【レポート】様々な事業領域 x Techで語る!エンジニアあるあるLT大会! − RecoChoku Night #3 −
2017年5月25日19時30分より、「業界別!エンジニアあるあるLT大会MeetUp!-RecoChoku Night #3」が開催されました。
「エンジニア」といっても、勤める企業の事業領域によって業務の内容は多岐にわたります。実際の業務には業界ならではの「あるある」も存在するのではないでしょうか。その「あるある」は業界特有のものかもしれませんし、実は他の業界にも共通することかもしれません。
株式会社レコチョクが主催する本イベントでは、「Music×tech」「HR×tech」「Love×tech」「Food×tech」「Fashion×tech」で事業を展開する企業のエンジニアをお招きし、各業界の「あるある」ネタをLTでご紹介いただきました。
参加者は約60名。当日の内容は下記の通りです。
LT.1 Music×tech
株式会社レコチョク高村幸樹さん
LT.2 HR×tech
株式会社ビズリーチ 上原雄太さん
LT.3 Fashion×tech
株式会社VASILY塩崎健弘さん
LT.4 Food×tech
株式会社ぐるなび 関家栄治さん
LT.5 Love×tech
株式会社エウレカ 山下権人さん
それでは内容をご紹介します!
悩み多き「著作権あるある」
1人目の登壇はレコチョクの高村さんです。まずは、高村さんの音頭でカンパイ! 登壇者も参加者もお酒を飲みながらのゆるやかな雰囲気でLTのスタートです。
高村幸樹(たかむら・こうき)/株式会社レコチョク 事業システム部 サプライチェーンマネージメントグループ。住宅金融系システム会社での勤務を経て、2013年にレコチョクへ入社。趣味は筋トレ。
高村さんはまずレコチョクを含む「音楽配信を展開する事業」の概要を、「物品販売を展開する一般的な事業」と比較しながら説明します。
物品販売の場合、「販売店」は「仕入先」から商品を仕入れ、「販売店」が「お客様」に商品を販売。「お客様」は商品の対価として「販売店」に代金を支払い、「販売店」は「仕入先」に原価を支払います。
一方、音楽配信の場合は、音楽配信サービスを提供する「コンテンツプロバイダ」は「レコード会社」に音源を提供してもらい、「コンテンツプロバイダ」が「お客様」に音源を配信。「お客様」はその対価として「コンテンツプロバイダ」にサービス利用料を支払い、「コンテンツプロバイダ」はその利用料を「レコード会社」に分配します。
ここまでは物品販売の事業と似たようなモデルですが、音楽配信の場合は著作物に対する著作物使用料支払が発生します。この著作物の権利を管理しているのがJASRACに代表される「著作権管理事業者」です。「レコード会社」や「コンテンツプロバイダ」は、著作物の利用に関してこの「著作権管理事業者」に利用許諾を得る必要があり、「著作権管理事業者」に著作権利用料を支払います。
さらに、この他にアーティストが所属する事務所などが関わっていることもあり、関係者が非常に多い複雑な構造となっています。この著作権処理においてレコチョクで行っている業務は次の3つ。
・許諾の契約
新規サービスの追加や既存サービスの内容変更の際には、著作物の利用許諾を取得することが必要です。
・利用実績報告
提供するサービスで配信された著作物の利用実績の報告をしなければいけません。
・支払い業務
利用実績に対する請求の支払いを行います。
高村さんはこのうち「利用実績報告」にフォーカスし、「著作権報告あるある」として次の4つを紹介します。
<あるあるその1>著作権業務を考える人が少ない
<あるあるその2>サービス先行でプロジェクトが動くため忘れられる
<あるあるその3>手先のシステム対応で乗り切ろうとする風潮
<あるあるその4>許諾番号の発行はサービスイン後がほとんど
こうした「あるある」が生まれてしまうのは、要件が確定するのが開発工程の後半であることが多く、要件確定以降の開発期間が非常に短いからだと高村さん。これは著作権の許諾発行のルールが非常に複雑であり、要件が早期に確定しないことが大きく関係しています。
さらに現在はひとつのサービスに対して許諾が複数存在し、他の条件も入り込んでいるので扱うデータ量は増加しています。月次で回している報告業務は、創業時からの「継ぎはぎシステム」では対応することが厳しくなってきている状況。
そのため、サービスの多様化に合わせてAWSに乗せ変えたり、DBにおいてもログの共通化を図ったりすることで、裏側でパフォーマンスの維持向上に取り組んでいます。このように現在はシステム改善に後手で対応している状況なので、「今後はシステム主導で業務のあり方から改善していきたい」と高村さんは展望を語りました。
8つの「HRあるある」
2人目の登壇はビズリーチの上原さんです。
上原雄太(うえはら・ゆうた)/株式会社ビズリーチ ビズリーチ事業本部 インフストラクチャーグループ。2016年に新卒入社。マイブームは観葉植物。
HRテックとは「クラウドやビッグデータ解析、人工知能(AI)など最先端のIT関連技術を使って、採用・育成・評価・配置などの人事関連業務を行う手法」であり、シリコンバレーでも最も注目されている分野のひとつです。
このHRテックの領域において、ビズリーチでは「インターネットの力で、世の中の選択肢と可能性を広げていく」ことをミッションにプロダクトを開発。即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」を始め、「キャリアトレック」「HRMOS(ハーモス)」などのサービスを提供しています。
ビズリーチのエンジニアである上原さんは下記8つの「あるある」を紹介しました。
<あるあるその1>1カラムのデータサイズが大きい
<あるあるその2>求人の掲載期間問題
アルバイトなどの求人で計算期間よりも早くに定員に達したため募集終了となり、終了求人を消し込むのが大変。
<あるあるその3>アプリケーションの数
「number of applications」が「アプリの数」と「応募(application)件数」のどちらを指すのか混同しがち。
<あるあるその4>求人検索を作るなら、求人広告の歴史を学べ!
インターネットの求人サイトのなかには、雑誌に掲載された文章をそのまま転載しているものが多く、誤読が起きるケースがある。
<あるあるその5>文字コードと戦うことが多い
CSVファイルを扱うケースが多いため。
<あるあるその6>スクレイピングした情報は確認が必要
「月給300万円」など誤りだと思われる情報が掲載されていることも多く、修正できるものは機械学習を使って推測してインデックスしている。
<あるあるその7>情報量が多め
HR領域は情報が多くなりがちなので、シンプルに情報設計することを重視。
<あるあるその8>地図上から仕事を探せるスタンバイ
丸ビル、ヒカリエなどランドマークには多くの求人が存在。地図上に表示するとピンが同じ場所に大量に存在するため、求人票をカルーセル型でスライドできるように対応。
やっぱりオシャレ? 「ファッションテックあるある」の実態は!?
続いて3人目は、VASILYの塩﨑さんです。
塩崎健弘(しおざき・たけひろ)/株式会社VASILY バックエンドエンジニア。2015年に新卒入社。最近の悩みは「寝癖が治らないこと」。
VASILYは、月間200万人以上が利用するファッションアプリ「IQON(アイコン)」を運営しています。 「IQON」は提携する200以上のファッションECサイトから累計2000万点を超える商品を掲載。ファッションアプリとして、世界で唯一AppleとGoogle両社のベストアプリを受賞しています。
<あるあるその1>ファッションブランドに詳しくなる
塩崎さんはひとつめの「あるある」の導入としてクイズを出題。「SM2」という表記のレディースブランド名が読めるかどうかを会場に問います。
正解は「サマンサモスモス」。
普段から多くのブランドを目にすることで塩崎さんはファッションブランドに詳しくなり、「【無理】女子しか読めない!? ファッションブランド名読み方クイズ」というBuzzFeedの記事でも全問正解を果たします。
<あるあるその2>テスト用ユーザーがネカマ
「IQON」にはファッション相談の投稿ができる機能があります。塩崎さんはその投稿機能を改修した後、本番環境でうまく動作するかを確認するために、女性ユーザーを装い投稿しました。
すると、その塩崎さんの投稿に「釣られてしまった」女性社員が、「この女子の相談、可愛くない!?」と塩崎さんのデスクまでやってきたのだとか……。
<あるあるその3>ズボンの種類が多いことにビビる
「ワイドパンツ」「ガウチョパンツ」「スカンツ」「スカーチョ」。これらは全て「ズボン」の種類ですが、それぞれの違いがわかりにくく、塩崎さんはこれらの自動分類を行うアルゴリズムの開発に非常に苦労しています。
最後に塩崎さんは次のようにまとめした。
・ファッション分野は主観が多く入っていてとてもファジー
それらをしっかりとしたロジックに落とす仕事は楽しい。
・エンジニアはファッション業界に興味ない人が多い
業界にイノベーションを起こせるチャンスがある。
・ファッション業界は怖くないよ
塩崎さんの当日のスライドはこちらに公開されています。
レガシーな飲食業界の「あるある」は?
4人目の登壇者はぐるなびの関家さんです。
関家栄治(せきや・えいじ)/株式会社ぐるなび フロントエンド開発グループ所属。サイバーエージェントなどでの勤務を経て、2015年株式会社ぐるなび入社。猫派。
他の飲食サイトと間違えられることに敏感になるのが「ぐるなびあるある」だと自社を紹介した関家さんは、様々なライフイベントをサポートするサービスを提供するぐるなびのエンジニアとして3つの「あるある」を紹介します。
<あるあるその1>CDN切替
「ぐるなび」では約1年間前にCDN業者切り替え対応が必要な状況がありました。
「ぐるなび」に掲載されている店舗数は約50万店舗。北は稚内から南は石垣までの非常に多くの店舗を網羅し、それらに均等にアクセスが絶えずあり、それらに均等にアクセスが絶えずあり、時間による情報劣化も比較的少ない典型的なロングテールのサービスモデルであるため、CDNを切り替えるということはその大量かつ広範なCDNキャッシュがリフレッシュされるということです。
CDN切り替え前にキャッシュを生成することにより切り替え時のインパクトを抑えたのですが、トラフィックへの影響を考慮し、約8万店舗分のブラウザリクエストを行うことにしました。このキャッシュを生成するためには、バッチでのブラウザリクエストによりのべ320時間分のブラウザリクエストを回すことで無事切り替えに成功しました。
<あるあるその2>レガシーブラウザ
「ぐるなび」の主たるビジネスモデルは、B(「ぐるなび」)to B(飲食店)to C(エンドユーザー)であり、古いモデルのパソコンを使っている飲食店様にも十分なケアが必要になります。
一方で、最先端のデバイスを取り入れている店舗も存在します。その両者への同時対応には限界があると関家さん。そこで「ぐるなび」では古いブラウザを使っている飲食店様に対して告知文を掲載したり、営業努力をつづけることで、レガシーブラウザの利用店舗を1年間で約5分の1にまで縮小することができました。
<あるあるその3>SEO資産
「ぐるなび」ではSEOを重要視しており、SEO資産も多く蓄積されていますが、これが、サービスをモダンな実装に改修したい時に障害になる場合がと関家さん。
そこでSSR(サーバーサイドレンダリング)+2ページ目からSPA(シングルページアプリケーション)実装と、 「node.js」、「Docker」を利用してこれらの改題を解決しました。こちらは、現在開発中のサービスにまさに導入作業中になります。
関家さんの当日のスライドはこちらに公開されています。
ラブテック♡あるある
最後の登壇はエウレカの山下さんです。
山下権人(やました・けんと)/株式会社エウレカ インフラストラクチャー兼サーバーサイドエンジニア。静岡県出身。2013年、新卒で入社。
エウレカが提供する国内最大級の恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」は、2017年1月に累計会員数が500万人を突破。会員同士がお互いに「いいね!」を贈り合うとメッセージのやりとりが可能になり、実際のお付き合いにつなげるきっかけを生み出すサービスです。
また、同じくエウレカが提供する国内最大級のカップル向けコミュニケーションアプリ「Couples」は400万ダウンロードを達成し、ミレニアル世代を中心とした多くのカップルから支持を得ています。
今回、山下さんは「Pairs」に関する「あるある」を紹介します。
<あるあるその1>業者の存在
ここでの「業者」とは、本来の利用目的から逸脱し、別サイトなどへ誘導しようとするようなアカウントを指しています。
エウレカでは業者の傾向を分析して、アカウント登録時にフィルタリング。利用時にも業者かどうかを判定するシステムからチェックを行っています。その手順は次の通りです。
①そもそもサービス内に入れない ②お客様とやり取りさせない ③傾向をインプットする ④対策を強化する
①②に基づいて③④を強化していくのですが、どうしてもフィルタリングをかいくぐる業者とのいたちごっこになってしまうこともあるのが現状だといいます。
そこで、この問題をテクノロジーで対処するべく、取り組んでいるのが機械学習です。24時間体制の投稿監視や違反報告等のデータを機械学習に入れてモデルを形成。業者のフィルタリング、ラベリングをして完全排除すべく徹底的に戦っています。
<あるあるその2>Love is beautiful.
「実際にお付き合いしました」「Pairsがあって良かった」「人生変わった」など「マッチングした会員から喜びの声が届けられると本当にうれしい」と山下さん。「Pairs」から生まれた幸せは「幸せレポート」に掲載されていますので、是非ご覧ください!
懇親会!
5名のLTの終了後は、ピザをつまみながら懇親会のスタートです!
参加者の皆さんは、登壇者や他の参加者の方々と積極的に交流しています。
主催者であるレコチョクからは、音楽配信サービスで使えるクーポンやオリジナルキャンディーが参加者へプレゼントされました。
次回の開催を楽しみにしています!