日本の製造業が「インダストリーX.0」に適応するには〜アクセンチュアの提言

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日本の製造業が「インダストリーX.0」に適応するには〜アクセンチュアの提言

モノづくりそのものが価値だった時代から、各種デジタルテクノロジーとの連携・融合が価値を生む時代へーー。

近年の製造業では、「インダストリー4.0」と呼ばれる世界的な潮流に乗ることが急務とされている。インダストリーIoT(IIoT)、コネクテッド・スマートプロダクト、RPA(Robotic Process Automation)、協働型ロボット、コグニティブ・コンピューティング......。こうしたキーワードが注目を集め、製造業各社はどうデジタルシフトしていくか、模索する日々が続いている。

だが、インダストリー4.0の取り組みは、世界のリーディングカンパニーでは「すでに顕在化している事象」である。技術が日進月歩で進化しているように、このムーブメントもそう遠くない将来、インダストリーX.0として次のフェーズに移っていくだろう。

このようなスピード感の中で、日本の製造業は何を変え、どう変化に適応していけばいいのか。企業のデジタルシフトを数多く支援しているアクセンチュアは2018年1月23日、このテーマを議論するイベント「実例から紐解く - IoT、ARのその先へ、インダストリーX.0 がもたらす世界 -#Accenture Meetup」をTECH PLAYで開催した。

ムサシカーブからスマイルカーブへの転換で問われる変化

アクセンチュアが定義する「インダストリーX.0」までの歴史的変遷

イベントの冒頭では、2017年発刊の翻訳書『インダストリーX.0 製造業の「デジタル価値」実現戦略』を監訳し、日本語版の序文も執筆した

アクセンチュア株式会社
デジタルコンサルティング本部
インダストリーX.0日本統括 マネジング・ディレクター

河野 真一郎さん

が登壇。すでに勃興しているインダストリー4.0の本質と、日本の製造業がデジタルシフトで遅れを取っている背景について語った。

まず、「インダストリー4.0=デジタル環境と物理的環境が連携」する時代の最も大きな変化について、河野氏は「ムサシカーブからスマールカーブへの転換」があると説明した。

ムサシカーブとは、モノづくりの業務プロセスを「上流工程=企画・設計」「製造工程=組み立て・加工」「下流工程=販売・サービス」の3つに分けた場合、真ん中にある製造工程がもたらす付加価値が最も重要であるという考え方である。

従来、モノづくりで利益を上げるには、製造工程を最適化することで部品数や在庫数を抑えることが必要だったからだ。また、製造工程における「匠の技」が、購入者にとっての商品価値を高める差別化要素にもなっていた。

それゆえ縦軸に付加価値を、横軸に業務プロセスを取った座標軸上で付加価値の高低を描いた場合、真ん中の製造工程が最も高い放物線状のグラフになるわけだ。

だが、デジタル化が進んだことで、現代のモノづくりでは最終的なユーザー価値が「モノを売った後のサービスフェーズ」に移行し始めている。

また、技術革新の結果、企画・設計段階では3D CADによるデジタルモックアップが半ば常識化し、その後の製造工程で差別化の鍵を握っていた「属人的で高度な技能」をもデータに置換することで平準化できるようになった。

これらの変化によって、インダストリー4.0以降のモノづくりでは、ムサシカーブとは真逆の放物線を描く「スマイルカーブ」が重要視されるようになったのだ。

つまり、日本の製造業は今後、スマイルカーブで製造工程より付加価値が高いとされる上流工程のスピードアップと、下流工程でのサービス拡充に取り組まなければならないというわけだ。

「インダストリーX.0の時代は、モノとデジタル技術の正しい組み合わせが競争優位の源泉になります。しかも、Xには『クロス』という意味もある。例えばデジタルベンチャーのUberがいまや自動車メーカーも無視できない存在になったように、製造業はデジタル企業のやり方を積極的に取り入れる必要があるでしょう」(河野さん)

インダストリーX.0の時代に生き残る製造業の特徴を説明する河野さん

具体的には、日本の製造業が得意としていた「カイゼン」を中心に構築されてきた業務プロセスを、一部変えていく作業が必要になると河野さんは続ける。

「優れた製品を提供することが最上の価値だった時代から、『新しい体験を必要な分だけ提供する』という成果が価値になる時代になると、組織内の指示系統もミドルアップダウンから文鎮・ネットワーク型にシフトする必要が出てきます。その方が、イノベーションを生むスピードが高まるからです。こうした変化を、組織文化に組み込む作業が大切になります」(河野さん)

その他、特に変わる必要がある部分は以下の5点だという。

■従来の「日本型」モノづくり

  • 部品表はマトリクスBOM(個別部品単位で構成する)
  • 設計手法はコピー型
  • 公差条件は寸法公差
  • 従業員育成は平等、一律に行うことで高度な技術力を担保
  • 試作は物理モックアップで行う

■先を行く「欧米型」モノづくり

  • 部品表は構造化BOM(モデルによらず共用化)
  • 設計手法はExtract型(抽出型)
  • 公差条件は幾何公差
  • 従業員育成は1人1人の資質に頼らない前提で行い、その分をデータ活用でカバー
  • 試作はデジタルモックアップで行う

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デジタル化で意思決定と組織はどう変わるべきか

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