コードの質向上に向けた自動テストの重要性

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コードの質向上に向けた自動テストの重要性
自動テストはプログラムが正しく動作しているかを確認するだけでなく、開発効率の向上やバグの早期発見につながるという点で現代のソフトウェア開発において欠かせない要素の一つとなっています。一方で、自動テストが導入されているプロジェクトは約半数ほどにとどまっているという調査も存在しています。この記事では自動テストの概要を踏まえつつ、自動テストを導入することで得られる効果や、その重要性について具体的に解説しています。

こんにちは、 TECH PLAY Academyでメンターをしている久保です。本記事では自動テストの効果と重要性に関して執筆します。

TECH PLAY Academyでは、企業のエンジニア向けにプログラミングの技術研修を提供しています。新卒・既卒エンジニアを対象に、モバイル、Web開発、フルスタックといった幅広い分野での技術研修を行い、受講者が短期間でスキルを習得できるよう、充実したサポート体制を整えています。研修では単に動くプログラムを作成するだけでなく、コードの品質や保守性、効率的な開発手法についても丁寧に指導しています。その一例として、自動テストの重要性や実践方法について学ぶ機会を設け、受講者が高品質なソフトウェアを開発するスキルを身につけられるよう支援しています。

自動テストは、現代のソフトウェア開発において欠かせない要素の一つです。自動テストを行うことでプログラムが正しく動作しているかを確認するだけでなく、後から行われる変更や機能追加の際にもその影響を素早く検知できるため、開発効率の向上やバグの早期発見につながります。しかし、JETBRAINSが行った調査によると約半数のプロジェクトでのみ自動テストが導入されていることが示唆されています。そこでこの記事では自動テストの概要を踏まえつつ、自動テストを導入することで得られる効果や、その重要性について具体的に解説します。また、弊社が提供する研修の中でどのように自動テストを教え、活用しているかについてもご紹介します。

自動テストの概要と効果

自動テストとは?

自動テストとは、プログラムが意図したとおりに動作するかどうかを確認する作業を、自動化された方法で行うことを指します。通常、テストの内容をコードとして記述し、そのテストコードを実行することで、プログラムが期待どおりに動いているかをチェックします。たとえば、「ボタンを押したら正しい画面が表示されるか」「計算結果が正しいか」といった確認作業を自動で行う仕組みです。

自動テストを実装する際には、アプリを動かすコード(実装)と、それをテストするためのコード(テストコード)を対応する形で作成します。たとえば、計算機アプリを作成する場合、2 + 3 を計算する関数を実装した後、それが正しく5を返すかどうかを確認するテストコードを作成します。このように、特定のモジュールを個別に確認するテストは、単体テスト(ユニットテスト)と呼ばれます。

自動テストは単体テストにとどまらず、さまざまなレベルで行われます。代表的なものには以下のテストがあります。

  • 単体テスト:システム内の単一のモジュールが正しく動作するかを確認します。
  • 統合テスト: システム内で複数のモジュールを組み合わさったときに、全体として正しく動作するかを確認します。
  • 機能テスト(APIテスト・UIテスト):個別の機能が正確に動作するかを確認します。バックエンドの場合APIテスト、フロントエンドの場合はUIテストがあります。
  • E2Eテスト・システムテスト:システム全体が正確に動作するか確認します。ユーザー視点で行うE2Eテスト、開発者視点で行うシステムテストがあります。
  • ユーザービリティテスト・パフォーマンステスト・負荷テスト:正確に動作するだけでなく、その品質を確認します。ユーザーにとって使いやすいかを確認するユーザビリティテスト、応答時間や処理速度を確認するパフォーマンステスト、システムが一定の負荷に耐えられるかまたその場合の挙動を確認する負荷テストがあります

自動テストのメリット

自動テストは、ソフトウェア開発においてさまざまなメリットをもたらします。以下に主なポイントを挙げて説明します。

1. リファクタリングの安全性

ソフトウェア開発では、コードの構造を改善するリファクタリングが必要になる場面が多くあります。リファクタリングは、機能の挙動を変えずにコードを読みやすくしたり、保守性を高めたりする作業ですが、その際に意図しないバグを生むリスクがあります。このような問題を防ぐのがリグレッションテスト(回帰テスト)です。リグレッションテストでは、既存の機能がリファクタリング後も正しく動作するかを確認します。

自動テストが実装されていると、リファクタリング時にすべてのテストを簡単に再実行でき、変更によるデグレ(既存機能の劣化)を防ぐことが可能です。これにより、デグレを恐れてリファクタリングを敬遠することなく、開発者は安心してコードを改善することができます。

2. ドキュメントの代わり

テストコードは、単にプログラムを確認するだけでなく、そのコードが何を意図しているのかを明確に示す役割も果たします。たとえば、ある関数が特定の入力に対してどのような結果を返すべきかをテストコードで記述することで、その関数の仕様が自然と明文化されます。これはテストコードが仕様書の代わりになることを意味します。

通常のドキュメントでは注意を怠るとドキュメントの内容と実際の仕様に乖離が生じることがあります。しかしテストコードは乖離があるとテストに失敗するため、実際に動作を確認できる「生きたドキュメント」として機能し、コードを理解する手助けとしても非常に有効です。

3. 変更の影響範囲の確認

ソフトウェアの変更が大規模になればなるほど、どの部分にどのような影響が及ぶのかを予測するのは難しくなります。しかし、自動テストが整備されていれば、変更後にすべてのテストを実行することで、どこに問題が生じているのかを迅速に特定できます。たとえば、新しい機能を追加した際に別の機能が動作しなくなった場合、テストの失敗箇所から問題の発生箇所を見つけることができます。これにより、影響範囲を正確に把握し、修正にかかる時間を大幅に短縮できます。

自動テストは、単にバグを防ぐためのツールにとどまらず、開発プロセス全体を効率化し、コードの品質を保つための強力な手段です。リファクタリングの安全性を高め、仕様の明確化を助け、変更の影響をすぐに確認できる環境を整えることで、開発チーム全体の生産性を大きく向上させることができます。

手動テストと自動テスト

多くのメリットがある自動テストですが、実際の多くの開発現場では、自動テストに関する知識不足や、プロダクトのリリースを急ぐあまりテストコード実装の工数を削減したいという理由から、自動テストの実装がスキップされることがあります。しかし、テストには手動で行うべきものと、自動化に適したものがあり、それぞれの目的や特性を理解して適切に使い分けることが重要です。 

自動テストが適している内容

自動テストは、繰り返し行われるテストや、複雑な計算やパフォーマンス測定が必要なテストに向いています。以下は自動テストで効果を発揮する主な内容です:

  • リグレッションテスト

    リファクタリングや機能追加の際に、既存の機能が正しく動作していることを確認するためのテストです。何度も繰り返し実行する必要があるため、自動化することで作業効率が大幅に向上します。

  • 負荷テスト

    システムが一定の負荷に耐えられるかを確認するテストです。例えば、同時接続ユーザー数が増えた場合にシステムがどのように振る舞うかを調べる際に使用します。シミュレーションのために自動化が不可欠です。

  • パフォーマンステスト

    アプリケーションの応答時間や処理速度を測定するテストです。数値データの正確な収集が求められるため、自動化することで結果の精度が保たれます。

手動テストが適している内容

一方、手動テストはユーザー視点の体験や予測不可能な操作を検証する際に有効です。以下は手動テストが適している主な内容です:

  • ユーザビリティテスト

    実際のユーザーがソフトウェアをどのように使用するかを観察し、使いやすさやデザインの問題点を見つけるテストです。ユーザーの感覚や主観的な意見が必要となるため、人間の手で行うのが適しています。

  • アドホックテスト(Ad-hocテスト)

    事前に計画やテストケースを用意せず、自由に操作してバグを探すテストです。直感や経験に基づいて予期せぬ問題を発見するため、機械的な自動化では対応できない領域です。

研修で学べる自動テスト

自動テストは、現代のソフトウェア開発において欠かせない技術です。弊社の研修では、受講者がこの重要なスキルを学び、現場ですぐに活用できる力を身につけるためのカリキュラムを提供しています。以下のような実践的な内容を通して、自動テストを深く理解していただけます。

テスト駆動開発(TDD)の実践を通じた学び

受講者が研修中に取り組む課題は、あらかじめ用意されたテストケースを満たすようにコードを作成する形式で進められます。この流れはテスト駆動開発(TDD)を体験する構造になっており、テストの重要性や、コードの品質を保つための考え方を自然と学ぶことができます。

PR形式での課題提出とCIを活用した自動テストの実行

受講者は、完成したコードをPull Request(PR)形式で提出します。この際、Continuous Integration(CI)の仕組みを活用して、自動的にテストが実行され、レビューが行われる環境を提供しています。この仕組みにより、自動テストが実際の開発フローでどのように役立つかを体感できます。

幅広いカリキュラムでテストスキルを習得

弊社では研修カリキュラムに応じて、以下のように段階的にテストスキルを学べる構成となっています。

  • **基本的な単体テストの書き方:**テストフレームワークの使い方や基本的なテストケースの作成方法からスタートします。
  • **非同期処理を伴うテスト:**モックやスタブを活用した非同期処理のテスト方法を学びます。複雑な依存関係を管理するスキルを習得できます。
  • **UIテスト:**実際のユーザー操作をシミュレーションするUIテストを学び、フロントエンドの品質保証の重要性を理解します。

テストコードを書く経験を積むことで、現場でアサインされた際には、テストを意識してコードを設計する力が養われ、より堅牢でメンテナンス性の高いコードを書くことができるようになります。また、依存関係が複雑なコードを読み解く際にも、その複雑性の背景を理解しやすくなり、テストを通じて既存コードの動作や意図を把握する手助けとなります。このように、テストを書くことは単なる品質管理だけでなく、コード全体の理解や改善にも大きな効果をもたらします。

まとめ

本記事では、自動テストの重要性について解説しました。自動テストとは、プログラムが意図した通りに動作しているかを確認する作業を自動化する方法で、単体テストや結合テスト、エンドツーエンドテストなどの種類があります。これらを継続的インテグレーション(CI)に組み込むことで、コード変更時に自動的にテストが実行され、問題を早期に発見できる仕組みが整います。

自動テストにはさまざまなメリットがあります。例えば、リファクタリング時のバグ防止や品質維持、テストコードを活用した仕様の明確化、そして変更が及ぼす影響範囲の迅速な把握が可能です。これにより、開発効率が向上し、高品質なソフトウェアを安定して提供できます。TECH PLAY Academyでは、研修を通じてこうした自動テストの基礎から応用までを指導し、受講者が実務で活用できるスキルを習得する支援を行っています。

ご覧いただきありがとうございました。ご質問やフィードバックがございましたら、お気軽にお知らせください。

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