【レポート】大規模WebサービスのUIUX:大規模Webサービス[第2部] - TECH PLAY Conference 2017

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150億PVを支えるデザインの価値とは

2人目の登壇者はヤフーの宇野さんです。

宇野雄(うの・ゆう)/ヤフー株式会社 ニュース・スポーツ事業本部 デザイン部 部長 UIデザイン黒帯。1981年生まれ。法政大学卒。ジンガジャパンなどでの勤務を経て、2013年よりヤフーへ入社。

宇野さんが担当するのは、月間150億PVを誇る「Yahoo!ニュース」。その「トッピクス」は365日24時間体制で編集者が作成しています。編集部は東京、大阪、北九州、八戸の4拠点に分散。宇野さんはその理由を次のように語ります。

「編集部を分散するのはどこかで災害などが起こってもニュースを更新できるようにするためです。こうした体制をとる根本の理由は『サービスを全ての人に届けたい』という想いがあるからです。

こうした思想があるので『IE6』といった古いブラウザやガラケーにも情報を発信し続けています。ですからサービスのペルソナを作ったりすることもできないんです」

全ての人に情報を届けるミッションを持ったヤフーは、どのようなデザインを目指しているのでしょうか?

「私が入社した当初、デザイナーとして『圧倒的普通』を目指すように言われました。ただ、私はこの言葉をとても気に入っています。なぜならば『Yahoo!ニュース』の主役は、提携媒体から配信されるニュースだからです。デザインが、それもUIデザインが主役になるようでは、サービスの価値は落ちてしまいます」

宇野さんはヤフー社内でのデザイン5原則を紹介。それは「シンプル「ユニバーサル」「軽快さ」「美しさ」「!(ビックリ)」の5つです。

続いて宇野さんは「デザイナーと広告の葛藤」について自身の考え方を話します。

「デザイナーの困りごととして『売上のために広告を貼らなければいけない』問題がありますよね。デザイナーとすれば『ユーザーファーストはどうしたの?』と当然感じると思います。『広告は全部外したい』というのはデザイナーがみな考えることです。

私たち『Yahoo!ニュース』は、コンテンツパートナーが配信してくれる記事に広告があり、ユーザーがその広告を表示なりクリックなりしてくれると売上があがります。そして、その売上の一部をコンテンツパートナーへ還元するというモデルです。

しかし、長い視点で考えると、このコンテンツパートナーが記事を配信してくれなくなったら、ユーザーは読める記事が少なくなりますし、満足度は下がりますよね。すると、広告の売上はさらに減り、コンテンツパートナーへの支払いも減るのでニュースの配信が減り、するとさらにユーザーの満足度が下がるという負のサイクルが起こります。

ですから『Yahoo!ニュース』はコンテンツパートナーを大切にしているんです。編集部の人間がコンテンツパートナーと直接関わることもありますし、場合によってはデザイナーも同行してコミュニケーションをとります。デザイナーとしてもこのエコシステムづくりに注力しなければいけないと私は思っています。

ただ、広告担当者から『こんな広告商品はどうですか?』と提案されたときに『それはユーザー体験を損なうからできません』とNGを出すこともあります。でもそれは、権限を与えてもらう代わりにデザイナーも売上にコミットしているからなんです。

デザイナーはともすれば下流工程になりがちです。しかし、自分もデザイン以外の領域にコミットするかわりに、上流工程に入ってデザインの権限を獲得することも大切です。逆にそうでなければデザインに責任をもつとは言えないと思っています」

最後に、今後デザイナーがどのように変わっていくのか、宇野さんは自身の願いも込めながら語ります。

「デザインスキル、ツール、デバイスはどんどん増えています。それに伴い、デザイナーの仕事は増え続けています。さすがに1人でカバーするには限界が来ていますから、ヤフーではチームで勝負していこうと考えています。

これはデザイナーに限ったことではありません。実は『GitHub』にIssueを立ててデザインレビューを行っています。エンジニアやディレクターもレビューを行うのですが、デザイナーが考えているよりもいいアイディアが生まれることもたくさんあります。

さらにこれからは、スマートスピーカーやVRなどインターフェイスデザインが必要な新たな機器がたくさん出てきます。デザイナーは『ユーザーとの接点と体験』に、よりフォーカスしていけばいいと考えています。

社内でも『AIによってデザイナーの仕事がなくなる?』といった話題はよく出ています。でも、AIが感情を持つことはありません。そこに働きかけるのがデザインであり、デザイナーの仕事です。人の心が動いた時に行動が生まれるわけです。

一連の体験を描いて、そのUIを設計して、それがユーザーの心に響いて、ずっと使いたいと思ってくれる、そんなサービスをずっと作っていきたいですね」

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