【レポート】IBMのデータサイエンティストたちが描く未来 〜人の知能拡張を目指したビッグデータ活用事例とAI技術〜

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地理情報を活用した製品販売の最適化

続いては「地理情報」をテーマとした黒木さんの事例ディスカッションを紹介します。

黒木俊介(くろき・しゅんすけ)/日本アイ・ビー・エム株式会社 グローバル・ビジネス・サービス事業 マネージングコンサルタント&データサイエンスティスト。

まず黒木さんは、IBMが提供する「Metro Pulse」を紹介します。

「『Metro Pulse』は、都市に関連した様々なデータを一元的に集約し、地図上でビジュアライズすることで意思決定につなげるためのプラットフォームです。

例えば、小売店での地域ごとの需要予測や、天気予報を活用した商品の発注などに活用するわけですね」(黒木さん)

この「Metro Pulse」でどのようなデータを扱えるのでしょうか? 黒木さんは次の通りデータの種類を列挙します。

  • ソーシャル
  • 消費者の行動
  • POSデータ
  • IoTのセンサーデータ
  • サードパーティ
  • 自社保有のデータ

「お客様は、自社内外にこだわらず様々なデータを利用することが可能です。

ソーシャルであれば、『Instagram』『Facebook』『Twitter』『Pinterest』『Snapchat』『LinkedIn』などのデータがありますし、サードパーティとしては提携しているウェザーニュースのデータも持っています。

もちろん、自社で抱えているデータを統合することも可能です」(黒木さん)

黒木さんは「Metro Pulse」を導入した事例として、大手消費財メーカーを挙げます。このメーカーでは、アイスクリームの販売場所の選択と製品ミックスの最適化を目的に「Metro Pulse」を導入しています。

さらに、黒木さんは国内の自動販売機を扱う企業の事例を紹介します。

「このお客様は、自動販売機の配置、プロダクトミックスをレコメンドするエンジンを提供している事例です。

お客様からは、『売上』『位置情報』『商品』『競合』などのデータを受領します。そして、『Metro Pulse』としては『社会人口データ』であったり、施設名と緯度経度が同じ情報となった『Point of Interest(POI)』などを提供しています。

これらふたつのデータを組み合わせるほどで、『自動販売機の配置』『プロダクトミックス』のレコメンドが行えるようになるわけです。

さらにこの『Metro Pulse』は、現在も進化を続けています。今後の展開として各業界向けのインダストリー標準の解析モデルを、クラウドサービスとして広く展開することも計画しています」(黒木さん)

最後に黒木さんは実際に「Metro Pulse」の画面を使ったデモを疲労して講演を終了しました。

自動車IoTデータを活用した新顧客サービス開発

最後の事例ディスカッションは髙橋さんの担当です。

髙橋敏樹(たかはし・としき)/日本アイ・ビー・エム株式会社 グローバル・ビジネス・サービス事業 アソシエイト・パートナー。カリフォルニア大学卒。卒業後はSPSS社に入社し、同社がIBMに買収されたことをきっかけに2009年にIBMへ参画。

髙橋さんが紹介するのはIoTデータを活用した「テレマティクス保険」の事例です。まず、髙橋さんはテレマティクス保険の概要を次のように紹介します。

■概要
過去の事故履歴だけではなく、日常でどのような運転をしているのかなど『運転性向データ』を活用して、より精緻にドライバーのリスクを判定した自動車保険

■2つのタイプ

  • PAYD型
    走行距離に応じて保険料が変わる

  • PAYD型
    走行距離だけではなく、より詳しい運転性向もふまえて保険料を算出する

■背景
国交省によるテレマティクスの後押し、IoT・ビッグデータ解析技術の進展

■目的

  • 自社アプリから取得する走行データに、走行外データや自己データを組み合わせて事故発生率が高い事象の予測モデルを構築する
  • 天候、道路など外部環境データを活用して、諸条件でのドライバーの対応を分析する
  • 上記などを活用して5年のスパンで新たな保険サービスを開発、社会貢献や収益の向上を目指す

続いて髙橋さんは商品のコンセプトを説明します。

「まず第一弾としては、高齢者の事故緩和を目指しました。『事故防止・家族とのつながり・見守り』をコンセプトの軸とし、スマートフォン向けアプリで様々なサービスを提供します。

具体的には、まずは運転時のデータが取得できるように『タグ』という機器を車両に設置します。その『タグ』から運転性向のデータが送信されてくるわけですが、そのデータを私たちのサーバーでロジック判定します。

そして、例えば『リアルタイムアラート』をサービスとして提供しています。『危険な運転』を検知したら、家族にその情報を伝えたりするわけですね。その他にも重大事故時に自動通報したり、安全運転レポートをお届けしたりしています」(髙橋さん)

さらに高橋さんはこのコンセプトを実現するために作成した実際のプロジェクトスケジュールや、ビジネス要件定義書を参加者へ共有しました。

最後に参加者からの質問を紹介します。

Q. どのように「危険な運転」はどのように定義している?

「『こういうときは危ないだろう』という一般的な常識、さらに過去の事故例を使ってモデルを作っています。今後データが貯まっていけば、より精緻なモデルができるでしょう」(髙橋さん)

Q. 「事故を起こしやすい人」に共通のパターンはあるのか?

「詳細ならロジックまでは明らかになっていないが、海外の事例も含めて計測項目をみると影響がありそうなものはわかります。

ただ、今回の取り組みのように、特定の状況下での影響まではわかっていないのが正直なところです」(髙橋さん)

Q. 事故にも様々な要因があると思うが、事故の分類は行っているのか?

「現状はデータが少ないこともあり、事故を分類するモデルはありません。ただ、保険会社としては最終的に『補償額が大きくなりそうな事故』などの分類をするかもしれません」(髙橋さん)

AIエコシステム時代に向けて ~ 単独AIから繋がるAIへ ~

最後は再び山田さんによる講演です。

山田さんの講演は「AIがもたらす5年後の世界を勝手に予想したいと思います」とスタートしました。

「AIは、データとアルゴリズムのコンビネーションで性能が決まります。現在、ディープラーニングを代表にアルゴリズムの研究は進んでいますよね。しかし、データはサイロ化されており、数が爆発的には増えていない状況です。このままではAIに未来はありません。

データの80%は企業内に存在していると言われています。各企業がデータソースを共有することができれば、その意義は大変大きなものでしょう。しかしながら、競合とデータを共有することは現実的ではありません。

そこで、専門領域の知識をもったAI同士が形成するネットワークが生まれるのではないでしょうか。企業の外にデータは出さず、AIのレイヤーで情報交換するイメージです。このような世界を構築しないと、AIの未来はないと私は考えています」(山田さん)

では、AI同士がエコシステムを形成する時代とはどのようなものなのでしょうか?

「まず大切なのは『社外にある賢いAI』の知識をいかに活用するかが競争優位を構築するポイントになるでしょう。どのAIがどの領域を得意としているのかを、DNSサーバーのような仕組みで管理していく必要があります。

開発者の視点では、『Watson』のAPIに加えて、他社やオープンなライブラリーが標準APIを通して活用できるようになっているはずです。

また、一方で社内に乱立するAIを管理する機能のニーズがましていくと考えています。例えば、外にもらしてはいけないことを制御するゲートキーパーや、社外からの質問責めを防御する機能が求められるのではないでしょうか。これらを含めた、エンタープライズのAIに対するニーズはさらに高まっていくに違いありません。

本日は私たちが勝手に予測している世界観をお話しましたが、是非みなさんも5年後を見据えた意見をお聞かせいただければうれしいです。ありがとうございました」(山田さん)

懇親会!

イベント終了後は懇親会のスタートです!

当日は天候が悪く、ピザが懇親会の開始に間に合わないというアクシデントもありましたが、参加者のみなさんは一切気にすることなく、積極的にコミュニケーションをとっていたようです。

またのご参加を心よりお待ちしています!

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