【レポート】ビッグデータを活用したWebサービスのマーケティング:大規模Webサービス[第1部] - TECH PLAY Conference 2017

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【レポート】ビッグデータを活用したWebサービスのマーケティング:大規模Webサービス[第1部] - TECH PLAY Conference 2017

2017年8月20日(日)から25日(金)の6日間にわたり、「TECH PLAY Conference 2017」が開催されました。

本レポートでは、8月25(金)11時30分よりスタートした最終日、第6日目の「大規模Webサービス」のうち、「ビッグデータを活用したWebサービスのマーケティング」をテーマにした第1部の内容をお届けします。

当日の登壇者と内容は下記の通りです。

**「ビッグデータを活用した『ぐるなびデータライブラリ』」*
株式会社ぐるなび 中村耕史さん

「データ×マーケティングが導くYahoo!ニュースのプロダクト戦略」
ヤフー株式会社 有吉健郎さん

それでは内容をご紹介します!

ビッグデータを活用した『ぐるなびデータライブラリ』

1人目の登壇者は、ぐるなびの中村さんです。

中村耕史 (なかむら・こうし)/株式会社ぐるなび 企画開発本部 企画第2部門 ビジネスソリューショングループ。1983年生まれ。新潟県出身。インテージ、クックパッドでの勤務を経て、2017年3月にぐるなびへ入社。アルビレックス新潟ファン。

1989年に設立されたぐるなびは、現在社員数が約1800名。ウェブサービスを展開する企業の中でもかなり大規模な組織です。

「インターネットで検索してから外食へ出かける」というライフスタイルを定着させ、「外食を立地から解放する」というビジョンで1996年にスタートした「ぐるなび」。現在の掲載店舗数は約50万、そのうち詳細情報が掲載されている店舗は16万ほど。多くの飲食店が、自店舗の公式サイトとしても活用しています。

月間の利用者数は6100万人。会員数1489万人のうち、男性が53.9%、女性が46.1%の比率で構成されています。年代で見ると、30代、40代で50%以上の割合を占めています。

「ぐるなび」事業の主な収入源は、加盟飲食店からの公式サイト利用料です。飲食店が登録した店舗情報を、オンラインでユーザーに届けます。しかし、オンラインだけではなく、オフラインでの人的サポートを飲食店に提供している点は「ぐるなび」の特徴のひとつ。全国1000人規模のスペシャリストが飲食店運営を支援しています。

また、同社では「ぐるなび」事業以外に、飲食店以外の法人をクライアントにした事業も展開。飲食店ネットワークを活かし、飲食店を対象とした主に食品メーカーへのマーケティングを支援しています。

そのマーケティング支援業務は大きく2つを提供します。まず、飲食店にサンプリングするなどのプロモーション支援の施策。もうひとつは飲食店が入力する一次情報データを活用したデータサービスです。

この「ぐるなび」加盟飲食店の一次情報を活用したのが「ぐるなびデータライブラリ」。中村さんは「ぐるなびデータライブラリ」の概要を紹介します。

「加盟飲食店のうちメニューをご登録いただいている店舗は約8万5000店舗。その8万5000店舗のメニューと、月間6100万ユーザーの検索データをお手元でご覧いただけるサービスが『ぐるなびデータライブラリ』です」

中村さんは「ぐるなびデータライブラリ」の特徴として次の3点を挙げました。

  • 唯一の外食一次情報サービス
  • エリアや業態など詳細分析が可能
  • 生活者ニーズを示す検索データも提供

次に中村さんは「ぐるなびデータライブラリ」が目指している世界観を語ります。

「私たちは販促支援はもちろん、ICT化による業務の効率化支援や多角化支援など、飲食店への総合的なサポートを行っています。

しかし、小売店におけるPOSデータのような、市場代表性のあるデータが飲食店にはなかったんです。飲食店の今をデータで可視化することで、食品メーカーによる商品開発に役立てて欲しいという思いがありました。

ですから、『ぐるなびデータライブラリ』を活用して、飲食店の売上が上がったり、調理工数が削減できる商品を食品メーカーに開発して欲しいんです」

飲食店支援の想いを語る一方で、中村さんは食品メーカーの立場からの考えも説明します。

「食品メーカーにとって、商品開発のためだけに毎月データを買うサービスの導入は難しいものです。そこで、定常的に発生する営業活動への活用も可能なサービスにしなければビジネスとして成り立たないと考えていました。

まず、商品開発の観点から考えると『流行しているメニュー』や『流行の兆しがあるメニュー』などの情報をご利用いただけます。

営業活動の観点では、例えば『クラフトビールの導入が多い業態は?』『銀座エリアだとハイボールはいくらで売られている?』『あるエリアは他のエリアよりも客単価が安いのか?』などがお手元でわかります。仮に飲料メーカーがこのデータを活用すれば、『ハイボールはこのエリアだとこの価格で売れるので、いくらで仕入れてもらえば、これくらい利益があがります』という提案が飲食店にできるわけです」

中村さんは実際に「ぐるなびデータライブラリ」を導入している事例としてハウス食品を紹介します。

「ハウス食品さんでは『食のトレンドを追うのを肌感覚に頼っていた』という課題がありました。

『ぐるなびデータライブラリ』のデータを活用してもらうことで、ハウス食品さんからは『実需に近いデータなので、精緻な商品開発につながる』といった感想をもらっています」

続けて中村さんは「ぐるなびデータライブラリ」を使って読み取れる情報の具体例として下記を挙げました。

  • 流行しているパクチー料理は?
    パクチーメンマ(前年比7倍以上のメニュー数)
    パクチーモヒート(前年比1.6倍以上のメニュー数)

  • 熟成肉はまだ流行っているの?
    提供店舗数は一時期よりも落ち着いてきたが、ユーザーの検索数はまだ勢いを保っている。

  • 流行の兆しがあるメニューは?
    青いお茶「バタフライピー」(過去6ヶ月のメニュー数や検索数から抽出)

  • クラフトビールの導入が多い業態は?
    居酒屋、バー・バル、イタリアン、フレンチ
    価格帯は2500円〜4000円くらい

  • 銀座でハイボールはいくらで売られている?
    500円〜599円が最多

講演の後半では、中村さんは「ビジネスを成長させるために活用できるデータを、システムを通じて可視化すること」に関して話します。まず、中村さんは次の3点に留意する必要があると指摘。

  • さくさく使える
    「『さくさく』には『分析時にレスポンスが早い』と『説明されなくても使える』という2つの意味があります。

    『ぐるなびデータライブラリ』では、全分析メニューの90%は、レスポンスタイムが3000ms以内で設計しています。現実的にはこの10分の1程度のコンシューマー向けサービスと同様の速さで稼働しています。

    また、システム内のメニューはお客様でもわかる単語を使っているので、お客様は『説明されなくても使える』状態になっています」

  • 見たいものが見られる
    「まず、お客様のビジネスフローと一致していることが重要です。私たちの場合だと、食品メーカーの営業さんが飲食店に提案する資料にそのまま載せられるような見せ方をしています。これは社内システムであっても重要なことだと思います。

    また、テキスト系のデータはクレンジングすることがとても重要です。『ぐるなびデータライブラリ』では、飲食店がそれぞれ一次情報を入力するため、同一カラムに複数のメニューが入っていたり、メニューの区切りが店舗によって異なることがよくあります。これをクレンジングしないと、ユーザーが見たいデータにはなりえません」

  • ビジュアル大事
    「社内システムだと難しいかもしれませんが、商用サービスを開発する場合には、グラフ表現+αが求められます。『ぐるなびデータライブラリ』では、知らないメニュー名でも写真を使うことでイメージがわかるようになっています」

最後に中村さんは、「システムを通じてデータを可視化する企画や開発の進め方」についての知見を共有します。中村さんが提案する進め方は「夢の構造化」「見たいデータを作る」「前に進める」の3ステップ。具体的には次の通りです。

  • 夢の構造化
    「見たいものがなにか、反対に見せたくないものはなにかをまず決定します。

    例えば『ぐるなびデータライブラリ』の『エリア分析』では、『キーワード』『エリア』『業態』『予算』を指定して検索することはできますが、『集計期間』を指定することはできません。なぜこのように『何を見せないのか』を決めるかといえば、レスポンスのスピードに直結するからです」

  • 見たいデータを作る
    「『見たいデータ』を作るためにはまず、データの特性を理解することが重要です。どのように発生したデータかによって、見せられるのか、見たいのかは変わって来ます。例えば、『ぐるなび』のユーザーは『エリア』と『キーワード』で検索することが多いのですが、食品メーカーにとって『エリア』の情報は不要な場合も多いわけです。

    次に必要なのは『仮説を持った検証』をすること。さらに、『鳥の目』『虫の目』を持って構造的な適切さと、個別のデータの適切さを往復することが求められます」

  • 前に進める
    「例えば『カレー』が分析対象語になっている場合、『カレー粉をトッピングした料理』や『カレー風味炒め』なども対象語に含まれます。これらをどのように扱うかに正解はありませんが、事前に『全てカレーに含む』とルールを決めておけば、問い合わせられてもきちんとしたシステムだと思ってもらえます」

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