明日から使えるデジタルトランスフォーメーションの進め方! デジタル変革を成功させるためのノウハウとは?

イベント
「先人が語る、明日から使えるデジタルトランスフォーメーションの進め方!デジタルによる変革を推進するためのシナリオとステップとは?」とのイベントが、5月27日に開催された。イベント前半は先人が一人ずつ登壇し、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の導入実例や導入に際し注意することなどについて紹介。後半は3名によるパネルディスカッションが行われ、DXが成功しやすい企業や風土、チェンジモンスターへの対応などについて意見を出し合い、最後は参加者も交えた懇親会が実施された。
明日から使えるデジタルトランスフォーメーションの進め方! デジタル変革を成功させるためのノウハウとは?

デジタル化が正しくなされなければ、デジタル変革は起きない

最初の登壇はファシリテーター的な存在でもあった、パーソルホールディングスCDOの友澤大輔氏。友澤氏は「デジタル化とDXの違い」など、DXの概要から話し始めた。

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▲パーソルホールディングスCDO兼グループデジタル変革推進本部の友澤大輔氏

「アナログ業務をデジタル化し、リードタイムを短くすること。ユーザーへの提供価値は変わりませんが、費用対効果は高まる。これが、私が考えるデジタル化の定義です。業務プロセスの変革、とも言えます。デジタル化すると人手がいらなくなると言う人がいますが、そんなことはありません。

一方DXは、介在価値の変革だと定義しています。テクノロジーを使い、業務フローの抜本改革を行うこと。その結果、新たなユーザー体験ならびに提供価値を創出します」(友澤氏)

デジタル化は必須で、DXを成功させるためにも必要不可欠。デジタル化が正しくなされていなければ、デジタル変革は起きない。両方を同時に進めること、お互いが役割分担したり、レバレッジをかけることがポイントと説明した。

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「DXは真新しいビジネスですから、アイデア段階でボツになってしまうことが往々にしてあります。しかし既存事業のデジタル化は、確実に費用対効果を高めます。しかし次第にマーケットがシュリンクすることが少なくありません。そこで既存事業のデジタル化と平行して、DXで新規事業を開拓。既存事業がシュリンクする前にスケールするのが理想です」(友澤氏)

ただしデジタル化は飛び道具のような万能ツールではない、と導入に際しての注意点も紹介。「デジタル化を通して人・組織の意識を変えていくことが本質」と論じると共に、「そのことが難しい」とも続けた。

全社をあげてデジタル変革を遂行

続いては、昨年11月にミツカンホールディングスのCDO兼デジタル戦略本部長に就任した渡邉英右氏が登壇。渡邉氏は今まさに、ミツカングループ全体で取り組んでいるDXの導入状況や事例、導入に際し意識・注意していることなどを紹介した。

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▲ミツカンホールディングスCDO兼デジタル戦略本部長兼プロセストランスフォーメーション部長の渡邉英右氏

「本年度(2019年)から新たな中期経営計画がスタートしました。デジタルは同計画の中に明確に置かれています。具体的には、全社をあげてあらゆる部門やフェーズで、デジタル化を推し進めること。実現に向け、ホールディングス所属の横断的な部署、デジタル戦略本部を新設しました」(渡邉氏)

ミツカングループのデジタル戦略は、領域などにより大きく3つに分けられる。

1つ目は「マーケティング」領域で、マスメディアに偏っていたメディア戦略を、デジタルメディアも活用していく。

2つ目は「バックオフィス」のデジタル化だ。工場をオンライン・IoTすると共に、各業務・フェーズにデジタルツールを導入。SCM全体の最適化を図る、というもの。また同施策は製造現場に限らず、営業などの領域でもAIやBIを活用したデータ分析やRPAの導入。さらには名刺管理や経費精算でもデジタルツールを導入していくという。

3番目は「グローバルIT企画」だ。社内で使うメール、チャット、カレンダー、社内ポータルサイトといったコミュニケーションツールの再検討ならびに、グループ全社における基幹システムの構築を推し進める。

「デジタルマーケティング」においては同部署の担当部長と協力しながらデジタル化を進めているが、生産性向上に寄与するSCMやRPAの導入・改革においては、社内の人材リソースだけでは足りないとの理由から、外部のコンサルタントやベンダーのリソースを活用している、とのことであった。

200年以上の永きにわたり常に“変革”を求めてきた

DXを進めるに際し、ミツカンの理念や社風も大きく関係していると渡邉氏は次のように話した。

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「ミツカンの創業は200年以上も前、江戸時代まで遡りますが、決して古い体制の企業ではありません。永きにわたり掲げている理念の存在が大きく、この理念はDXにおいても、重要なファクターになっています」(渡邉氏)

【ミツカンの企業理念】

①「買う身になって まごころこめて よい品を」
②脚下照顧に基づく現状否認の実行

実際ミツカンでは、これまで度々“変革”を行ってきた歴史があるという。戦後間もなくの頃、お酢の流通は樽が一般的であった時代に、より良質なお酢を消費者に届けたいと、赤字覚悟でビンに変更したというのだ。

最近では納豆に付属するタレを、開けたときに手に汁がつかないよう片手でパキッと割れるタイプに変革した。

そして今は、自社ECプラットフォームによる新たな販売チャネル、DTCの構築という変革に挑んでいる。

「脚下照顧」を意識しながらデジタル化を進める

「デジタルトランスフォーメーションと聞くと、つい何か、かっこいい変革を行っている気になりますが、何(What)をやっているのかではなく、どのように(How)やるのかが重要だと、全社員に常に伝えています」(渡邉氏)

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具体的には、以下5つの点に注意しながらDXを進めているという。

①デジタル・テクノロジーの導入は手段でありゴールではない
デジタルツールを導入すると情報が数多く集まり見える化する。するとまるで何かを達成しているような感覚に陥りやすいと渡邉氏は指摘。これはデータの収集だけでなく分析でも当てはまり、ツール導入やデータの取得・測定はあくまで手段(過程)であり、そこから何のために何をするのが重要だと説明した。

②目的意識を持つ
デジタル化するとPVやUUばかりに目がいきがちだが、これらの数字はあくまでKPIであり、目的や目標ではないときっぱり。「Objective (目的)」「Goals (ゴール)」「 Strategies(戦略)」「Measurements (評価)」を意識したOGSMフレームワークを活用し、陥らないようにしているとのことであった。

③生活者視点を忘れない
ミツカンでは消費者の事を生活者と呼ばせていただいている。生活者向けのUXは当然のことながら、社内向けのUXも考えないといけない。「前から使っている、慣れている」といった理由ではなく、そのツールを使うことで生産性が向上するかどうかが大事だと渡邉氏。同社ではプロパー社員が多いため、社内ルールやツールにおいて外部ではあまり使われていないもの、端的に言えばそれほど便利ではないものが使われている傾向があり「今後は積極的に改善していく」と強調した。

④Think big start small
リスクを恐れることなく素早く実践すること。ただし目的やゴール、中長期的にどうしていくかといった大きな視点は常に持つことが重要とのこと。この「Think big」がないと、中長的にうまくいかなるケースが少ないからだという。一方でスタートを大きくしようとしすぎてテスト段階から脱せないことは、もう一つのよく陥る事象だと付け加えた。

⑤外部視点(第三者的な視点を持つ)
現在同社ではベンダーや代理店との関係性が好調のため、他のベンダーとの交流や情報収集などに、積極的でない傾向があるという。そうではなく、より良い情報やネットワークを求め、さらなる視点を持つことが重要だと説明した。

「体験をリッチにしてパーソナライズすること」がDXの本質

3人目は、BPOサービス『Kaizen Platform』などで、数多くの企業のDXをサポートしている須藤憲司氏が登壇。DXの本質について「体験をリッチにしてパーソナライズすること」と説明した後、次のように続けた。

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▲Kaizen Platform CEOの須藤憲司氏

「DXはトランスフォームなので、まさに変形すること。イモムシが蝶になるようなものです。一度変形したら、もう、前の状態には戻れません。ビジネスに置き換えて説明すれば、DX前後のビジネスはまったくの別物になります。利用者からすれば、前のサービスを忘れるくらいの圧倒的な利便性があり、生活になくてはならないものに変わるとも言えます。一方で、企業サイドから見れば、これまでの産業やサービスはある日突然破壊されます。DXが恐ろしいのは、このような変革を行う企業が、突然現れることです」(須藤氏)

須藤氏は、いわゆるディスラプターな状況は、シリコンバレーよりも中国で起きており、テクノロジーの社会への浸透においても中国の方が上のケースも多く、中国は今後の技術革新を知る上の重要なベンチマークであるとも指摘。同時に「日本でも起こり得る事象」と続けた上で、中国での現状を説明した。

「アリババがいいベンチマークです。次々と新しいビジネスに参入し、オンライン支払サービスのアリペイ、世界最大のネットモール・Tモール、リアルスーパーなども展開。ウーバーイーツのようなサービスもあり、できたてホヤホヤの食べ物や新鮮な野菜を、自宅やオフィスに宅配してくれます。アリババならびに新サービスの台頭により、淘汰される産業は数多く出てくるでしょう」(須藤氏)

既にこのような動きは日本でも起きており、須藤氏は動画や音楽などのコンテンツサービスを例に紹介した。検索、レコメンデーションの先にあるサービス、Buzz VideoやSpotifyといった、利用者は特別な事を何もしなくても、利用しているだけで次々と自分の好むコンテンツをAIが学習して精度を高めてくれるサービスは、その利便性の高さから、利用者は前に使っていたサービスを忘れるほどで、当然、前サービスを提供していた会社は淘汰されることになる。

では淘汰されない、DXを成功させる企業となり生き残るためにはどうすればよいのか。須藤氏は産業や企業の大小に関係なく、ほぼ全ての企業は3つの論点に集約すると説明した。

DXを活用し生き残るための3つのヒント

①ID戦略/IDは統一。Identifyを活用しエンゲージメントする
特に大企業などでは、対応する窓口やサービス内容の違いから、1人の顧客が複数のIDを持つことを問題視。各部署がバラバラにDMなどを送るため、同じサービスの価格がDMによって違っていたため、トラブルやクレームにつながるケースも見られていると指摘した。

IDの活用方法も考え直す必要があると説明。DMを一方的に送るだけの従来型の戦略ではなく、ユーザーがどのようなパーソナリティを持っているのかなどIdentifyを活用すること、その上で、顧客一人ひとりときちんとパーソナライズしながらエンゲージメントすることが重要だと指摘。実際、前述のアリババではID戦略が正しく行われており、350台のアルファロメオがわずか33秒で売れた事例も紹介した。

②動画/動画は簡単なものでOK
紙やWebページなどで行っていたキャンペーンの告知や製品紹介などは、動画に置き換える必要があるとのこと。理由は明白で、利用者が動画を望む傾向にあるからだ。紙の原材料・物流コストの高騰、5Gのスタートなども理由だと加えた。実際、動画のトラフィックは増加傾向にあり、2021年にはモバイルデータの78%を占めるまでになるという。

一方で、動画制作だからといって身構える必要はないと、須藤氏は説明。今使っている営業資料やチラシなどから十分制作できるとのこと。実際、Kaizen Platformが手がける動画広告改善事業『Kaizen Ad』はそのような主旨で行われていると説明した。

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③リアルタイム×パーソナライズ/ジャストタイムで広告を打つ
従来のマーケティング手法では、ある商品をあるユーザーに勧める、というのがパーソナライズの考え方であった。しかし、これだけではコンバージョン率は上がらない、と須藤氏。重要なのは「パーソナライズ×リアルタイム」であり、「いつ広告を出すのか」かが重要だと指摘。具体的には静的なホームページ内に、ストーリーごとに小分けしたシンプルな動画埋め込むことがポイントだと説明。先と同じく自社サービスでの事例を示しながら紹介した。

結局は「人」である

須藤氏はDXの導入についても言及。PDCAではなくアメリカの軍事戦略家が提唱し最近話題となっている意思決定法「OODAループ」を推奨。次のように理由を述べた。

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「テクノロジーが進歩すれば、データを集めることは誰でも簡単にできます。でもそのデータをもとに、どのような判断をするのか。OODAループでいえば『情勢への適応 (Orient)』が適切になされていなければ、ビジネスでは勝てません。つまり結局行き着くところは“人の知恵”なんです。私もこれまで数多くのクライアントをみてきましたが、DXが成功するかどうかはデジタル化の仕組みとかではく、人材に帰結すると考えています」(須藤氏)

【後半:パネルディスカッション】

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休憩・乾杯をはさんでの後半は、ビールやチューハイなどのアルコール類も含め、登壇者も参加者もドリンクを飲みながらのパネルディスカッションが行われた。テーマは「DXが成功する企業」「チェンジモンスター対策」などであった。

オーナー企業、トップダウン型の企業はDXが進めやすい

須藤:オーナー企業やトップダウン型の組織が、DXが成功しやすいと考えています。トップが右を向けと言ったら、全員が向くような。言い方はあれですが、ある種、独裁のような。ミツカンさんは、まさにそのような会社ですよね。

渡邉:ミツカンに入って驚いたのは、トップの考えがとにかく深いことです。ビジネスのことは当然ですが、消費者、従業員のことなど。あらゆる領域において、深く、深く、考える。オーナーならではだと思いますし、リーダーシップとはまた違う「オーナーシップ」なるものだと考えています。

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友澤:私は前に所属していた会社がヤフーだったので、孫さんという圧倒的なリーダーシップを持つトップがいました。まさにお2人の意見に共感します。

須藤:会社のことを深く考えているトップが言うのであればと、従業員が納得しますからね。DXを進めると、廃止する部署も出てきますし、時間も数年単位でかかる。民主的に進めると、一向にまとまらない傾向が強いですから。

渡邉:個々の部署が別々にDXを進めると、マネジメント層にまで伝わっていないケースもありますからね。そういった意味でもオーナーの一言、トップダウンでDXを進めた方が、時間的効率はいいですよね。あるいは当社のようにトップではなくてもCDOや関連部署を新設して権限を持たせる、というのも手だと思います。

須藤:先ほどの話とは矛盾しますが、オーナー企業でなくても、トップのエグゼキューションに対して、同意し、かつすぐに動けるアジリティの高い組織もありますからね。だから僕の考えとしては、DXをやるかどうかは会社の体制によると思うんです。デジタル化は、すべての会社でやる必要がありますが。

失敗の先に成功がある

須藤:リソースの配分も重要です。特に時間。既存事業がうまくいっていないからDXをやろうとすると、時間も資金も余裕がないですからね。厳しい言い方ですが、DXを成功させないと会社自体がやばいような組織では、DXは成功しないと思います。やっぱり、時間はどうしてもそれなりにかかりますから。

渡邉:まさに当社がそのような状況です。前半述べたことが実現するには、早くても数年かかりますからね。安定している既存事業があってこそ、できるわけです。もうひとつ、デジタル化もDXも始めたからといって、すぐに成功するわけではありません。当然、失敗も起きます。失敗しても大丈夫な体力のある会社が、結果としてDXでの成功を手に入れるのだと私は思います。

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友澤:デジタルマーケティングなどはいい例ですよね。導入したからといって、すぐに成果が出るわけではない。最初はエンゲージメント率も低いし、コミュニケートできたとしても、ホームランではなく平凡なヒットばかり。でもその状態を続けていった先に、打率のアップやホームランという成果がある。どこまで会社が投資できるのかが、問われますから。

渡邉:マクドナルドに勤めていた時代にまさにそのような経験をしました。マーケティングでTwitterを活用したのですが、導入当初は炎上するなど、数多くの失敗をしたんです。でも私はやり続けるべきだと提案し続けました。結果として、フォロワーならびにエンゲージメントは増えました。

須藤:失敗を許容できるという観点においても、先に話したトップが強い企業であれば、スムーズですからね。

チェンジモンスターには戦いを挑まない。仲良くする

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友澤:DXに限ったことではないですが、新しいこと、変革を行うとすると、必ずダメ出しをする、チェンジモンスターがいますよね。どのように対応したらよいのでしょう。

渡邉:モンスターだと思うと怖いですよね。だからあえて私は、その方と仲良くなるように努めてきました。幸い、ミツカンにはいませんが。

須藤:僕も同じですね。対峙したり、言い争ったりすることはありません。はっきり言えば、時間が無駄だと考えているからです。でも、そのような考えも伝えません。言うなれば、ドラえもんに登場するスネ夫のような(笑)。もし意見を言われても、軽く受け流す。まともに受けません。

友澤:それでも執拗に行動を邪魔する奴って、いますよね。その場合はどうしたらよいのでしょう。

須藤:そのチェンジモンスターに、DXでの成果を与えるようにしています。具体的には、すぐに成果が出るようなクイックウィンを、予め3つほど仕込んでおく。そしていざプロジェクトが成功したら、あたかもその人の手柄のように褒め称える。それまでの対峙がウソのように「DXは素晴らしい!」と共感してくれるようになりますから。

【質疑応答】

パネルディスカッションの後は質疑応答が行われた。気になる内容を紹介する。

Q:トランスフォーメーションを起こし、成功させるために学んでおくこと。キーワードなどはあるか。

須藤:職種によってさまざまだと思いますが、エンジニアの方であれば、ユーザーを観察し、そこから得た情報で作り上げていく、プロトタイピングやデザイン思考がめちゃくちゃ大事だと思います。

友澤:僕も同じ考えです。また最近はマーケティングとエンジニアの境目がなくなる傾向にもあるので、ユーザーファーストの思考は大事だと思います。

渡邉:付け加えるとすれば、大勢のユーザーを観察するのではなく、一人のユーザーをディープに観察することです。特にDXのような改革であれば、そういったアプローチもありだと思います。

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