【レポート】動画サービスを支えるUIUX:急成長する動画市場[第2部] - TECH PLAY Conference 2017
中国市場で動画メディアを立ち上げてUI/UXで苦労してること、イケてること
2人目の登壇は、Onedotの坪田さんです。
坪田朋(つぼた・とも)/Onedot株式会社 CCO。神奈川県出身。ライブドア、DeNAなどでの勤務を経て、Onedotに参画。
2016年12月に設立されたOnedotでは、育児動画メディアサービス「Babily」を運営しています。「Babily」のコンセプトは「子育てに関わるすべての人を笑顔に」。スマホ視聴に最適化した育児情報を、1分動画で配信しています。
月間の配信数は約60から100本。今年の2月にまず中国からリリースされ、現在は日本でもβ版を提供しています。配信先は中国と日本の主要SNS。自社メディアは持たない分散型メディアとなっています。
「Babily」のターゲットは妊婦から3歳児を持つママまで。中国でのサービス開始後から急成長中です。2017年8月現在フォロワー数は140万、月間再生数は1億回を記録しています。
運営は日本では中目黒、中国では上海の2拠点体制を採用。上海での現地採用も積極的に行っています。
坪田さんは、この育児動画サービス事業を立ち上げた経緯について次のように話します。
「私たちは日本の大手育児メーカーが参加するジョイントベンチャーです。そのメーカーは、中国市場においてデジタルイノベーションのアイディアを出したいと考えていました。
そのメーカーの本業に貢献することも一案ですが、単独で成功する事業を生み出すのがベストであろうという結論になりました。さらに、結果として出生率向上への貢献をすることをミッションと設定しました」
ミッションステートメントを作成した後、坪田さんは北京・広州・上海の3都市で50名ほどにユーザーインタビューを実施しました。
「ユーザーインタビューによるエスノグラフィックリサーチを行い、ユーザーを理解した上でプロトタイプを作りました。さらにそのプロトタイプをユーザーインタビューでテストし、最終的に投資判断のOKが出たのでOnedotが設立されたという経緯です。
ユーザーインタビューでは『こういうママがいて、こういう家庭があって、こういう行動をして』と分析してアイディアを出しました」
ユーザーインタビューの結果わかったこととして、坪田さんは次のようなポイントを挙げます。
- 育児は母親中心に決められている
- 祖父母も育児に大きく貢献
- 夫婦間の貢献度には未だに差がある
- 一時託児が可能なサービスは徐々に充実している
- 終日託児は未だ困難
「もちろん、ユーザーインタビューだけだとアイディアが偏ってしまいます。そこで、様々な専門家にもインタビューし、ユーザーのインサイトを探るだけではなく、事業としての価値も判断していきます。
最終的に事業として動画を選んだ決め手のひとつに『使い方ガイドに対するニーズ』を感じたことがあります。
中国で製品を買うと説明書がないことがほとんどです。また、海外の商品を買うことも多いのですが、例えば、日本語の説明書を見ても中国の人には何が書いてあるのかわかりませんよね。行動観察する中で、使い方がわからなかったり、全く異なる使い方をする人が圧倒的に多かったんです。
取り組む事業が決まった後には、サービスのミッションステートメントと編集方針、ターゲットユーザーと提供価値を決めていきました」
動画制作にあたって、「国内外の成功事例動画を1000本は見た」という坪田さんは、次の3点がスマホ短尺動画のエッセンスだと捉えます。
俯瞰
自分視点で作られている俯瞰動画。40〜60秒ほどの長さで、わかりやすく、テンポがいいもの。飽きない
単純作業をカットしたり、アングルを切り替えたり、面白い演出を加えたりすることで飽きさせない編集。身近
直ぐに実行できたり、材料が近所で手に入り、面白いけど簡単なこと。
最後に「動画配信後は、香港・台湾の『Facebook』でA/Bテストを実施して数字を見ながら改善したり、ユーザーインタビューやユーザーのコメントからニーズを検証しています。
『Facebook』はかなり細かいデータがとれるので、動画の冒頭3秒を変えてA/B/Cテストをすることもあります。
実際に冒頭3秒で大きく再生率が変わりますね。あるレシピ動画では約19%もの差が出ました」と動画配信後の取り組みについてお話しし、坪田さんの講演は終了しました。
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