【レポート】IoTのUX:日常化されていくIoT[第2部]- TECH PLAY Conference 2017

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UX, IoT

IoTで広がる新たなライフスタイル

稲垣岳夫(いながき・たけお)/ソニー株式会社 クリエイティブセンター 新規事業デザイン開発室 デザインマネージャー。ソニーに入社後、UIデザイナーとして「Handycam」「VAIO」などを担当した後、シニアプロデューサーとして新規事業を担当。趣味は釣り。

現在、ソニーにおけるUIデザインは、単なる画面のデザインではありません。UXデザインとして「体験のデザイン」「時間軸のデザイン」「五感に訴えるデザイン」を志向しているのです。

稲垣さんは、そのソニーが取り組むIoTの事例を紹介します。まず、取り上げたのがスマートロック領域のプロダクト「Qrio Smart Lock」」です。

「Qrio Smart Lock」は、多用なドアに対応し、スマートフォンから鍵を開けたり、知人にメールで鍵を渡したりできるという製品です。曜日限定の鍵を作ることもできるので、例えば、ベビーシッターを頼む曜日にだけ解錠できる鍵を渡すことも可能です。

この「Qrio Smart Lock」の開発にあたり、ソニーではマーケットリサーチを実施しました。その結果、海外製のスマートロックのほとんどが、日本の40%もの鍵に対応していないことが判明しました。

この問題を解決すべく、稲垣さんのチームでは様々なアイディアを考案。スマートロックの取り付け位置を鍵の上部にし、感知レバーでサムタームを抑えるというエンジニアのアイディアを採用しました。この方式を採用することで、「Qrio Smart Lock」は日本の鍵の90%ほどをカバーしています。

続いて稲垣さんが紹介したのは、ソニーと東芝ライテックが共同開発した「Multifunctional Light」。

「Multifunctional Light」は、LEDライトにスピーカーユニットがついた家電です。天井に設置することで、その部屋にあるリモコンなどの赤外線対応機器を「Multifunctional Light」を通じて操作することが可能になります。スマートフォンアプリから遠隔操作をすることも可能で、外出時にも照明だけではなく、エアコンなどの機器をオンオフすることもできるのです。

さらに稲垣さんはブロック状の発明キット「MESH」を紹介します。「MESH」は、各ブロックに「ボタン」「LED」「加速度」「GPIO」「温度・湿度」「明るさ」「人感」を取得できるセンサーが搭載された電子タグ。

それぞれのブロックは無線で接続され、ブロックを組み合わせることで様々な場面で活用できます。プログラミングは、アプリからドラッグ&ドロップするだけ。例えば、「赤ちゃんが泣いたら携帯にメールを送信する」といった機能も簡単に実現可能です。

この「MESH」をアイディアを発明するためのツールだと捉えている稲垣さんは、「アイディアとは新しい組み合わせである」という言葉に注目します。それをさらに分解すると「発明とは『コト』と『モノ』の組み合わせではないか?」と稲垣さんは考えます。

しかし、実際の発明作業では「AとBをつなげる」という本質的なことだけには集中できません。「AとBをつなげる」ためには、ハード、電気回路、ソフトなどをエンジニアリングで選択して解決する必要があります。それゆえ、これまで発明はプロにしかできない難しいものでした。

「『MESH』はその領域を単純化し、発明を効率化するツールだ」と稲垣さん。発明の本質である「AとBをつなげる」という点にだけ焦点をあててもらうために、「MESH」では接続が簡単にできるよう「BLE」を搭載しています。そのため「MESH」を使うと「くっつける」「つなげる」「えらぶ」という、わずか3つの操作で発明を完了することができるようになっています。

「MESH」を使った子供向けイベントや、ハッカソンなどを次々に開催した稲垣さんは「MESHを人材育成にも活用します。「MESH」を使ったアイディアの創造、具現化にチームで取り組むことで、問題解決や論理思考、会話力、自信など様々な力が身につくと感じたのです。

最後に稲垣さんはIoT全体について考察します。

よく陥ってしまいがちな「罠」として稲垣さんが挙げたのは、「とりあえず既存製品をインターネットにつなごう」「既存製品を連携して自動化しよう」といった事例。実際に生活につながると想定外の状況が多発し、バグ取りやメンテナンスに追われてしまいがちです。コスパが悪く、お金を掛けた割にはさほど便利になっていない例も多くあるのではないでしょうか。

稲垣さんは「インターネットにつなげるのは手段でしかなく、ユーザーが幸せを感じられる価値提供ができるかどうかが重要です」と会場へ語ります。

そして、「MESH」を使って子供が開発した「はなみずカメラ」を紹介。「はなみずカメラ」は、くしゃみを検知すると、ティッシュペーパーが居場所を知らせてくれます。さらに、ティッシュをとって鼻をかむと自動で写真をとり、お母さんにその写真を送ります。

開発した子供はまだ鼻を上手くかむことができず、「はなみずカメラ」は鼻を上手くかめるようになりたいという自己実現を果たす装置です。さらに、お母さんにほめてもらいたいという承認欲求を受けるものであり、「そこには愛がある」と稲垣さんは指摘します。

稲垣さんはこの「はなみずカメラ」の事例を通し、「これからのIoTには、『その装置が自己実現を満たすか』『承認欲求を受けることができるか』『愛があるか』をチェックして付加価値を持たせるのがいい」と提案して講演を終了しました。

以上で「TECH PLAY Conference 2017」3日目のレポートは終了です。
別日のレポートもお楽しみに!

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