シリコンバレー流の教育カリキュラム、4カ月の徹底したブートキャンプでプログラミングを学ぶ「TECH PLAY Academy」が第3期生を募集

インタビュー
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シリコンバレー流の教育カリキュラム、4カ月の徹底したブートキャンプでプログラミングを学ぶ「TECH PLAY Academy」が第3期生を募集

TECH PLAY Academy」は、国内外含めた最新の教育カリキュラムを取り入れ、“短期間”で“即戦力”として活躍できるIT人材を育成するためのオンラインの学習システムだ。「プログラミングブートキャンプコース」と、「機械学習ブートキャンプコース」の2コースから構成され、修了後に就職支援サービスまでをワンストップで受けることができる。

今回はプログラミングコースの第3期募集にあたって、あらためてTECH PLAY Academyが目指すものを、ゼネラルマネジャーの片岡秀夫氏と、カリキュラム開発のティム・マンスフィールド氏に聞いた。

短期集中のブートキャンプで頭脳を鍛え、実践的なスキルを身につける

「数年前から、アメリカ西海岸でブートキャンプが流行っている」。といっても、新兵訓練の鬼軍曹が叱咤激励するビデオを見ながら、必死で減量に努めるエクササイズビデオのことではない。短期集中型で実践的なプログラミングを学ぶオンラインあるいはオフラインの教育メソッドが盛んになっている。

その代表例が「Hack Reactor(ハック リアクター)」だ。授業は1日11時間。これを週に6日。これがほぼ3カ月続く。授業料は日本円で200万円以上とかなりの高額。しかしその効果はてきめんで、修了生の採用企業にはGoogle、LinkedIn、Yahoo!などそうそうたるIT企業が並ぶ。大学でコンピュータサイエンスを学んだ卒業生よりも、Hack Reactorの修了生のほうが採用実績も高く、その就職初年度の平均年収も軽く1000万円を超えることが少なくないという。

短期集中のトレーニングで頭脳を鍛え、プログラミングの実践的なスキルを身につける。こうしたシリコンバレー流ブートキャンプが人気な背景には、米国で深刻なIT人材不足がある。大学で4年以上かけてコンピュータサイエンスを学ぶのでは、IT業界の成長スピードにとうてい間に合わない。転職マーケットも採用難。だが、全くの未経験者を企業内で教育するゆとりもない。これは日本でも似たような状況がある。

パーソルキャリアが2018年1月から展開する「TECH PLAY Academy」は、この「Hack Reactor」と日本で初めて業務提携した教育プログラムだ。同社のカリキュラムを日本版にカスタマイズし、オンラインによる4カ月の実践的な演習を通じ、Webサービスを作ることを目指す。

メンターと一緒になって、課題を解決する

「今回の提携にあたって私もシリコンバレーの何社かのブートキャンプを見学したのですが、なかでもHack Reactorが一番ブートキャンプに近かったんです。お世辞にもきれいとはいえない教室で、メンター(mentor:助言者)とラーナー(learner:学習者)が一緒になって新しいものを生み出す雰囲気があふれていました。日本でもこうした雰囲気は大切にしていきたい」

と語るのは、TECH PLAY Academyのゼネラルマネジャー、片岡秀夫氏だ。

パーソルキャリア株式会社 Innovation Lab. TECH PLAY / DataShip ゼネラルマネジャー 片岡秀夫氏

日本版カリキュラムの開発にあたって、Hack Reactorから少し変更した部分もある。Hack Reactorはオンライン授業もあるが、白眉はオフラインでのラーナーとメンターが組んで実践するペアプログラミングだ。オフラインの時間を作るため、会社を辞めて参加する人も多い。

「しかし、日本では3カ月間無職の状態で学ぶというのはあまり現実的ではない。もう少し学びやすいようにするため、平日の夜と土日に絞ってオンラインのみで学習できるようにました。受講料も4カ月で39万円と米国に比べてはるかにリーズナブルです」と片岡氏は言う。

具体的にどんな授業内容になるのか。

「最初の1カ月はどちらかというと教材の問題をひたすら解きながら、ここできれいなコーディングやプログラミング思考を学んでもらいます。2カ月目になると毎週Webアプリケーションを作ります。

例えば、仮想通貨のレーダーチャートとかもぐら叩きのゲームなどが課題にあります。さらにサーバーサイドやデータベース周り、外部のAPIを呼び出す方法なども学びます。もちろん、ペアプログラミングも大事だと思っていて、メンターとラーナーがオンラインでライブコーディングをする時間も用意しています」

週を追うごとに少しずつ内容が難しくなり、コードの量も増えていく。それに伴って、メンターに頼らず自分で考える部分も増えていく。

「後半の2カ月では本人が作りたいアプリケーションを開発します。修了試験のようなものはないのですが、コースの最後には自分で書いたアプリをみんなの前でデモンストレーションする日を設けています。

現在はオンラインコースのみですが、今後は全員で合宿するようなオフラインコースも検討しています。例えば、沖縄のビーチで3カ月みっちりプログラミングに明け暮れる。それをいろんな地域でやりたいと思っています」

修了者は、Web系企業の新卒2~3年目くらいと同じスキル

メンターと呼ばれる講師陣にはあえて、専門学校の教員のようなプロの先生は選ばなかった。むしろ、現役のエンジニアが平日夜や土日だけパートタイムで参加するという形だ。平日夜21時から22時は必ずオンライン上にメンターがいて話をすることができる。ラーナー本人は、もちろんそれ以外の時間も自由に学習できる。

「コースに参加するにあたって入学試験のような選考はありませんが、やはり一定レベルになるためにはある程度のプログラミング経験がないと厳しい。それと、本人がこれからどうしたいのかという希望と、そのために学ぶ時間を確保できるかどうかも大切。ブートキャンプですから、マイペースでのんびりというよりは、一定時間に集中的に学ぶ意思が欠かせないのです」

卒業のイメージも、これまでの一般的なプログラミングスクールとはひと味違う。

「スクールで勉強はしたけど業務は未経験という人は、日本では未経験採用の枠で入社してからも新人研修が待っていることがほとんどです。しかし、そんなふうにはしたくない。コースの修了者は、Web系企業の新卒2~3年目くらいと同じスキルを持っているはず。新人研修なしに、いきなり現場に配属されるようにしていきます」

第2期までの参加者のうち学生は1人だけ。ほとんどが社会人だ。例えば、インフラや組み込み系の仕事をしているが、Webサービス開発の経験がないので、そのスキルを強化したいとか、ゲーム会社のディレクターをしているが、やはり自分で開発もできるようになりたいなどの希望を持つ。平均年齢は30歳前後で男性が多い。

「パン屋さんや消防士などもいますね。転職を希望する場合は、アカデミーでの本人の成長をフォローしているスタッフが直接面談してアドバイスするなど、パーソルキャリアが全面的に支援します」

シリコンバレー流スタイルを直接伝える鬼コーチの愛と鞭

TECH PLAY Academyのスタートにあたっては、Hack Reactorでカリキュラムデザインやメンターを担当するティム・マンスフィールド(Tim Mansfield)氏という強力な援軍を得ることができた。

ティムさんは、日米ハーフのバイリンガル。YouTubeやGoogleを経て、シリコンバレーのスタートアップでの豊富なプロダクト開発経験をもつ現役のエンジニアだ。日本でも東芝、富士通、凸版印刷などでソフトウェアエンジニアとして働いた経験がある。Skypeを使ってサンフランシスコにいるティムさんに話を聞いた。

――TECH PLAY AcademyにはHack Reactorと提携してシリコンバレー流のプログラミング学習を実践できる特徴がありますが、あらためてそのどこがすごいのか、いくつか挙げてください。

「ブートキャンプとブートキャンプでない学習経験、例えば独学とはどう違うのかから話を始めましょう。独学の学習者はたとえ本人がどんなに熱心でも、その学習法には限界があります。カリキュラムめいたものがネット上にはいくらでもあるけど最初は何をしていいかわからず、すぐに行き詰まってしまいます。学習を進めるためには、やはり壁にぶつかった時にどうすればいいのか、メンターの助言が必須なのです。

最初はこんな難しいことできないと誰もが思うはずです。それは日米限らず、プログラミングの初心者が必ずぶつかる心理的なバリヤーです。しかし、それは乗り越えなければならない。

難しい問題でも細かく分解していくと、案外、解が見つかるもの。コンピュータサイエンスにはもともと、大きな問題を小さな問題に分解し、それを分析していくなかで大きな解にたどり着くという考え方があります。私たちのカリキュラムにも、そうした問題解決のための方法論が詰め込まれています。

必要なのは、JavaScriptのようなプログラミング言語自体の知識ではない。もちろんそれも大切ですが、私たちが最終的に伝えたいのは、問題解決の方法論、そのプロセスなのです」

――その一方で、コンピュータサイエンスの理論を学ぶだけでなく、実践的なコーディングスキルも重視しています。

「私たちのコースで何よりも大切にしているのが実践的なプログラミングです。ラーナーが書いたコードを読んで、現役のプロのエンジニアであるメンターたちが適切なアドバイスをする。ラーナーたちはそれを見ながら改良する。その繰り返しです。

そのサイクルをスプリントと呼んでいますが、これがものすごく速い。Hack Reactorではたった2日間で小さなアプリを完成させ、それへのフィードバッグを受けて、次のスプリントに取りかかります。1週間でだいたい3回のスプリントを完成させていく。今回のTECH PLAY Academyでは、1週間で新しいアプリを一つ作れるようにしました」

目指すのは自分の頭で考えるクリエイティブプログラミング

――Hack Reactor修了者の多くは著名なIT企業に就職していますが、彼らの競争優位性はどこにあると思いますか。

「プログラマにはいくつかの種類とレベルがあります。設計書通りにしか作れない人、想像力を使わない単純な作業をコードのコピペだけでしのぐプログラマもいます。そういう人たちは、その場のいきあたりばったりで、クリエイティブな発想ができない。

それと比べて、きちんとしたアーキテクチャを理解し、コードレビューができる人は優位性が高い。Hack Reactorが目指すのもそこにあります。わずか3カ月間のコースですが、受講生はしっかりしたアーキテクチャを意識した、より美しく、かつ実践的なコードが書けるようになります。企業で実際の経験を積んで、さらに高みを目指すことができます。企業のニーズが高いのも当然だと思います」

Hack Reactor/TECH PLAY Academy カリキュラム・デザイン ティム・マンスフィールド(Tim Mansfield)氏

――こうしたHack Reactorのエッセンスを、日本ではTECH PLAY Academyが実践するわけですが、日本のエンジニアに対して何かメッセージはありますか。

「単にいい会社に転職しなさいと言いたいわけではないのです。決まり切ったプログラムだけではなく、その人に合わせてやり方を工夫・矯正していく。そんな開発ができるようになれば、企業内での活躍の場も広がるし、起業も夢ではありません。

私たちのコースを通して、日本のエンジニアたちがより充実したワークライフを送れるようになれば、それは本望です。エンジニアにはぜひ自分の夢や目標を大切にしてほしい。その夢を一緒に叶えるのが私たちのミッションなのです」

Skype画面の向こうからも、ティムさんの教育にかける情熱が伝わってくる。彼が、現在も第一線のプログラマとして活躍しながらも、あえてプログラミング教育にも携わるのは、「恩返し」だという。

「単にお金を儲けるだけでなく、私が自分の価値観や生きがいに沿って仕事ができているのも、これまで私にコンピュータサイエンスやプログラミングの魅力を教えてくれた、たくさんの恩人がいたからです。その恩返しとして、受講生たちに私の経験の全てを伝えることができれば嬉しいです」

一人では実現できない夢も、ティムさんのような厳しくも優しいコーチがいれば、二人三脚で達成できるかもしれない。TECH PLAY Academyにはそんな可能性を感じることができる。


「TECH PLAY Academy」について
https://techplay.jp/academy


取材/文:広重 隆樹
撮影:刑部 友康