エンジニア3000名体制を宣言!LINEのエンジニアカルチャー・給与・福利厚生・コード試験などを全公開
LINEは、7月21日、新宿のLINE本社で「LINEエンジニア 採用の日」イベントを開催した。「つくることを楽しもう。」をキャッチフレーズに、エンジニアに向けた採用説明会だ。
LINEで働くエンジニアたちがそれぞれの働き方、カルチャー、そして給与・待遇面にまで踏み込んでディスカッション形式で発表。会場には約100名のエンジニアが集まり、懇親会も賑わった。
ギークよ、来たれ!グローバル規模でエンジニア3000名体制を目指す
冒頭、挨拶に立った上級執行役員サービス開発担当の池邉智洋氏は、これまでのLINEの採用活動について「これまであまり積極採用をしているイメージはなかったかもしれないが、エンジニア採用を強化していることは事実で、今後も積極的に採用イベントを打っていきたい」と述べた。
LINE株式会社 上級執行役員 サービス開発担当 池邉 智洋氏
現在、LINEは日本、韓国、中国、台湾、ベトナム、タイ、インドネシアに開発拠点を持つ。日本国内は東京・福岡のほか、この6月にオープンした京都を合わせて3拠点。ベトナムは、ハノイとホーチミンに拠点がある。エンジニアの総数はグローバル規模で1700人。この4月に韓国で開催された、各拠点のエンジニアが一堂に会するワークショップは、大規模ホテルの大広間を借り切ってもなお立錐の余地もなかったという。
池邉氏によれば、今回の採用イベントは国内3拠点での採用が目的だが、今後はグローバル規模でエンジニア3000名体制を目指す。
「3000名体制は、メッセンジャーアプリのLINE開発だけではない。LINEファミリーサービスと呼ばれる各種サービスとそれを支えるインフラ、さらにAIアシスタント『Clova』や『LINE Pay』などのFinTechを含めた新規事業拡大のために、どうしてもこれだけの人々が必要」と訴えた。
LINEのエンジニアたちに通底する組織文化については、「Take Ownership(自分ごととしての開発への取り組み)」「Trust & Respect(互いの信頼と尊敬)」「Be Open(心を開いて忌憚のない意見を交わす。OSSにも深くコミットする)」の3点を挙げた。
信頼と尊敬の文化は、コードレビュー一つにも現れている。すべてのコードは他の誰かによってレビューされ、全員のOKが出ない限り取り入れられることはない。けっしてエンジニアを甘やかす環境ではないのだ。厳しい周囲のプレッシャーがエンジニアに「よりエレガントなコード」を書くモチベーションを与え、それを目指すプロセスにこそ信頼と尊敬が集まる。
「専門職として技術に真摯に向き合い、自らGeek(ギーク)であろうとする気持ちが大切。入社時には必ずコーディングテストを実施する。一方で、社内は多国籍人材にあふれる。コードと共に英語が、エンジニアの共通言語になっている」と指摘した。
池邉氏はLINEエンジニアの待遇にも触れた。エンジニアは少なくとも年収は500万円台からスタート。「20代~30代の若手社員で600~700万円が一般的な金額だが、なかには1000~2000万円という人もいる。エンジニアをプロフェッショナルと認めての給与体系だ」とした。
LINEは6月に各サービスの成長領域に特化して開発に専念する子会社「LINE Growth Technology」を設立したが、池邉氏はその代表取締役にも就任。「現在は役員しかいないが、中長期的にはこの会社も、エンジニア100名体制に育てたい」と語った。
多拠点共同開発が進む「めちゃくちゃホワイトな職場」
続いて壇上でパネルディスカッションを繰り広げたのは、東京、福岡、京都で働く5人の社員たち。エンジニアの給与と福利厚生、あるいはリモートワークの理想と現実など、LINEでの働き方を赤裸々に語った。
リモートワークの実態について開発1室マネジャー(東京)の佐藤春旗氏は、「私が担当するLINE STOREやスタンプショップを開発するチームは、東京と福岡にほぼ同数のメンバーがいて、こうした多拠点共同開発のスタイルが3年間も続いている。
LINEではこれが当たり前。ただこの体制を維持するためには、例えばLINEのビデオチャットを1日中つなぎっぱなしにするなど、空気感を共有するための工夫が重要だ」と語る。
左から、LINE開発1室/マネジャー 佐藤 春旗氏、LINE KYOTO開発室 ミラーチップ アダム氏
LINEには現在、約200人の外国籍エンジニアがいる。福岡拠点は6割が外国籍だ。日常のコミュニケーションは英語と日本語が入り乱れる。福岡の開発室には技術のこともよくわかる専属の通訳がいて、会議には必ず同席してくれるので問題はないそうだ。
ただ、英語力向上については各自の努力も必要。私自身はかつて600点台だったTOEICをなんとか頑張って800点台にまで伸ばした。職場の環境と必要に迫られれば、誰でもそれぐらいはいける」と語るのはLINE Fukuoka開発2室室長の新田洋平氏だ。
LINE Fukuoka開発2室/室長 新田 洋平氏
祇園祭の鉾立が目の前を通っていく、夏の京都開発室の話をするのは上野賢一氏。
「LINEのエンジニアは専門業務型の裁量労働制。私がオフィスで勤務する時間は平均6〜7時間程度。個人的にはエンジニアとしてピーク性能が出せるのは1日3時間程度だと感じている。その3時間をいかに万全のコンディションで活用するかが大事」と指摘する。
同じ京都開発室のミラーチップ・アダム氏も「出社は昼前で、普段は6~7時には退社する。残業といってもせいぜい9時ごろまで」という働き方だ。
LINE KYOTO開発室 上野 賢一氏
これは他の拠点でも同様らしい。
「福岡オフィスは19時頃になると、誰もいない。めちゃくちゃホワイトな職場」とモデレーター役の櫛井優介氏(Developer Relationsチーム/カルチャー・エバンジェリスト)が証言する。
「カードで入退館をチェックし、毎月中旬ごろに長時間労働になりそうな人がいた場合、その上司宛に人事からアラートを送るようにしている」ので、だらだら残業することがほとんどないというのだ。
LINE Developer Relationsチーム/カルチャー・エバンジェリスト 櫛井優介氏
ディスカッションには人材開発チーム/Developer Relationsチームの薮田孝仁氏も、「東京で勤務するエンジニアでも残業申請をするエンジニアは約500人中10名程度。マネジャーの部下に対する時間管理が徹底しており、マネジメントもエンジニアも長時間労働を良しとしない文化ができている証拠だ」と述べた。
LINE株式会社 人材開発チーム/Developer Relationsチーム/HR 薮田 孝仁氏
LINEのエンジニアカルチャーは?
先に池邉氏が提示した、LINEのエンジニアカルチャーについても議論が沸騰した。
「Take Ownership」について、「与えられたことをこなすのではなく、自分がこうあるべきと思ったら、それに向かって進む。環境に関心をもって、知らないことでも積極的に調べて自分ごとに変えていく態度のこと」と解釈するのは上野氏。
従って、エンジニアの採用にあたっても「技術やサービスについての好奇心がどれぐらいあるか」が基準になる。「そもそも面接でその人が楽しく話をしているかどうかが一番気になる」というのは佐藤氏。「技術がらみの話題が弾まない面接は最悪」と言い切る。
新田氏は「一次面接では技術力。二次面接ではLINEの文化の中でやっていける人かどうか、カルチャー・マッチを重視している」と明かす。
自身が入社早々に“LINEバイト”サービスの立ち上げに関わったときは、「バイト関連のサービスを立ち上げる」というミッションをポンと最初に渡されて面食らったという。「LINEでは入社早々大きなタスクを任されることが多い。受身ではなく自走できる人であってほしい」と、これから一緒に働くであろうエンジニアに期待を寄せる。
パネル討論では、年に一度、各部署から人材募集が行われ、誰もが上司に知られることなくそれに応募でき、採用が決まったら上司は原則止めることができないという社内公募制度についても触れられた。この制度は拠点間の異動であっても有効。「現在は国内拠点だけだが、将来は国外拠点への異動も考慮する」(薮田氏)という。
「P」と「C」でエンジニアを多面的に評価。エンジニアは昇降デスクが大好き
転職者にとって仕事の内容と同様に関心が高いのが給与だ。
パネラーたち個々の年収までは明らかにされなかったが、参考になる数値として挙げられたのが新卒エンジニアの初年度年収だ。
最低限の固定年俸が約500万円。それに自社株式や個人成果に応じたインセンティブ、新卒でも530~550万円相当の年収がベースだという。
昇給の裏付けとなる評価は半年に1回。半年間のパフォーマンスを評価する「P-Review」と、チームの上司・同僚・部下から360度で評価される「C-Review」の2つのレベルで評価される。
「私はC-Reviewの制度がよいと思っている。匿名であれ、同僚から自分の仕事に対してフィードバックがあるのは励みになる」と、ミラーチップ氏。
「自分の業績についてのアピール欄にプルリクエストのURLを貼っている人がいる。それを読むと、とてもいいコードだったりする。エンジニアの上司がエンジニアの部下を技術内容に則して評価できているのは公平でよいと思う」と新田氏も言う。
LINEの場合、拠点ごとに給与水準に格差を設けてはいない。ただ福利厚生施策は拠点ごとにまちまち。東京拠点にはダーツ、ビリヤードなどのゲームコーナーやカフェがある。また、どのオフィスのフロアにフリースペースを設け、簡単なミーティングはそこで行われる。昇降機能のあるデスクとアーロンチェアも常備だ。
「エンジニアには動くものは動かしてみたいという本能がある。昼休み後は眠くなるのか、昇降デスクを動かしながら、自分にカツを入れるのはエンジニアの人だけ」という笑い話も語られた。
一方、京都オフィスには自由に工作ができるようなコラボレーションスペースがあり、冷蔵庫の飲み物は自由に飲める。
「LINEの社内には専任のスペースデザインチームがいて、LINEのカルチャーにふさわしいオフィスのデザインを、いつも考えている」(櫛井氏)
その他にも、国内外のカンファレンスへの参加支援、オライリーの技術書をすべて揃えている、語学試験受験サポート、他部署の人とカジュアルに話す「Tech Talk」イベント、海外籍のエンジニアへの生活支援、社内サークル、健康診断再検査費用補助、マッサージ師常駐など、多岐にわたる福利厚生施策についても話が及んだ。
「コンピュータの気持ちがわかること」LINE採用試験の傾向と対策
イベントの後半では「ググってOK!? LINEエンジニアの選考基準を全公開・開発職編」と題して、エンジニア採用面接・選考官も務める福岡開発室のきしだなおき氏が、採用試験に用いているWebテストや選考官として大切にしていること、また、選考過程の技術試験においてどのような“傾向と対策”をしておくべきかなど話した。
LINE 福岡開発室 きしだなおき氏
きしだ氏の選考基準は、一にも二にも三にも「コードが書けること」。Webテストは、Googleで調べるのは駄目です(笑)。たとえ調べたとしても「それをコピペしただけのコードはすぐにわかってしまう」と述べる。
面接時にWebテストで提出されたコードを書き直してもらうこともあるが、そのときの対応力にも注目する。きしだ氏は自分が評価したいコードを「真面目なコードよりも熱いコード」「計算量の少ない効率性の高いコード」と表現するが、それをJavaプログラミングの例題を元に示した。
LINEのWebテストや面接に勝ち抜くため、ひいては勝ち抜けるだけのコードを書けるようになるためには、どんな準備をしたらいいか。
きしだ氏は、「プログラマには筋トレのようなトレーニングが大切。これを養うためにはAtCoderやLeetCodeなどプログラミング試験サイトのビギナー向け出題の過去問をやるといい」などと具体的な処方箋を挙げる。もちろん理論武装も必要だ。そのためにはIPAが実施する応用情報技術者試験(AP)のテクノロジー系の勉強を推奨する。
筋トレと理論に加えて、やはりものを言うのは実務経験。サーバーサイドのJavaエンジニアというバックグラウンドを背景に、きしだ氏は「最近はサーバー管理をしなくてもよいサービスがたくさんあるが、そうではなく、自分でDBやWebサーバーを構築してパブリッシュするという、一連の完結したソフトウェア実装の経験が重要」と指摘する。そうしないと要素技術はあっても、つなぎこみの泥臭い部分の経験が蓄積されないというのだ。
きしだ氏はエンジニアの選考基準の一つに「コンピュータの気持ちがわかること」という要素も挙げていた。その真意を尋ねると、「コードを走らせるとき、コンピュータやシステムのどこで何がどう動いているのかを把握していることが大切」という意味だという。
もしプログラムが動かなかったり、パフォーマンスが上がらない場合、コンピュータの内部の動きがわからないと、CPU、メモリ、DB、ネットワークのどこにボトルネックがあるのかわからないかもしれないからだ。
「10年前まではコンピュータを新しく入れ替えれば、それだけでパフォーマンスはよくなった。今はプログラムの構成を考えないとパフォーマンスは改善しない。それだけにプログラムをより深く理解する必要がある」とも指摘した。
量子コンピュータ、ブロックチェーン、AIなど新しいテクノロジーの登場でコンピュータプログラムの書き方も大きく変わる。
「これらの新しい技術をどう考え、どう取り組んでいるかは、面接での重要なキーワードになるでしょう。ただ単に言葉を知っているだけでなく、自分で何か具体的にやっている話を伝えてほしい」と、面接の傾向と対策についても語った。
9月8日に「LINE採用の日」が関西でも開催!
開催日:2018年9月8日(土) 13時半開場(18時終了予定)
場 所:TKPガーデンシティ東梅田 7F
参加費:無料
懇親会:イベント終了後、同じ会場で開催予定です
詳細はこちらから:https://linecorp.com/ja/career/dev-event
取材・文:広重隆樹 撮影:馬場美由紀