インメモリデータベースの今後。新領域への適用可能性 - デジタルトランスフォーメーション時代の最新データベース技術勉強会 -
Alexa for the Enterprise
続いて、アマゾンウェブサービスジャパンの河原さんがご登壇です。
河原哲也(かわはら・てつや)/アマゾンウェブサービスジャパン株式会社 エコシステムソリューション部 パートナーソリューション アーキテクト。富士通のSAP認定テクノロジコンサルタントとして活躍した後、2015年にAWSジャパンへ入社。
河原さんは「音声認識エンジン『Alexa』でいかにSAPのデータベースにアクセス」するかをテーマに講演を行います。
「『Alexa』を搭載したスマートスピーカーである『Amazon Echo』は、日本語にも対応しています。現在はまだ招待制ではありますが、日本でも購入することが可能です。
この『Alexa』は機械学習とディープラーニングを使い、発話の意図を読み取って回答をする機能をクラウドベースで実現しています」と河原さん。
続けて「Alexa」が持つ2つのフレームワークについて解説します。
■「Alexa Skills Kit」
「ユーザーからの『今日の天気を教えて』などの音声入力に『本日の東京は晴れ、20℃です』など、ユーザーのニーズに対して応えるスキルを開発するフレームワークです。『developer.amazon.com』という開発コンソールで枠組みをつくります」(河原さん)
■「Alexa Voice Service」
「一方で、『Alexa Voice Service』は『Alexa』を組み込むフレームワークです。『Amazon Echo』もその一例ですが、例えばカーナビや家、スマートフォンなど様々なデバイスにサードパーティ製品として『Alexa』を組み込むわけです。こちらは『Lambda』上で書いて実行します」(河原さん)
続けて、河原さんは『Alexa Skills Kit』を作る3ステップを次の通り説明します。
1. Voice User Interface
・ユーザーから入力された音声が、実際のビジネスロジックに沿うように設計する
「例えば音声によってホテルの宿泊予約を完了したいケースを想定します。ユーザーが『ホテルを予約して』と声を掛けても、『どの都市なのか』『日程はいつなのか』『食事はどうするのか』など情報が不足していますよね。こうした情報が得られるように設計しなければいけません」(河原さん)
2. Lambda function
・音声入力を受け取った後、ビジネスロジックを実現する部分と、その完了を通知する部分を「Lambda」でコーディングする
「宿泊の例であれば、実際にホテルを予約するコードを書き、通知を返すのがこの部分です」(河原さん)
3. Connect VUI to Code
「ここでは、1の入力と2のコードをつなぎこみます。発話が入力されると『Lambda』を呼び、結果を返して音声を通知するわけです。その後、実際にはテストを行い、カスタマイズを繰り返して、公開します」(河原さん)
ここで河原さんは「Alexa」から「SAP HANA」のデータベースを読み出すデモを実施し、「SAP HANA」の魅力を次のように語ります。
「音声でクエリを飛ばしたときに、そのレスポンスが遅いとユーザーは耐えらませんよね。『Alexa』と『SAP HANA』の組み合わせならば、音声の入力でもリアルタイムでカリキュレーションが走ってすぐに返してくれます。これは『SAP HANA』がインメモリのエンジンで、かつアプリケーションサーバ機能を持っていて、ODataサービスが提供でき、さらに『Alexa』のような外部から呼び出せるという特徴を持っているからだと思います。
しかし、この『Alexa Skills kit』で作ったスキルは全てのユーザーが使えてしまうのが問題です。そこで私たちが新しく提供しているのが『Alexa for Business』です」(河原さん)
最後に河原さんはこの「Alexa for Business」について説明して講演をまとめました。
「『Alexa for Business』を企業で導入すると、例えば会議室の予約管理や電話会議への参加が簡単に行なえます。ポイントは『プライベートスキル』を作れる点にあります。『プライベートスキル』では、特定のユーザーやデバイスだけが使えるスキルが作れるのです。
本日は『SAP HANA』がテーマでしたので、ODataサービスを作って呼び出すという話をしましたが、『Lambda』使わなくてもhttpsのエンドポイントでエントリできれば、『Alexa』から呼び出すことが可能です。
また、『SAP Cloud Platform』上で作ったアプリケーションをAPIとして公開すれば、そこからデータを取り出すこともできますし、SAPが提供するSAASからもAPIで利用が可能です。
私たちとSAPの掛け合わせで、今までできなかった音声入力による世界を実現できれば幸いです」(河原さん)
「SAP HANA」フルスタックエンジニアのカタチ
最後はパネルディスカッションです。新久保さん、花木さん、河原さんをパネラーに迎え、吉越さんがモデレーターを務めます。
ーー 「SAP HANA」を扱うエンジニアとして「フルスタック」をどう考えればいいと思いますか?
新久保 私は前者も含めてデータベースにずっと関わってきました。ただ、私が考えるフルスタックエンジニアとは、DBAを持っているだけではありません。
「SAP HANA」のスタックにはデータベースがあって、データをインテグレーションするところもあるので、データの元と先の両方を管理したり、分析したりしますよね。また「SAP HANA」のデータベースを扱う担当はアプリケーションサーバまで考えなければいけない時代になっていると思いますね。
河原 私は国産ハードウェアベンダーでインフラエンジニアとしてキャリアを積んできました。アプリケーションエンジニアとしてのキャリアがないので、Infrastructure as Codeの風潮などがあるのでかなり危機感は感じています。
ですから、全ての領域を習得するのは難しくとも、チャレンジはしないとダメだろうと思っています。
幸運にも私はずっとSAPを専門としていましたので、サーバー・ストレージ・ネットワークだけではなく、データベース、仮想化などのミドルウェアなどもやってきました。「サーバーしかできないんです」って方よりは比較的に柔軟にできていると思いますが、それでもアプリに取り組まないといけないとは感じています。
花木 フルスタックかどうかは別にして、絶対知らなければいけない周辺技術はありますよね。
例えば、先ほどお話しした予測分析には機械学習が欠かせません。予測分析が出た当時の機械学習はハードルが高いものでした。ただ、時間が経つと普通に使えるような技術・知識になってくるんです。現在はパラメータを変えたときにどう動くかがわかっていればよく、そのモデルを自分で書く必要はありません。
つまり、自分が持っているコア技術があり、そのコア技術をなにか新しい技術と結びつけようとしたときに、怖がらないで「ここまでわかればいいのね」というスタンスで吸収することが大切だと思います。
ーー 「次はこれが来る」と注目しているものはありますか?
新久保 あったら教えて欲しいですよ(笑) ただ、今ってみなさんデータベースではなく、データを管理していますよね。社内にどのようなデータベースがあって、どこにどう整理されている、もしくは整理されていないということを管理する仕事は重要で、なくなることはないだろうなと思っています。
河原 「食べていく」という観点だけならニッチな領域でもいいと思うんです。実際に2025年までに「S4」へのマイグレーションを行うエンジニアが足りなかったりしているんです。
ただ、それだけでは厳しいことも確かです。一般的にフルスタックといえば、10項目があるとすれば、その全てで10点満点をとるということだと思います。しかし、それはスーパーマンでなければ難しいですよね。そうでなければ、どこかで10点をとり、その他はまんべんなく7点くらいが取れるようになることが必要だと思います。
花木 ディープラーニングが大切だと思いますね。私はディープラーニングを勉強しようと学校にいったりしたのですが、結局いまひとつ理解できなかった人間の一人なんです。
では、今はディープラーニングに歯が立たないかといえば、そんなことはありません。なぜなら、例えば「TensorFlow」にはトレーニング済のモデルがモバイルの上で動かせたりするからです。つまり、ディープラーニングのおいしいところだけをつかって、事業ができる時代が到来しているわけです。
ーー 本日はありがとうございました。
懇親会!
約2時間ノンストップで行われた講演&パネルディスカッションの終了後は、ピザをつまみながらの懇親会です!
今回は「データベース」をテーマに全3回のイベントをお届けしました。懇親会でも参加者のみなさんは登壇者の話に耳を傾けていたようです。