Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは

イベント 公開日:
ブックマーク
Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは
再生可能エネルギーの利用拡大とカーボンニュートラルの実現が求められる昨今、クルマは電力インフラを担う存在として注目されており、Hondaでは「バッテリーの革新」「車両開発の進化」「社会システムとの統合」と3つの領域に注力している。今回は「社会システムとの統合」にフォーカスし、Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステムの全体観ならびに、デジタルツインを活用した技術開発など最先端の取り組みを紹介する。

アーカイブ動画

BEVは電力キャリアになる――Hondaのエネルギー/電動パワーユニット戦略

本田技研工業株式会社 小栗 浩輔氏
本田技研工業株式会社
電動事業開発本部 BEV開発センター
エネルギーシステムデザイン開発統括部
統括部長 小栗 浩輔氏

最初に登壇したのは、量産車向けHEV(Hybrid Electric Vehicle)用リチウムイオンバッテリーを開発するなど、Hybrid車の開発を中心に取り組んできた本田技研工業(以下、Honda)の小栗浩輔氏だ。現在はBEV(Battery Electric Vehicle)のパワーユニットやサービスの開発を統括する。小栗氏は「BEVはエンジンを電池とモーターに変えたクルマではない」というテーマで講演を行った。

Hondaは創業以来クルマに限らず、バイク、発電機、マリン、航空機などさまざまパワーユニットを搭載した製品を開発しており、年間の生産台数は約3000万台。「世界一のパワーユニットメーカーだと自負しています」と、小栗氏は胸を張る。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド1

バイクを利用することで新たな世界を体験できるようになり、遠くの工場で働けるようになり、お金を稼ぐことができるようになった。このように世界中の人々が行動するパワー、原動力を提供しているパワーユニットメーカーである。

「Hondaがモビリティ開発に取り組む本質かつ根幹でもあり、BEVにおいてもこの価値観は持ち続けています」と、小栗氏は熱く語った。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド2

実際、創業者の本田宗一郎氏がバタバタと呼ばれるエンジン付きの自転車を開発したのも、自転車の運転で苦労をしていた妻を助けたいという想いからである。人を助けるものをつくりたいという考えも、同じく創業来変わらないことを小栗氏は続けて述べた。

もちろんシンプルに、移動の喜びも提供する。一方で、環境や安全についても取り組んでいる。環境面においては2050年に、Hondaに関わるすべての製品と企業活動を通じて、カーボンニュートラルを目指すことを掲げている。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド3

小栗氏はエネルギーの変遷に伴う、モビリティの進化や社会の変化についても述べた。一昔前、鯨油を使用するランプが発明されたことで、夜でも読書や仕事ができるようになるなど、時間の価値が高まった。

その後、石炭や石油に変わったことで蒸気機関車やガソリン車、飛行機などが生まれ、人々は大陸を飛び回るようになった。現在は再生エネルギー(以下、再エネ)に変わっていく段階であり「我々が想像もしない変化が起きるとの仮説で、日々の研究開発に取り組んでいます」と、小栗氏は語った。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド4

再エネが主体となると、社会がどう変わるのかも具体的に示した。従来は火力発電所などの化石燃料が生み出した電力を、街や人はあくまで享受するだけだった。つまり、上流から下流への一方通行の流れであった。

対して、再エネが中心となる社会では、クルマに搭載されたバッテリーが電力貯蔵の役割を担うようになり、自宅やオフィスに電力を供給する。下流からも電力を生むとの発電の分散に変わったのだ。小栗氏は次のように解説した。

「BEVが電力キャリアになる可能性を秘めていると考えています。これこそが私が本セッションで伝えたい、『BEVはエンジンを電池とモーターに変えたクルマではない』ということの一つであり、災害時などの活用も考えています」(小栗氏)

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド5

そして、このような社会の実現を目指すべく、バッテリーの革新に注力するのはもちろん、クルマが生み出した電力が社会インフラとなる。

そのような新たなエネルギーエコシステムが必要であり、Hondaは自動車メーカーでありながらもこのような取り組みにも注力していることを紹介し、ファーストセッションを締めた。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド6

Hondaの次世代エネルギーマネジメントシステムの開発・事業化に向けた取り組み

本田技研工業株式会社 水野 隆英氏
本田技研工業株式会社
電動事業開発本部 BEV開発センター
エネルギーシステムデザイン開発統括部
エネルギーサービスシステム開発部
部長​ 水野 隆英氏

続いて登壇したのは、エンジン開発業務に長きにわたり従事し、F1レースチームへの参画やHondaが誇るスーパースポーツカーNSXの開発にも携わった経験を持つ水野隆英氏だ。 BEVの開発は2018年から本格的に携わるようになり、現在はエネルギーサービスシステム開発部の部長として、BEVとバッテリーを活用したエネルギーマネジメントシステムの開発を統括する。

自動車開発においてHondaは、材料の調達から開発・生産・リサイクルといった各種関連領域で自らが主体者となり、ライフサイクルの構築を行っている。水野氏はこのサイクルの一環であるエネルギーサービス領域を統括する。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド7

先に登壇した小栗氏も述べたように、Hondaが描く新たなエネルギーエコシステムを実現していくためには、既存の電力会社はもちろん、これから登場するであろう再エネを活用した電力会社などとの調整や、協調して研究開発すべき技術やサービスが必要になってくる。

具体的には、太陽光発電では昼間は発電できるが夜はできないため、1日を通してどのように平準化していくか、といった取り組みなどである。

クルマ以外にもバッテリーを活用することから、新たなバッテリーシステムのマネジメント技術や、充電頻度が高まることが予想されるため、ワイヤレス充電など新たな自動充電技術も必要になってくる。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド8

さらには、家庭用充電器や公共での充電ネットワークサービスの拡充や、V1G/V2G(Vehicle-to-Grid)と呼ばれる、取引価格も含めた電力の需給調整の取り組みも必要となる。Hondaでは、それぞれの領域に強い国内外のパートナーや他の自動車メーカーと積極的に協力することで、実現の加速を目指している。

具体的には、充電ネットワークサービス領域では、GMやBMWなどとの共同出資により、北米における充電ネットワーク拡大を目指す合弁会社、IONNAを設立した。一方、国内の充電ネットワークにおいては、同領域をリードするスタートアップのPLUGOと協業している。

エネルギーマネジメントサービス領域においては、電力需要が少なくコストも低い時間帯に充電するサービス「e:PROGRESS」を開発し、すでに英国で提供を始めている。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド9

V1G/V2G領域においては、電力会社と自動車メーカーがエネルギーエコシステムの実現に向け、両者の情報を集約するプラットフォームを構築する「OVGIP(Open Vehicle-Grid Integration Platform)」という取り組みがある。

同取り組みの実現に向け、こちらもBMWやフォード・モーターとの合弁会社、ChargeScapeを設立した。アメリカでは電力会社が3000社以上あるため、個社ごとに契約するのは時間がかかるためだ。

さらにはV2H(Vehicle to Home)領域、家庭のエネルギーに関してもHEMS(Home Energy Management System)技術に強いスタートアップに出資し、家庭用充電器の共同開発に取り組む。さらには三菱商事ともスマート充電やV2Gに関するサービスに取り組む合弁会社、ALTNAを設立している。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド10

このようにHondaでは、国内外問わずさまざまな企業と組むことで、Hondaが目指すべき社会の実現を積極的に進めていることを紹介し、セッションを締めた。

Vehicle to Gridの技術を活かし、デジタルツイン環境に活かした取り組み

本田技研工業株式会社 白澤 富之氏
本田技研工業株式会社
電動事業開発本部 BEV開発センター
エネルギーシステムデザイン開発統括部
エネルギーサービスシステム開発部
エネルギーシステム性能開発課
課長 白澤 富之氏

続いて登壇したのは、入社以降15年近くにわたり、Hybrid車のパワーエレクトロニクス、パワーユニットの設計や開発に従事している白澤富之氏だ。エネルギーサービスシステムにおいては2022年ごろから携わるようになり、充電器やV2G、V2H、BESS(Battery Energy Storage System)といった技術領域の開発中心人物でもある。

白澤氏はまず、クルマにおけるデータ活用の取り組みについて紹介した。例えばパワートレーンの性能設計においては、顧客へのアンケートや走行距離といったデータを基に、燃費や最高速度などの性能を設定する。その後、シミュレーションを経て実際の開発に至るという。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド11

活用している具体的なデータも示した。走行中の車両から取得される速度、加速度、位置情報などのプローブデータである。加速度データを取得し考察することで、高速道路での合流をスムーズにさせる際に役立てる、との具体的な活用方法も述べた。

また、サービスエリアの滞在時間データは充電に要する、ドライバーが許容すると思われる目標時間の設定などに役立つそうで、実際のサービスエリアのデータも示した(スライド左側)。その他、天気や温度などの情報も参考にしている、と続けた。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド12

さらに「最近はエネルギーマネジメント制御においても、デジタルツインを活用して技術のシミュレーションも行っています」と述べた。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド13

上記スライドで示したように、気象情報、交通流、道路情報、充電設備など、さまざまな情報をAPI連携し、各種レイヤーを統合することで、リアルな世界の交通流などをデジタルツイン上でも再現する。

イベントでは実際に時刻や降水量、エアコンの状態などを設定した上でのシミュレーション動画を紹介。「さまざまな環境をデジタルツイン上でシミュレーションすることで、エネルギーマネジメントやコネクテッド制御がうまく稼働しているかどうかを検討しています」と、述べた。

デジタルツイン環境における苦労についても述べられた。まずは、リアルな状況を追求しようと思うと、一般的に取得できるAPI情報では不足している点だ。

アスファルトの表面やラジエーター開口部の温度といった具体例を挙げると共に、「論文で調べたり予測モデルをつくったりするなどして対応しています」と、対応策も合わせて紹介された。

信号のない交差点における人間の感覚やペダル操作をいかにして再現するのかについては、「一番難しかった」と、白澤氏。各種数式を用い交通流モデルを作成するなどして、対応したとの苦労を述べた。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド14

デジタルツイン環境の今後の活用についても述べられた。自動車においては、コネクテッドアイテムがどこで使われているのか、航続距離の検討などについて語られた。

一方、エネルギーインフラ領域では、電柱や電線をデジタルツイン化することで、EVがどれだけ活用できるのかを検討しているという。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド15

最後に白澤氏はV2Gのシステム概要を示すと共に、実現に向けては電力会社からEVが信頼される電力源であることを語った。そのためには、疑似定置型バッテリーとなる技術が必要であり、SOC(State Of Charge)やSOH(State of Health)といった技術コアであることも重要である。

機械学習などの技術も活用し、実現に向け取り組んでいることを紹介すると共に、SOHについて詳しくは次の登壇者が発表すると述べ、バトンを渡した。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド16

Honda独自開発のバッテリーモニタリングシステムと、ライフサイクルビジネス

本田技研工業株式会社 伊藤 優基氏
本田技研工業株式会社
電動事業開発本部 BEV開発センター
エネルギーシステムデザイン開発統括部
エネルギーサービスシステム開発部
エネルギーシステム性能開発課
チーフエンジニア 伊藤 優基氏

白澤氏からバトンを受けて登壇したのは、次世代バッテリーの基礎研究に従事した後、「リアルなバッテリーの研究が行いたい」と、車載用リチウムイオン電池の劣化予測や急速充電技術の研究開発に従事してきた伊藤優基氏だ。

現在は自身の得意領域である、バッテリー、ビッグデータ、AIなどの技術をかけ合わせた、クラウドによるバッテリーモニタリングシステムの開発責任者をしており、本セッションでは同システムならびに、活用事例について紹介した。

伊藤氏はまずは、クルマに搭載されているリチウムイオンバッテリーの特徴について述べた。

1つ目は大容量である点であり、一般家庭の2日分の電力に相当する30kW以上の容量を誇る。続いては車載ならでは、クルマのライフサイクルにあわせ10年以上持つ。一方で価格が高く、「大型のEVではバッテリーだけで100万円以上の価格になることもあります。だからこそ残存価値が重要です」と、伊藤氏は述べた。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド17

実際、車両での利用が終わった後も定置型蓄電池として使えることが少なくないため、まさにそのような利用価値があると続けた。また、車両に搭載されている最中も走行に利用するだけでなく、生活に活かすことが重要だという。

さらには、バッテリーの寿命までしっかり使い切ること。かつ、使い切った後はリサイクルすることも重要だと述べた。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド18

このようなバッテリーの利用が社会に実装されるためには、自車のバッテリーがあと何年もつのかを自動車オーナーはもちろん、中古車市場でも明確化することだ。

Honda自身がモニタリングできていることが重要かつ現在の課題であり、伊藤氏が開発しているモニタリングシステムは、まさにこのような課題解決に向けたものである。

システムの開発においては、Hondaが元々持っていたコネクテッドカーから得たビッグデータならびに、こちらも社内のデータ分析基盤を活用した。これらのアセットを活かした上で、SOHを診断・予測する独自のアルゴリズムを内製開発し、かけ合わせることでAWS上にシステムを実装するに至る。

同システムを使うことで、下記スライドの右下に示しているように、現在のバッテリー容量ならびに走行データを基に、数年後のSOHを予測することができる。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド19

伊藤氏は実装に至るまでの苦労を「長い道のりでした」と語った。具体的には、PythonなどIT系の技術に触れたことがあるメンバーが少なかったため、エンジン領域などのクルマのエンジニアをリスキリングするとともにITエンジニアを迎え入れた。

すると今度は、ITエンジニアがクルマについて詳しくないとの課題が生じ、こちらにおいてもリスキリングをしてもらった。さらには、ビジネス視点やお客様の声をヒアリングするといったスキルも乏しかったため、同スキルも同じく習得していった。

このような研鑽、努力を経て完成したこともあり「社内におけるベストプラクティスになると考えています」と、伊藤氏は力強く語った。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド20

SOHを確認するための診断方法は、他社にもある。ただ、ディーラーや整備工場などにクルマを持っていき、計測器などに接続する必要があるなど、手間がかかるのが一般的だ。

一方で伊藤氏が開発したシステムは紹介したとおり、既存のデータを使うため、そのような手間は発生しない。また、基となるコネクテッドデータはまさに今この瞬間も増え続けているため、精度はさらに高まっていくという特徴がある。

近しいサービスをIT領域に強いスタートアップが開発し技術競争が激しくなりつつある中で、予測値が安定するまでに1年ほどの期間を要するなどいくつかの技術課題も挙がっているそうだが、それらに対しても日々解決に取り組んでいる姿勢や状況も示した。

Hondaが目指す次世代エネルギーエコシステム――データ駆動型アプローチで社会インフラと統合した「機械学習・AI・デジタルツイン」とは スライド21

車両からバッテリーが離れた後の二次利用については、先ほど水野氏が紹介したALTNAによる定置型バッテリー事業のBESSを第一に考えているという。

その他にもバッテリー寿命を延ばすための走行での工夫をユーザーに伝えるというアクションを自動車メーカーから起こすなど、同システムを活用することでのさまざまなサービスの拡大を考えているという。伊藤氏は次のように述べ、セッションを締めた。

「バッテリーをより多く長く活用するとともに、ライフサイクルにおいて価値を最大化することは、最終的にカーボンニュートラルにつながると考えています」(伊藤氏)

【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答

セッション後は、イベント参加者からの質問に登壇者が回答した。抜粋して紹介する。

Q.プローブデータはBEVの航続距離の目標設定に活用できるか?

白澤:利用可能です。算出しやすいカタログ燃費ではなく、実用の航続距離の確認に利用しています。具体的にはセッションで紹介した、デジタルツイン上でエアコンを動かすと、どの程度航続距離が落ちるかの確認や検討などで利用しています。

Q.V2Gシステムにおいて、Hondaがリソースアグリゲーターになるのか?その際のビジネスモデルも併せて聞きたい。

水野:現時点では考えていません。ビジネスモデルにおいてもどこかの領域に絞るというよりも、まずはバリューチェーンをどのようにつくっていくのかという考え方で進めていくこと。その中で、我々のポジションやビジネスモデルを検討しています。

Q.行動予測も含め、自動車の発電量は予測しているのか?

白澤:SOCがどの程度かは予測しています。ただ行動予測においては、平日では会社との往復など定型的なので予測しやすいのですが、週末の予測はさまざまな行動を取るケースが少なくなく、難しいと考えています。統計、機械学習、マルコフモデルのアルゴリズムを使うなどして検討しています。

Q.コミュニケーションを円滑に進める上で心がけていることは?

小栗:Hondaにはポジションや年齢に関係なくワイワイ、ガヤガヤと本音で議論し合う「ワイガヤ」というカルチャーがあります。また、同じ目的を持つこと、相手をリスペクトすること。この2つを意識することで、よき雰囲気が醸成すると考えています。

Q.機械学習の未経験時の対策についての取り組みを聞きたい

伊藤:いろいろなアルゴリズムがあるかと思いますが、我々は説明性を重んじています。そのためディープラーニング的な何でもできるけど、未経験に弱いアルゴリズムは使わないようにしています。

具体的には温度やSOC、電流に対する傾向を我々は知っているので、そのノウハウや法則性に逆らわない学習の仕方をすることなどで、強化しています。

Q.V2Gを実施するとバッテリーの劣化は進むのか?

白澤:劣化は進みます。そのため各人のクルマの利用により、V2Gをおすすめできないユーザーがいるのも事実です。ただこのあたりはビッグデータを活用し解析していますので、迷惑のかからない利用での推進を行っています。

小栗:クルマの使い方により、バッテリーの劣化度合いは大きく変わります。自動車のバッテリーを金融資産のようなものだと考えてもらい、あまり乗らないお客様の場合は、その眠っている資産を活かしましょう。そのような考え方で進めています。

本田技研工業株式会社
https://www.honda.co.jp/
本田技研工業のキャリア採用情報
https://www.honda-jobs.com/
本田技研工業の採用情報
https://global.honda/jp/jobs/?from=navi_footer_www
本田技研工業の電池・パワーエレクトロニクス領域について
https://www.honda-jobs.com/about/esd/

テクノロジーと共に成長しよう、
活躍しよう。

TECH PLAYに登録すると、
スキルアップやキャリアアップのための
情報がもっと簡単に見つけられます。

面白そうなイベントを見つけたら
積極的に参加してみましょう。
ログインはこちら

タグからイベントをさがす