【レポート】大規模WebサービスのUIUX:大規模Webサービス[第2部] - TECH PLAY Conference 2017
UXデザインのその先へ 〜 リクルートが手掛けるCXデザインとそれを支える”型化文化”
最後の登壇は、リクルートテクノロジーズの實川さんです。
實川尚(じつかわ・しょう)/株式会社リクルートテクノロジーズ ITマーケティング統括部 サービスデザイン1部 CXデザイングループ。1990年生まれ。千葉県出身。慶應義塾大学卒。在学中からウェブサービスの立ち上げを経験し、2014年に新卒で入社。休日はアイドルのプロデュースも。
現在、リクルートテクノロジーズでCXデザインを担当する實川さんは、まずリクルートにおけるCXデザインの考え方を説明します。
「リクルートでは、『UI』を表面の使い勝手、『UX』を単一のプロダクトを対象にした体験設計だと捉えています。そして、『CX』は複数のプロダクトや人を対象にしたサービス全体の体験設計を指します。
つまり、私たちが考えるCXデザインとは、あらゆるタッチポイントでの体験を最適化し、全体のカスタマー体験価値を向上させることで、カスタマーに『選んでもらえる理由』を作り続けることなんです」
続いて實川さんは、リクルートにおけるCXデザインの事業事例を3つ紹介します。
- 事業A
領域:ライフイベント
競争環境:極めて強い
課題1:カスタマーからみたブランドイメージが競合と同質化している
→ いかに競合優位性を作り出すか
課題2:限定的なマーケット内でのシェア争い
→ マーケットを拡張できるか
「リクルートでは、キャリア形成の観点で担当者がよく変わります。また、縦割りの各機能組織が個別に最適化していました。ですから、事業Aでは時系列での一貫したコミュニケーションも、タッチポイント間での一貫したコミュニケーションが図りづらい状況にありました。
まさに、『あらゆるタッチポイントでの体験を最適化し、全体のカスタマー体験価値を向上させる』ことというCXデザインでの解決が適した状況ですね。
CXデザインを作るフェーズでは、まずキーマンインタビューや調査分析を行います。そして、今後あらゆるポイントで施策を打つベースとするための『ブランド定義書』を作成します。その後はこの『ブランド定義書』がペルソナ作りやカスタマージャーニーの策定など、各タッチポイントの指針となりました。
また、タッチポイント間で一貫したコミュニケーションを図るため、機能横断、横串でのプロジェクト体制を構築しました。結果として、短期のスループットを最大化しつつ、中長期的なCX指標にもアプローチすることに成功したいい事例だったと思います」
- 事業B
領域:ライフイベント
競争環境:弱い
課題1:シェアは圧倒的にナンバーワン
→ カスタマーの変化に合わせて、いかにシェアを守るか
「カスタマーの変化に合わせるという論点があったので、カスタマージャーニーを踏まえたタッチポイントの役割定義を行いました。そして、行動フェーズとタッチポイントの軸でそれぞれのニーズを整理していきました」
- 事業C
領域:ライフスタイル
競争環境:強い
課題1:シェアはナンバーワンだが競合に攻め込まれつつある
→ カスタマーの変化を捉えて、いかに圧倒的になるか
課題2:カスタマーからみたブランドイメージが競合と同質化している
→ いかに競合優位性を作り出すか
「事業Cでは、カスタマーの継続利用を勝ち筋とした戦略立案とCRM設計を行いました。」
ここまでCXデザインと進め方の『型化』を紹介した實川さんは、「それだけでは次の成果が残せない」と指摘します。そこで、同時に取り組んでいたのが『型』のさらなる進化を目指したR&D的な事例です。實川さんはその事例を3つ紹介します。
- CX Lab
「CX Labは、カスタマーが変化していくなかでどのように立ち向かうかを研究しています。現在は紙からウェブへサービスの主戦場が移行しています。そして、テクノロジーが変化することで、カスタマーも大きく変化しているんです。
そこで、カスタマーがどのように変化しているのかをキーワード化しています」
- マルチセグメンテッドUX
「PDCAをまわしていくと改善効果は徐々に飽和しますよね。それでもさらに成長しなければいけない場合に、カスタマーを細かく分けるんです。
細かく分けたそれぞれのカスタマーに最適化改善を行うことで、個々のカスタマーCVRを伸ばすということですね。個別最適化による再成長を目指すのがマルチセグメンテッドUXというわけです」
- VPA(ヴァーチャルパーソナルアシスタント)
「検索体験のデファクトは、能動検索から対話型や相互作用型に変わりつつあります。このVPAを単なるAIのCXとは捉えず、マーケティングチャネルとしても捉えているんです。
ユーザーとの一番最初の接点となるVPAは、単なる狭義のCX体験を上げるということだけではなく、マーケティングチャネルとしても重要なのです」
最後に實川さんはリクルートの『型文化』についてまとめて講演を終了します。
「リクルートの『型文化』は、汎用的な『知』を発見して共有することです。リクルートには様々な事業がありますので、そのそれぞれの解決策が『知』になって、その『知』を『型』にすることができるんです。
これは誰かが通った道を『型』にしてくれているということで、次に通る人は同じところで悩む必要がなくなります。だから、次のチャレンジができるんです。だから私のような若手でもチャレンジさせてもらえます。
今後自分たちが次なる『知』『型』を作っていきたいですね」
以上で「TECH PLAY Conference 2017」のレポートは終了です!
今後のTECH PLAYの活動もお楽しみに!