子育て×テクノロジー。 X-TECHプロジェクトで加速した、社会課題への挑戦

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子育て×テクノロジー。 X-TECHプロジェクトで加速した、社会課題への挑戦
仙台市が実施している「仙台X-TECH イノベーションプロジェクト」(以下、X-TECHプロジェクト)」。特に2021年からは、AIを中心とした最先端テクノロジーを用いた社会課題解決や新規ビジネス発掘支援を目的に、セミナーやイベント、ワークショップなどを開催している。 これまでのX-TECHプロジェクトの歩みを振り返る参加者への特別インタビュー。今回は、仙台市でベビーシッターと家事代行サービスを営む株式会社キューテスト 代表取締役 中原絵梨香氏が登場。「子育て」という社会的に大きな課題を解決に動くキューテスト社。X-TECHを企業として、経営者として学びチャレンジすることでどんな影響があったのか、社会課題×テクノロジーの現在地点を聞いた。

<プロフィール>
株式会社キューテスト 代表取締役。
秋田県出身。大学卒業後、新卒で株式会社リクルートに入社。その後、地域おこし協力隊等、地方創生系の仕事に携わる。地域商社の立ち上げ、商業施設の事業計画作成などにも関わる。2021年9月、株式会社キューテストを設立、代表に就任。

母親に偏りがちな子育ての負担を、テクノロジーで解決したい

―まずは、株式会社キューテストの紹介をお願いいたします。

中原:株式会社キューテストは、2021年に私一人で創業したベビーシッターと家事代行サービスです。現在は保育士が7名所属していて、全員が保育園勤務5年以上のベテランです。高品質なサービスを提供しています。
また弊社では、0歳0ヶ月からベビーシッターを頼めるという特徴があります。保育施設を含めても、この月齢から保育ができる事業所は、宮城県で弊社が唯一です。
この点にこだわっているのは、私自身が宮城県の過疎地域で妊娠出産をして、とても大変な思いを経験したからです。また、私が小学校1年生の時に母親が産後うつで亡くなったというバックグラウンドも影響しています。だからこそ、産後の生活を外部から支える仕組みが日本には必要だと思っています。

―ソーシャルイノベーターとして一歩踏み出した経緯についても詳しく教えてください。

中原:前職で地方創生事業に携わる中で、「まちづくり」という答えがない仕事は、ボランティア的になりがちでもあると体感しました。まちづくりを持続可能な事業にするために、地域から求められ続け、雇用も生む方法はないかと考えて、今の事業にたどり着きました。また、保育士の多様な働き方を実現したいという思いもありましたね。だからこそ弊社では、キャリアはあっても子育てや介護のためにフルタイムで働けない保育士の雇用をしています。

―子育て分野にテクノロジーをかけ合わせようと思った理由は?

中原:子どもや母親に長時間関わるという弊社のサービス特性とテクノロジーを掛け算することで、家庭内での産後の課題が見えてくると感じたからです。例えば、女性に家事負担が偏ってしまう課題や、産後女性の仕事復帰が遅くなりがちという課題。その課題解決のためにテクノロジーを活用できないかと考えています。

―では、キューテスト社が子育て×テクノロジーで目指す未来像は?

中原:弊社のビジョンでもある「子どもが育つ環境を整え、誰もが仕事や子育てを楽しめる環境を作る」という社会です。子どもたちが今の時代に合ったかたちで、よりよく育つ環境を作りたい。そのためには親が幸せであり、子育てを楽しめる環境が必要です。さらには仕事も楽しめるように、子育てをサポートする仕組みも必要。
母親に子育ての負担が偏るんではなく、客観的なアドバイスがもらえたり、テクノロジーを使って必要なリソースにすぐアクセスできたり、家庭内の負担が軽くなるような社会を作りたいと思っています。

「産後の夫婦間コミュニケーションアプリ」開発のために、テックの知識を学ぶ

―X-TECHプロジェクト参加のきっかけを教えてください。

中原:X-TECHプロジェクトに参加する前に、仙台市主催の社会起業家育成プログラム「Social Innovation Accelerator」に参加していました。そこで自社の事業に関わる社会課題を深堀する時間があり、新型コロナウイルスの影響で、母親の4人に1人が産後うつの症状があるという研究データを知りました。加えて宮城県は、2022年まで4年連続で合計特殊出生率が全国ワースト2位だったんです。出産、育児に大きな課題がある状況だと感じましたね。
Social Innovation Acceleratorでは、その課題を解決する方法として「産後うつを早期発見するアプリケーション」のプレゼンテーションを実施。このアプリケーションを実現するために、テクノロジー側の知識も身に付けるべく、X-TECHプロジェクトに参加しました。

―どのようなアプリケーションなのでしょうか?

中原:正確なアセスメント、産後うつの早期発見、夫婦間のコミュニケーション向上を目的に、産後の母親のデータから健康状態を読み取り、パートナーにフィードバックするようなアプリケーションです。

開発段階なので、試行錯誤しながらアップデートしているのですが、当初の計画ではスマートウォッチで母親のバイタル情報を採取、「エジンバラ産後うつ病質問票 」という産後うつのスクリーニングのための問診票にも回答してもらい、その結果を元に健康状態を計測。そしてパートナー側に「今、栄養状態が足りていません」「睡眠不足です」といったデータが送信される仕組みを考えていました。
ただし、デバイス製造コストがかかる点や、診断をすることが医療倫理に抵触する点など、様々な課題も見えてきました。なので現在は、「夫婦間コミュニケーションアドバイスアプリ」のような立ち位置で、医療ではなくヘルスケア、コミュニケーションのアドバイスの目的を主軸にしています。
現在、AIの学習データとなる論文を探しつつ、保育士がどんな観点でフィードバックするかなども社内で検討しながら、ユーザーデータを収集している段階です。

―X-TECHプロジェクトはアプリケーション開発に役立ちましたか?

中原:はい。AIも100%正確じゃないということや、データの収集方法や学習の過程も学べて、非常にためになりました。ほぼ全てのワークショップと勉強会、そして最終発表会にも参加したのですが、やはり実際にAIソフトウェアを手で動かすワークショップは難しく、その分勉強になりました。
実は、最終報告会のプレゼンテーションをした方の中で、女性は私だけだったんです。これは仙台の現実だとも実感しましたし、子育てはまだまだ閉ざされた課題でもあるなと。あえて女性がテクノロジーで子育ての課題解決策を発信していくことも、社会への課題提起になるのではないかと感じています。

X-TECHプロジェクトは、知識ゼロからでもビジネスの可能性を広げられる場

―今後、どのようなX-TECHを行っていくか、展望を教えてください。

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中原:現状はアプリケーション開発のためにユーザーのデータを収集している段階です。データは、保育士が訪問した家庭で集めています。親の悩みや、どんなサポートでどんな問題が解決したかなど、フィードバックを蓄積している状況。まずは収集したデータを活用して、課題解決の手段を見つけていきたいです。
実は、弊社のサービスは、男性からの依頼が約6割あるんです。サービスを利用するのは母親と子どもですが、父親側が「自分が仕事で忙しくて家庭の中のことができないからプロにお願いしたい」というパターンが多くて。「社会課題」と表現すると、貧困やシングルマザーをイメージされやすいですが、実は金銭的な余裕とは関係なしに、子育てに困っている方もたくさんいます。特に金銭的な余裕がある方は行政支援からも漏れてしまう。そういった方々にもテクノロジーを使った支援をしていきたいですね。

―最後に、これからX-TECHプロジェクトに参加される方にメッセージをお願いします。

中原:今取り組んでいる事業とテクノロジーを掛け合わせることによって、社会課題解決に繋がったり、ビジネスの可能性が広がったりすると思います。私はゼロ知識でX-TECHプロジェクトに飛び込んだのですが、一生懸命アウトプットして、様々な人に自分の事業を聞いていただいたことで、ビジネスの可能性を広げることができました。ぜひ皆さんにもチャレンジしてほしいと思います。
また、X-TECHプロジェクトを通して、当初考えていたアプリケーションの構想から、「トイレや尿検査キットでの栄養分析も良いかもしれない」「ぬいぐるみの言語処理も使えそう」など、様々なアイデアも生まれました。試験的に運用した中で面白いデータが収集されることもあります。このように、開発過程であらゆる可能性を探ることって、アプリケーション開発の一番楽しいところでもあると感じます。
まだ実現したい具体的なアイデアがなくても、自分の思考をどんどん広げていく場としてX-TECHプロジェクトを活用してほしいと思います。

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