【レポート】「映像が心におよぼす影響」を可視化するVR:VRが創り出す世界[第2部] - TECH PLAY Conference 2017

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VRと感情データの活用の方向性

続いてはパネルディスカッションです。パネラーはAOI Pro.の吉澤さん、額田さん、アイトラッキングの技術で協力しているFOVEの小島さん、脳波計や心電心拍計など生体反応取得で協力しているニューロスカイジャパンの伊藤さんの4名。モデレーターはテクノロジーコンサルティングで協力しているアルティテュードの北野さんが務めます。

吉澤貴幸(よしざわ・たかゆき)/株式会社AOI Pro. 体験設計部部長 クリエイティブディレクター。1969年生まれ。愛知県出身。複数の広告会社などでの勤務を経て、2015年にAOI Pro.に入社。趣味はサーフィン。

小島由香(こじま・ゆか)/株式会社FOVE 代表取締役CEO。1987年生まれ。新潟県出身。ソニー・コンピュータエンタテインメント、グリーでの勤務を経て、2014年にFOVEを設立。漫画家としての活動も。

伊藤菊男(いとう・きくお)/ニューロスカイジャパン株式会社 代表取締役CEO。東海大学工学部卒。2005年に米国Neurosky Inc.に入社し、2013年の日本法人ニューロスカイジャパン設立時に代表取締役に就任。

北野幸雄(きたの・ゆきお)/アルティテュード株式会社 取締役副社長。兵庫県出身。サン・マイクロシステムズ、アクセンチュアでの勤務を経て、2014年にアルティテュードを設立。

北野 まず、感情抽出をどのように捉えているのかお聞かせください。

伊藤 私たちは「感情」を究極のインターフェイスとして活用できないかとプロジェクトを開始しました。例えば、エアコンが人の感情を読み取ってくれれば、温度の調整はスムーズに行えますよね。

VRの「没入感」は、感情を抽出するための重要なファクターだと思います。また、脳波を抽出するためのセンサーはどうしても頭につけなければいけません。ですから、このハードルにもVRがいい切り口になると私たちも考えています。

小島 私たちはアイトラック機能があるVRヘッドセット「FOVEO」を作っています。抽出できるデータは視線の情報です。目の動きやまばたきもわかりますし、奥行きのあるVR空間でどこを見ているかもわかります。将来的にはVRコマースの中で、ユーザーの視線から商品のレコメンドもできるのではないかと考えています。

また現在では「Facebook Spaces」など、VR空間のコミュニケーションが盛り上がっていますが、そこで必要になるアバターの感情表現に役立つと思います。アイトラッキングや表情認識を組み合わせると、VR空間で感情的な情報を使ったコミュニケーションもできるようになるのではないでしょうか。

吉澤 「思ったこと」「考えたこと」の裏側を知りたいと考えています。私たちが展開する「VR Insight™」の中の「VR ON AIR TEST」というサービスでは、映像視聴中の生体反応と、その後のアンケートへのアンサーを付け合わせています。

将来的にはこのアンサーだけではなく、行動と付け合わせたいと思います。それによって「この人は何を感じたからその行動をとったのか」、つまり「思ったり考えたりする前の無意識の反応が、その人の行動にどのような影響を与えるのか」がわかってきます。

それを広告業界では「インサイト」と呼んでいますが、「インサイト」がどのようなものなのかは確実にはわかっていませんでした。これをVRを使ったセンシング、そしてデータ分析で解き明かしていきたいと思います。その結果、感情のカラクリがわかるのがゴールですね。

北野 ニューロスカイジャパンさんも、FOVEさんもまばたきを取得する技術を持っていると聞いています。まばたきは現状ではどのように使っているのでしょうか?

伊藤 私たちのセンサーは脳波だけではなく、ノイズとしてですが筋電位も取得します。そこから目の動きやまばたきを取ることが可能です。

目を動かすときには強い筋電位が発生しますので、「目を動かす」ことをコマンドに使うことはできるでしょう。例えば、「意図的なまばたき1回」で電源のオン、「意図的なまばたき2回」ならば電源オフといったイメージです。

また、データの蓄積があればまばたきの回数から「眠気」の検出もできるでしょう。

小島 現状ではまばたきから「疲労度」が一番わかると思います。

また、無理にでも笑うと、笑顔にひっぱられて気持ちが明るくなることがありますよね。同じようにまばたきや目をつぶらせたりすることで感情を呼び起こすという使い方があると考えています。

北野 VRとセンシングを組み合わせた感情抽出を行うと、どのようなユースケースが考えられるでしょうか?

伊藤 無限の可能性があると思いますね。エンターテインメント、教育、ヘルスケア、医療、安全、スポーツメンタルトレーニングなど多岐にわたるでしょう。

小島 現在音声ベースのAIは発達していますよね。それと同じように表情をセンシングして感情を理解できる、感情に寄り添ったAIが登場するのではないかと考えています。

吉澤 私たちは映像制作の会社ですのでその文脈で考えますと、例えば映像を観ている人の感情によって内容が変わるマルチストーリーなコンテンツを提供できるようになると思います。

また、最近はかなり様々なところからお話を聞くのですが、発達障害の方への教育に可能性があると感じています。現在の教育では、発達障害の方が何かに特化した才能を持っていてもそれを見抜くのは大変難しいそうです。そこを見つけ出せれば、社会に貢献できると思います。

額田 伊藤さんに聞いてみたいのですが、テロを防ぐ用途に活用できる可能性はないでしょうか?

伊藤 「プロ」になると発汗や心拍数まで全てコントロールできてしまいます。でも、人間が唯一コントロールできないのが感情なんです。どのようにテロ犯の感情をセンシングするかという問題はありますが、どこかで調べることができれば、未然に防ぐ方法もできるかもしれないですね。

北野 そういった想定ユースケースに対してどのようなビジネスアプローチをとっていくのでしょうか?

伊藤 インターフェイスとしての可能性、バイオフィードバックとしての可能性の2つを柱に展開を考えています。特に「無意識を計る」ということはおもしろいと思いますね。

小島 アイトラッキングをVRで活用すると、広告とアバターの2つが大きいと思います。

広告であれば何回クリックされたかではなく、何回見たかに基づく課金体系も考えられますよね。アバターも将来的には表情認識を使ったコミュニケーションができるようになるはずです。

すると、広告プラットフォームや、アバターのコミュニケーションプラットフォームにはユーザーの感情的なデータが貯まりますよね。いかに、このプラットフォームを抑えられるかが大切になると思います。もしかするとこのプラットフォームは医療であったり、訓練であったりするのかもしれません。

吉澤 映像の会社である私たちとニューロスカイジャパンさん、FOVEさんは今までは直接的な接点がありませんでした。脳波のセンシングやアイトラッキングは以前から広告業界でも注目されていたにも関わらずです。

しかし、VRと感情のセンシングを組み合わせて「わからないことを明確にしたい」というゴールが決まった瞬間、これまで組めなかったパートナーと一緒に動き出し、今はとても大きな成果が見えてきています。

きっかけがないと一緒に試すことはなかなかないですが、試したらうまくいく。この今回のようなケースが今後のビジネスの発展に重要なことなのだと思っています。

額田 本日は「クリエイティブとエモーション」「エモーションとデータ」の2つについてお話しました。次はそのデータを何と掛け合わせるのか、つまり「データとインダストリー」だと思っています。様々な業種の方との掛け合わせで世の中をよくしていく取り組みが生まれるとうれしいです。

小島 本日はありがとうございました。


以上で「TECH PLAY Conference 2017」2日目のレポートは終了です!
別日のレポートもお楽しみに!

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