ATR鈴木専務のインタビュー第4弾 ~ATRを舞台に研究成果を世の中に出す取り組みと未来技術推進協会とのつながり~
みなさん、こんにちは。
シンラボ広報部 福田です。
未来技術推進協会のアドバイザーとしてご尽力頂いている株式会社国際電気通信基礎技術研究所(通称ATR)の代表取締役専務 経営統括部長・事業開発室長である【鈴木 博之(すずき ひろゆき)】さんにシンラボ広報部長の高橋さんと一緒にインタビューさせて頂きました。イノベーションや事業開発、人材育成などについて熱い思いを語っていただいたロングインタビュー、今回は全5回のうち第4弾となります。
今回はATRが推進している“けいはんなATRファンド”で国内外のスタートアップと日本企業をマッチングさせる新規事業創出の取り組みを紹介していきます。手探り状態の中で独自のマッチング手法を構築していき、事業化という成果につなげていった取り組みは多くの人に参考になると思います。また、我々の未来技術推進協会との協業についても語って頂きました。
本記事の内容
・ATRのスタートアップと日本企業のマッチング事業における成功確率を高める取り組み
・未来技術推進協会と協業している理由と人材育成に関する考え方
また、今回の記事と合わせて過去のインタビュー記事も合わせてご覧下さい。
― ATRにおけるスタートアップへの出資の取り組み
第3弾の記事では、“けいはんなATRファンド”を通じた研究成果の事業化へつなげる取り組みを紹介しました。今回はその具現化に向けた内容です。
一般論としてスタートアップにはIPOとM&Aの2つの出口があり、研究者は自分の創り出した技術が世の中に使われることに喜びを感じます。そのため、自分の技術で製品が売れてお金が儲かるというのは大事ですが、事業会社の中で実用化されて世の中に使ってもらうことがすごく嬉しいなと思ったんです。
当然のことながら、研究成果を事業化するためには活動資金が必要であり、“けいはんなATRファンド”には多くの出資者がいます。金融系の出資者(リミテッド・パートナー:LP)に加えて、事業会社の出資者をたくさん集めたら事業会社内での製品化につながりやすいと考えたんです。技術の中身で異なりますが、金融系の出資者からは3年程度の短期間での事業化を求められることが多いので、基礎研究フェーズの技術とはどうしても時間軸が合わないケースが発生するんです。
いろいろ紆余曲折ありましたが、総計でATRを含めて出資13社/47億円を集められました。一番大きかったのは産業革新機構(現在のINCJ、後でリンク貼る)という経済産業省系の官民ファンドが、我々のことを評価して、多くの出資をして頂けたことでした。
― スタートアップへの投資判断基準
“けいはんなATRファンド”では、ATRはLP、日本ベンチャーキャピタル(後でリンク貼る)がジェネラル・パートナー(GP)という役割分担で事業運営してきました。そのため、企業から投資を受けるために、日本ベンチャーキャピタルの方と私が一緒に企業訪問をしました。また、研究実態を把握してもらうために、企業の方をATRに招待して現場を見ていただきました。
次に投資判断ですが、ATRの知財を使う、もしくは将来使う可能性があるという点であり、そこは我々が行います。その後は、我々の手を離れてGPの日本ベンチャーキャピタルが判断します。ATR側ではそこまでの目利きができないので、技術的なところは我々が判断して、それから後の事業化に関することは、その分野の専門家である日本ベンチャーキャピタルにお任せする体制にしています。
― 海外のスタートアップと日本企業のマッチングの極意
ATRが事業化支援を担当しているリサーチコンプレックス事業では、グローバルなスタートアップを日本に連れてきて日本企業とのマッチングを行っています。そのときにはスタートアップの業績評価も重要ですが、日本の企業との最低限のお作法も大事にしています。これは良いとか悪いではなくて、日本の企業とのマッチングというのを事業のゴールに置いているので当然のことだと思っています。このようなことは、紙ベースの資料では分からないことも多いですが、実際に会うとそれなりに理解できます。そのため、マッチング前には必ず現地に行って、面談をして日本に来てもらうスタートアップを選定しています。
マッチングで大事にしているもう1つの点は、その技術が事業を創出するために原理上は実現可能性な技術ではあるが、実証試験をする場合に課題があるかを判断しています。例えば、騒音で屋外ではその技術が使えないとか、測定対象者が動いてはいけない技術で作業中は使えない、などの課題は、実際に実証実験を行うことで顕在化する課題です。
これらの取り組みを通じて、ATRが技術を紹介する日本の企業も将来のパートナーとして実際に自分たちで判断できるようになります。どんなことにも共通しますが、パートナーと一緒に働いてみると良いとか悪いとかが判断できるようになります。その上で、お金という判断以外に新規事業を彼らとやってみるなり、あるいは買い取って内部化することを含めて一緒にやる経験はスタートアップと大企業の双方にとって非常に重要だと考えています。
スタートアップとの関係構築やBeyond Bordersの考え方、協会とのつながりなど全文はこちら
ご紹介
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
研究内容
・脳情報科学
・ライフ・サポートロボット
・無線・通信
・生命科学
所在地 京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2(けいはんな学研都市)
シンギュラリティ・ラボ(運営元:未来技術推進協会)
https://sinlab.future-tech-association.org/
所在地 東京都千代田区神田練塀町3富士ソフト秋葉原ビル12F (DMM.make AKIBA Base2610)