【レポート】IoTのUX:日常化されていくIoT[第2部]- TECH PLAY Conference 2017

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2017年8月20日(日)から25日(金)の6日間にわたり、「TECH PLAY Conference 2017」が開催されました。

本レポートでは、8月22(火)15時30分よりスタートした3日目のテーマ「日常化されていくIoT」のうち、第2部「IoTのUX」の内容をお届けします。

当日の登壇者と内容は下記の通りです。

「IoT-UX設計の課題とAIの活用」
LiLz株式会社 大西敬吾さん

「JINS MEMEがもたらす可能性と、ユーザへの価値を設計する」
株式会社ジンズ 佐藤拓磨さん

「石から生まれた新素材LIMEXの技術とは」
株式TBM 笹木隆之さん

「IoTで広がる新たなライフスタイル」
ソニー株式会社 稲垣岳夫さん

それでは内容を紹介します!

IoT-UX設計の課題とAIの活用

大西敬吾(おおにし・けいご)/LiLz株式会社 代表取締役CEO プロダクトマネージャー。1973年生まれ。広島大学大学院修了。GUI開発環境のプロダクトオーナーや家電の開発などに従事した後、2013年にレキサスへ入社。2017年にLiLzを設立。

今回のテーマであるIoTについて様々な話をしている中で、「IoTにおけるユーザー体験の検討には『専門家』『ツール・部品』『機械学習の開発者』の3つが不足していると感じました」と大西さん。今年の8月に大西さんが設立したLiLzでは、「Boot Camp」「API/Library」「AIの研究開発」の3つを提供することで、これらの問題の解決を実践しています。

大西さんは3つの解決方法についてそれぞれ説明します。まずは「Boot Camp」。現在取り上げられるIoTのニュースは、サービスの設計よりも実証実験がほとんどだと大西さんは指摘します。しかし、「顧客は存在するか」「顧客の課題は実在するか」「プロダクトは問題解決できるか」といった視点が欠けていることも多いのだそう。

通常、本開発に入る前にはまず3ヶ月ほどPoC(概念実証)を実施します。その後、「量産検討」「事業シミュレーション」「サービス検討」などを3ヶ月から1年ほど行ったのちに本開発に入るという流れです。

LiLzが提唱する「Boot Camp」では、PoCの前に「量産検討」「事業シミュレーション」「サービス検討」を3日から1週間の合宿で行います。なぜ「Boot Camp」ではPoCより先にこれらのフェーズを短期間で実現できるのでしょうか?

大西さんはその秘訣を、機械学習・IoT・無線など様々な専門家を集結することでの「共創」、仮説ですばやく実施する「デザイン思考」、沖縄で合宿を行うことによる「非日常」の3つが「Boot Camp」に詰まっているからだと説明します。

この「Boot Camp」は、大西さんが以前に所属していたレキサスにおいて2016年4月から開始。1年ほどの期間で12件の実績を残しています。「Boot Camp」の回数を重ねるごとに所要時間は短くなっており、現在では3日間でカリキュラムを完成させます。

まず1日目には「仮説立案」。構想するプロダクトに関して「顧客は存在するか」「顧客の課題は実在するか」「プロダクトは問題解決できるか」の3点について合意を形成します。

2日目には専門家も参加して「実現方法の検討」を行います。具体的にはUIデザイン、クラウド設計、AI/IoTの導入検討、新技術の講義などを実施します。

最終の3日目は「事業・マーケティング」。事業シミュレーション、トラクション戦略、仮説検証方法や今後のスケジュールまでを具体的に立案します。

大西さんは「Boot Camp」の中で行われている具体的な手法として、サービスの認知に始まり、ユーザー体験、課題解決後の姿までを「6コマ漫画検討する」方法などを紹介しました。

続いて、大西さんは2つ目の問題解決の方法「API/Library」について紹介。現在、LiLzでは「LiLz Edge」という分散機会学習ライブラリを開発しています。

「LiLz Edge」が提供する機能は主に2つ。まずは、音声の解析・分類です。「LiLz Edge」では、各種音源の波形をディープラーニングで学習し、音を分類することが可能。この機能は、例えば、クジラの声を検出して、ホエールウォッチングでのクジラとの遭遇率を高めたり、自動運転車の後方から救急車が走ってきていることをサイレンの音から判定したりするといった活用法が想定されています。

「LiLz Edge」が提供するもうひとつの機能は、画像の識別です。この機能では画像の中で一瞬でカウントを行います。農作物の収穫量を相対的に把握したり、研究機関が苦戦している渡り鳥の調査にも応用が可能です。

こうした機能を持つ「LiLz Edge」は、IoT側の機器で処理を行うことが特徴です。IoT機器側で上記の処理を実施することにより、高度な音声分類や画像認識の結果を、LPWA回線だけでもクラウドへあげることができるのです。

3つ目の問題解決方法の「研究開発」の事例として、大西さんは自動運転への取り組みについて説明します。こうした自動運転の研究を行うのは、LiLzが位置する沖縄での活用を狙ったものです。

具体的には自動運転技術を活用し、リゾートホテルにおいてモノを運ぶ作業を自動化することで、作業者の負担を軽減するように取り組みを始める予定です。その他に、ダイビングのガイドに活用できる「水中ドローン」への応用も想定されています。

最後に大西さんは、IoTのUXを最大化するためのポイントとして「実証実験だけではなくサービス設計も大切にする」「IoT機器側に機械学習を導入する」「電源があるかどうかを考える」「即応性とリアルタイム性を持たせる」とまとめて、講演を終了しました。

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