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アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWS ジャパン)は、2026 年 9 月 24 日(木)に、AWS ジャパン オフィスで「Kiro Meetup #8」を開催しました。Kiro Meetup は、Kiro を使っている方が集まり、使い方の工夫や最新アップデートを共有するコミュニティイベントです。今回はオフィス移転後の新しい会場での開催となりました。 当日は、AWS から Kiro の最新アップデートと Kiro Crew の詳細を紹介したあと、三菱電機株式会社の中村 信夫 氏と小森 裕之 氏、東海旅客鉄道株式会社の倉澤 瑞希 氏、株式会社オープンアップシステムの藤牧 正和 氏にライトニングトークでご登壇いただきました。同じ日の午後には、同会場でハンズオン「手を動かして実感する、Kiro が変える開発体験」も開催しています( ハンズオンの開催報告 もあわせてご覧ください)。本記事では、Meetup の模様をレポートします。 イベント概要 開催日時: 2026 年 9 月 24 日(木)18:00〜20:30 会場: AWS ジャパン オフィス アジェンダ Kiro の最新アップデート: AWS ジャパン Developer Transformation エンゲージメントマネージャー Katz Ueno (カツ) Kiro Crew Dive Deep: AWS ジャパン ソリューションアーキテクト 小西 杏典 お客様ライトニングトーク 三菱電機株式会社 中村 信夫 氏、小森 裕之 氏 東海旅客鉄道株式会社 倉澤 瑞希 氏 株式会社オープンアップシステム 藤牧 正和 氏 クロージング ネットワーキング 本イベントの司会進行は AWS ジャパン 事業開発マネージャー 井形 健太郎が務めました。 開会のご挨拶 冒頭では、シルバーウィーク明けの平日夜に集まった参加者へのお礼とともに、Kiro Meetup の成り立ちを紹介しました。Kiro Meetup は 2025 年に Amazon Q Developer の Meetup として始まり、Amazon Q Developer や Kiro を使っている方がユースケースやアップデートを共有し、和気あいあいと過ごす場として続けてきました。オフィス移転の影響で間が空いたものの、今後も継続して開催していく予定です。 Kiro の最新アップデート スピーカー: AWS ジャパン Developer Transformation エンゲージメントマネージャー Katz Ueno (カツ) 最初のセッションでは、Katz が前回の Kiro Meetup(2026 年 3 月)以降の半年間を振り返り、86 件の Changelog から注目の 8 件を紹介しました。大きな流れは、Kiro Web の一般提供や Kiro Crew のオープンソース公開で使える場所が増えたこと、そして Cloud Sessions などで実行場所がローカルからクラウドへ広がったことです。 Kiro IDE 1.0 / 1.1 : エージェントとのやり取りに集中できる画面「Agent Focus」が加わりました。権限はワークスペースごとにも全体共通でも設定でき、カスタムエージェントは Markdown で定義できます。Windows と Linux の ARM64 環境でもネイティブに動作するようになりました。 Kiro Web の一般提供開始(9 月 1 日) : ブラウザだけで開発できるようになりました。対話しながら進める Collaborative モードと、計画から PR の作成までを自律的に進める Autonomous モードがあります。 Kiro CLI 2.0 と V3 : Windows 11 でネイティブに動作するようになり、CI/CD に組み込めるヘッドレスモードも加わりました。IDE や Web と同じハーネスで動く V3 も、プレビューとして公開されています。 Cloud Sessions と Configuration Sync : セッションをクラウド上で動かせるようになり、別のマシンから続きを再開できます。 .kiro の設定も、クラウドを通じて複数のマシンで同期できます。 モデル : OpenAI の GPT-5.6 と、Anthropic の Claude Opus 5、Claude Sonnet 5 が使えるようになりました。9 月 16 日には、Kiro Enterprise 向けに Claude Fable 5.1 のプレビュー提供が始まっています。 ガバナンスとコンプライアンス : Kiro が ISO/IEC 27001:2022 の認証範囲に加わり、IDE と CLI は HIPAA 適格になりました。利用状況のメトリクスを OpenTelemetry で送信できるほか、超過利用に上限を設定することもできます。 仕様駆動開発の強化 : タスクを並列で実行できるようになりました。途中の承認を挟まずに要件・設計・タスクをまとめて作る Quick Spec(公開時の名称は Quick Plan)と、要件のあいまいな点や矛盾を洗い出す Analyze Requirements も加わっています。 Kiro Crew の登場 : 複数の Kiro CLI をまとめて動かす、常駐型のエージェント基盤です。詳しくは次のセッションで紹介されました。 最後に、登壇で使った資料は Kiro Crew で下書きしたことを種明かし。アップデートの一覧とリンクなど、Kiro Crew が Changelog を読み込んで作成したことを紹介しました。あわせて、開発者向けコミュニティ AWS Builder Center をご紹介。相互のコミュニケーションが取れることもアピールしました。 Kiro Crew Dive Deep スピーカー: AWS ジャパン ソリューションアーキテクト 小西 杏典 続いて、ISV/SaaS 業界のお客様を支援するソリューションアーキテクトで、Kiro CLI のコントリビューターでもある小西が、Kiro Crew の仕組みを解説しました。 小西はまず、いまの AI エージェント開発には、人が席を離れると作業が止まる、セッションをまたぐと前の会話を忘れる、セッションが直列にしか動かない、という 3 つの課題があると指摘しました。Kiro Crew は、これらを解決する「永続的なオープンソースのワークスペース」で、次の 4 つの特徴を備えています。 永続的かつ自己改善型 : メモリとスケジュールがセッションや再起動をまたいで残り、ユーザーからの修正は「レッスン」として蓄積されます。 マルチエージェントオーケストレーション : cron や Webhook をきっかけに複数ステップのタスクを自律的に実行し、サブエージェントを並列に動かします。 オープンで拡張可能 : App SDK で独自のアプリを組み込め、Slack や Teams などのメッセージチャネルからも操作できます。 セキュアで、あなたの管理下に : OS のサンドボックス、段階的な承認ゲート、自社のハードウェア上での実行、監査ログを備えています。 編集・実行・デバッグを繰り返す「インナーループ」は Kiro CLI や Kiro IDE で対応できますが、スケジュール実行や CI の監視のように人が離れても動き続ける「アウターループ」には常時稼働のゲートウェイが必要です。Kiro Crew はこのゲートウェイとしてセッション、メモリ、セキュリティなどを管理し、その裏で Kiro CLI がエージェントとして動きます。セキュリティは多層防御で、 ~/.aws や ~/.ssh へのアクセスはどの設定でも解除できない基本制限としてブロックしています。 まとめとして小西は、1 つのセッションで開発を進めるなら Kiro IDE / CLI、セッションをまたぐ記憶やスケジュール実行、継続的な運用には Kiro Crew、という使い分けを示しました。 お客様ライトニングトーク ここからは、Kiro を活用している 3 社にライトニングトークでご登壇いただきました。 三菱電機株式会社 中村 信夫 氏、小森 裕之 氏「Kiro が組織に広がってきた!」 三菱電機株式会社 中村 信夫 氏と、小森 裕之 氏にご登壇いただきました。 前半の中村氏は、「重厚長大」の風土が残る電力部門で Kiro をどう広げたかを紹介しました。中村氏の部門では、社員と協力会社が参加する約 700 名のコミュニティ「YOKOHAMA UNITED」を運営しており、毎週の勉強会はこれまでに 137 回を数えます。2025 年 7 月の Kiro 発表の直後から使い始め、AWS を講師に招いた勉強会には約 100 名が参加しました。2026 年 1 月には、約 30 名が 3 日間参加する AI-DLC Unicorn Gym を、トップダウンで開催しました。定員 16 名で募集した社内ハンズオンに 90 名を超える社員が集まったほか、新入社員向けのアジャイル研修では、例年のマシュマロチャレンジの代わりに Kiro を使い、各チームが 2 回のスプリントで飲み会の日程調整システムを作り上げたといいます。中村氏は「組織トップダウンとコミュニティボトムアップのシナジー」が大切だったと振り返りました。 後半の小森氏は、Kiro を開発ワークフローに組み込み、部門のソフトウェア開発フローを標準化する取り組みを紹介しました。部門内の Kiro のユーザーは約 900 名にのぼります。AWS がオープンソースで公開している開発手法 AI-DLC V2 のワークフローを Kiro の上で動かし、2 つの工夫を加えています。1 つ目は、実装とレビューを別のモデルに担わせることです。生成 AI は自分の出力を正しいと思い込みやすいため、Kiro で OpenAI と Anthropic の両方のモデルを選べる点を生かし、Claude のモデルで要件・設計・実装を行い、AI-DLC V2 の工程ごとの AI レビューは GPT-5.6 に任せ、最後に人が確認して承認します。2 つ目は、AI-DLC V2 のレビューの重さを工程ごとに選べるようにしたことです。既定では敵対的検証によるレビューが 2 回走りますが、「重い」という声があったため、工程に応じて回数を減らすなど、品質と時間のバランスを取る設定を試しています。 東海旅客鉄道株式会社 倉澤 瑞希 氏「現場の『こうしたい』を、動くものへ ~Kiro で変わった技術開発の進め方~」 東海旅客鉄道株式会社 倉澤 瑞希 氏にご登壇いただきました。 倉澤氏は新幹線の保線の現場を長く経験したあと、技術開発部の DX チームへ異動し、アプリ開発の経験がないところから取り組みを始めました。Kiro は 2025 年 12 月から利用しており、用途は、データ分析やシミュレーター、3D 点群の可視化などの実装 PoC、要件定義やレビュー、報告資料や研修資料などのドキュメント作成、CI/CD や GitLab などの環境構築・運用の 4 つに広がっています。 代表的なプロダクトとして、駅の改良工事で資材の置き場所が旅客の流れを妨げないかを検証する「駅旅客流動シミュレーション」と、ベテラン社員の暗黙知を AI がインタビュー形式で引き出して蓄積する「熟練者ナレッジ蓄積」についてプロトタイプを短期間で実装した例を紹介しました。 倉澤氏がプロダクト以上に大きかったと話したのは、技術開発の進め方の変化です。以前は研究員が要望と業務知識を整理してベンダーやメーカーに伝え、設計・実装してもらっていました。Kiro の導入後は、研究員が自然言語で「こうしたい」を言語化し、Kiro がスペック化と実装を担い、研究員が確認して判断する、というサイクルを自ら高速に回せるようになりました。倉澤氏は「Kiro は魔法ではなく増幅器」と表現し、0 を 100 にするのではなく、研究員が持つドメイン知識や現場の課題という「1」を大きくしてくれるものだと説明しました。そのうえで、Kiro を導入するだけでなく、使い方そのものをチームで育てることが大切だと締めくくりました。 株式会社オープンアップシステム 藤牧 正和 氏「人的資本経営による AI 導入と直面した課題のご紹介」 株式会社オープンアップシステム 藤牧 正和 氏には、AI 駆動開発を進める中で直面した失敗や課題を中心にご紹介いただきました。 同社は社員 700 名弱のシステム開発会社で、2025 年 1 月から AI の研究を始め、同年 3 月には Amazon Q Developer を使い始めました。約 1 年半の試行錯誤を経て、AI を中心にシステム開発ができる段階にたどり着き、現在は大手 SIer からの AI 開発導入の相談にも応じています。全部門で AI を使っており、最もよく使われているのは Kiro です。 直面した課題として、藤牧氏は次のような点を挙げました。「自分の仕事が増えるだけ」という抵抗は、新人が 1 か月かけてもできるかどうかだった作業が 1 時間ほどで終わったことをきっかけに解消し、一気に広まりました。セキュリティはガイドラインとオプトアウト設定で対応し、プロンプトの上手い下手による差は Steering で AI の動かし方を標準化して埋めました。プロンプトの工夫に時間をかけすぎるバイブコーディングの限界にぶつかったことから、仕様駆動開発で正確に開発できる Kiro に全員で移行しています。現在の課題は、AI に指示する力を持つ人材と、上流から開発全体を見通してコーディネートできる人材の育成で、採用と育成の方針も見直したといいます。 最後に藤牧氏は、AI を導入しても仕事は減らず、むしろできることが増えて仕事も増えると述べ、人を資本として活かす「人的資本経営」の観点で AI への投資を進めていると語りました。 おわりに 今回の Meetup では、Kiro の半年分のアップデートと Kiro Crew の仕組みを紹介し、3 社に Kiro を組織に広げる取り組みを語っていただきました。三菱電機株式会社様は、トップダウンとコミュニティによるボトムアップの両輪で利用を広げています。東海旅客鉄道株式会社様は、研究員が自ら「こうしたい」を実装まで回せるようになりました。株式会社オープンアップシステム様は、全部門での AI 活用で直面した課題と人材育成の見直しを共有してくださいました。3 社に共通していたのは、Kiro を導入するだけで終わらせず、使い方そのものを組織で育てている点です。 AWS ジャパンは、今後も Kiro Meetup を継続して開催し、Kiro を使う皆様が知見を共有できる場を提供してまいります。ご登壇いただいた皆様、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。 登壇資料 Kiro の最新アップデート: Kiro Meetup #8 Kiro アップデート (2026/3/21〜2026/9/24) Kiro Crew Dive Deep: Kiro Crew Dive Deep 三菱電機株式会社 中村 信夫 氏、小森 裕之 氏「 Kiro が組織に広がってきた! 」 東海旅客鉄道株式会社 倉澤 瑞希 氏「 現場の『こうしたい』を、動くものへ ~Kiro で変わった技術開発の進め方~ 」 株式会社オープンアップシステム 藤牧 正和 氏「 人的資本経営による AI 導入と直面した課題のご紹介 」
はじめに みなさん、こんにちは!今年度エンジニアとして新卒入社しました、永澤由梨(@nashisan ...
メインフレーム基幹系システムの AWS 移行を真剣にご検討中のお客様向けのイベント「AWS Mainframe Modernization Day Tokyo 2026」を 2026 年 9 月 17 日(木) に開催しました。本ブログでその概要を紹介します。 本イベントは以下の三部で構成しました。 Part 1: AWS セッション Part 2: お客様セッション Part 3: お客様同士の交流会 Part 1: AWS セッション 冒頭のオープニングは、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 (以下、AWS) WWSO EAMM シニアマネージャーの Shajan Miah からウェルカムメッセージと全体の流れの案内がありました。 (1)a. 基幹系システムを支える AWS のコアテクノロジーとインフラストラクチャ: AWS データセンター アマゾンデータサービスジャパン合同会社 (以下、ADS) のデータセンターエンジニアリングオペレーション部門シニアマネージャー 中台拓也は、AWS クラウドサービスを支える物理インフラの全体像を紹介しました。日本には東京・大阪の 2 つのリージョンがあり、各リージョンは最低 3 つのアベイラビリティゾーン (AZ) で構成され、低遅延レプリケーションと災害リスク分散を両立するよう 100km 以内に配置されています。データセンターの建物はグローバル共通のモジュラー型ブロック設計を採用し、ラック密度の将来的な増加に備えた構造耐荷重マージンや、ベンダー依存を排した自社開発のバックアップ電源制御ロジック、大型 UPS を廃止したラックレベルの小型 UPS / バッテリーモジュールによる障害影響範囲の最小化など、独自の垂直統合技術が特徴です。物理セキュリティは境界・インフラ・データの 3 層モデルで構成されています。運用面では、事前構成済みラックの搬入から自動プロビジョニングまでの完了や、障害対応に目標時間を設定しています。すべてのハードウェア作業を ADS 社員が直接担当することで継続的なプロセス改善を実現しています。 (1)b. 基幹系システムを支える AWS のコアテクノロジーとインフラストラクチャ: メインフレーム技術者のための AWS Nitro System 入門 AWS ソリューションアーキテクト 阿部純一郎は、メインフレームの知見を持つエンジニアを対象に、メインフレームとクラウドインフラの設計思想を両者の共通点と違いに着目して紹介しました。AWS Nitro System とメインフレームアーキテクチャは、仮想化と I/O 処理を汎用プロセッサからオフロードするという同一の設計哲学に収斂していると考えられます。2017 年以前にリリースされた Amazon EC2 インスタンスは Xen ハイパーバイザーを採用しており、リソース競合や機能リリースの遅延等の課題に直面していました。これを Nitro Cards (IBM Z のチャネルサブシステムに相当)、Nitro Hypervisor (PR/SM に相当)、Nitro Security Chip の 3 つのコンポーネントで解決しました。性能面では NVMe / TCP/IP 標準インタフェースによる OS 互換性の維持や最大 200 Gbps の帯域幅、独自の Scalable Reliable Datagram (SRD) プロトコルによるマルチパス分散を紹介し、セキュリティ面ではオペレーターアクセスの排除、API ベースの監査可能な運用、Nitro Enclaves による機密処理の隔離、Instance Attestation による改ざん検証といった二重の保護ドメインを説明しました。講演の締め括りでは、IBM Z の主要概念と Nitro System の対応関係を対比的に一覧表で示し、メインフレームエンジニアが AWS の設計を直観的に理解できるよう提示しました。 (2) セキュリティ ~ 「なんとなく不安」の正体を、ご一緒に AWS シニアスペシャリストソリューションアーキテクト 松崎博昭は、聴講者自身がクラウドセキュリティを客観的に評価できるエビデンスベースのフレームワークを提供することを目的として解説しました。顧客が抱える 3 つの不安——「AWS スタッフにデータを見られないか」「監査証跡の可視性が失われないか」「セキュリティ対応範囲が増えないか」——に対し、データの暗号化に加え、規則ではなく仕組みで守る設計、AWS CloudTrail による不変の操作ログ (最低 90 日間削除不可)、そして責任共有モデルにより、修正適用などの手作業は AWS 側に移り、顧客の手元には運用判断が残ること(変わるのは「見張る」部分で、そこは自動で回る)を、それぞれ before / after 形式で解説しました。さらに、外部監査人により年間 2,600 項目以上の監査を実施しており、 SOC 2、ISO 27001、ISMAP のレポートは顧客が AWS コンソールから直接ダウンロードできます。また、公に報じられたクラウドのセキュリティ事故についても、基盤そのものが破られたのではなく、アクセス許可や公開設定といった「鍵の掛け方」が問われた事例を挙げ、守るべき対象と守り方は移行後も変わらないという文脈で共有責任の境界を示しました。最小権限・アクセス制御・ログ・鍵分離といった既存のセキュリティ原則は、そのまま AWS に移行可能です。暗号化・Amazon GuardDuty・IAM の権限点検といった備え付けの機能を示したうえで、判断は顧客自身が行うものであり、疑問点は担当のアカウントチームや社内のクラウド推進組織に持ち込めること、つまり「一人にはしない」と締め括りました。 (3) 安定稼働を実現する AWS のアプローチ: レジリエンシー AWS 部長 兼 シニアソリューションアーキテクト 大村幸敬は、AWS におけるレジリエンシーの全体像を概説しました。メインフレームがハードウェア冗長による故障防止 (フォールトトレランス) を志向するのに対し、障害は起こり得るものとして迅速な復旧を設計するのがレジリエンスの考え方です。大手証券会社のシステム障害を契機に、日本の金融庁が「止まってはならない」方針からレジリエンス志向へ舵を切った実例がこの考え方を裏付けています。AWS のインフラは汎用 IA サーバーを基盤としつつ、マルチ AZ 配置 (単一リージョン内の約 100km 以内の 3 拠点) や責任共有モデルによるアーキテクチャ設計で高可用性を実現しています。ディザスターリカバリー (DR) については、バックアップ&リストアからマルチサイトアクティブ/アクティブまでの 4 パターンを、コストと RTO-RPO のトレードオフとともに提示しました。高額な待機ハードウェアを購入しておく必要が無く、DR 環境を常時稼働させずにコストを抑制することができます。さらに、システム外のレジリエンスとして、AWS Professional Services、Business Support+ / Enterprise Support、2025 年 12 月リリースの AWS Unified Operations により、日本語対応した専門支援体制を提供しています。 (4) 安定稼働を実現する AWS のアプローチ: 運用の高度化 続いて、大村幸敬は、メインフレームやオンプレミス環境での常識とは異なる、運用に関する新たな考え方を提示しました。第一のテーマとして、AWS を単なるインフラではなく IT のツールボックスと位置づけ、Amazon Connect 等のマネージドサービスによるハードウェアコストの削減と運用負荷の軽減、AWS CloudTrail / AWS Config による自動監査証跡を紹介しました。一方で、ツールは変わってもインフラ/ネットワークエンジニアの必要性が変わらない点も重要です。第二のテーマでは、AWS の大規模な冗長サーバー/ストレージプールを活かしたスナップショットによる環境の即時クローン、Infrastructure-as-Code (AWS CloudFormation) による 30 分以内の環境再構築、AI 支援テスト自動化や新たな AWS Security Agent (設計レビュー・コードレビュー・自動ペネトレーションテスト) を、メインフレーム環境ではコスト制約の大きいテスト環境拡張の代替手段として提示しました。第三のテーマでは、従来型モニタリングからオブザーバビリティへの転換を掲げ、人間の直感では対応困難な未知の障害の根本原因を AI で診断するアプローチを紹介しました。AWS・マルチクラウド・オンプレミス環境を横断してインシデント対応・予防・サイト信頼性エンジニアリング (SRE) タスクを自律的に実行するサービスとして新たにリリースされた AWS DevOps Agent は、既に日本の複数の顧客に採用されています。 (5) デモ: 今、生成 AI でメインフレーム何処まで何ができるのか? AWS メインフレームモダナイゼーションスペシャリストソリューションアーキテクト 皆川元は、2 つのデモを実施しました。1 つ目のデモでは、Amazon Quick を用いた COBOL プログラム仕様書の自動生成と、データ項目に対する変更の影響調査を実演しました。後者は、従来の grep や RAG に基づく方式とは異なり、AWS Transform for mainframe によるデータリネージュ (※) に基づいてデータの上流および下流を辿るアプローチを取りました。2 つ目のデモでは、AWS Transform によるレガシーコードのリバースエンジニアリングと、AI エージェント Kiro によるフォワードエンジニアリングを組み合わせた Reimagine アプローチを紹介しました。CardDemo アプリケーションの VSAM にアクセスするバッチ処理を S3 / DynamoDB / Java / Python による構成へ移行し、Kiro が CI/CD パイプラインまで自動生成する実例で、この手法の実用性を示しました。 (※) データリネージュ (data lineage): アプリケーションから抽出した CRUD に基づいており、データソース、ジョブ、プログラム間の関係をマッピングすることで、データのライフサイクルをトレースできる (6) AWS セッションまとめ これまでの AWS セッションの総括として、独自設計のデータセンターによる迅速な障害検知と復旧、AWS Nitro System による性能分離とセキュリティ、そしてセキュリティ、レジリエンシー、運用の高度化という 3 つの累積的メリットを振り返りました。メインフレームがこれまで 50 年にわたり支持されてきた信頼性・安全性・運用安定性を、AWS が最新のクラウドアーキテクチャで再現できることを示し、次の 50 年の安定稼働を支える信頼できるパートナーとしての AWS を位置づけて締め括りました。 Part 2: お客様セッション 王子イメージングメディア株式会社 神崎工場 事務部 グループマネージャーの野中伸恭氏は、現在実施中のモダナイゼーションに至った経緯と判断の過程を紹介しました。過去 2 回のメインフレーム刷新が現行システムのスパゲッティコード分析で頓挫した教訓から、3 回目は同じマイグレーション手法を避け、経営判断のもと業務そのものを刷新する方針に転換しました。オンプレミスでハードウェアの調達コストを試算したところ、社内承認を得るのが困難と判断し、AWS クラウドを採用しました。「小さく作って駄目なら作り直せる」柔軟性とアジャイル方式を武器に、現行メインフレームの契約更新時期である 2028 年から逆算した計画で構築を進めています。社内のコンセンサス確立を図るべく、現場メンバーの業務ノウハウを活かしつつ 70% の自動化を目指す方針を社内に示したところ、紙帳票の廃止や業務の断捨離を求める声がむしろ多いことがわかりました。2〜3 回の試行錯誤を経て、現在では全社が同じ方向を向いており、AWS Transform for mainframe による現行アプリケーションの仕様の確認や Kiro による AI 駆動開発も活用しながら、順調に前倒しで進行中とのことです。 Part 3: オフィスツアーとお客様同士の交流会 来場したお客様をフロア内でご案内し、麻布台ヒルズのオフィスのコンセプトを紹介しました。 続いて、交流会では、業種や業界を超えてお客様同士で共通の課題が話され、取り組みが共有されていました。 登壇したスピーカーも交えて、活発に質問や意見交換が行われました。セッションではカバーしきれなかった個別の技術相談やアイディアに、大いに盛り上がりました。 おわりに 本イベントでは、ミッションクリティカルワークロードの AWS 移行後の安定稼働にフォーカスした内容を提供しました。 メインフレームから AWS への移行は、お客様それぞれのゴールと課題があり、移行パターンや移行ソリューションも個々に異なります。AWS は、移行を推進するビルディングブロックとなるサービスを提供し、Professional Services (ProServe) による伴走型支援が可能です。更に、AWS 移行の実績を多く持つ経験豊富な AWS パートナーが end-to-end の移行ソリューションを提供しています。 AWS 移行に関するご相談は、担当営業もしくは AWS の担当者 にお問い合わせください。

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