【レポート】「映像が心におよぼす影響」を可視化するVR:VRが創り出す世界[第2部] - TECH PLAY Conference 2017
2017年8月20日(日)から25日(金)の6日間にわたり、「TECH PLAY Conference 2017」が開催されました。
本レポートでは、8月21(月)15時30分よりスタートした「VRが創り出す世界」の第2部の内容をお届けします。
当日の登壇者と内容は下記の通りです。
【第2部】「映像が心におよぼす影響」を可視化するVR
株式会社AOI Pro. 額田康利さん
株式会社AOI Pro. 吉澤貴幸さん
FOVE, Inc. 小島由香さん
ニューロスカイジャパン株式会社 伊藤菊男さん
アルティテュード株式会社 北野幸雄さん
それでは内容を紹介します!
「映像が心におよぼす影響」を可視化するVR
第2部は「映像が心におよぼす影響」を可視化するVRをテーマに、AOI Pro.が展開するVR事業に関連したセッションです。まずは、AOI Pro.の額田さんの講演からスタートです。
額田康利(ぬかだ・やすとし)/株式会社AOI Pro. 常務執行役員。1969年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学卒。みずほ銀行での勤務を経て、2013年にAOI Pro.へ入社。ラグビー好き。
55年の歴史があるAOI Pro.は、映像の企画と制作を事業の中心とした企業。AOI TYOグループ全体でCMを年間1700本以上制作しています。
そのAOI Pro.では、新規事業としてVRの領域に注力しています。 AOI TYO Holdings が掲げているミッションは「新しい『心動かす』で、新しい価値創出をしつづける。」というもの。そのミッションを実現すべく「クリエイティブ×エモーション」と「エモーション×データ」という2つの軸で取り組みを行っています。
額田さんはこのような取り組みを行う理由を「人の心を掴みたいから」だと説明します。「人の心が動く瞬間を捉えることで、スピーディーなプロダクトライフサイクルをリードし、社会の課題解決に活かしたいという想いがあるのです」(額田さん)
続いて額田さんはAOI Pro.が制作しているVRを紹介します。まず、長年のCM制作で強みがある「クリエイティブ×エモーション」の領域で2016年に発表したのが「VR Dream Match™ ‐ Baseball」です。
「VR Dream Match™ ‐ Baseball」は、プロ野球選手の投球データを元にした165kmの投球をキャッチャーとバッターの立場で体験できるVRです。額田さんは「私は少年野球の経験者なのですが、キャッチャーとして初めてこれを体験したときに、そんなはずはないのに思わず『痛い!』と言ってしまったんです」とその衝撃度を語ります。
実は額田さんには過去にキャッチャーで怖い思いをしたことがあり、VRでの体験がその記憶を呼び起こしたものだと考えられるのです。また、もちろんこのVR体験は過去の記憶とリンクするだけではなく、実際に野球をプレーしたような感覚も覚えます。
続いて額田さんが紹介したのが「WONDERFUL WORLD – VR Private Tour™」。このVRでは単に360度映像を体験するだけではなく、体験者の実際の歩行や、女性ツアーガイドの手を握る感触、風やミストなどの体感、匂いまでもが一体となり、映像とシンクロします。視覚と聴覚以外の感覚がより高い次元の没入感を産み、感情を刺激するのです。
この「WONDERFUL WORLD – VR Private Tour™」では、ヘッドマウントディスプレイにFOVE社のアイトラッキング技術を導入し、体験者の視線の動きを全て追跡しています。
額田さんは「このようなVRによる体験で脳が動いたり、過去の体験がよみがえったり、様々な感触を感じられるとするならば、VRの本質や効果は現実そのもの」だと説明します。それこそがこの2つのVRコンテンツにおけるAOI Pro.のこだわりです。
さらにAOI Pro.は「エモーション×データ」の領域として、こうしたVR体験などで得られる生体反応のデータ化に取り組んでいます。それが「VR Insight™」です。
「VR Insight™」ではこれまでデータとして分析することがむずかしかった消費者のインサイトを、VR空間での生体反応をトラッキングすることで可視化するサービス。ヘルスケアやトレーニングなどあらゆる業界のビジネス推進に価値を提供します。
額田さんは改めて「人間を知るためのVR」という観点がAOI Pro.の取り組みであると振り返り、「そこから得られた感情データをどのように活用すべきかを考えましょう」と次のパネルディスカッションに渡しました。
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VRと感情データの活用の方向性