エンジニアが創造するITオペレーションにおける未来と現実(イマ)~ Accenture Tech Summit ~
Outsourcing Self-Service Portal (AI + RPA + SharePoint)導入
最後は田中伸明さんによる事例の紹介です。
田中伸明(たなか・のぶあき)/アクセンチュア株式会社テクノロジーコンサルティング本部 ITアウトソーシングデリバリーグループ マネージャー
田中さんはまず「NewIT」の活用意義について「先程の事例のように新たなサービスを生み出すだけではなく保守やアウトソーシングの領域でのコスト低減・品質向上の手段となる」と切り出します。
続けて田中さんはAI活用の狙いを紹介。
「私が担当する某製造業者では、RPAとAIの両方を活用するプロジェクトがスタートしました。具体的には、AI技術で日本語文章の意味を解析することで、これまで自動化が困難だった作業を自動化することが狙いです。
例えば、ユーザーから『基幹システムのデータを取り出すことはできますか?』と問い合わせがくることがあります。運用担当者はこの質問がFAQにあるのか検索し、FAQに存在すればその内容を伝え、FAQになければ調査を実施して回答しますよね。
この『FAQ内に問い合わせ内容が存在するかどうか』の判別を自動化しようというのが今回の試みです。しかし、同じ内容ではあっても『データを取り出す』『データを抜き出す』『データを出力する』『データをエクスポートする』などユーザーによって表現は異なります。そこで、表現の揺らぎを吸収するため言葉の意味を捉えることが必要となります」(田中さん)
田中さんは実際にどのような処理を行ったのか次の通り説明します。
形態素解析
「MeCab」を活用して文章を形態素に分割する単語のベクトル化
あらかじめツール内で保有している単語のベクトル値を質問文・FAQを構成する各単語に付与する文章のベクトル値算出
単語毎のベクトル値を演算することで、文章としてのベクトル値を算出質問に近いFAQの特定
FAQ,質問分それぞれのベクトル値をもとに、ベクトル空間内の距離で判断する
「実際にツールを開発してみた後、どの程度の精度があるのかを検証しました。
まずはFAQの内容を、同じ意味の他の言葉で言い変えたテストです。こちらは全24問中21問、つまり88%の精度を達成することができました。『Watson』と比べるとやや低い数値ではあるのですが、開発したばかりの数字として考えれば上々だと思います。反面長文による問い合わせについてのテストトでは正答率が33%と低い結果となり、これらツール特性を踏まえた活用方法を検討しました。」(田中さん)
田中さんは次にRPAの導入について説明します。
「RPAは自動処理ですので、処理の入口と出口は固まっている必要があります。また、その特徴として『少量多品種』というこれまで改善しにくかった領域に適応できる点が挙げられます。
例えば、この事例では申し込みフォームから送信された内容を手作業で入力していた部分に適用することを考えました」(田中さん)
最後に田中さんは「AIとRPAの活用を実際に行った上で、さらに『SharePoint』を組み合わせました。それにより『Self Service Portal』として標準化を行い、自動化ソリューションのリリースに至りました」と発表して講演を終了しました。
Q&A
講演の終了後はQ&Aタイムです。
Q. タスク管理ツールに「Redmine」を選んだ理由は? ガントチャート機能はWBS的に利用している?
田中(慎) オープンソースでお金が掛からないこと、コミュニティがしっかりしていること、社内に技術者がある程度いることが主な理由です。
Q. 他の企業との協業を上手く進めるポイントは?
田中(慎) あまり新しい手法ではないのですが、私たちは「ゴールがなにか」と具体的に設定し、そのゴールを達成するために「いつまでになにをしなければいけないのか」というマイルストーンを元に各社に割り振りを行います。
そこで大切なのは、各社に丸投げするのではなく全体のPMとして、提出してきてスケジュールに対してフィージビリティを見極めることです。それにより各社はどのくらいの粒度でタスクを管理すればいいのかを把握しています。
Q. 「ハイブリッドアジャイル」において、アジャイルとウォーターフォールを切り分ける基準は?
田中(慎) 元々ウォーターフォールが前提となっている領域でアジャイルを導入してみても上手くいかない経験がありました。そこで、以前からガチガチのウォーターフォールであればそのまま、無理してでもアジャイルに移行することで発展が見えるならばアジャイル、新しい領域にはアジャイルのように分けています。
テーマ別トークセッション
講演とQ&Aは約2時間半ノンストップで進行しました。10分ほど休憩を取った後は、軽食を食べながらの「テーマ別トークセッション」です。
「エンジニアの未来と現実&デザインシンキング」をテーマにしたテクノロジーセッション。
「クラウド、EC、オムニチャネル」をテーマにしたテクノロジーセッション。
「AI、RPA、自動化」をテーマにしたテクノロジーセッション。
アクセンチュアの会社紹介。
キャリアトーク。
参加者は自分の興味があるテーマでトークが行われている場所を自由に行き来して、1時間のトークセッションもあっという間に終了時間を迎えました。
今回主催したアクセンチュア サービスデリバリーグループの採用情報はこちら
https://www.accenture.com/jp-ja/careers/application-outsourcing