだ。

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「番ぶら3.0」は、デジタルスタンプを5つ集めたり、友だちを紹介したりすることで、1トークン1円(ポイント変換後)としてお店で使えるトークンがもらえる。同時にそのトークンの価値が、対象となる商店街全体の回遊数に応じて増える仕組みを入れることで、スタンプラリー参加者自身が商店街の盛り上がりに貢献するインセンティブを与えている。

参加者のデータが集まるため、他の地域や別の用途での利用といった拡張性が高まるというメリットもある。実際、この取り組みは内閣府の調査事業でもあり、他地域への展開も検討される予定だという。

竹川氏は、X-TECHプロジェクトに携わるようになってから3年経った現在までを振り返り、G検定、E資格の都道府県別合格者数が全国で26位、16位から共に12位にランクアップしたと実績を紹介。今後のさらなる展望を述べ、ファーストセッションを締めた。

「今後もさらに、現在の盛り上がりや実績を活かす人たちが増えていくことに貢献したいと思います。特に、県外からの人材が多く加わることでまちが活性化し、地域・社会課題の解決につながっていくと考えています」(竹川氏)

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伸び代しかない、イノベーションで加速する農業の可能性

株式会社舞台ファーム 吉永 圭吾氏
株式会社舞台ファーム
未来戦略部 吉永 圭吾氏

続いて登壇したのは、舞台ファームの吉永圭吾氏だ。岩手大学農学部卒業後、新卒で舞台ファームに入社。非エンジニアながら独自開発したシステムにより東北経済産業局主催「TOHOKU DX 大賞 2023」審査員特別賞受賞、仙台市主催「仙台X-TECHイノベーションアワード2024」最優秀賞受賞の経歴を持つ。

舞台ファームは、1720年から300年以上続く農家をルーツとする農業法人であり、以前は一般的な農家として野菜などの生産を行っていた。

2000年代に入ると、カット野菜などの加工商品も手がけるようになり、従業員数200名を超えるメガファームに変貌した。

「未来の美味しいを創る」との社是を掲げ、X-TECH的なイノベーティブでオープンな取り組みなどにチャレンジしている。生産から流通、小売までと全フェーズに広がっているため、多くのステークホルダーと関わりを持つのも特徴だ。

吉永氏が所属する未来戦略部は、名前の通りこれまでにない新しい事業に取り組む部署である。福岡県生まれ、茨城県つくば市育ちの吉永氏だが、東北で暮らした経験もあり、その際東北の魅力に惚れ込み大学進学を期に移り住むことを決意。新卒で舞台ファームに入社した。

未来戦略部では約2年半前から、日本最大級の植物工場を竣工するというビッグプロジェクトに取り組んでいる。広さは建屋で5.1ha、敷地面積全体では7.6haにもなり、1日最大4万個ものレタスを収穫できる。

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多くの作業が自動化されており、その割合は9割にもなるため、工場には常時30人ほどしかいない。天井窓の開閉や植替の作業を自動でロボットなどが行うからだ。

液肥や日射量、温度管理などは取得したデータをAIに学習させることで、最適な数値を算出している。また独自開発した管理システムにより在庫の見える化や歩留の可視化を行っている。

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一方で収穫は人の手で行い、スポンジではなく、職人技が必要とされる土での栽培にこだわるなど、300年以上続く農家の知見も活かされている。まさしくX-TECH的な取り組みと言えるだろう。

消費者に届くまでのプロセスにまでこだわっているのも舞台ファームならではだ。吉永氏は、次のように話す。

「美味しいものを安価に届けることはもちろんですが、私たちが作りたいものではなく、ユーザーの要望を意識しながら、プロダクトを開発しています。そのため、レタスは自宅で飾り、必要なときに千切って楽しむことができる仕様にしています」(吉永氏)

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同プロジェクトは、先ほど紹介したX-TECHプロジェクトのアワードで最優秀賞を受賞したり、東北経済産業局主催の「TOHOKU DX大賞2023」で審査員特別賞を受賞したりするなど、高い評価を得ている。

産学連携の活動についても積極的だ。例えば官との連携では、地場の米農家の海外進出を支援する。産学連携においては、東北大学や東京農業大学などと共同研究を行ったり、植物工場の生産物の生育に関するエビデンス集積に協力してもらったりしている。

「これまではファジーな感覚でやっていた感のある農業を数値化するなど、アカデミアの力を入れながら生産していくことにも挑戦しています」(吉永氏)

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現在の農業動向も紹介された。吉永氏によれば、舞台ファームが特別なわけではなく、個人農家の減少とともに、農業法人の大規模化が進んでいるという。

「販売する生産物の品種や販売ルートなどにも変化が見られ、このような傾向は今後ますます顕著になっていくでしょう」(吉永氏)

従来の農業のステレオタイプ的なイメージや価値観は、大きく変化していると吉永氏は強調する。その変化を後押ししているのが、まさにテクノロジーや異業種とのコラボレーション、オープンイノベーションなのである。

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実際、舞台ファームにもさまざまな領域でキャリアを積んだユニークな人材が入社し、活躍しているという。吉永氏は次のように述べ、セッションを締めた。

「農業は今まさに、異業種との組み合わせでイノベーションが生まれている状況です。可能性しかないと考えていますし、イノベーションは加速していると感じています」(吉永氏)

日本の防災DXを東北から実現しよう

プライムバリュー株式会社 吉田 亮之氏
プライムバリュー株式会社
代表取締役社長 吉田 亮之氏

NTTグループ在職中に宮城県内で東日本大震災を経験した吉田氏は、防災DXの必要性を強く感じ、2018年に「災害時の環境をデジタル化し、新しい当たり前を作る」というビジョンを掲げたプライムバリューを創業した。

災害時に自治体と企業間での支援要請を共通化する防災DXプラットフォーム「B-order」の開発に取り組み、2022年から提供を開始した。

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災害が発生すると、自治体は事前に協定を結んでいた企業や団体に支援要請を行うが、そこには課題があるという。例えば、以下のようなことが挙げられる。

●自治体が抱える平時の防災課題 ・協定先の担当者情報確認に時間がかかる

・支援要請のテストが出来ないので本番でうまくできるか心配
・備蓄品の在庫数が合わない
・消費期限管理ができていない
・消費期限切れ備蓄品の処分に困っている

●自治体が抱える災害時の環境課題

・支援要請が必要になった場合に管理に限界がある
・現場と本部の情報共有に時間がかかってしまう
・備蓄品の消費状況が分からない
・供給してもらったはいいものの精算処理が大変

「日本全国自治体の99%が電話やFAXといったアナログで行っており、東日本大震災の発生から13年経った現在でも変わっていません」(吉田氏)

それだけではない。事前の防災対策も含め、発災後の対応においても備蓄品の管理や処分、情報の確認や共有に手間がかかるなど、さまざまな問題がある。2024年1月に発生した能登大地震でも、まさにそのような課題が顕著に生じていたと、吉田氏は指摘する。

こうした課題が発生するのは、3年ほどを一区切りに人事異動が行われる自治体組織ならではの背景があるためだという。知見が残らず、改善が進まないといった現状が続いているのだ。

このような課題を解決するのが、プライムバリューが開発したB-orderである。3つの機能が搭載されており、要請機能においては自治体、企業どちらも無料で利用できる。
※避難所管理機能については開発中

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リリースから1年半経った現在では、宮城県に限らず、東京都など全国170自治体が導入。年内には300を超える自治体が導入する予定であり、企業においても大手スーパーマーケットチェーンや大手文具メーカーを中心に、すでに100社以上が導入している。

「今後5年以内には国内の大手企業のほとんどが導入すると考えていますから、まさしく共通化が実現できると考えています」(吉田氏)

BOSAI-TECH市場は成長を続けており、国内では約1800億円だが、グローバルで見ると約40兆円にも上ることから、「今後は国内から海外への展開も考えている」と吉田氏は明かす。

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B-orderの利用が広まっている理由の一つが、プロダクトの核となっているアカウントの概念である。アカウントを発行し、プロダクトを導入した自治体は、企業との連携だけでなく、他の自治体とも連携できるからだ。

これは自治体間で要請を出し合うという現場ニーズに応えたもので、結果として自治体、企業の連携が網の目のように広がっていく状況が、今まさに進んでいるのである。

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そしていずれは新しいデジタルインフラとして成長し、日本に定着することが希望だと吉田氏は述べ、次のような言葉でセッションを締めた。

「このようなプロダクトを開発したのは、やはり東日本大震災を経験した東北だからこそ。特別な思いがあります」(吉田氏)

テクノロジーで社会課題の解決を目指す仙台市と企業の取り組み

スカイライト コンサルティング株式会社 今野 博彦氏
スカイライト コンサルティング株式会社
東北支社長 今野 博彦氏

続いて登壇したのは、大企業からベンチャーまで、事業開発や企業変革といった各種事業支援を手がけるスカイライト コンサルティングの今野博彦氏だ。2018年、仙台市への移住をきっかけに東北支社を設立。東北の自治体や企業のオープンイノベーション、地域産業創出、官民連携による社会課題解決等に取り組んでいる。

その中の一つの事業が、仙台市と取り組むX-TECH関連のプロジェクトである。今野氏は、その中から、BOSAI-TECHについて詳しく紹介した。そもそもなぜ仙台がBOSAI-TECHに注力するのか。東日本大震災がもちろんきっかけではあるが、2015年に仙台で開催された第3回国連防災世界会議でまとめられた「仙台防災枠組2015-2030」の存在が大きいと言う。

そのため仙台市では単に自分たちの地域を守るためだけの防災ではなく、日本全国、さらには世界に貢献するような取り組みを目指しており、「野心的かつユニークな取り組みだと思っています」と、今野氏は述べた。

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具体的にはまさにX-TECHの内容であり「防災✕テクノロジー✕ビジネス」を融合した新たな解決策を生み出していこうとしている。2022年2月には「仙台BOSAI-TECHイノベーションプラットフォーム」も設立した。

現在は200以上の企業・団体が同プラットフォームに参画し、さまざまな課題をテクノロジーの力で解決すると同時に、ビジネスとして成り立ち、継続可能な仕組み作りに取り組んでいる。

中でも自治体の課題に対しては、関連のある知識や技術を持った企業が各種実証実験を行うなど、精力的に活動に取り組んでいる。自治体と町内会の情報連携など、具体的な事例が3つ紹介された。

先述したB-orderも、このような場から生まれたプロダクトである。特徴的なのは、参画している企業の多くはITの技術や知識は持っているが、必ずしも防災に関しては専門家ではなかった点である。

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自分たちの持つ知識や技術を使って社会課題の解決をしたい。そのような想いから参画している企業は多い。

そして、そのような企業や経営者の想いの実現に向け、仙台市はX-TECHで行われているプログラムや各種助成金など、支援を手厚く行っている。

「自らの技術を使って社会課題を解決したい。また、そのような取り組みをしている企業を探している方にとっては、仙台は非常にやりやすい環境だと思います。まずは、BOSAI-TECHのWebサイトを見てもらいたい」(今野氏)

「特に、ビジネスとテクノロジー両方の知見を持つ方であれば、仙台で活躍できると思いますし、地元の企業もそうした人材を求めていると思います」(今野氏)

テクノロジーの活用で、東北を再び熱く

株式会社楽天野球団 谷口 健人氏
株式会社楽天野球団
マーケティング本部
顧客戦略部 部長 谷口 健人氏

続いて登壇したのは、楽天野球団の谷口健人氏だ。谷口氏は、元々スポーツが好きであったこと、学生時代の部活動で戦略分析を担当していたことなどから、新卒で楽天野球団に入社。プロ野球チーム、楽天イーグルスの運営に関係する営業・MD・ファンクラブ業務など経て、現在はCRMを用いた会員組織・公式スマホアプリの運用および、顧客育成戦略を担当している。

「The Baseball Entertainment Company」を企業理念とする楽天野球団では、「強いチームの創造」「地域密着の実現」「健全経営の実現」という3つの経営方針が相互連動し、三位一体となることを目指している。

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その中のひとつ、健全経営を実現するためには適切な事業収入が必要不可欠であり、その中でもチケット・グッズなど主要となる収入を伸ばすべく、観客動員を確保することが重要である。

楽天野球団の観客動員数は右肩上がりで順調に伸びていき、2013年に日本一となるとさらに加速。2019年には約180万人もの数字を達成する。

だが翌年、コロナ禍となり激減。現在は改めて観客動員数を伸ばす活動に取り組んでいる。

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観客動員数は県内の経済波及効果とも連動しているため、地域にとっても重要な取り組みでもある。

では具体的に、どのような取り組みで観客動員数の再増加を実現しようとしているのか。楽天野球団では、大きく2軸で取り組んでいる。まずは行きたくなる、通いたくなる、魅力的な「ボールパーク」の実現だ。

野球好きはもちろん、野球に詳しくない子どもでも楽しめるような非日常的なエンターテインメント空間を実現している。グルメを充実させ、観覧車やメリーゴーラウンド、クライミング施設などを整備した。

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もう一つの施策が「スマートスタジアム」の実現だ。こちらは親会社がIT企業である楽天らしい、各種テクノロジーを利用したさまざまな取り組みである。まずは、1億人以上のユーザーを持つ楽天IDを活用した。

ファンクラブの会員IDと楽天IDを連携するとともに、グッズや飲食の利用時に楽天ポイントを付与。得たデータも活用することで、ファンクラブには入っていないスポーツ好きな楽天会員にも、親和性の高い商品をレコメンドするなどの取り組みも行う。

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さらに2019年からは、スタジアムにおける現金の使用を原則不可とした。入場に関してもQRコードを活用し、チケットレスとするなど、さまざまな取り組みを矢継ぎ早に実施していったのである。これらの取り組みの成果について、谷口氏は次のように述べた。

「会計時間の短縮、売上の増加、運営スタッフの適正な配置によるコスト削減など、スマート化を進め、データを蓄積・分析したことで、さまざまなメリットが生まれました」(谷口氏)

現在は、スマホアプリを活用した1to1コミュニケーションの強化を推進している。具体的には、試合のハイライトと連動した投票に参加できるなど、ユーザーが楽しんだり、ユーザー同士が交流できたりする仕組みの構築だ。

チケットを持っているユーザーに対しては、その日にスタジアムで行われるイベントを通知するといった取り組みも行っている。

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今後の施策に関しても、楽天が持つAIテクノロジーを活用して需要予測や各種分析の精度を高めていくことを目指す。

一方で、東北各地の球場で試合を開催することで、仙台以外の東北地方のファンを増やす活動も推し進める。「東北831万人をファンにするために、待つのではなくこちらから行く」と谷口氏は力強く語り、セッションを締めた。

「2013年に日本一を達成した際には、パレードに21万4000人ものファンが集い、東北が一気に熱くなった瞬間でもありました。このような状況や景色を、再び実現したいと考えています」(谷口氏)

【パネルディスカッション】仙台で産業・社会・事業の課題に取り組む理由

ここからは竹川氏がモデレーターとなり、登壇者によるパネルディスカッションが行われた。

●一番解決したい課題とは?

吉田:防災環境の改善ならびに共通化です。現在の構造は歪(いびつ)だと感じるからです。災害が発生した際、自治体は要請を出しますが、支援する企業が一社だけでは意味がありません。そして、このような課題に気づいている担当者も多くありません。東北発で、日本全体の同問題を解決したいと考えています。

今野:地方の学生はどうしても、仕事がないから卒業と同時に就職で東京に行きたいと言いがちです。将来、自分の子どもがこのような発言をするのは辛いので、解決していきたいと考えています。

中小企業も含め、仙台で暮らしながら経済が成り立ち、社会もでき上がっていく。暮らしやすさは間違いないので、このような経済や社会の実現を進めていきたいと考えています。

谷口:仙台の人口減少です。大阪の人たちからは、なぜ仙台に行ったのかと聞かれることがありますが、ご飯は美味しいし、まちはコンパクト。人もまちも温かいのも魅力です。大阪からも、飛行機を使えば2時間ほどです。

例えば、私が被災地を見てまわっていたときも、ある女性が声をかけてくれ、車に乗せてもらい案内をしてくれました。このような住民や住みやすさなどの魅力をしっかりと伝えれば、人口減少は食い止めることができると考えています。

吉永:食料生産の課題を解決したいと思っています。東北だけで見れば、食料自給率は100%を超えていますから、日本全体の食料生産を支えることができると考えています。

私は学生時代から東北在住ですが、東北は学生支援も含め、自治体のプログラムがかなり充実しているのも魅力です。学生時代は大いに活用させてもらいましたし、先日も仙台市のプログラムでシリコンバレーに行かせてもらいました。このような機会を与えてくれた東北、仙台に還元、恩返ししたいと考えています。

●どのような人が活躍しているのか?

吉田:当社のメンバーには東北で被災した人もいますが、それだけではありません。社会課題を解決したいという想いや、プロダクト愛が強いメンバーが集まっていると感じています。

中途採用がメインなので、現在新卒社員はいません。業界はさまざまですが、IT領域の人が増えています。防災には携わっていなかったものの、防災に対する思い入れがある方が多いですね。女性社員の割合は、現在は4割ほどです。

今野:BOSAI-TECHに参加している企業を見ると、吉田さんほどの熱い思いではないとしても、事業を面白がれる人たちが活躍していると思います。地域貢献に対する意識は当たり前です。女性の雇用は企業で差があると思いますが、当社の場合は女性が大半で、現在仙台支社では4名のメンバーが働いています。

手挙げも重要だと思っています。実際、当社のメンバーも私が引っ張ってきたわけではなく、社内の手挙げ制度による異動です。いずれは10人くらいに増えたらと考えています。

谷口:テクノロジーは一見華やかに見えますが、結果が出るまでに時間がかかることもあり、裏側はしんどい仕事です。そうした苦しいこともある中で、強い想いを持っている、花が開いた姿を想像して、困難さえも楽しめる人材が適していると思います。

当社の場合は若いメンバーが多く、女性は4割ほどです。キャッシュレスプロジェクトを仕切っていたのは女性の本部長であり、役職者にも女性が登用されるなど、男女関係なく活躍しています。

吉永:当社も男女は関係ありません。また、ITの知識を持っているといったバックグラウンドもあまり関係ないように感じています。実際、僕もプログラムは書けませんし、未来戦略部にはITのキャリアを持っている人がいません。でも、外から来たからこそ、目の前の課題に気づくことができる人がいる。このような人材が活躍していると思います。

【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答

パネルディスカッションの後は、イベント参加者からの質問に登壇者が回答した。抜粋して紹介する。

Q.異業種企業が地方の農業に参入するメリット・デメリットは?

吉永:異業種企業は受け入れられづらいという傾向はあると思います。一方で、各地方にオープンマインドな農家はあるので、そういった農家を入り口にしてテクノロジーを広げていくのがいいと思います。行政だけで進めても、農家がついてこないからです。地方でのデメリットはないと考えています。

Q.レタスの製造工場について、人の役割、価格、課題、今後の取り組みなどは?

吉永:20人くらいで収穫を行い、10人くらいが生産管理や設備工事などに携わっています。画像認識などのテクノロジーを使うことで、収穫も人を介さずにできないかトライしていますが現状は難しいですね。現状は、テクノロジーが相当発展しないと実現しないと考えています。

一方で、自動化を主軸に考えているわけではありません。雇用を生むこともメリットであり、実際、地元の方を採用しています。いずれ生産管理をテクノロジーで担えるようになったとしても、食堂で料理を作ったりする業務にシフトするなど、皆がハッピーになるようにしたい。そのようなテクノロジーと人の融合が大事だと考えています。

価格帯は通常市場の状況により変わりますが、工場の場合は生産が安定しているので同じ価格で出せるのも特徴です。

Q.自治体との協業はIT化に対する拒否感や体制変更など、難しい面も多いと思う。仙台市側に秘訣があるのか?

今野:仙台市だけでやっていては、頓挫すると思います。予算や人数は限られていますし、優先順位も異なるため、少しのズレで終わってしまうからです。そこで仙台BOSAI-TECHでは、宮城県はもちろん、日本中の自治体に参加してもらっています。

B-orderがいい例です。数多くの自治体と取り組むことで、課題をフィットさせていく。数でカバーするイメージです。今回はたまたま最初の起点が仙台市ならびに、仙台の企業であったということだと思っています。

Q.仙台市で取り組む魅力、特にテクノロジー観点での魅力は何か?

谷口:東北は野球を広めたいエリアでもありました。コンパクトで気候も温暖。ビジネス交流や横の連携も取りやすいため、何かをチャレンジするには最適の場所だと思っています。

今野:満員電車に乗ることなく、基本的に徒歩圏内で出勤することができる、というのがまずは大きいです。東京の当たり前が仙台ではそうではないケースがあるため、仙台でやることで一番になれる。注目される機会も多いと感じています。

吉永:仙台市は補助金などの支援が十分にあります。デジタル化、グローバル化に関しても同様のため、挑戦しやすい自治体だと感じています。地下鉄が充実しているので、本当に住みやすいと思います。

東日本大震災以降、東北には縁もゆかりもなかった人も関わるようになり、化学反応が起きています。優秀な人材も多く集まっていて、楽しくやりがいを感じています。

吉田:自治体としての本気度を感じます。だから、施策が手厚いのだと。実際、政令指定都市の中でもスタートアップやデジタル化への支援は上位にランクインしています。東京から約1時間半で行けますし、いいまちだと感じています。

竹川:仙台市の本気度は我々も感じていて、その本気度に東北大学や東北電力などの周りも共感している。そこが一つ大きなポイントだと考えています。G検定合格者の順位が上がった要因も、このあたりにつながると考えています。産官学の距離が近いという話が出ましたが、物理的な距離も近く、歩いていける環境です。

仙台市
https://www.city.sendai.jp/
株式会社zero to one
https://zero2one.jp/
株式会社舞台ファーム採用情報
https://butaifarm.com/recruit/
スカイライト コンサルティング株式会社
https://www.skylight.co.jp/
株式会社楽天野球団採用情報
https://www.rakuteneagles.jp/recruit/

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