イベントレポート/わざわざ来る理由、わざわざ買う理由を創るとは? ~ゼクシィ・ブックオフ・ローソンの仕掛け人が語る、マーケティングにおける顧客理解の本質~
カスタマーが幸せになるストーリーを徹底的に考える
「マーケティングにおいて最も重要なのは、カスタマーをどうやって幸せにするか。このことに尽きます。言い方を変えれば、誰にどのようなストーリーを体感してもらいたいのか。ペルソナや属性レベルではなく、気持ち、行動などを徹底的に深堀りすることが重要であり、こうした視点でマーケティングを考えていくと、アイデアも次々と湧いてきます」
冒頭、登壇した野林氏はこう話し、一時的なヒットやバズりを狙うのではなく、とにかくカスタマーを深く知ることがマーケティングにおいて最も重要だと何度も強調。これまでのリクルートやローソンでの経験から、商品が売れていないときは、先の内容が不十分だと指摘した。
▲有限会社オフィスフレンジー代表 野林 徳行氏
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルートに入社。経営企画、事業戦略、商品企画、プロモーションプランニングなどを担当。ブックオフコーポレーションへの出向を経て、2003年ローソンに入社。執行役員として、マーケティング、エンタテイメント、商品開発などを担当。2010年、ローソンエンターメディア代表取締役社長就任。2012年レッグス専務取締役CMO就任。2016年FiNC取締役CMO兼マーケティング戦略本部長就任。2019年鎌倉新書執行役員マーケティング部長就任。現在は、有限会社オフィスフレンジー代表の他、ブックオフグループホールディングス取締役、英理女学院高等学校理事兼マーケティング講師、NewsTV取締役、ログノート監査役など、数々の役職を兼務。著書に「とことん観察マーケティング」。
マーケットの基本は、ターゲットを明確にすること
また多くの場合、ターゲットが「誰」の設定が曖昧だと指摘。全てのターゲット層に届く商品はない、と断言する。「シニア」「みんな」「大体」といったターゲット設定ではダメだと伝えるとともに、リクルート時代に携わった求人情報誌『とらばーゆ』を例に、正しいターゲット設定を紹介した。
「とらばーゆでは、大きく3つのターゲットに分けていました。1つ目は、短大卒業後、正社員になれず、アルバイトや派遣社員として働いている18~25歳の女性。2つ目は、結婚やこれからの働き方、将来設計について考えるようになる26~32歳の女性。そして出産・育児を経験している33歳以上の女性です」
ターゲット設定を明確に分けることで、各年代で異なる思考が明確になると野林氏。その思考を知ることで、読者に響く特集やテーマ、キャッチフレーズが生まれるのだという。当然、誌面のデザインや表現方法も変わってくる。キャッチフレーズを例に挙げれば、以下のような感じだ。
<18~25歳がターゲット>
「アルバイトから好きを仕事に」
「未経験歓迎の仕事特集」
「初めての転職マニュアル」
<26~32歳がターゲット>
「転職しながら夢に近づいた7人のストーリー」
「派遣の事務職で仕事が来る人、来ない人」
「英語力&留学経験の上手なアピールBOOK」
<33歳以上がターゲット>
「年齢不問の仕事特集」
「フレックスで働く仕事特集」
具体的な事例も2つ紹介した。
【成功事例①:ローソンのポイントコクレトキャンペーン】
カスタマーが本当に欲しいものを作る
パンなどに貼ってある応募シールを集めると、ミッフィーやリラックマの絵柄がプリントされた皿がもらえるローソンのポイントコレクトキャンペーン。実は検討時は、絵柄や応募基準が今とは大きく異なっていたという。理由は先の通り、カスタマーの設定がズレていたからだ。
子育てをしている母親世代にヒアリングした。すると「期間内に子供たち全員に皿を渡すためにパンを買い続けるには限界がある」「料理がおいしく映えるデザインがいい」。このような意見が聞けたという。まさしく冒頭、家族というカスタマーの幸せストーリーが描けたのである。
大量にパンを買わなくては応募できない規定は変更した。絵柄デザインもミッフィーのイメージカラーである赤・青・黄色の原色一面から、白ベースに変更。野林氏のアイデアはカスタマーに刺さり、ローソンのパンを買う女性が殺到した。
キャンペーンの終盤には、家族である夫が買い行く現象も起きた。そこで野林氏は素早く動く。パンだけでなく、男性客も幸せになるおにぎりなどにも応募シールを添付するなど、顧客のニーズにより応えていったのだ。
リラックマの場合も同じだ。カスタマーの声を深く知るために、ファンクラブサイトを立ち上げ、20万人ものリラックマファンのコミュニティをつくり、どのような皿のデザインであれば欲しいかをカスタマーに直接聞き、その声を反映した。
「特にキャラクターデザインの場合は、ライセンサーの要望で商品を作りがちです。でもそうすると、どこでも買えるものになってしまう。大切なのはお客様がどんなものが欲しいのか。だからお客様に聞くのです。先のファンクラブのように、お客様自身に作ってもらうという手法もあります」
このような考えから、絵柄の変更は当然あるとのこと。毎年同じものではカスタマーの思考の変化とズレが生じ、次第に支持されなくなるからだ。実際、ローソンは同イベントを13年続けているが、現在の皿の枚数はピーク時からは減っているという。
野林氏は「どんなに忙しくても、少ない人数でも構わないから、特に売上や人気が落ちてきたときこそカスタマーに目を向けることが大事」と続けた。
実際、野林氏がローソンで担当していた頃は、景品の大きさを変えたり、形状を変えたりするなど、顧客ニーズの変化に常に対応していた。ファンのニーズが半分にわれたときには、コストはかかるが、両方作ったほど。徹底的に顧客ニーズを貫き通すことを、繰り返し強調した。
【成功事例②:リクルート『ゼクシィ』】
花嫁は現実的な情報とモノを望んでいる
Webメディアの台頭により雑誌が売れない。結婚・ウェディングをしないカップルが増えるなどの逆境のなか、創刊以来25年以上にわたり売れ続けているのが、結婚情報誌『ゼクシィ』だ。
ゼクシィには先のリラックマコミュニティのような、「ゼクシィ花嫁1000人委員会」というのもがある。委員会のメンバーは、現役ゼクシィ読者はもちろん、以前式を挙げた女性などが、毎年入れ替わりで選出。そしてこの委員会の声を参考に、企画や見せ方などを行っているという。つまり、カスタマーの最新ニーズを活かした雑誌づくりを行っているというわけだ。
同マーケティング手法の成功が顕著に出たのが、ギネス級の部数が売れるきっかけとなった、付録のアイデアだ。大抵の女性誌の場合、某おしゃれブランドとコラボレーションしたトートバッグなどが一般的だ。だがゼクシィでは、先の委員会からの声で、今の花嫁の本音を把握していた。そうして生まれたが、スライドの付録「花嫁すぎるゴム手袋」「乙女すぎるドライバーセット」である。
「委員会から、これから結婚する花嫁候補の約6割が、既に未来の旦那さんと同棲していることが分かりました。つまり結婚式へのワクワクを感じながら、結婚してからのリアルな夫婦生活での不満を解消したいとのニーズが見えたのです。」
ゼクシィでは誌面においても、「海外ウェディング特集」ような内容ではなく、「結婚費用はいくらかかるのか」といった、カスタマーの知りたいことを教えてあげるマニュアルのようなものになっている。そしてこのような内容こそ、カスタマーである読者が求めていることだと野林氏は繰り返し強調した。
【メルカリマーケティング】中高年層のマーケット拡大を狙い“チラシ”を作成
パネルディスカッションでは、①メルカリマーケティングの深堀り、②野林氏のセッション深堀り、③メルカリとブックオフの位置付けとマーケティングの違いという3つのテーマを中心に、マーケティングについて深堀りした。
鬼石:メルカリのマーケティングにおける組織構成について、オンライン・オフラインの意識も含め聞かせてください。
▲Kaizen Platformフェロー 鬼石 真裕氏
NTTデータでエンジニアを経験後、リクルート・ビズリーチ・グリーで、戦略・プロダクト・営業・事業責任者を歴任。Kaizen Platformでは福岡市との戦略提携・10000人のクリエイターネットワークの構築・カスタマーサクセス立上げを経て、300社のB2B大手営業・マーケティングの責任者に。2018年7月、Kaizen Platformフェローに就任、同時に独立。複数社のアドバイザーを務める。
岡林:ユーザーを獲得するチーム、CM、デジタル広告、チラシ、オウンドメディアを作るチームなど、さまざまな部署があり、オンライン・オフラインの意識で言えば、オフラインに注目した活動を行っているUXチームがあります。
▲メルカリGrowth Div Senior Digital Marketing Specialist 岡林 晃嗣氏
東京理科大学卒業後、株式会社マイクロアド入社。自社DSPの運用担当としてEC/不動産/人材/旅行などの業種のクライアントを担当後、新規事業責任者/マネジメント業務/自社DSPのProductManagerを経験し、Account Executiveとして従事。2018年7月にメルカリに参画。SQL、GASなどを用いて、CMやチラシなどの効果分析スキームの作成、オンライン広告のKPI策定からKPIを観測するためのダッシュボードを構築。現在はApp広告の責任者/広告以外の集客方法の起案~ProjectManagement、Adと、CRMのコスト投下の意思決定を行っている。2017年9月Best Business Staff Award 、2019年6月に全社All For One賞を受賞。
鬼石:オフラインUXチーム、とても気になります。詳しく聞かせてもらえますか。
岡林:メルカリのアプリ自体はオンラインですが、出品すると梱包や発送といった、オフラインの体験が加わってきます。この部分をサポートするチームです。具体的には梱包材をコンビニさんに置くなどの施策を行っています。
言い方を変えれば、運送業者さんやコンビニさんを接点として、新たなユーザーを獲得したり、ユーザーとの接点を持ちたいと。実際、今年の春にセブンイレブンさんと一緒にキャンペーンを実施しました。
野林:メルカリ、以前は若い人たちが使うとのイメージでしたが、最近はシニア層も利用していますよね。私が終活サービスを手がける企業にいたのでリアルに感じることでもあるのですが、生前整理や遺品整理に利用していると。これは市場のニーズによるものなのか。それともメルカリから仕掛けたのか。どちらでしょう?
岡林:メルカリから仕掛けたとの解釈の方が近いかと思います。シニア層の売上は全体量こそ少ないですが、若い層に比べ高額であるとのデータが出ていたこと。これから社会のインフラとして認められるには、全世代に広まる必要があると考えていたからです。
鬼石:なにか、シニア層へのキャンペーンや施策などを行ったのですか?
岡林:ええ。まさしく野林さんがおっしゃられたように、家に眠っている隠れ資産を明らかにしませんかというイベントを、PR会社などを通じて仕掛けました。またシニア層とまでいかなくても、40歳以上の層には新聞の折込チラシが響くだろうと。チラシも制作しました。
鬼石:某ファストファッションのチラシと間違えるような、あれですね。かなり話題になりました。チラシづくりで意識したことはありますか。
岡林:オリジナリティを出しながらも、ふだんチラシを見ている中高年の方が“違和感”を感じないデザインを意識しました。その結果、家電量販店やファストファッションのチラシを忠実に模範したものとなりました。
鬼石:カスタマーの声やデータなどは、どのような手法で取得しているのですか。
岡林:オフィスの至るところに、CS(カスタマーサービス)から上がってきたお客様の声(VOC)が貼ってあるので、参考にしています。また僕たち自身がメルカリユーザーでもあるので、社内アンケートも頻繁に行われ、新しい機能が欲しいといった要望は常に汲み取っています。
鬼石:先ほどの「1000人花嫁」のような活動はありますか。
岡林:1000人ではないですが、メルカリをご利用いただいている有名人100人の方に、自分なりの使い方のコツやヒントのようなものを発信してもらっている「100人のメルカリ」という企画があります。
鬼石:先のチラシも含め、マーケティング効果はどのように測っていますか。
岡林:ブランドがアップしたといった抽象的なものではなく、インストール数、起動数、売上数など。明確なアクションの増減を数字で見られるような体制としています。たとえば先のチラシであれば、配布後にインストールがアップしました。
【②野林氏のセッション深堀り】
鬼石:先ほどのセッションをお聞きしていると、ノバさん(野林氏の愛称)はカスタマに聞くことが習慣化されているようでした。
野林:そうですね。何でも聞いちゃいますね。そして先ほど話したとおり、そこから本当のニーズを探ります。たとえば地方のコンビニでお客さんの様子を見ていたら、一度手にとった焼きそばを戻したおじいちゃんがいました。それで店を出ていった後を追っかけて、なぜ、戻したのか聞いたんです。
鬼石:店を出た客を追っかけてまで聞くんですね(笑)。
野林:するとマヨネーズがかかっているのが嫌だと。ただ若い人はマヨビーム好きも多いですから、結果、後からかけられるようにパックの横に別袋でつけることにしました。声をかけるのが苦手、という人がいますが、それは最初だけ。何度もやれば私のように慣れていき、誰にでもすぐに聞けるようになります。
鬼石:会場からの質問にもあったのですが、ノバさんみたいにアイデアがどんどん出てくるようになるという、講習の詳細を知りたいです。
野林:チームでアイデアを出すんです。1人では大した数のアイデアは出ませんが、人が多ければ多いほど、職種や価値観の違う人が集まれば集まるほど、様々なアイデアが出ますからね。
実際、研修ではスターバックスとドトールの違いを100個挙げなさいなどのワークショップを行っています。そこで出たアイデアを我々マーケッターは、自分のアイデアの引き出しにするのです。
岡林:100個のアイデアが出て、そこから実行する施策に落とすときのフローというか、優先順院の付け方はどんな感じなんですか。
野林:先のセッションで話した通り、誰が幸せになるのか。このことを改めて考えてみて、しっくりくるアイデアを優先していきます。もちろんこのフローもチームで行います。
これまでの経験から言えることは、実現が難しそうなものをあえて選び、そこからどうしてもできない部分を削ぎ落としていく流れで進めると、カスタマーに響く、これまでにないエッジの立ったものになると感じています。
鬼石:ところで改めてですが、ローソン時代、なぜキャンペーンにキャラクターを採用したのでしょう。
野林:当時のコンビニは客の7割が男性で、なんとか女性にも来店したもらいとの想いがありました。それで女性に好きなものを聞いていったんです。するとキャラクター、ミッフィーやリラックマが人気があることが見えてきました。
鬼石:ローソンにはチケットサービスがあり、男性アーティストのライブチケットを求める女性客の利用が一定数あると聞いています。アーティストのキャンペーンではダメだったのですか。
野林:アーティストのファン数とキャラクターのファン数では、桁が違いますからね。またアーティストは物販などを作る際に規制が大きいですが、キャラクターはやりやすい、との理由からでした。
岡林:ローソンで女性というと、ナチュラルローソンがぱっと浮かぶのですが、ナチュラルローソンも施策のひとつであったと?
野林:女性というよりも、健康志向の顧客に向けた施策でした。ただその中でも爆発的に売れたスムージーなどは、一般の青いローソンでも販売するようになりました。またナチュラルローソンを展開する際は、ローソンとは分けて別会社としました。
鬼石:それはどういった意図からでしょう?
野林:採用です。別会社であれば青いローソンに移ることはないと。結果、女性も含めた健康志向の学生から多くの応募が獲得できました。
鬼石:これも「sli.do」からですが、顧客ターゲットはどのように決めていますか。
野林:むずかしい質問です。どう決めるかというよりも、先の繰り返しになりますが、その商品を誰にどんな風に使ってもらいたいのかを考えると、自然と出てくると思います。またこのような考えは、そもそも商品の開発段階からはじまっています。
ですからリクルートであればゼクシィなど。商品そのものがターゲットを決めていましたし、世の中を見ても、回転寿司チェーンは、ファミレス志向と、素材志向に分かれていってますね。多くの商品・サービスがそうなっていると思います。
岡林:競合の多い既存マーケットを攻めるべきなのか。あるいはブルーオーシャンを開拓するのか。どちらが重要だとお考えですか。
野林:既存を伸ばしながら、新規を探す。どちらも大事だと思いますし、体力がある会社でれば両方やるべきでしょう。その上で、伸びて来たほうに注力するといった経営判断は必要だと思います。既存事業がシュリンクしてきてから新規事業にチャレンジするのは、危険です。
【③メルカリとブックオフ。両者の位置付けとマーケティングの違い】
野林:ブックオフの業績が悪かった時に、メルカリという新しい流れに翻弄されているという報道をよく見かけました。ところが、ここ2年ブックオフは毎月前年比プラスで業績が伸びていて、特にブックオフの強みである本の売上は好調です。
鬼石:メルカリの影響はほとんどないと?
野林:全体としては多少ありますが、それはメルカリもありますが、トレジャーファクトリーやセカンドストリートといった、洋服分野の競合が出てきていることが要因だと考えています。2年赤字が続いた時期もありましたが。
鬼石:赤字からどのように業績を改善させたのですか。
野林:すべての部門を一枚岩にしたのが奏功したのだと思います。別々で動いていた、本部、現場、FCを、店舗だけでなくWebも含め、「1つのブックオフ」として一体感を持って運営を進めました。ネットで売れた本でも、出店元のFC実店舗の売上となるようにするなどたくさんの変化が生まれました。
岡林:あくまで個人の意見ですが、ブックオフさんはライバルではなく協業相手だと思っています。海外に比べ日本は、自分でものを売るという場が少ないですよね。そんな中、ブックオフさんはその先駆者であられる。実際メルカリで出品する人の多くが、過去にブックオフでの物売りを経験し、そのときの良きイメージを持っています。
鬼石:引っ越しのときなどまとめて売るときはブックオフ。一品ずつのときはメルカリで、という印象を僕は持っていますが、いかがでしょう。
野林:メルカリは梱包や値引きが面倒くさい、との声をよく聞きます。一方、ブックオフだと20円と言われたものが、メルカリでは2000円で売れたとの声も(笑)。
ブックオフでは売った先は分かりませんが、メルカリだと誰がどう使うのか。相手の顔が見えるといった違いもあると思います。極論になりますが、ブックオフのカウンターにメルカリで出品できる箱も置けばいいと私は思うんです。
もうひとつ。今でこそネットもありますが、ブックオフはリアル店舗で売る、というのも大きな違いです。商品を査定してもらっている間に、店内にある様々な商品を見てまわることができる。販売で得たお金で、それを買うことができる。一種のエンターテインメント体験が、実店舗にはあるからです。
【まとめ~明日からできること】
鬼石:最後に、会場のマーケッターに明日からできるアドバイスをいただけますか。
岡林:「常識や当たり前を疑う」。これは、僕自身が気をつけていることでもあります。疑う方法としては、僕は68歳の父にメルカリを使ってもらい、分からないことをヒアリングしています。また自分で確かめる場合には、ふだんの行動をスクリーンショットで撮り、違和感があるかどうかを確認しています。
野林:マーケティングは興味なので、とにかくまわりを観察すること。観察する際には、何度も繰り返してきましたが、人の役に立ちたい、幸せにしたいとの想いを持って、観たり、行動することです。言い方を変えれば、日常のあらゆる行動において、頭の中に課題を置いておくのです。
そしてアイデアが出たら、それを先のチームやネットコミュニティなどで発信し、他の方からの評価や別のアイデアを得ます。そしてこのルーチンを、とにかく繰り返す。また楽しみながらやるのもポイントです。
もうひとつ。せっかく思いついたアイデアに対し、まわりから反対あった場合の対処法も紹介します。証拠を見せることです。ブックオフ時代に私がオープンした荻窪店がいい参考になります。
家賃は上限が150万円のところ、600万円もしました。駐車場も他の店とは異なり、なし。でも私は荻窪の街を2週間歩き回り、バンドマンや劇団員といった個性的な人たちに加え、豪邸に住むお金持ちまで。さまざまな人達がおり、大量の仕入れが眠っている街だと確信しました。
アクセスにおいてもバスが何路線も走っているので、紙袋に入れて持ってくることはできるだろうと。このような事実を反対勢力に見せ、納得してもらいオープン。結果、それまでの月商記録1500万円を大きく更新する4500万円を記録するギネス級の店舗になりました。
同じことがローソンでもありました。先のキャラクターイベントです。多くの役員が反対。でも私にはブックオフのときと同じく、成功する証拠を見せ、それをもとに一人ひとりを説得。結果として13年続くキャンペーンとなりました。
【会場からのQ&A】ユーザーとの接点の作り方、ニーズの聞き方は?
参加者からの質問は、会場でもリアルにも行われた。
Q:ユーザーとの接点の作り方、ニーズの聞き方などについて知りたい。
岡林:メルカリ文化祭というファンミーティングを開催しています。梱包のプロを招き、正しい梱包の仕方を学んでもらう。人気ハンドメイドグッズの紹介。より効率的なメルカリの利用方法といった内容です。
ニーズの拾い上げについては、サービスの部分について深堀ることが多いですね。特に、これまで買っていた人が買わなくなった場合はなぜなのか聞くようにしています。
野林:いま携わっている業界は終活なので、そもそも認知されていないことを知る、というところから始まりました。先ほども話しましたが、とにかく情報をFacebookなどにアップ。終活に興味のある人が、鎌倉新書(野林さんが役員を務めていた会社)に興味を持ってもらえるよう、アクションしています。実際、そこからの問い合わせもあります。
Q:組織が大きくなったときの意識共有の徹底、一枚岩な組織のつくり方を知りたい。
野林:会社をよくしたい、ステキなマーケティングをしたい、と思っている人を集めること。社長も含め、一つひとつの部署に話しかけ、自分たちマーケティングの活動が売上アップも含め、会社、ユーザーの幸せにつながることを地道に説いていくしかありません。
Q:お客様の声を取り入れ過ぎた結果、当初のテーマ・目的とはかけ離れ、スタックしている事業がよくある。どの程度の粒度で、お客さんの声を聞くべきか。また向き合うべきか。
野林:意見を聞くことは大事ですが、その意見が1人のユーザーからのみなのか、他のユーザーも含めた多数の意見なのかを判断することが重要です。もうひとつ、その意見を反映してもなお、幸せストーリーは描けるかどうか。クイックに改善する姿勢は大事ですが、いつも直してばかりいると、ファンが離れる危険性があります。
【お知らせ】デジタルマーケティング、DXなどの専門家が多数登壇
最後にイベントの主催者である「TECH PLAY Academy」が行っている講座が紹介された。 本日の登壇者は、TECH PLAYが主催する公開講座の講師でもあり、講座を受験すれば、本日の内容をさらに深堀りして学びつつ、スキルアップにも繋がるとのこと。
また公開講座以外にも、デジタルマーケティング・DXなどのテーマでのプログラムやエンジニアとしてさらに高いスキルを身につけたい人向けの長期育成プログラムも用意されている。
●公開講座_野林氏登壇の「とことん観察マーケティング実践講座」
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