組織をリデザインして「アジャイル組織」にしたら、全員がCEOになった話──ゆめみ片岡代表×Goodpatch土屋氏対談
アジャイル組織にしたら起こった、3つの恐怖と悲哀のドラマ
今回の対談も前回に引き続き、TECH PLAY SHIBUYAにて公開形式で開催された。まずは片岡代表がゆめみの組織改革「アジャイル組織」について、プレゼンテーションが行われた。
▲株式会社ゆめみ 代表取締役 片岡 俊行氏
1976年生まれ。京都大学大学院情報学研究科在学中の2000年1月、株式会社ゆめみ設立・代表取締役就任。在学中に、100万人規模のコミュニティサービスを立ち上げ、その後も1000万人規模のモバイルコミュニティ・モバイルECサービスを成功させる。また、大手企業向けのデジタルマーケティングの立ち上げ支援を行い、関わったインターネットサービスの規模は4000万人規模を誇り、スマートフォンを活用したデジタル変革を行うリーディングカンパニーとしてゆめみグループを成長させた。
ゆめみは2000年1月に創業した学生発ベンチャーです。当社が掲げるビジョンは「世界中で毎月1億人以上の人が毎月使い続けるサービスを作る」こと。それを実現するため、100社のお客さまと一緒に展開して行くには、1000人のメンバーが必要になります。1000人の組織で品質とアジリティを両立させるには、組織の構造自体を変える必要がある。そう考え、昨年の10月1日にアジャイル組織になると宣言しました。
その結果、「全員CEO制度」「有給取り放題制度」「給与の自己決定制度」という、ユニークな制度が生まれました。一見するとカオスに見えるかもしれません。しかしカオスな環境でも、原理原則をうまくその組織に組み込むことができれば、鳥や魚の群れのように秩序を保つことができると考えたからです。
そこで「自律」「分散」「協調」という3つの原理原則を組織に組み込み、アジャイル組織を作りました。大きく変わったのが意思決定プロセスです。誰もが意思決定を行うことができ、影響ある人、その分野の専門的な知識を持っている人に必ず相談をするのです。
ゆめみではソフトウェア開発の現場では馴染みのあるプルリクをメタファーとした「Proposal Review Request(プロリク)」という仕組みを作り、明確なルール化を行っています。ちなみにプロリクでは反対や否決されることはありません。全員がCEOなので、誰かに相談して意見をもらえば自分で意思決定できます。
すでに私以外のCEOの判断で、本社移転や大きな研究予算の獲得など、大胆な意思決定が行われています。しかし、順調に改革が進んでいるわけではありません。ここからが恐怖と悲哀のドラマの始まり。セルフデザインされた組織の中で、予測できない次のような事件が起こりました。
エピソード1
勉強し放題制度とは、あらゆるインプットに対して会社が全額負担するという制度です。ガジェットの購入もOKだったため、事業とは直接的には関係のない高額物品を購入した社員が登場。すると、不公平だ、非常識だという声などが沸き起こり、暴力的コミュニケーションに発展する可能性もありました。それに対して、弱毒化されたウィルスをあえて放り込み、免疫を付けることを行いました。事業とは直接的には関係のない高額物品を買うことで学びになることもあるという見方を植えつけました。
エピソード2
社内ニートや無気力、嘘つき、手抜きなど社会的手抜きという組織で起きる問題にどう対応するか。みんな、最初は会社に貢献しようと入社しています。つまり正常細胞なのですが、何らかの理由で手抜きをしてしまっているのです。特に私たちは代表取締役権限を移譲しているので、手を抜いたり、嘘をついたり、約束を破ったり、自分が勝手に振る舞うことがあると、他の社員は怖くて仕方がありません。
そういうことが実際に起こったとき、「こういう会社の自律の制度がおかしいんじゃないか」「そういう人をのさばらしていいのか」という話になりました。日本の会社は簡単に解雇できません。もちろん、私も解雇する方針ではなかったので、切除はせず、化学治療して、本人が正常になるアプローチをとりました。
エピソード3
しつけの誤解。例えば高温のアイロンを触ろうとしている赤ちゃんに、「あぶない」と注意しても、なんで怒られているのかわからないので、自分は嫌われているのかなと誤解されてしまうことがあります。そういうことは会社の中でもあります。
例えば福利厚生制度をみんながいろいろデザインする中で、不公平じゃないか、それは課税対象だと、暴力的コミュニケーションに至ってしまい、その解決にすごく苦労したことがありました。今回はこの3つのエピソードを元に、私たちがチャレンジしていることを対談の中で明らかにしていければいいなと思います。
今回の対談相手はGoodpatch CEOの土屋氏
片岡代表のプレゼンテーションの後、Goodpatch土屋氏の自己紹介および会社紹介が行われた。
土屋氏は日本のWebデザイン会社に勤めた後、米サンフランシスコに渡り、海外進出支援を経験。その後、帰国し2011年にGoodpatchを起業。Goodpatchは東京、独ベルリン、ミュンヘン、パリにオフィスを構える、デザインの力を証明するデザイン会社。同社のビジョンは「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」こと。
また「デザインの力を証明する」というミッションを掲げてビジネスを展開。デザインを、より価値のコアを創造する活動と捉えており、デザインの力をもっと世の中に知らしめていくことをミッションと掲げている。
クライアントワークが8割を占め、近年の代表的な事例としてはリンクアンドモチベーションの「モチベーションクラウド」のリニューアルプロジェクトでUI/UXデザインと開発を支援。グッドデザイン賞2018の「グッドデザイン・ベスト100」にも選出された。自社事業ではプロトタイピングをチームにインストールするツール「Prott」の提供、デザイナーに特化したキャリア支援サービス「ReDesigner」も展開している。
▲株式会社グッドパッチ 代表取締役社長/CEO 土屋 尚史氏
アジャイルを適用するまでの組織の変遷
片岡代表、土屋氏の自己紹介・会社紹介が終わったところで、対談が始まった。
土屋:まずは片岡さんが起業された背景と組織の成長の変遷について教えてください。京大の同級生3人で作られたんですよね。
片岡:研究室の技術を世の中に活用していきたいという思いで、大学院中退して、ノリと勢いで立ち上げました(笑)
土屋:株式会社を設立したんですよね。当時の会社法だと、資本金は1000万円ですよね。
片岡:1年ぐらい前から創業準備をやっていました。足りない分は、それぞれの親からも借りました。
土屋:どういう変遷で成長していったのでしょう。
片岡:創業後しばらくは自社サービスとお客さまと一緒にやっていくB2Bのビジネスを半々で展開していました。2014年に創業メンバーのそれぞれの役割を明確にし、B2Cの事業、B2Bの自社プロダクトの事業を別会社にし、ゆめみはお客さまと一緒にやっていくビジネスにフォーカスすることになりました。
土屋:分社化するまでの社員数はどのくらいの規模だったのでしょう。
片岡:約100人です。
土屋:当時の組織デザインや組織マネジメントはどういう形だったのですか。
片岡:当社も創業から数年は従来型の経営管理システムを採用していました。しかし2011年11月25日に起こした大障害を機に、マネジメントの役割を分散。しかし、当社が扱うのはクリティカルなサービス。
その品質を維持しながらアジリティを進化させていくという難しさがありました。その責任が部長に集中することとなり、3回連続で辞退者がでたのです。このままの組織では無理だと思い、2014年にマネジメントの役割だけではなく、権限も分散するという設計に大きく変え、それがうまくいきはじめたところでした。
土屋:部長やマネジャーを廃止したのですか?
片岡:廃止ではなく、部長やマネジャーが担っている役割、プロフィットマネジメント、プロジェクトマネジメント、ピープルマネジメント、プロセスマネジメント(4つのP)という役割を1人で担うのではなく、手分けできるようにしたのです。
「私はピープルマネジメントが苦手なので、プロジェクトマネジメントをやります」とか、「プロジェクトマネジメントも今回は大規模なので2人で担当する」というようなかんじですね。残った役割については、ゼネラルマネージャーなどの上位の職種がカバーしており、カバーするという構造は続いたが、以前よりは柔軟性が増したので、つい最近まではなんとかやってこられたのです。
土屋:なるほど、そのときにアジャイル組織のベースができたということですね。組織のデザインについて、誰かに相談はしたのですか。
片岡:外部のアドバイザリーから意見をもらうことはありますが、自分で自分に相談しながらやっています。問題をつぶさに観察してどう解決すればよいか、実験的に試み、みんなのフィードバックをもらいながら、組織作りをしていきました。
土屋:先ほどの4つのPも片岡さんが考えられたのですか。
片岡:そうです。2015年ぐらいに、ホラクラシーという組織の考え方が出てきたので、それを変形してみたり。いろんな概念は参考にしました。
土屋:少数精鋭の組織を運営したいという話がありました。なぜ、1000人の組織にしていくという考えが浮かんだのでしょう。
片岡:直感的な部分もあるが、エンジニアやデザイナーなど技術の専門性がどんどん深く、細分化されています。今でも、1つのプロジェクトを運営するのに10~15職種の専門的な人たちを集めないとワークしない状況が起こっている。単純に今まで同じようにやっていくのにも、人がたくさん必要になると思うんです。
一方、1つの職種を見ても、一人で最新の技術を追っていくのは限界があります。しかも人に依存しないチーム体制を作るとなると、それなりの人数が必要になる。例えば1職種に30人必要で、15職種あると450人必要になります。しかも人数が増えれば、人も多様化するため、いろんな観点でアイデアやナレッジが提供できる。
そういう価値も発揮できます。これまでは数が数百の単位になると組織が硬直化し、今まで実現できた俊敏で柔軟な機動力が失われると思い込んでいましたが、組織を大きく変えることができれば、そういう価値が発揮できるのではないかと、突如ひらめいたのです。
土屋:分散型の自律型組織を作っていけば、いけると感じたのですか。
片岡:アジャイル組織をスケールさせていこうと組織設計をしていたときに、Spotifyの事例を見たんです。すごく当社と似ているなと思ったんですね。Spotifyは従業員が千数百人いる会社。
しかしSpotifyは会社全体ではなくて、開発組織がスケーリングアジャイルになっているんです。その発想からジャンプして、会社全体がアジャイルになれば、私が問題を観察しては修復するというアプローチは不要になるのではないかと思いました。
そこで2018年2月に出版された「ティール組織―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」という書籍で助言プロセスという仕組みを知り、導入しました。
土屋:助言プロセスはうまく回っているのでしょうか。
片岡:そうですね。大きな意思決定でも助言プロセス、プロリクを採用しています。今はそれに慣れてもらうため、身近な意思決定でも助言プロセスを採用しています。例えば何かモノを購入する時、誰かに助言をもらうようにしています。
エピソード1「勉強し放題制度」で起こった高額商品購入問題の解決方法
土屋:でも否決はされないんですよね。だからエピソード1のように、事業に直接関係なさそうな高額なガジェットを買うということが起こったんですね。この話ではワクチンによって、免疫をつけることを行ったということでしたが、実際にどのように対応したのですか。
片岡:実は勉強し放題制度は事前申請もレビューも不要というルールです。なので買えるんです。ですが、ルールを身勝手に捉えて、目的に沿わずに使った場合は、みんなからフィードバックがくるようになっています。
つまりそれがみんなにとって学びになる。そういう身勝手な構造をわざととらすこともしています。好き三昧という感じで、身勝手な人がわざとやっちゃうような雰囲気を醸し出して、実はそうじゃないよという形でみんなからフィードバックをさせて学ばせるんです。
土屋:それでも悪意のある人は買うと思うのですが、そこは性善説のマネジメントなんですか。
片岡:人間は本来利己的であるということから、荀子の性悪説を採用しています。勘違いすることはあるけど、それをちゃんとフィードバックすることで、修正してあげましょうと。ですが、本当の学びはそういう身勝手な行為に対して、「非常識だ」と怒っている人に学ばせるためでもあるんです。怒りは二次感情と言われています。
怒りの感情のトリガーになる一次感情が嫉妬なんです。つまり嫉妬という感情があって怒りが来る。怒りの対象は怒るべき対象ではなくて見習うべき対象なんです。そのようにものの見方を変えて、目の前の対象物を自分の学びに変えていくんです。嫉妬はフロイトやユングの心理学の言葉で表すと、「シャドウ」。
そういう見方をできるようにすることがワクチンなんです。社員全員に「シャドウ」という概念を理解してもらっています。なので、Slackなどのチャットコミュニケーションでも誰かが感情的になると、僕はひと言「シャドウ」と書きます(笑)。
エピソード2「社会的手抜き問題」の解決方法
土屋:エピソード2はどのような対応をされたのでしょう。
片岡:これは本人も気づいていないことがあるので、難しいです。当社ではある部署に所属しながらも、興味もある仕事があればその部署にオファーを出すことができます。なので、所属している部署の仕事があっても、自分の興味のある仕事ばかりを優先することもできるのです。
そういう形で何でもできる権限を持つと大変です。日本では解雇規制ありますし、私自身も解雇はしたくありません。社員をメンバーシップサービスと捉えると、メンバー登録された社員は有給取り放題、勉強し放題、給与の自己決定などのオプションが提供されます。
ただし、イエローカードを2枚出されるとそのオプションが適用されず、普通の社員になる。イエローカードはメンバー同士で出すことができます。オプションがつかなくてもそれなりの待遇なので、不遇になるわけではありませんけどね。
土屋:なるほど。イエローカード制度で、自浄作用的なものを狙っていくということですね。
片岡:浄化作用というより、抑止効果です。とはいえ、現在の社員は全員メンバーで、誰もイエローカードはもらっていません。当たり前のことを当たり前にやらないとイエローカードをもらいますよと、書いているだけなんですけどね。何かあるとイエローカードをもらうかもねと、冗談でイエローカードの話ができる環境にしています。
エピソード3「しつけの誤解」とは?
土屋:エピソード3はしつけの誤解の話でした。具体的にどんなことが起こり、どんな風に解決したのでしょう。
片岡:これはすごく複雑な問題でした。具体的な例として、一部の有志が運動し放題制度という福利厚生制度の設計に取り組んだことです。最初の案ではジムや運動にかかった費用を会社に補助してもらうだけではなく、運動を継続した場合にインセンティブがもらえるという設計だったのです。
ですが、「これはいらない」「こんな方がよい」という人も出てきたので、複数条件の異なるチームを作り、どのチームが運動を継続するかを試し、効果の良いものを取り入れることとしたのです。
そのときに「不公平」「この制度がこのままいくととんでもないことになる」という意見、さらに経理担当者からは「それだけお金がもらえるのなら、給与扱いになるのでは」と意見が飛び交いました。
自分たちで福利厚生制度を設計できるようになると、こういうことが起こりがちです。福利厚生制度は本来、従業員の慰安を目的にした旅行や演芸などの総称で、その支給に対しては課税が免除されています。国税不服審判所の判断でも、「国民の感情に配慮して、こういう費用は課税しません」という風になっています。
つまり理屈ではなく、感情的に不公平だというから、福利厚生は課税しないよと言っているだけ。しかもこの不公平の対立軸は3つあります。第一は会社と事業者との不公平。第二は会社間の不公平。第三が会社の中での不公平です。
経理担当者は会社間の不公平をなくすため、税務上の観点から「これはだめだ」と指摘する。一方、その指摘を受ける本人はそれがわからないので、「なぜだめなのか。こっちはルールに基づいてやっているじゃないか」と思ってしまう。福利厚生制度とはどんなものかを説明するとともに、不公平の定義をし、不公平は感情の問題なので、理屈ではなく判断しようという指針をつくり、学びにつなげています。
土屋:会社の中で不公平かどうかの判断は誰がするのですか。
片岡:ルールを決めました。不公平かどうかの判断は、サルのように「ムキー」となったら、ダメという風に社員には言っています(笑)。これは、脳の扁桃体が闘争反応を示す場合として、社内に認知してもらっています。
「バリューを浸透させない」「ミッションの廃止」は組織運営のアンチパターン?
土屋:片岡さんは「バリューを浸透させない」「ミッションの廃止」「結果責任を負わない」などの話題を挙げていますが、これらは組織を運営する上でのアンチパターンなんですよね。僕は組織課題をどう改善してきたかについてnoteに記事を書いたのですが、それと真逆なんです。バリューの浸透を会社として行わないというのは、どういう背景からなんでしょう。
片岡:バリューの定義はしていますが、なるべく教えないようにしています。人によっては嘘を教える。そうすると、見事にトラップにハマって、その人が会社という「舞台」を盛り上げてくれるんです。身勝手に行動してくれる人がいて、怒る人が出てくる。それが学びになるからです。だからわざと教えない、嘘を教えるんです(笑)。
土屋:答えはあるんですよね。
片岡:うちの会社のバリューは「自律・自学・自責」ですよ、とちゃんと厳密な定義含めて書かれています。自律・自学・自責というと、自分で決め、学んで、責任を自分で取らなければいけないんだと思うかもしれませんが、実は逆なんですよ。わざと学びのために勘違いさせるようにもしています。
土屋:結果責任は負わないというのはどういうことでしょう。片岡さんが負うのですか?
片岡:私も負いたくありません(笑)。実はうちの自責は違います。遂行責任は負うが、結果責任はとらなくていいということ。結果責任を問うとは、評価が下がったり、給料が下がったり、役割を取り上げられたり、精神的に非難されたりということもあるでしょう。
次から挑戦できなくなるので、そういったものはしてはいけないと言っています。遂行責任とは最善を尽くすこと。その結果、問題や課題が起きたとしても、その問題を分析して、将来の進むべき方向に最前を尽くして改善していけば良いということです。
土屋:失敗を許容するということの言い換え的なものなんですね。次に「会社としてのミッションを明文化しない」こともアンチパターンだと思っています。私が書いたnoteの記事https://note.mu/naofumit/n/n028df2984256では、「ミッションを魅力的にして、みんなで共有することが組織を良くすることにつながる」という結論だったので。これもどういう背景からなのでしょう。
片岡:ミッションは大事です。ミッション=使命とは、会社の命をどう使うかですから。そこで【会社】の定義自体を変えました。よく「会社として片岡さんどうするつもりなんですか」と聞かれますが、その時に必ず「俺、会社じゃないし」という話から入るようにしています。
「会社」と一口に言っても、労働基準法における使用者の定義と労働契約法における使用者の定義は異なります。労働基準法においては、経営担当者も人事責任者も使用者になっており、使用者責任の義務があります。
例えば就業規則に書かれている「会社が認めた場合、こういうことを許可する、または懲戒処分を下す」という場合の「会社」には、経営担当者、あるいは人事責任者、支配人、工場長なども入っていますが、労働契約法の場合は法人しか含まれません。
労働契約法で決める賞与規定や評価制度など、個別の内部規定で定められた物事に関しては、法に定められた人しか規定されません。つまり労働者である社員は法の下である法人としての会社と契約して、人事が定めた賞与規定や内規などを守る前提の下に、そのサービスを享受しているだけなんです。
人事、経営担当者はそのような人事サービスをつくる設計者としての重要な役割を担いますが、そのサービスの文脈においては「経営者=会社」ではありません。会社という定義自体、間違って理解されているんです。
このように会社とは、というところから法律などを遡って定義して、本来あるべき思考パターンに思考を修正していく。その上で議論をしていくことにしています。根源的な意味での【会社】とはなんだろう。そういう話を日々社内でしています。
土屋:ミッションの廃止と言うよりは、社員一人ひとりが会社ということですか。
片岡:法の下に定められた人による法人としての「会社」というものは、【会社】の一側面でしかありません。ブランド・コーポレートイメージも、外のお客さまからみた【会社】の一側面でしかない。【会社】と呼ばれるものの中にいる社員一人ひとりの「こういうことを実現したい」「こういう人生を生きていきたい」という想いが、【会社】という生き物の内なる心であり、それによって【会社】の意思が変化していく。
つまり【会社】とそこに属する人は相互関係にあるということです。「会社」はこうなるべきだと社員が思った時点で、【会社】の意思が変わった事を意味します。みんなが「会社」を考えることが、【会社】の使命を変化させ続けていくという考えからなんです。
求職者に「ゆめみとはどんな会社か」と聞かれたらどう答える?
土屋:変化し続けるものだから、明文化しても意味が無いということですね。では求職者が「ゆめみは社会においてどういう役割なんでしょう」と聞かれたらどう答えるのでしょうか。
片岡:自分(片岡)としては、ゆめみという生き物はこういう人生を生きたいだろうと推測しているという前提で、話しています。創業者である私はゆめみと長く付き合っているので、こんな人生を生きていくのではということを最も予想できる人物の一人。シャーマンみたいな存在です。
神のお告げを聞くことができる。例えば、「1000名の組織になりたいんだ」という経営者のエゴが入ってしまうと歪んでくるので。自分と【会社】は違うという認識に立って話しています。
土屋:ゆめみさんではアジャイル組織をスケールさせていく方法として、各々が自律的に動くことが求められており、その最適化を図るために、バリューは浸透させない、ミッションの廃止などさまざまな取り組みをしていると思います。
これが正解かどうかについても、すべて学びになるということですね。信じられないこともたくさんありましたが、うらやましいという気持ちの方が大きい。あっ、うらやましいの一次感情は嫉妬なので、これは「シャドウ」でしたね(笑)
片岡:ゆめみのやり方はもちろん、その取り組みで良かったこと、失敗したところなどもどんどんオープンにしていくので、参考にしてほしい。また外部の方に会社に入ってもらい、代表権を持ってどんどんと実験して変えてもらうことも考えている。ゆめみをシェアしてみんなで作っていく。そしてそれを自分の会社に持ち帰って、変えていく。そうすることで日本全体がよくなれば嬉しいなと思っています。
土屋:ビジネスが大丈夫か不安ですが、メチャクチャ楽しみ。経過を随時、シェアしてもらいたい。今日はすごく学びになりました。ありがとうございました!
かなり斬新で、最先端の取り組みをしているゆめみ。ゆめみに興味・関心を覚えた方は、一度、コミュニケーションを取ってみてはいかがでしょうか。
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