【レポート】IoTが実現する世界:日常化されていくIoT[第1部] - TECH PLAY Conference 2017

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【レポート】IoTが実現する世界:日常化されていくIoT[第1部] - TECH PLAY Conference 2017
IoT

2017年8月20日(日)から25日(金)の6日間にわたり、「TECH PLAY Conference 2017」が開催されました。

本レポートでは、8月22(火)11時30分よりスタートした3日目のテーマ「日常化されていくIoT」のうち、第1部「IoTが実現する世界」の内容をお届けします。

当日の登壇者と内容は下記の通りです。

「JINS MEME事業開発の経緯と展望」
株式会社ジンズ 井上一鷹さん

「工場モニタリングIoTに最適な Lazuriteと事例の紹介」
ラピスセミコンダクタ株式会社 斎藤直孝さん

「sakura.ioで実現する世界 〜量産前提のモノゴト作り〜」
さくらインターネット株式会社 山口亮介さん

「myThingsによるIoTデバイスとWebサービスが繋がる世界」
ヤフー株式会社 笹本純也さん

それでは内容を紹介します!

JINS MEME事業開発の経緯と展望

井上一鷹(いのうえ・かずたか)株式会社ジンズ。1983年生まれ。東京都出身。コンサルティングファームでの勤務を経て、2012年にジェイアイエヌ(現、ジンズ)に入社。数学オリンピックアジア4位。

「JINS MEME」はジンズが展開するIoTデバイス。「ふつうのメガネ」のような外観ですが、スマートフォンと接続することで「まばたき」「視線移動」「姿勢」を取得し続けます。

井上さんはまず、なぜジンズがIoTデバイスの開発に取り組んだのかを説明します。ジンズの事業の中心はもちろん視力矯正用途としてのメガネです。しかし同社は、2013年の時点で既に3分の1の市場を獲得。販売本数は業界ナンバーワンを獲得していますが、国内市場での成長がいずれ頭打ちになるという課題を以前から抱えていました。つまり、視力矯正用途のメガネを提供する以外の事業開発が必要だったのです。

そして、様々な専門家と話をしている中で「メガネはパンツに次いで身につけている時間が長いモノ」だということに気が付きます。そこから自分のことを見てくれて、自分を一番理解するデバイスとしての可能性を感じたことが「JINS MEME」開発の発端になったと井上さんは説明します。

「JINS MEME」の中核を担っているのが「眼電位の検出」技術です。「眼電位」とは人間の眼球が持っている電位のこと。具体的には黒目側がプラスの電位を持っており、メガネに組み込んだセンサーで電位を取得することで、まばたきや視線の方向を取得できるのです。眼電位の検出技術そのものは以前からありましたが、ジンズではこの電位センサーを3点にする技術を独自に開発。メガネに違和感なく搭載することに成功しました。

さらに「JINS MEME」には加速度・角速度を取得するためのセンサーも搭載。このセンサーは「身体の姿勢」を取得する役割を担っているものです。

「JINS MEME」の開発は2011年に眼電位検出のアイディアをもらったところから動き出します。それまでジンズの事業の主体は小売であり、商材は全てローテクなもの。それゆえに研究開発を行ったことがありませんでした。

それまでにジンズで取り組んでいたのは「ハードウェアの衣装デザイン」のみ。「ハイテク分野のハードウェアデザイン、アルゴリズムの開発、アプリの運用、アーキテクチャの開発運用、サービス・事業開発などはオープンイノベーションせざるを得なかった」と井上さん。プロトタイプも東北地方の国内メーカーや中国メーカーと協業して開発しています。

社内でも体制が整いはじめ、2013年7月にはハードウェアデザイナーが参画。さらに9月にはアプリの開発を開始します。当初3つのアプリ開発をしましたが、はじめてのアプリ開発で何が正解なのかがわからないため、それぞれ別のパートナーとアプリ開発を進めていきます。

井上さんは「小売の機能しかもたなかったジンズが、協業パートナーさんとなんとか研究開発ができる段階にたどりつけた」とここまでの時期を振り返ります。

しかし、この先の展開については「かなり特殊なやり方を選びました」と井上さんは語ります。「JINS MEME」の発売から1年半も前の2014年4月に商品コンセプトの発表会を行ったのです。

この当時はまだ、まばたきの取得精度は10%ほど。なぜ早期に発表を行ったのかといえば、ようやくハードやソフトの開発ができる段階になったとはいえ、最後にサービスとして「JINS MEME」を売ることができないと考えたからです。先に商品コンセプトを発表することで、サービス開発事業者を募ったのです。

実際にパートナーと作った事業のひとつに、運送業向けのサービス「JINS MEME DRIVE」があります。バスやトラックのドライバーが「JINS MEME」をかけることで眠気を判定。ドライバーが眠ってしまう前に管理者へ警告を飛ばし、ドライバーを起こしてもらうという安全運転のためのソリューションです。

その他にはフィットネス機器をトレーニングジムに販売するライフ・フィットネス・ジャパンと協業。ランニングマシン利用者のランニングフォームを可視化するソリューションを展開しています。

さらに「本当の働き方改革」を推進すべく、仕事の質を可視化して評価を行う「JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS」を展開しています。

「働き方改革」が叫ばれて久しい昨今ですが、「単に残業時間を減らすことが働き方改革ではない」と井上さん。人間は1日に4時間程度しか集中できないと言われていますが、この4時間を重要なタスクに振り分けられているかが本当の意味で「働き方改革」ではないかと井上さんは提唱します。

例えば、「JINS MEME」をかけているとその人がどのくらい集中できているかが取得できます。取得されたデータから深く集中している曜日を調べてみると、月曜日と金曜日は集中の度合いが低いことがわかっています。

また、ジンズで同じようなワークスタイルをしている人のデータを分析したところ「朝にしか集中できない人」「夕方から集中力があがる人」など集中できる時間には個人差があることも読み取れます。

さらに、集中の度合いには時間帯のほかに働く場所にも関連があります。井上さん自身のデータを分析すると、一番集中できる場所は公園であり、その次に集中の度合いが高いのは順に喫茶店、ホテルロビー、新幹線、図書館と続き、なんとオフィスは集中の度合いが一番低いという結果になりました。井上さんは「『JINS MEME』から得られた数字が、いつどこで働くのが生産性が高いのかという議論のモノサシになればうれしい」と話します。

最後に井上さんは「寝たきりや認知症などの分野の対策にも『JINS MEME』を役立てていきたい」と今後の展望を語りました。

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工場モニタリングIoTに最適なLazuriteと事例の紹介

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