【Open Innovation Guide①】 『連携にあたっての心構え』をeiicon founder中村が解説!
eiiconは、10月12日に”オープンイノベーションの手引き”というコンテンツを公開しました。これは、経済産業省「事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き(初版)」を元に、事業提携を成功させるための各種ノウハウをわかりやすくWEBコンテンツ化したものです。自身の課題感や、状態に合わせて検索、読み進めることが可能となっています。
もともとの手引きも100ページ以上ある大作ですが、eiiconのコンテンツもボリュームがあるため、eiicon founder 中村がわかりやすく解説していきます。
◆Open Innovation Guide①:連携に当たっての心構え・事前準備編
今回は、初回ということで『連携にあたっての心構え』にフォーカス。
心構えの中でも、特に会う前の「事前準備」について、大企業の新規事業担当者やオープンイノベーション担当者が気を付けるべきポイントを解説します。
◆先行企業の社外連携責任者・担当者が実践している事前準備とは?
まず、既に先行してオープンイノベーションに取り組み成果を出している『社外連携担当』が実践している『事前準備』として、下記3点が「手引き」に記載されています。
**①ウェブサイト等の公開情報で連携候補と考えている研究開発型ベンチャー企業のプロフィール(創業年、役員名等) などの基本情報や技術・事業の概要は事前に把握している
②連携によって期待する成果を明確化している(お互いに共有できる目的を意識している)
③連携を具体的に進める場合に必要な自社の社内決裁プロセスやかかる期間を把握している(ベンチャー企業から質問されることを想定)**
これは、会う相手によって状況は違えど、基本押さえておく3点だと捉えていただいて問題ありません。①に関しては合う相手が決まってからのアクションとなりますが、②③はある程度事前に準備をしておくことができます。
まず②連携によって期待する成果を明確化している(お互いに共有できる目的を意識している)ですが、これはオープンイノベーションの取り組みの成功可否を握る非常に本質的なポイントです。
そもそも今回なぜ会うのか=「何を目的に、なぜ連携を希望するのか」が定まっているか否かで、その後の成否やスピード感、スケールは大きく変わるからです。
連携する相手が異なれば、期待する成果も異なってよいのですが、前提の大目的はベースとして変わらずに持っておく必要があります。そのベースとなる大目的、「外部と連携する目的・期待成果」を具体化しておくことが事前準備におけるファーストステップと言えるでしょう。
◆「外部と連携する目的・期待成果」を具体化しておくこと
下記の図は、eiiconでよく「外部のパートナー候補と出会う」上での重要なポイントとして紹介をしているものです。
「オープンイノベーション」というマジックワードは、経営幹部たちに「いま現在、会社にはないもので、とってもキラキラした大きなお金を生む金の卵、素敵なイノベーションの種を外から発見する」という夢を見せることがあります。その夢は、時として、戦略なきパートナー探しへ企業を駆り立てるケースがあります。
これを我々は「悪しきループ」のはじまりと定義しています。
「今、会社にはない、飛び地のキラキラした事業シーズ」が無数に転がっているでしょうか?実際はそんなことはありません。会えども会えどもしっくりこない。当たり前です、目的なく、ふわっとした理想のみで、会い続けているからです。
オープンイノベーションは、そんな魔法ではなく、新規事業を推進する上での手法の一つだとeiiconでは定義しています。
会社の行く末を見据え、企業の成長戦略から各事業部に戦略が落ち、その過程で新規事業が戦略的に考えられていく。そこで、「オープンイノベーション」という手法を「目的」を明確にして取り入れる。それは、「外部にパートナーを求めた方が事業推進する上で筋がいいもの」(社内でゼロから開発する上でのコストや時間軸、市場)を明確にすることでもあります。
逆に、なんでもかんでもオープンイノベーションでやる必要もないのです。
クローズドイノベーション、社内の新規事業でできるならそれは社内でやると決める。オープンイノベーションという手法を取り入れる際には、「飛び地のキラキラした事業シーズ」をまず探しに行くという見切り発車のやり方ではなく、この、『対外的にリソースを求める目的・ターゲットの絞り込み』がステップとしては絶対に欠かせないのです。
前提となる「外部と連携する目的・期待成果」がないと、外部パートナー候補と会う際に「連携によって期待する成果」を明確化することはほぼ不可能であり、「お互いに共有できる目的や、期待成果」がないままの会議は両者にとってストレスフルな場になるでしょう。
とりわけスタートアップにとって、時間は非常に大切です。ただの「挨拶・紹介」をするだけの場は、極端な話、彼らの時間を泥棒している感覚を持っていただきたいと考えています。
◆必要な自社社内決裁プロセス・かかる期間を把握しているか
そして今日はもう一つ。一定の成果を出しているオープンイノベーション担当者が実践している『事前準備』の3点目。
③連携を具体的に進める場合に必要な自社の社内決裁プロセスやかかる期間を把握している です。下記も、我々が「オープンイノベーションルーキーが陥りやすい罠」として紹介している資料から抜粋してきました。
我々が浦島太郎の罠、と呼んでいる時間の感覚のずれの図です。
オープンイノベーションが流行し、部署が新設された企業様も多いここ数年においては、オープンイノベーション担当者自体も、社外連携の取り組みが初めてであることがあります。また、大企業における人事異動で、担当者がたびたび変わるというケースも散見されます。
その時に、まず事前に行っておくのが、この③の事前準備です。
たとえば、大企業であればあるほど、年度途中の予算獲得は難しい。それは、少し考えてみればわかることですが、大企業の中に所属していると気づきにくい観点ではあります。
ただ、スタートアップや中小企業は、機動力がありますが体力がないことが常。その機動力となるガソリンの役割を自分たちが果たせるのかどうかを最初に確認しておくことは大切なのです。
今の事業部としての予算、決裁範囲、イレギュラーの申請方法等は必ず確認をしておきましょう。「やりましょう」となってからのスタートアップの動きはまさ電光石火。今日決めたことは今日実施・開始することが彼らのスピードです。
スタートアップには、場合によってはスピードを優先させ、リスクをとるという選択肢があります。Aがいいのか、Bがいいのか、わからなければAもBも試してみればいい。
一方で大企業には、今まで培ってきたサービス顧客基盤・リソースがあります。その分、守る義務があり、不確実性が高すぎるリスクは冒せない。
その論理は真っ向から反する内容です。この両者が連携を望むのであれば、お互い時間軸は話し合いの当初から大枠は把握をし、前提が異なることを理解したうえで進めていくのがうまくいく秘訣です。
大企業は連携を望むのであれば、出会いを求める前にどのようなフローで社内が進むのか、時間や関与する部署、ルールを必ず確認をしておきましょう。
また、気を付けるべきは、理由なき企業の「社内ルール」。
中には、日本国憲法や、それこそ自然の摂理のように「当然守るべきこと」として、社内ルールを社外パートナー候補に伝えている企業担当者を見ることがあります。指摘をすると、企業担当者自身はそのことに気づいていないケースがほとんどです。会社のルールが、「なぜそうなっているか」を考える目を持つこと。これも、オープンイノベーション担当にはとても必要なことです。
◆最後に
「オープンイノベーション」というワードを聞かない日はないくらい、注目を集めている昨今。そんな時だからこそ、企業の中で体系化していくことができるようにきちんとPDCAを回せる、地に足のついたオープンイノベーションへの取り組みが必要です。
オープンイノベーションの手引きは、先人たちが失敗し、苦労した経験をまとめた内容が詰まっている最高の教科書だと思っていますので、ぜひご一読ください。
●他詳細はこちらから オープンイノベーションの手引き
解説/オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」Founder 中村 亜由子(nakamura ayuko)