【レポート】加速する動画ビジネス最新事例:急成長する動画市場[第1部] - TECH PLAY Conference 2017
2017年8月20日(日)から25日(金)の6日間にわたり、「TECH PLAY Conference 2017」が開催されました。
本レポートでは、8月24(木)11時30分よりスタートした第5日目の「急成長する動画市場」のうち、「加速する動画ビジネス最新事例」をテーマにした第1部の内容をお届けします。
当日の登壇者と内容は下記の通りです。
「レシピ動画数世界一!動画市場の興隆に乗じた、kurashiruの成長戦略とは」
dely株式会社 柴田快さん
「Candeeのデジタル動画分析について」
株式会社Candee 大川秀平さん
「インタラクティブCM 最前線の成功モデル」
株式会社HAROiD 吉澤健吾さん
それでは内容を紹介します!
レシピ動画数世界一!動画市場の興隆に乗じた、kurashiruの成長戦略とは
動画ビジネスの最新事例を共有いただく、第1部最初の登壇は「kurashiru」を展開するdelyの柴田さんです。
柴田快(しばた・かい)/dely株式会社 取締役営業マネージャー。平成6年生まれ。東京都出身。早稲田大学商学部卒。在学中から複数社を企業し、卒業後はプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社へ入社。2016年にdelyに参画。映画好き。
delyが展開する「kurashiru」は、簡単レシピを動画で届ける国内最大の動画サービスです。レシピ動画数世界ナンバーワンの「kurashiru」は、「Facebook」「Twitter」「Instagram」「YouTube」などのSNSや、iOSとAndroidの自社アプリに向けて動画を配信しています。
その動画の特徴は実用的なレシピであるという点。シンプルなレシピで1分以内の動画がほとんどです。アプリはiOS、Androidともに高評価を獲得。テレビなどのメディア掲載も今年の3月以降に急増しています。
delyの従業員数は現在およそ110名ほどですが、「kurashiru」の事業を始めた2016年1月にはインターンを含めても6名のメンバーしかいませんでした。
5月には月間再生数1億回を突破し、1.5億円の資金調達も実施。6月、7月にはiOSとAndroid向けのアプリをリリースし、11月には再び5億円の資金調達に成功しています。アプリのDL数は順調に伸びており、2017年内に1,000万DLを突破する見込みです。
柴田さんは、2016年に初めて動画を制作した当時の様子と、現在のオフィスを比較しながら紹介。「当時の動画と比較すると、現在はかなり質が高い動画が制作できるようになりました。でも、動画制作のプロが作っているわけではありません。編集部はほとんどが22歳くらいのメンバーですね」
続いて柴田さんは、delyがどのように動画市場と向き合ってきたのかを説明します。
「そもそもdelyはキュレーションメディアを立ち上げたのですが、全然流行らなかった」と柴田さん。しかし、2016年1月当時のアメリカでは動画を中心に情報が配信されるようになっているのではないかと気が付きます。「ニュースメディアでも、『Facebook』や『Twitter』に映像化した動画を配信することで成り立っているメディアが増えていたんです」
この流れを受けて、delyでも「Facebook」「Twitter」「Instagram」を中心に動画の配信を開始。当初は「ライフスタイル」「ファッション」「ネイル」「アニマル」「メンズ」など7ジャンルの動画を制作し、毎日10本程度の動画を配信することで、どのような動画がバズるのか研究を重ねました。その結果、バズる動画は次のようなものだと柴田さんは挙げました。
- 秒数は30秒〜1分くらい
- 見ていて飽きないリズミカルなテンポ(2〜3倍速)
- 無音でも視覚的に楽しめる
- 最初の数秒でユーザーの心を掴んでいる
オーガニックでも200万回再生される動画も出てきた頃、delyは投資を決意します。その結果、アプリ内の再生数、「Facebook」での再生数、アプリ内検索数、「Instagram」フォロワー数など全ての数字が急激に増加。そこから更に本格的に動画の本数を増やしています。
しかし、「動画の盛り上がりは間違いないと思いましたが、少し不安に感じることもあったんです」と柴田さん。それはまだ他社のプラットフォームに動画を配信していたからです。
「当時、『世の中のメディアは分散型になる。アプリやウェブサイトはなくなる』と言われていましたが、私たちは自社プラットフォームが絶対に必要になると信じて、アプリの開発に着手しました。今振り返ると、ここは大きな転機だったと思います。」
アプリリリース後にはユーザーヒアリングを実施。その結果、ユーザーは動画をただ見るだけではなく、実際にレシピとして活用しながら料理をしていることがわかります。
柴田さんは「実際に料理に使われているのならば、レシピ数がたくさんないと毎日使ってもらえません。ですから、アルバイトを一気に採用し、スタジオも作って、1日数十本の動画を制作する体制を整えたんです」と語ります。
2017年8月現在、「kurashiru」には動画数としては世界第1位の9,600本が掲載されています。2017年内中に15,000本を目指しているそうです。
アプリのダウンロード数や滞在時間が増えたため、今年の3月には30億円の資金調達を実施し、CMを打ち始めています。その結果、現在はレシピ動画で料理をするという習慣がさらに浸透している段階です。
市場が従来の検索型から分散型に移行していくにつれ、ネイティブアドで上質なコンテンツを配信することが求められるようになっています。
そこで柴田さんは、「kurashiru」の広告事例を紹介します。現在、「kurashiru」のマネタイズで1番大きなものは「タイアップ」。広告営業を始めたのは2016年の11月からですが、キリン・ヤマサ・ブルボン・明治など、既に大手の企業にも多く採用されています。
タイアップの内容は企業から提供された商品の動画を配信するというもの。基本的にはオーガニックで再生数を伸ばすため、ユーザーからネガティブな印象が少ないのが特徴です。
最後に柴田さんは「タイアップ動画制作以外にも、動画を利用した店頭施策での動画活用や、ユーザーデータから他のマーケティング施策のハブになることを目指しています」と展望を語りました。
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