多くの失敗談と1つの成果から考える──生き残るために情報システム部門が変革すべきこと 『イベントレポート/<今こそ強いIT戦略部隊へ>生き残るために情報システム部門が変革しないといけないこと ~生存者からのメッセージ~』

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「ビジョンはあるけど実装イメージはない」「やりたいことがあるけど組織が変わらない」「経営陣に一度提案したけど理解が得られない」「社内でロールモデルがない」。情報システム部門のエンジニアの中には、そんな悩みを抱えている人も多い。情報システム部門において変革を加速させ、新たな価値を創ってきたフジテック・友岡賢二氏、ロケスタ・長谷川秀樹氏、パーソルホールディングス・内田明徳氏にその体験とこれからの情シスがどうあるべきか語っていただいた。
多くの失敗談と1つの成果から考える──生き残るために情報システム部門が変革すべきこと  『イベントレポート/<今こそ強いIT戦略部隊へ>生き残るために情報システム部門が変革しないといけないこと ~生存者からのメッセージ~』

「現場に溶けよ!」フジテックIT部門の変革全記録」

最初に登壇したのは、フジテック株式会社 常務執行役員 情報システム部長 友岡賢二氏。3つのエピソードをもとに、現場の課題を洗い出し、改革を導き出すヒントを語った。

Alt text フジテック株式会社 常務執行役員 情報システム部長 友岡 賢二氏

●エピソード1:小さな課題を複数見つけ、とにかく成果を出す

キャリア採用でフジテックに入社し、CIOに就任した友岡氏。外から来た者がカルチャーの異なる組織でいかに短期で結果を出すかという課題への参考書として彼が紹介したのは、マイケル・ワトキンス著の「ハーバード・ビジネス式マネジメント 最初の90日で成果を出す技術」。

キャリア採用でフジテックに入社し、CIOに就任した友岡氏。外から来た者がカルチャーの異なる組織でいかに短期で結果を出すかという課題への参考書として彼が紹介したのは、マイケル・ワトキンス著の「ハーバード・ビジネス式マネジメント 最初の90日で成果を出す技術」。

緒戦で取り組む問題は多くても2つか3つまでにすること。1つだけでは失敗するとそれで終わってしまう。チャレンジングなものを入れて、1つは大成功、1つはそこそこ成功、もう1つはちょっと失敗するくらいを想定して行う。そうするとここまではこの組織ではできる・できないというリトマス試験紙になります」

すぐに着手できる有望分野で、パイロットプロジェクトを立ち上げる」こと。早い時期にプロジェクトを成功すれば、職場の士気は一気に高まる。小さな成功を緒戦で成功することが重要だ。

改革の旗手を育てること。進取の気性に富み、あなたの計画に手を貸してくれるような意欲的な部下をみつけ抜擢すること。

緒戦で圧勝すること。誰の目にも明らかな変革をし、自分の有用性を証明する。そして新たなロールモデルを示し、成功体験をチームで実感する。こういったことをやらないとうまくいかないのだという。

「フジテックで最初に見つけた課題は、非常に小さなものでした。スタッフが営業に同行した際、カバンを見せてもらうと、様々な情報を紙に印刷してで持ち歩いていた。そしてスタッフ間のコミュニケーションでも見えない部分でLINEが使われているケースもあった。モバイルとクラウドで働き方を変革するべく『働き方改革チーム』を立ち上げました」

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フジテックがツールとして導入したのは、GoogleのG Suite。BYODもOKにし、全国のすべての拠点にWi-Fiを設置した。営業のカバンから紙がなくなり、シャドーIT利用もG Suiteに置き換え、働き方は大きく変わった。

●エピソード2:現場に足を運んで課題を見つける

自分たちが現場に足を運ぶことが重要だ。現場の人たちを会議室に集めて話しを聞いても、現実は見えてこない。自分たちが現場に足を運び、現場の課題を自分の目で見て共感することで、課題が自分化できる。自分の頭で解決策を考え、自分で手を動かして実装する。そしてそれを持ってまた現場に足を運ぶ。こういったサイクルを回して行く事が重要だ。

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●エピソード3:PDCAではなく、DCAPを回す

「私はツール導入の際、PDCAではなく、DCAPを回すと言っています。良さそうなサービスを最低数購入もしくは無償で利用→パイロットプロジェクトで実装して比較検討→ベンダー営業と折衝して最終決定するのです。いくつか候補があれば、それらを実際にパイロット導入で使ってみる。現実のプロセスに合わせて実装して、問題を本当に解決できるツールかどうか判断する。ベンダーの営業と詳細を検討するのはその後です。検討に時間をかけるより、トライアンドエラーを実際に行動した方が学びは大きいからです」

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大事なのは打率(ROI)を上げるより、打席数(安打数)を増やすこと、お金より時間を重視すること。お金は借金できるが、時間は取り戻せません。早く失敗して早く修正することが大事だという。多様性を容認することも重要だ。どんどん新しいモノを容認する。

最後に、イノベーションの興し方のコツをいくつか紹介して発表を締めくくった。

「2-6-2の法則の、結果を出している上位2割の人がパフォーマンスを出すために必要なツールを選ぶ」こと。そうするこで、組織がその人たちに引っ張られていくからだ。

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「マーケティングの世界ではキャズムを超えよとよく言われますが、ツールの普及も同じです。まずはイノベーター、アーリーアダプターにレコメンドをして、キャズムを超えたら自然に広まります。

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「会社の最も脆弱なところ、誰も守っていないので、逆に誰からも文句も言われないところを上手に自分たちで手を挙げて、言わばハッキングし、会社の穴をふさぐ。」

「大企業の場合は、出島作戦も有効。グローバル企業なら、日本が無理なら海外の新興国でやってみる。といったように環境を上手く選別することも重要。」


変革まっただ中!パーソルグループの成功と失敗

続いて登壇したのは、パーソルホールディングス株式会社 グループIT本部 本部長 内田明徳氏。パーソルグループはテンプスタッフやインテリジェンスなどの人材系の企業が統合してできた会社。現在、内田氏はCIOの見習い的な立ち位置だという。変革のまっただ中である情シス苦労話が語られた。

Alt text パーソルホールディングス株式会社 グループIT本部 本部長 内田明徳氏

●転職して3年で、ようやく攻めに転じた内田氏

内田氏がパーソルホールディングスに転職した理由は、前職の会社が、異動が非常に多かったこと。それでは成果が出しづらいと思ったという。そこで変革を求めおり、腰を据えて取り組める場所に転職したいと、統合直後で困っているパーソルに転職した。

「当時はCIOがいましたが、今はその人が転任したので、私がCIO的な役割を務めています。ですが、入社してみたら、思ったより複雑でひどい状態でしたね。私がパーソルでやりたいことは、ITをクリエイティブな仕事にすること。そのためにもプレゼンスの高いIT組織を作ること、そして人財が育つ組織を作ることです」

転職して3年が経ち、当時は3万人の会社を30人で回していたが、今はその3倍の90人まで増員。そしてMUST案件として、統合・セキュリティ・EOSLを普通に回せる組織にし、オペレーションを改善した。3年かかったが、ようやく攻めに転じる局面に至った。

「パーソルグループは日本の労働市場の課題を解決することを真面目に考えている人財企業です。働き方のショーケースとして、日本の労働市場に働きかけ、働き方改革につなげていきたい。それとともに、開かれた情報システム部にしたいと思っています。これを実現するには、非連続な変化、トランスフォーメーションが必要だと考えました」

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そこでまずは、企業としてバラバラだったところを統合し、ITガバナンス体制の再整備を行った。現場に任せるところは任せるよう権限移譲し、リート/モバイルワークを推進。ゼロトラストモデルへの移行、重要情報の要塞化を推進。そしてインフラ部門を含め、アジャイルな体制にしようとしている。「失敗しようが成功しようが、POCを繰り返していくことでモダンな手法/体制を作っていこうとしています」と、内田氏は言い切る。

【失敗談①】便利屋になってしまう

この取り組みはまだ道半ばのため、成功体験ではなく、参考になりそうな失敗談が紹介された。一つ目の失敗談は、情シスの立場としてよくある「便利屋になってしまう」こと。

「アプリやインフラやビジネス折衝など、何でもそつなくこなすので、他にやりたいこともあるのに、困ったことがあったときは、頼られるようになりました。ITを離れて、事業企画までやらされたこともあります。今考えるといい体験でしたが、このままだとこの先、どんなキャリアを積めるのか悩みました」

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なぜ、こうなったか。その理由は、意思やこだわりを持っていなかったこと。また持っていたとしても周囲の人には伝わっていなかったからだと内田氏は考えていた。仕事をしていく中で大事なのは、自分の武器やこだわりポイントを伝えていくこと。人生のミッションを決め、やるべき仕事をしぼること。

「そうしないと、便利屋で終わってしまう。もちろん、周囲に話したとしてもやりたい仕事は回ってこないことはあるでしょう。重要なのは何度も吹聴して回るというしつこさです。味方が増えると、あの人にこの仕事はもったいないと言ってもらえるようになります。これを日ごろからやっておくことが大事です」

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【失敗談②】経営に「WHY」を語ってしまう

第二の失敗談から学んだことは、「経営にWHYを語るな」。経営サイドはできない理由に興味はないからだ。

「一時期、これはなぜできないんだということを語っていることがありました。このときの上司から、『お前の言っていることはわかった。どうやったらできるか考えろ』と言われました。彼は経営にコミットしており、そのパートナーとして私に解決策を求めていたのです。例えば『こんな家を建てたいんだ』という話をしているのに、専門的な工法の説明をされても困りますよね。どうやったら実現できるか。何が解決策になるかを、ITのプロとして提示し、そこに経営の価値を出すことが重要なのです」

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【失敗談③】変革チームを作れていなかった

第三の失敗談から学んだことは、「変革チームを作れ」。例えばサッカープレー中に、現場に指示をしてもなかなかプレースタイルを変えることはできない。これは当たり前のことで、変化を布教するには弟子が必要だ。フォロワーや代弁者を増やしていくことで、特区のようなモノを作って実績を出していく。すると周りが興味を示して、巻き込まれていく。

「こうやって変革のパワーを作っていくことを仕立てていくことが重要です。システムだけどんどん作るのではなく、組織の形、戦略、人材、手法などもバランス良くバランスさせ、新しい価値を作っていくのです。これがうまく回り出せば、実現は現場に任せる。私たちはそれをしっかり見守っていき、特区をまた作る。このような改革をどんどん行っていきたいと思っています」


やばいよやばいよ。企業基盤をアップデートせよ

最後に登壇したのは、ITmediaビジネスオンラインの人気連載「IT酒場放浪記」でも有名な、ロケスタ株式会社 代表取締役社長の長谷川秀樹氏。東急ハンズ時代と2019年11月末に退職したメルカリの話を中心に展開された。

Alt text ロケスタ株式会社 代表取締役社長の長谷川秀樹氏

●既存システムを撤廃し、すべてWebシステムに

「僕は東急ハンズにIT部長として転職してきた時、『長谷川さん一人ではなんとかならないと思うから数人、中途採用していいよ』と言われました。ですが、僕は絶対それは避けたいと思い、『現存のメンバーで頑張ろう』と心に決めていました。経営陣からは『うちのシステムを見たどう?』とも聞かれましたが、無駄に悪く言わないようにも努めました」

転職仕立ての時に、ありがちなのが、「既存システムの問題課題を揚げ連ねて、「全然だめですね」とやっちゃうことです。」この展開に持っていくと既存メンバーのモチベーションが下がりますよね。当たり前のことです。課題なんて誰がやったっていつでもあるわけであって、それを声高らかに言ってもだめだと思います。今までも頑張ったけども、もっと、アップデートしていこうよ!と言う方向性じゃないと、逆の立場(既存メンバー)からするといやでしょう?だから、経営者に聞かれても「普通です。みなさんも頑張っています」と答える。そして向かいたい方向に擦り合わせていくことがポイントだという。

東急ハンズに転職仕立ての最初の仕事が、新PCとG-SUITEの導入でした。当時、東急ハンズのメールシステムは、受信ボックスが1人当たり数十メガとか制限がありました。そこでGmailに変更しました。メールシステムを変更したことで、バイヤーからは喜ばれましたね。商品画像を分割して送るという手間がなくなったので。『最高やん』と言われました。またPCも古かったので、入れ替えました。そしてまた、『あいつ最高やん』と。そういうタイミングだったので、ラッキーでした。そうやって組織と馴染んでいくのが一番大事だと思います。

情シスとしてやりたいことができない第一の理由は、予算が取れないこと。特にR&D的な予算を取るのは難しい。ではどうやってそれを獲得すればよいのか。

「予算編成会議では、前年度比がマイナスであればOKとなります。自社開発化することで支出を抑え、そこで捻出した費用をエンジニアの人件費やR&D費用に回しました。ポイントは、外注費をいかに抑えるかです。システムを新たに購入しなければ、減価償却費は年々、減っていきます。外注先に支払っていたところを自社開発や自社運用に置き換えればコストを削減できます。その分をR&Dに費やしていくのです」

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そして社員人件費などで、毎月のコストが減りすぎないようにコントロールしていく。大事なのは、R&Dをしていることは言わないこと。そして勘定項目を分けすぎないこと。

「システムを分かっている会社ではこのようなことはできませんが、僕よりシステムに詳しい人はいなかった会社では、文句は出ませんでしたね。例えばクラウドにする、iPadでレジをするという話をしたときも、『セキュリティは大丈夫なのか』と質問がありましたが、『大丈夫です』とにっこりと微笑んで答えています。よくクラウドにするメリットとともに、やたらリスクの話をするする人がいるが、それは責任を取りたくない上司から、『もう一度、検討しろ』と言われるだけです」

もう一つはアーキテクチャの考え方。長谷川氏も東急ハンズにいたときから、Webシステム、スマホ、IoT以外はやったら駄目だと思っていた。

「当時の東急ハンズはすべてのシステムがある国産ベンダーのもの。それを撤廃。勘定系も自社開発に変えました。勘定系のホストサーバについては、5~6人のメンテナンス要員が配備され、月額500万、年間6000万円支払っていました。x86サーバで自社開発した結果、かかったサーバ費用は数十万円。自社要員で約20人月で構築しました。もちろん、これを可能にするにはリバースエンジニアリングは絶対やらないことです。経理に足を運び、データのインとアウトは調べました」

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この時、決してやってはいけないことがある。それは「どの帳票を使いますか」と尋ねること。そう尋ねると「全部」と言われるからだ。「経営会議で使っているドキュメントはどれですか」「決算に必要なのはどれですか」と具体的に聞き、「他に必要なときに作りますね」と伝える。

●メルカリではホワイトカラーの生産性向上を学ぶ

メルカリでは、ホワイトカラーの生産性向上について学んだという。ひと言でいうとデジタルネイティブ、オンラインで仕事をするという文化だという。

「これを実現するには、文化、仕組み、ツールが必要になります。ここで間違ったデジタルトランスフォーメーションの例を紹介しましょう。経営会議の資料をiPadで見れるようにするという取り組みがありす。これは正しい取り組みのようですが、メルカリに転職して間違っていることに気づきました。眺めていたのが紙から画面に変わるだけで、会議のやり方は変わっていないからです」

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メルカリではオンラインとオフラインの両立で物事の合意形成をしている。しかもそのプロセスが超並列で行われる。そしてオフラインで行うのは、オンラインでできないことだけと徹底している。

「一般的に複数のプロジェクトを担当している人は、並列で仕事をしていると思っているかもしれませんが、実は直列でやっています。例えばカレンダーに1時~3時に会計プロジェクトと人事プロジェクトの2つのプロジェクトのミーティングを入れることはしません。これはプロジェクトを並列で回していないということ。これは基本的にオフラインを前提とすると、全てが直列の仕事の進め方になるからです」

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一方、メルカリのプロジェクトはオンラインチャネルで進められることが多い。意思決定者である役員もそこを見ているので、Aという提案がAダッシュに変わっていくことも把握できる。オンラインは活動ログも残るし、場所の制約も集まる人数のキャパも制約がない。文化としてそういう仕事のやり方にすることで、物事が滑らかに進んでいく。

会議も超並列でこなすことができる。メルカリで使っていたのはG-Suiteのドキュメント。会議で説明されている途中でも、PCでマーカーを引いてコメント機能で質問を入れる。説明が終わったときには各役員の質問事項はすべてそこに記される形になる。同一ドキュメントを複数に人間が同時に編集してビルディングしていく。また参考資料などもリンクを貼り数珠つなぎのように情報を構成していく。超並列に仕事を進めるので、会議に出席しながら、別プロジェクトのオンライン会議の返事を入れることもできる。

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「これが超並列に仕事を回していくやり方。メルカリでは、社内の会議でスマホをのぞいているのは失礼にはなりません。このようなコミュニケーションをしようと思うと、メールでは駄目。生産性は上がりません。Slackを高頻度で見ながら、仕事をするという文化です。このような文化を根付かせるためにはチェンジが必要です。つまり業務をデジタルネイティブに変更してから、システム化するのです。アナログをデジタル化することは間違いです」

だからといって、Face to Faceの時間が少ないわけではない。デジタルで生産性を高め、ワンオンワンやチームビルディングなどに相当な時間を使っている。

「オフライン企業の場合、突き抜けたスゴイ人もどんくさい人も同じ生産性になりますが、オンライン企業では、突き抜けたスゴイ人は超並列に仕事をこなせるようになる。生産性の違いは相当出てくると思います」


【パネルディスカッション】情シスはコストではない!

イベント後半は、常盤木龍治氏をモデレーターに、友岡氏、長谷川氏、内田氏によるパネルディスカッションが行われた。

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常盤木:会場から「長谷川さんのコストを増やさず、かといって減らしすぎずにコントロールする話がすごくよく分かる。うちはIT部門ではなく外資系企業だが、コストの売上のバランスをとるのに苦労しました」というコメントをいただきました。

友岡:情シスはよくコストだと言われますが、僕は「なんでコストなんだ」という思いがあったので、本部にしたときに研究部を作りました。部を持つと予算が分けられるのでR&D予算をつけてもらいましたね。株主にはエレベータやエスカレーターの研究開発予算の中に当部の予算もビルドインして、報告しています。

常盤木:情シスの仕事は自分事にすることが難しく、人ごとになりがちですが、友岡さんのそのモチベーションはどこからきているのでしょう。

Alt text パラレルキャリアエバンジェリスト 常盤木 龍治氏

友岡:他人事なんて何一つないですよ。すべてが自分事なので。生き方として。

常盤木:チャレンジした結果、失敗することもあります。それを価値あるものにするにはどうすればよいでしょう。

友岡:僕は会社の制度をハッキングしました。レベルの低いことをやって満点を取るよりも、難易度を高いことを失敗した方が、最後の上がりのスコアが高くなるようにしたんです。失敗してCがついているけど、Bがついている人よりも最後の得点は高くなるようにしました。

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既存のメンバーのマインドセットはどう変える?

常盤木:ITは守りの中で生きてきているので、役割の定義を自分でする文化ができてない。新しく組織を作れば、マインドセットは変えられるかもしれませんが、既存のメンバーのマインドセットはどのように変えればよいのでしょう。

友岡:「2:8の法則(顧客全体の2割である優良顧客が売上の8割をあげているという法則)」で言われているように、7つ刻みごとに20%突出した人がいれば変わります。各世代にキラキラした人がいるようなマネジメントをすることです。

常盤木:新しいことをする人を評価するのは良いことですが、運用部門は昨日と同じ仕事をするしかありません。その辺はどうすればよいでしょう。

長谷川:チャレンジする人を優遇して、運用部隊を軽視し、失敗したことがあります。運用部門がいなければシステムは回らなくなるのはわかっていたのですが。彼らの仕事を認め、ちゃんと褒めていかなくてはいけないが、そこはできていませんでした。

内田:運用も新しいことにチャレンジするチームも、一緒に評価できるような組織に変えようとしています。

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友岡:うちは運用部隊を分けていません。

常盤木:みんなが、課題解決志向が高い人になりつつあると。

友岡:なりつつありますね。例えば52秒かかっていたあるプロセスを半分でできるようにプロセスを改善するなど。そういうことをコツコツやっている人は別のKPIで評価をしています。

常盤木:友岡さんは破壊型リーダーというより、サーバント(奉仕型)リーダータイプですよね。

友岡:僕はキーパーのような立場だと思っています。ゴールを決められないようにしながら、みんなに「頑張れ、頑張れ」と言うような。

常盤木:日本の場合、リーダー不在の情シスが多いような気がします。

友岡:それよりも問題なのが、何が問題かが会社で認識されていないことだと思います。そして、そういう会社には行かないことです。

内田:僕は一生懸命できない理由を語っていたのですが、バカでいることも大事だと思いました。

長谷川:そう黙ってしれっとやるしかないんです。それ以外に方法があるなら、教えてほしいですよ。

友岡:クラウドを導入する際、役員会ではクラウドの技術的な説明はしませんでした。役員会で報告するのは、「この目標を達成するためにこうやります」「いつまでにやります」「予算はいくらです」この3つだけです。

常盤木:そしてその際、相手の辞書にない単語は基本的に使わないことですよね。

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開発優先度はどのようにして決めているのか

常盤木:開発優先度の定義はどのように決めていますか。

友岡:顧客中心に考えることですね。顧客への価値提供が増えるのか。穴埋めするのか。次に評価するのは何人にリーチするアプリなのか。グローバル1万人、国内3000人の会社で、経理部門3人にリーチするアプリだと、優先度は低くなりますよね。

内田:今までは部門の強弱で決まることが多かったのですが、戦略に合わせてユーザー効果の高い案件から開発していこうと考えています。

長谷川:東急ハンズの例を挙げると、営業系の優先度が高くて、次々と案件が回ってくる。そうなるとバックオフィスや営業支援の要件は全く対応できなくなる。だから頭中の10%ぐらいは、バックオフィス系の案件に残していました。ただキャパオーバーしないように、年初に営業部門の役員と1年分の開発案件を握っていましたね。

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常盤木:要件定義がなかなかできない、課題の本筋に切り込むにはどうしたらいいかという質問が会場からきています。

友岡:まず現場を観察することですね。ド素人が見たときの違和感が大事だと思います。

長谷川:会議室で「何が課題か」を聞くのは駄目ですね。現場のユーザーは、自分自身の困りごとしか言わないし、テクノロジーで何ができて何ができないかわからないで話をします。基本的にはユーザーに要件を聞きすぎることはナンセンスです。

僕たちがポスレジをiPadで構築しようとした時、あるあるですが、現場から「XXXX機能が必要だね。と、使用頻度が低い機能を論いたがることがあります。そして複雑なUI/UXとなる。しかし、こういう頻度の低い機能のUIよりも、売上計上、返品など一番使われる機能のUI/UXを磨き上げることに時間を使った方がいい。アルバイトでもすぐ操作できることです。既存のPOSを素人の女性にやってもらって、課題をヒアリングしました。

常盤木:日本の組織として戦ってきた内田さんの場合はいかがでしょう。

内田:いろんな会社が統合してできた会社なので、業務の成り立ちが違うんです。要件定義をしても正解がわからない。だから、ウォーターフォールの開発ができない。プロットを開発して、実際に使ってもらってフィードバックをもらいながら改善していくという方法を採用していました。

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サポートしてくれる上司は必要?

常盤木:皆さんには、業務をサポートしてくれる上司や経営者はいますか?

友岡:僕は社長ですね。社長とのフィーリングはすごく大事です。社長は2代目で株主でもある。大阪のコテコテのメーカーですが、軽いノリでフィーリングも良い。社長をはじめ、大株主の人たちの視線は、2050年ぐらいを見ているんです。 だから、社長が言ったことは価値基準を考えずに、とにかくパスをもらったらノックオンをしないように最速でトライするだけです。

長谷川:サポートは絶対必要です。中途で入るならなおさらです。僕が入社した時は、当時の社長や専務がよくサポートしてくれました。上位職で転職する場合は、上司のサポートによって成否が決まると思います。「あいつ、社長が連れてきたらしい」という噂も追い風になりました。

内田:私も当時のCEOが強烈にサポートしてくれました。そのCEOは別のポジションに異動したので、今は直属上司の副社長がサポートしてくれています。その副社長からすべてを任され、変革に取り組んでいます。

友岡:僕が若い頃は、上が守ってくれた仕事は何一つなかったですね。サポートの有無については気にすることはないのではないでしょうか。

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常盤木:僕も上司の顔色を見て仕事をしたことはないですね。手応えが欲しいのであれば、成果主義がよいけど、ダメージもダイレクトですからね。自分の役割を正当化したい人が多すぎるのかもしれないですね。自分の役割を正当化するのは難しい。特に与えてもらった仕事を正当化することに価値を感じると、自分でやっていることが正しく評価されないと妬んだりしてしまうので。

友岡:大企業では、自分が変えようと思っても、簡単に変えることができません。権限がないから仕方がない。変えられないのであれば、その枠の中でどれだけ勝負ができるか考えることです。誰にも負けないアウトプットを出すことにこだわるんです。どんなつまらない仕事でも、アウトプットを出し続けないとだめなんです。その仕事の先に今がある。腐っていても仕方ありませんからね。

常盤木:僕も同じ意見。来たボールをとにかく打ち返さないと次のボールは来ません。仕事は選んだら駄目だと思います。

長谷川:組織の話はベンチャー企業に学ぶところがあります。仕事は自己肯定感です。自分が楽しくて、役に立っていると思ったら、仕事内容は関係ないんです。メルカリに行って学んだのは、ハンズの時はミッションと言われると気恥ずかしい思いがあったのですが、メルカリでは自分たちのミッションとは何かから話し合うのが当たり前の文化となりました。

開発の優先順位についても、ミッションにそぐっているかどうかで考える。自分たちのミッションを達成するためのさぎょうとなるので、達成すると「おーっ」となって、チーム全体のモチベーションが上がっていくんです。

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もう一つテクニックがあって、ウィンセッションを週に1時間、開催するんです。ウィンセッションは、とにかくやったことを褒め合う。情シスが何かやっても売上が倍になることはありませんからね。メルカリの自分たちでチームのミッションを定義するというやり方は、チームビルディングをする上でもすごくいいと思っています。

個の能力を生かす、ジョブディスクリプションは必要?

常盤木:情シスは個の力が圧倒的にいるのに、その能力の源泉が価値であるという考え方が定着していない気がします。ジョブディスクリプションにピンと来る人も少ないのではないでしょうか。

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友岡:たしかにその人に求めているモノはなんですかと尋ねても、漠然としていることが多いですね。僕は若いときから、何をやってもいいと言われていたので、いろいろハッキングできました。それが僕の成長した理由です。みんなもハッキングすればよいと思います。

内田:前職では企画をバリバリやる人が目立つ文化で、攻めのITをやっていました。その中で自分が何をするかと考えた時に、運用設計が下手だったので、そこで成果を出すことにしました。その結果、自分のブランドができていきました。ジョブディスクリプションが明示されすぎると、制約が生まれるという弊害もありますよね。

CIOのいない会社への転職について

常盤木:CIOのいない会社に転職について、何かアドバイスはありますか?

友岡:専任のCIOがいる企業はまだ10%なので、いないのが普通だと思います。

長谷川:CIOがいようがいないが、話す機会はそうないのでは。若手に言いたいことは、「まずは、目の前のことを死ぬ気でやれ」ですね。

常盤木:たしかに我々の20代の頃は、メチャクチャ働いていましたからね。

友岡:その瞬間でやれることは、それは二度とない。そこでアウトプットを出して学ぶコトですね。

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内田:キャリアは山登りと川下りです。山が見つかった人は山を登ればいいし、山が見つからない人は、川で一生懸命オールを動かすしかないと思います。若い子たちは山を見つけようとしがちなのが気になります。

常盤木:まずは身体の動かし方を覚えることが大事と。最初の段階から、落ちこぼれとしてみられたくないという意識が強いような気もします。

長谷川:今の若い人はそうなのかというよりは、昔よりはまともなのかな。転職もしやすい環境なので。

組織改革を主導するのはCIO?それとも人事?

常盤木:組織改革をするときはCIOが主導するのか、それとも人事が行うのでしょうか。

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友岡:CIOでも人事でも、誰かが主導で組織を直さないといけなくなった場合、営業は営業、経理は経理となるので、横串しのファシリテーションの場を作るのが、情シスの役割です。しかも、情シスの人たちはToDoのリスト化するのも得意ですからね。

長谷川:東急ハンズは組織変更といっても少し変えるぐらいでしたが、メルカリでは四半期に1回、メチャクチャ組織変更があります。すると、会社はデトックスされて良い方向に進んでいく。しかもAに変えて失敗だったとなると、すぐ元に戻すことも厭わない。社員は大変ですが、すごく健全な感じがしました。

常盤木:最後にメッセージをお願いします。

友岡:現場に行って雑談することです。雑談の中で、いろんな課題が見えてくる。とにかく現場にふらっと寄って「どうですか」と雑談をたくさんすることが大事だと思います。

内田:とにかく「これを変えるんだ」という課題を見つけることは重要です。仮説でいいので、これに取り組む事を決め、ストーリーを作って動かしてみる。もちろん、それがそれで本当に動くかどうかもわかりません。ですが、そこで学びがあれば、次の一歩になると思います。

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長谷川:転職した方がいいかどうかは、自分が自分らしく発言できていたかどうかを思い返してみると良いと思います。発言がのびのびできておらず、自分らしくないなと感じているのであれば、転職した方がいいと思います。

常盤木:すべての相談に対して「ありがとう」と言い続けることも重要ですね。ありがとうございました。

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