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議論マイニング 【連載】自然言語処理の研究動向 第8回 2026.2.18 株式会社Laboro.AI リードMLリサーチャー 趙 心怡 概 要 議論マイニング(Argument Mining、AM)は、人々が特定の意見を持つに至った理由を明らかにすることで、従来の感情分析よりも一歩踏み込んだ洞察を提供します。初期の「意味埋め込み技術(semantic embeddings)」の画期的進歩により、議論をクラスタリングして主要なポイントに集約することが可能になり、その後の研究では議論の質や多様性を評価する手法が導入されました。今日、大規模言語モデル(LLM)の台頭により、AMは膨大な学習を必要としない新たなフェーズへと移行しています。こうした進歩の一方で、現在の評価手法は現実世界のコミュニケーションにおける主観性やニュアンスを完全には捉えきれておらず、モデルの異なる分野への応用力にも課題が残っています。信頼性の高い実用的なAMシステムを構築するには、これらの評価と汎用性における核心的な課題を解決することが不可欠です。 連載第1回「自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰」は こちら 。 連載第7回「関係抽出」は こちら 。 目 次 ・ 議論マイニング(AM)とは ・ 主要な技術的進歩 ・ 今後の展望と課題 議論マイニング(AM)とは 顧客からのフィードバック、政策文書、研究論文、社内レポートといったデジタルコミュニケーションへの依存度が高まる中、人々が「なぜそのように考えるのか」を理解する能力はますます重要になっています。過去の連載で取り上げたように、自然言語処理(NLP)において、情報抽出は事実に基づく 固有表現 や 関係性 を特定し、 感情分析 は人々がポジティブかネガティブかを判断しますが、AMは、さらに踏み込んだ問いである「なぜ彼らはそのように感じるのか?」に答えるための次なるステップです。 AMは、人々が自身の好みや意思決定を正当化するために用いる「理由」を特定・分析・整理することに焦点を当てています。これを実現するために、AMシステムは、議論の抽出、分類、クラスタリング、評価、要約といったいくつかの主要なサブタスクを組み合わせて成り立っています。 AMの可能性を示す有名な実例が、IBMの 「Project Debater(2021年)」 です。これは、議論の検索、キーポイントの整理、質の評価、そして説得力のあるナラティブの構築まで完結し、人間とのライブ討論を行うエンドツーエンドのシステムです。 ライブ討論を行うAIは大きな挑戦ですが、その基盤となる技術は、顧客の動機、ステークホルダーの懸念、そして思考のパターンについて、より深い洞察を提供するなど、ビジネスの場においても根本的な転換をもたらします。 主要な技術的進歩 AMの大きな前進は、Transformerベースのモデルによって可能になった「意味埋め込み(semantic embedding)」からもたらされました。 Reimers et al. (2019年) は、意味的に類似した議論をクラスタリングする手法を導入し、膨大な数の意見を共通のテーマにグループ化することを可能にしました。また、 Bar-Haim et al. (2020年) が発表した「キーポイント分析(Key Point Analysis)」フレームワークは、数千もの議論の海から、簡潔で高レベルな主要ポイントを抽出でき、これは実世界での分析において極めて重要なツールとなっています。 次なるフロンティアは、議論の「質」と「多様性」に置かれました。 Chen et al. (2019年) は、ある主張を支持または反対する多様な視点を発見するためのデータセット「Perspectrum」を発表し、システムが同一の問題に対して複数の論理展開をどれほど正確に捉えられるかの評価を可能にしました。これを補完するように、 Gretz et al. (2020年) が開発した大規模データセットは、議論を明快さ、関連性、強さに基づいてスコアリングすることで、議論の質を評価できるベンチマークとして、広く活用されています。。直近では、大規模言語モデル(LLM)の台頭が新たなパラダイムをもたらしました。それは、強力な事前学習済みモデルを「プロンプティング」によってAMに活用する手法です。この流れを受け、 Chen et al. (2024年) は14種類の異なるAMデータセットでLLMをテストし、LLMが幅広い議論タスクにおいて、ゼロショットまたはフューショットのプロンプトのみで、「賞賛に値する性能(commendable performance)」を示すことを確認しました。 今後の展望と課題 今日のNLP評価における核心的な課題は、人間の判断の信頼性が低下していることです。LLMが非常に流暢になるにつれ、 Clark et al. (2021年) は、たとえ根底にある論理が脆弱であっても、人々が表面的な流暢さに惑わされやすくなっていることを示しました。 AMの分野では、人間の判断の不安定さはAMタスクの深い主観性によってさらに増幅されます。何をもって議論が「良い」あるいは「説得力がある」とするかは、聞き手や文脈、そして表現の微妙な差異に依存するためです。 「PerspectiveArg」タスク(2024年) は説得力が個人の価値観や背景に結びついていることを示し、 Chen & Eger (2025年) は、議論を説得力のあるものにする微細な感情的要因について、人間とLLMの間で意見が一致しないことを明らかにしました。これらの知見は、管理された評価と実世界の豊かさとの間のギャップを浮き彫りにしており、将来のAMシステムが真の価値を提供するために改善すべき方向性を示しています。 第二の課題は、AMモデルが新しい分野に移行する際に脆弱になる傾向があることです。 Gemechu et al. (2024年) や Feger et al. (2025年) が証明しているように、特定のデータセットやジャンルで優れた性能を発揮するモデルが、別の分野に適用されると苦戦することが頻繁にあります。 これらの課題は、裏を返せば最も意義のある進歩が期待できる領域でもあります。評価と汎用性におけるギャップを埋めることこそが、真に信頼でき、実用的で現実世界のアプリケーションに対応可能なAMシステムを構築するための鍵といえます。 執筆者 エンジニアリング部 リードMLリサーチャー 趙 心怡 自然言語処理、機械学習、ナレッジグラフを中心とした研究に従事。これまで複数のオープンソースのデータセットとモデルの構築に貢献してきた。最近の研究ではLLMの実社会への応用を探求し、学術研究と実際のユースケースの橋渡しに情熱を注いでいる。 The post 議論マイニング 【連載】自然言語処理の研究動向 第8回 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
AI コーディングアシスタントに簡単なこと、例えば関数名の変更やファイルの移動を依頼すると、突然復旧作業に追われることがあります。インポートが壊れたり、参照が存在しないファイルを指したりします。5 分前にコンパイルできていたコードベースが、至る所でエラーを投げ始めます。20 秒で終わるはずのリファクタリングが、5 分間のデバッグとクリーンアップセッションに変わってしまうのです。 エージェントにとってリファクタリングが難しい理由 リファクタリングは単なる大規模な検索置換ではありません。コードベースのセマンティック構造全体にわたるグラフトラバーサル問題なのです。関数名を変更すると、変更は連鎖します。ワークスペース全体のすべての呼び出し箇所、それを参照する型定義とインターフェース、import/export 文、テスト、そして(オプションで)ドキュメントとコメント。ファイルの移動はさらに複雑な波及効果を引き起こし、すべての依存ファイルのインポートパス、バレルファイル( index.ts )と再エクスポート、 tsconfig パスやバンドラー設定に組み込まれたモジュール解決の前提、Webpack 設定のような散在する設定ファイルなどに影響します。ここに根本的なミスマッチがあります。LLM はパターンマッチングを通じてもっともらしいコードを生成することに優れていますが、リファクタリングは もっともらしさよりも精度 を要求します。これは創造的なタスクではなく、シンボルの関係、言語固有のセマンティクス、プロジェクトの依存関係グラフの正確な理解を必要とする制約充足問題なのです。「正しく見える」が、深くネストさ れたモジュールの 1 つのインポートを見逃したエージェントは、単に小さなエラーを犯しただけではありません。本番環境まで表面化しないランタイム障害を導入したのです。これが、どれほど洗練されていたとしても、テキスト生成が構造的なコード変換において信頼性に欠けるツールである理由です。 問題:エージェントが効率的ではなく、非効率に動作するとき 多くの AI エージェントがリファクタリングでつまずくのは、 構造的 な編集を テキスト 編集として扱うからです。開発者が直面し続けている失敗モードをいくつか紹介します。 依頼内容: 「このメソッドの名前を変更して」 従来の失敗: エージェントはメソッド定義を更新しましたが、プロジェクト全体の呼び出し箇所を見逃しました。プロンプトで参照を更新するよう明示的に依頼した場合でも、プロセスは遅くエラーが発生しやすいループになりました。古い名前を検索して置換するのです。このプロンプトを考えてみましょう。 expression.js の get_loose_identifier を、それが何をするかをよりよく反映するように名前変更してください。このシンボルの名前変更は 4 つのファイルに伝播し、8 つの参照と 3 つのインポートに影響します。次の図の左側(従来のアプローチ)は、専用のリファクタリングツールなしでこの操作がどのように展開されるかを示しています。最初のファイル( expression.js )でシンボルの名前を変更した後、エージェントはコードベースで get_loose_identifier を検索し、複数の LLM 呼び出しとツール呼び出しを通じて CallExpression.js と AssignmentExpression.js を更新します。努力したにもかかわらず、残りの参照を見逃しています。 Kiro の対処法: 開発者が IDE でこのタスクを手動で実行する方法を考えてみましょう。 get_loose_identifier で F2 を押し、新しい名前を入力して、Enter を押します。IDE は、コードベース全体の 8 つの参照と 3 つのインポートすべてを更新しながら、自動的に名前変更を実行します。これがまさにセマンティックリネームツールが行うことです。次の図の右側(新しいアプローチ)は、Kiro が単一のツール呼び出しで名前変更全体を適切に実行する方法を示しています。 依頼内容: 「このファイルの lint エラーを修正して」 従来の失敗: エージェントは linter の出力をテキスト編集の ToDo リストとして扱いました。1 つのファイルでシグネチャの関数名を camelCase から snake_case に変更しましたが、他のファイルで「参照が見つからない」や「インポートが見つからない」エラーを導入しました。すべての使用箇所への変更の伝播に失敗したのです。 Kiro の対処法: ユーザーが直接名前変更を依頼しなくても、エージェントがセマンティックリネームツールから恩恵を受ける例を示します。ユーザーはエージェントに「 text_helpers.py の lint エラーを修正して」と依頼します。lint エラーは、 utils/text_helpers.py 内の normalizeText と slugifyTitle を snake_case に変更する必要があることを示しています。コードベースの部分的なスナップショットを以下に示します。 これらの修正をテキスト編集として扱うエージェントは、関数定義の名前を変更し、ローカル参照を修正するかもしれませんが、他の場所のインポートや呼び出し箇所を見逃す可能性が高く、実行時に ImportError / NameError を引き起こします。セマンティックリネームツールを使用することで、Kiro は定義だけでなく、 api/routes.py と services/indexer.py のインポートと呼び出しも更新します。以下の画像の通りです。 依頼内容: 「コンポーネントを再編成して – Button.tsx を src/components/ から src/shared/ui/ に移動して」 従来の失敗: エージェントはタスクを単純なファイル操作として扱いました。ファイルの移動は成功しましたが、古い場所を指すすべてのインポート文が壊れています。エージェントはその後、検索置換操作でファイルごとにインポートを修正しようとしましたが、動的インポートを見逃しました。 import('../components/Button') 。 Kiro の対処法: Kiro がインポートパスを自動的に更新する具体的な例を示します。図は、プロジェクト構造の部分的なスナップショットと依存するコードスニペットの一部を示しています。 Button.tsx を src/components/ から src/shared/ui/ に移動した後、Kiro は移動したファイルに関連するすべてのインポート文を自動的に更新します。 主な利点: 組み込みの言語サーバーが編集を処理するため、手動の検索置換は不要です。 言語認識:TypeScript/JavaScript モジュール解決を理解します。 より安全:動作するコードを壊す可能性が低くなります。 エッジケースの処理:パスエイリアス、モノレポなどに対応します。 これは、VSCode のエクスプローラーでファイルをドラッグアンドドロップしたときに起こることとまったく同じです。セマンティックリネームツールはエージェントベースの同等機能です! Kiro エージェントのリファクタリング方法 IDE は、エージェント AI の台頭以前にこの問題をすでに解決していました。VSCode でシンボルの名前を変更するために F2 を押すと、IDE は推測しません。コードの構造を理解する言語サーバーに相談し、ワークスペース全体の編集を計算し、安全に適用します。VSCode のワークスペース編集機能により、単なるテキストパターンではなく、コードの構造を理解するプログラマブルなセマンティック検索置換が可能になります。Kiro エージェントは、LLM 推論だけでリファクタリングをシミュレートしようとはしません。代わりに、エージェントは上記と同じメカニズムを使用して、これらの実証済みの IDE 機能をプログラム的に公開する 2 つの新しいリファクタリングツールを登録します。エージェントがシンボルの名前を変更したりファイルを移動したりする必要がある場合、意図をインテリジェントに認識し、適切なリファクタリングツールを選択して呼び出します。エージェントはリファクタリングワークフローを調整し、IDE の言語サーバーが正確性の検証を支援します。 これらのエージェント登録リファクタリングツールが内部でどのように機能するかを見てみましょう。 セマンティックリネームツール:正しいリネームを実現 このツールは、VSCode のシンボル名前変更 API に直接接続します。F2 を押したときに使用するのと同じものです。 vscode.prepareRename を使用してシンボルが名前変更可能かどうかを検証し(例:キーワードではない)、 vscode.executeDocumentRenameProvider を使用してワークスペース全体で必要なすべての変更を含むワークスペース編集を生成します。TypeScript、JavaScript、TSX、JSX の場合、組み込みの VSCode 名前変更プロバイダーがすべてを処理します。Python、Go、Java などの場合、ツールはインストールされた言語拡張機能とそれらが提供する言語サーバーに依存します。 スマートリロケートツール:すべてを壊さずにファイルを移動 このツールは、VSCode のファイル移動機能を使用して、すべての参照を自動的に更新しながらファイルを再配置します。VSCode のエクスプローラーでドラッグアンドドロップするのと同等のプログラム的な操作ですが、エージェントがあなたのために実行できます。 vscode.WorkspaceEdit.renameFile と vscode.workspace.applyEdit を使用して、ツールは複数のファイルにわたる包括的な変更を生成し、影響を受けるインポートを更新します。 これが重要な理由 創造性よりも精度: リファクタリングは、コードがどのように見えるべきかを LLM に想像させる必要はありません。コードが 実際に何であるか を理解し、外科的に変更できるツールが必要なのです。 実証済みのインフラストラクチャを通じた信頼: これらは実験的な LLM 機能ではなく、開発者が日常的にすでに依存しているリファクタリングインフラストラクチャとの直接統合です。F2 を押したときに機能すれば、エージェントが実行したときにも機能します。 言語に依存しない: 重い作業は言語サーバーによって行われるため、このアプローチは技術スタックと言語全体に一般化されます。 生産性の維持: 20 秒の手動リファクタリングが、5 分間の AI 生成リカバリーミッションになるべきではありません。適切なツールを使用すれば、操作は高速でアトミックなままです。 より大きな視点 構築による正確性という私たちの哲学に基づいて、 IDE 診断統合 を導いたのと同じ原則で、VSCode のリファクタリング機能の全範囲をカバーするようにこのアプローチを拡張しています。エラーが複合する前にキャッチするためにリアルタイム診断を統合したのと同様に、これらの実証済みの決定論的 IDE 機能を、新しい内部スマートリロケートおよびセマンティックリネームツールに拡張しました。 しかし、リファクタリング機能は名前変更と再配置で止まりません。VSCode の言語サーバーは、エージェントが活用すべき豊富な自動コード変換スイートを提供します。コードブロックを再利用可能な関数に抽出するメソッド/関数の抽出、コードを簡素化する変数/関数のインライン化、すべての呼び出し箇所でメソッドパラメータを更新するシグネチャの変更、アロー関数への変換やその他の言語固有の変換は有力な候補です。 このアプローチを取ることで、エージェントが実行される基盤に正確性、セキュリティ、信頼性を組み込むことができます。これらのツールで確立したパターンは、ツールキットへの新しい追加を導きます。LLM に脆弱なテキスト置換スクリプトを生成するよう依頼する代わりに、インテリジェントなコーディングエージェントは、開発者がすでに信頼しているこれらの実証済みの IDE 操作を活用し続けます。IDE が正しく実行する方法を知っているとき、私たちはそれに作業をさせます。エージェントがより有能になるにつれて、これはその出力をより信頼できるものにするための良いテクニックでもあります。 違いを体験する準備はできましたか? Kiro を無料で始めて 、開発ワークフローをどのように変革できるかを確認してください。 Discord の成長するコミュニティに参加して、フィードバックを共有し、質問をし、AI 支援コーディングで構築している他の開発者とつながりましょう。 謝辞 エンジニアリングの洞察と貴重なフィードバックを提供してくれた Al Harris に感謝します。 本記事は 2026 年 2 月 5 日に公開された Pardis Pashakhanloo と Rajdeep Mukherjee による “ Refactoring made right: how program analysis makes AI agents safe and reliable ” を翻訳したものです。翻訳は Solutions Architect の吉村が担当いたしました。
QAエンジニアの採用・選考 どう採るどう通る?連載の第3回です。 前回の記事 では、求職者の立場から「どのようなQAエンジニアが求められているのか」を把握する重要性について解説しました。募集背景を理解し、「自走できる人」などの抽象的なキーワードの裏にある具体的な期待値を読み取ることが大切、という内容でした。 では、企業が求めるQA像を理解できたとして、それをどう伝えれば採用担当者や書類選考を行うエンジニアに「この人を採用したい」と思わせることができるのでしょうか。 第1回 で述べたように、私が採用担当として書類選考や面接を行っていると、「落とす理由は無いけれど、通すための理由にも欠ける」という判断になる方が一定数いました。おそらくスキルや経験があるのに、適切にアピールされていない。これが、もったいなさを感じるポイントでした。 本記事では、職務経歴書を中心に「この人を採用したい」と思わせるアピール方法について解説します。 記事一覧:QAエンジニアの採用・選考[どう採る どう通る] 【第1回】QAテストエンジニア採用における募集側・求職者側のニーズと課題 [全文公開中] 【第2回】求職者側の課題1:求められているQA像を把握する 【第3回】求職者側の課題2:適切なアピールで「欲しい」と思わせる よくある「もったいない」パターン まずは、実際に書類選考や職務経歴書のレビューを通じて、よく見かける「もったいない」パターンについてです。 職務経歴を羅列しているだけ 一番よく見かけるのは、やったことを時系列で並べているだけの職務経歴書です。 たとえば、「20XX年〜20XX年:〇〇プロジェクトでテスト実行を担当」「20XX年〜20XX年:△△システムのテストリーダーを担当」といった形で、プロジェクト名と役割を淡々と列挙しているケースです。 もちろんこれらの情報自体は悪くありません。しかし、採用担当者が知りたいのは「この人が何をできるのか」「どう貢献してくれるのか」という点です。単純な経歴の羅列だけでは、企業側のニーズとの接点が見えませんし、書類選考担当者は経歴からその方のスキルなどを想像する必要があり、それなりの「認知負荷」がかかります。それも仕事のうち、と言ってしまえばそうなのですが、応募側が少しでも書類選考通過の確率を上げようと思うならば、読み手がたまたま疲れていたとしてもスッと伝わるような書類を作ったほうが安全です。 仮に集中して読んでもらえたとしても、単純な経歴の羅列で終わっていると「経験はあるようだけど、ウチで何ができるのかがわからない」という印象になってしまいます。これでは、選考を通す理由として弱いんですね。 企業側のニーズとアピールポイントがズレている 上で述べた内容と関連しますが、募集要項に書かれている課題・やりたいことと、自分のアピール内容がズレているケースもよく見受けられます。 典型的な例として、プロセス改善や仕組み化を求めている企業に対して、「納期に遅れることなくテストを消化できました」「メンバー〇名を抱えてテスト進捗管理を行いました」とアピールしている場合などです。(このパターンは本当に多いです。) もちろんウソを書いたり必要以上に盛ったりせず、正直に書いてくださっているのはわかります。しかし、企業が求めているのが品質保証体制の構築や仕組み化であるにもかかわらず、「テスト業務を着実にこなせます」というアピールでは、「業務をこなすだけの人」に見えてしまいます。 重要なのは、相手の求めるものを理解し、自分の経験を適切に翻訳することです。たとえば進捗管理の経験があるなら、企業が仕組み化を求めているのであれば、「効率化のための仕組み作り」という文脈で語る必要があるでしょう。前回の記事でお伝えした、求められるQAエンジニア像を理解するというのは、ニーズに対して適切なアピールをする土台になる部分です。 「貢献」の視点が欠けている もう一つよく見かけるのは、「こんな経験があります」「こんなスキルを持っています」と書いて終わっているパターンです。 これは、私が職務経歴書レビューをしている際には必ずお伝えしているのですが、できることや経験で止まっているとやはり物足りないんですよね。採用側が知りたいのは「雇うとどんなメリットがあるのか」という点です。つまり、「貢献」の視点が必要になります。応募先の課題に対して、自分がどう解決できるのか。これを明確に示さなければ、採用担当者は「この人を通す理由」を見つけられません。 正しいアピールの構造:「課題→貢献→根拠」のロジック ここまで、よくある「もったいない」パターンについて解説してきました。では、どうすれば採用担当者に「この人を採用したい」と思わせることができるのでしょうか。 アピールの基本構造 前回の記事で、求職者側が職務経歴書や面接で伝えるべきポイントについて構造化した図を示しました。改めてこの図を見てみましょう。 多くの人は下段(経歴・スキル)だけを書いて終わっています。先ほど述べた「職務経歴を羅列しているだけ」というパターンですね。 しかし、重要なのは中段(雇う側のメリット・貢献)を起点に構成することです。企業の課題を理解し、「私を雇うとこう変わります」と明確に示す。そして、その根拠として職務経歴や成果を提示する。このロジックで組み立てることが大切です。 なぜこの順序が重要なのか なぜこの「課題→貢献→根拠」という順序が重要なのでしょうか。それは、採用担当者の視点で考えるとわかります。 採用担当者は、候補者を次のステップに進める際、「なぜこの人を通過させるのか」を説明できなければいけません。これは社内でより上位の選考官に共有するためという側面もありますし、「迷ったら不合格」が採用のセオリーとも言われています。 つまり、採用担当者は「この人を通す理由」を探しています。正直、直感で「良さそう!」と思ってから、あとからその理屈を探すというパターンもあると思います。 だからこそ、採用担当者の中で「この人を採用したら、こんな動きをしてもらって、結果こう良くなりそう」という明確なイメージが持てると、内定にかなり近づきます。経歴・スキルはあくまでもその根拠であって、過去の成果を転職した先でも再現できるだろうと思ってもらう材料です。 自分の経験を「翻訳」する ここまでの内容を踏まえて求職者側ができるのは、見せ方や表現を工夫することです。転職活動中にスキルが急に伸びるということはあまりないので、自分の持っているものをどう表現すれば興味を持ってもらえるか、を考えます。 たとえば、テストチームにおいてメンバーの進捗管理をしながらプロジェクトを進めた経験があるとします。ある程度の規模のテストエンジニアを率いてテストを行うようなチーム・会社に応募しているのであれば、「*人規模のリーダーを行いました」といった切り口で表現すると合うでしょう。 一方で、「ウチは開発者もテストをするし、QAの方にはもっと全体の仕組み化とかプロセス改善とかをお願いしたいんだよね」と思っている会社に対して「*人を率いてテストのプロジェクトを回しました!」と言っても、刺さらないわけです。そうではなく、「ジュニアなメンバーもいる中で、仕組み化して業務品質を担保した」や「要件や仕様の段階からPdM・開発者との定例に参加しテスタビリティに関するフィードバックをしつつテストプロセスを進めていました」等の表現をしたほうがマッチします。 このように、自分の経験を応募先のニーズに合わせて「翻訳」することが、効果的なアピールにつながります。 自己PRへの「貢献の視点」の盛り込み方 先に「貢献の視点が大事」とお伝えしました。具体的には、どのような書き方で貢献の視点を表現すればよいのでしょうか。 たとえば、「誰とでもスムーズに仕事ができるコミュニケーション能力があります」といった内容を自己PRに書く人がけっこういらっしゃいます。しかし、コミュニケーション能力があるのはある意味当然・当たり前で、そこで止まっていると自己PRにはなりません。コミュニケーション能力自体が計測ができないものですし、「コミュニケーション能力が高いと、それがウチでどう活きるの?」と採用側は思うわけです。 もしも「バイト先の全国接客コンテストで優勝しました」等の、採用担当者が聞いてもすごさがわかるような具体的なエピソードがあれば、コミュニケーション能力が高いというアピールが成立しますし、面接のネタにもなるでしょう。しかし、多くの人はそうではないはず。そうなると、やはり「コミュニケーション能力があります」のようなふわっとした表現は、自己PRとは言い難いです。 では、どう書けばいいのでしょうか。 たとえば「QAやテストの教育・研修をたくさん経験してのべ○○○人に教えてきたので、自分なりのノウハウがたまっています。もし入社したら、新たに社内向けのコンテンツを書き起こして、研修を開いて組織内に展開できます」などは、自分を雇うことで会社が得られるメリットが表現されています。もちろん、それを嬉しいと感じるかどうかは会社やそのときの状況次第なので、そこは募集要項などからできるだけ正確に読み取る必要がありますが、すくなくとも貢献の視点は含まれています。 あるいは、一人目QA募集のような求人であれば、以下のようなアピールも効果的です。 「登壇やブログ執筆などで社外に向けたアピールができます。だから自分を採用すると、二人目以降の採用にも貢献でき、QA組織体制の構築が可能です」 このように、自分のスキルや経験を「企業にとってのメリット」に変換して示すことが、効果的な自己PRにつながります。応募先の課題を理解し、その課題に対して自分がどう貢献できるのかを具体的に書く。これが自己PRで意識すべき最も重要なポイントです。 まとめ 本記事では、職務経歴書を中心に、採用担当者に「この人を採用したい」と思わせるアピール方法について解説しました。 よくある「もったいない」パターンとして、経歴の羅列だけになっている、応募先のニーズとアピールポイントがズレている、「貢献」の視点が欠けている、という3点を挙げました。 正しいアピールの構造は、「課題→貢献→根拠」のロジックです。企業の課題を理解し、自分がどう貢献できるかを明確に示し、その根拠として職務経歴や成果を提示する。この流れを意識することで、書類選考を通る可能性は確実に高まると考えています。 次回は募集側の課題として、企業がどのように「求めるQA像」を表現するかについて解説していきます。 【連載】QAエンジニアの採用・選考[どう採る どう通る] 【第1回】QAテストエンジニア採用における募集側・求職者側のニーズと課題 [全文公開中] 【第2回】求職者側の課題1:求められているQA像を把握する 【第3回】求職者側の課題2:適切なアピールで「欲しい」と思わせる The post 【第3回】求職者側の課題2:適切なアピールで「欲しい」と思わせる first appeared on Sqripts .

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