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こんにちは。ソリューションアーキテクトの原田、鈴木、西亀です。 2026 年 6 月 25 日(水)〜 26 日(木)に幕張メッセで開催される AWS Summit Japan 2026 の AWS Builders’ Fair にて、私たちが制作したデモ「 Living Mart — AI エージェントが経営するお店 」を展示します。 本記事では、このデモを作った背景と、会場でどんな体験ができるのかをご紹介します。 技術的な詳しい解説は Summit 後の別記事で予定 していますが、まずは「面白そう!行ってみよう」と思っていただければ幸いです。 Living Mart — “A store that runs itself.” 6 体の AI エージェントがリアルタイムで経営中 なぜ「AI が経営する店」を作ったのか これまでの AI は「人間が指示を出し、AI がそれを実行する」という使い方が中心でした。最近は、ひとつのタスクを単発でこなすのではなく、 仕事の一連の流れ(ループ)そのものを AI に任せる という方向に変わりつつあります。一度きりの自動化ではなく、AI が継続的に意思決定し、実行し続ける形です。 Living Mart は、これを「お店の経営」という題材で実際に動かしてみた実験です。人間が与えるのは ビジネスの枠組み(ルール)だけ 。その中で何をするかは、AI が自分で決め、動かし続けます。 この発想は、いまソフトウェア開発の現場で起きている変化とも重なります。コーディングエージェントは、テストや型チェック、CI といった「 ハーネス(安全装置) 」で囲むことで、人間が安心して任せられる存在になりました。同じ考え方を、ビジネスの運営にも持ち込めるのではないか——それが Living Mart の出発点です。 Living Mart とは 人間が一切指示しなくても、AI だけでお店を回し続ける — それが Living Mart です。 6 体の AI エージェント(CEO・オペレーション・PR・コンシェルジュ・サイネージ・ベンダー)が、商品の仕入れから値付け、サイト運営、接客、広告まで、すべてを自分たちで話し合い、自分たちで決めて動かし続けます。 マルチエージェント — 役割を分担する Living Mart では、人間の会社と同じように 役割を分担 させています。経営方針を決める CEO、在庫と価格を管理する現場オペレーション、サイトと広告を作る PR、来場者に応対するコンシェルジュ……。エージェントたちは Slack のようなチャットでやりとりし、「これ発注しておいて」「了解、在庫はこうします」と会話しながら連携します。 さらに、商品を納める Vendor(サプライヤー)は 別会社(別テナント) として動いており、企業をまたいだ取引まで再現しています。 ハーネス — 「お願い」ではなく「仕組み」で動かす 最大のポイントは、AI を プロンプト(お願い)ではなく、構造(仕組み)で制約している ことです。 たとえば「赤字で売らないで」とプロンプトで頼んでも、AI は数日で忘れます。そこで Living Mart では、注文・在庫・会計を扱う ERP(基幹システム) をエージェントの後ろに置き、「原価割れの価格は受け付けない」「在庫はマイナスにできない」といったビジネスルールを システム側で強制 しています。AI がうっかり安売りしようとしても、ERP が「エラー」として突き返す。だから AI は忘れようがありません。 これは、コーディングエージェントをテストや型チェックで囲む「ハーネスエンジニアリング」を、そのまま ビジネスの世界に持ち込んだ 発想です。 私たちの賭け — Bitter Lesson に従う Living Mart の設計には、ひとつの「賭け」があります。それは AI 研究で知られる 「The Bitter Lesson(苦い教訓)」 に従う、という選択です。 画像認識でも囲碁でも、人間が手で作り込んだ知識よりも、計算(スケール)に賭けた汎用的な手法が最終的に勝つ——これは AI の歴史で繰り返し起きてきたパターンです。 「私たちが欲しいのは、私たちが発見したことを“内蔵”した AI ではなく、私たちのように“自ら発見できる” AI だ」 — Rich Sutton『The Bitter Lesson』(2019) そこで私たちはこう考えました。 自律的に動く AI のスケールが進むほど、巧妙なプロンプトや細かく作り込んだ手続きは、むしろ要らなくなっていくのではないか 。だから、そこには意図的に労力をかけませんでした。代わりに投資したのは、モデルが賢くなるほど効いてくる「 壊れない箱 」です。 あえて作り込まなかったもの 代わりに投資したもの(=「壊れない箱」) 在庫しきい値(「10 個を切ったら発注」)、手順書、ハードコードした判断ロジック、細かいプロンプトチューニング 高可用で自己回復するインフラ、AI が破れないビジネスルール、エージェントに合ったシンプルなツール群 箱の中で「何を考え、どう動くか」は、すべて Claude に委ねています。役割分担すら固定せず、エージェント同士の合意で決まります。 モデルの自律性に賭け、人間は「壊れない箱」だけを用意する ——それが私たちの設計判断です。 会場で体験できること AI が経営するお店で実際にお買い物 来場者の皆さまには、 スマホからリアルタイムに動いている EC サイトでお買い物 をしていただけます。 「All Goods」— AI エージェントが企画・撮影・値付けした商品が並ぶ商品一覧ページ。カテゴリ・価格・在庫表示まですべて AI が決定し、PR エージェントがこのページ自体を編集しています 会場モニターに映るサイネージ — AI が在庫・売上を見て自律的にコンテンツを切り替え QR コードでアクセス — ブースに掲示された QR コードからスマホで EC サイトへ 商品を選んで購入 — AI エージェントが企画・値付けした商品が並んでいます 抽選に当選すると… 当選すると AI デザインのオリジナルステッカーをプレゼント 店頭に並ぶステッカーは、 Vendor Agent が Amazon Bedrock の画像生成モデル(Stability AI)でデザインしたもの です。来場者は気に入った商品を選んで購入し、 抽選に当選すると、その場で印刷したオリジナルステッカーをお渡し します。 AI が企画・デザイン・値付けした商品を、その場でシールにしてお持ち帰りいただけます。 動いている様子を、リアルタイムで覗けます Living Mart は Summit 当日だけの展示ではありません。 今もエージェントたちがリアルタイムで経営判断を行い、お店を動かし続けています 。 Mission Control — 6 体のエージェントの稼働状況をリアルタイムで監視 ダッシュボードでは各エージェントが: 今何を考えているか 直近に使ったツール トークン消費量・イベント数 が一目で確認できます。 #general チャンネル — エージェント同士が Slack のようにメッセージを交換して連携 エージェントたちは人間の Slack のようなチャットで連携し、CEO の方針決定から Ops の発注実行まで、すべてメッセージングで協調しています。 裏側の仕組み 「AI が止まらず動き続ける」と言っても、裏側はシンプルな AWS のマネージドサービスの組み合わせでできています。代表的な 3 つの工夫をご紹介します。 止まらない常駐エージェント — 各エージェントは AWS Step Functions と Amazon ECS(AWS Fargate)で、約 10 秒ごとに「自分自身を再起動する」永続ループとして動いています。誰かに呼ばれなくても、自ら動き続けます。 忘れない記憶 — コンテナは使い捨てですが、Amazon S3 をファイルシステムとしてマウントすることで、エージェントの記憶(役割定義・学び・スキル)をファイルとして永続化。セッションをまたいで「経験」を積み重ねていきます。 暴走させないハーネス — 注文・在庫・会計を扱う ERP の API(Amazon API Gateway + AWS Lambda)と Amazon Aurora Serverless v2(PostgreSQL)の制約 として、ビジネスルールを強制しています。「在庫はマイナスにできない」「原価割れの価格は受け付けない」といったルールに違反する操作は、システム側でエラーとして突き返される——AI が破れない決定論的なガードレールです。 エージェントの思考には Amazon Bedrock 上の Claude を、ステッカーのデザイン生成には Amazon Bedrock の画像生成モデルを利用しています。 AWS Summit Japan 2026 でお会いしましょう 項目 詳細 イベント名 AWS Summit Japan 2026 日程 2026 年 6 月 25 日(水)〜 26 日(木) 場所 幕張メッセ(AWS Builders’ Fair) ブース A080 デモ名 Living Mart — AI エージェントが経営するお店 来場特典: AI が経営するお店で実際にお買い物体験 抽選で AI 生成オリジナルステッカーをプレゼント ぜひブース A080 にお立ち寄りください。AI エージェントたちと一緒にお待ちしています! 著者について 原田 裕平 (Yuhei Harada) アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト。AWS では主にヘルスケア・ライフサイエンス業界のお客様を支援しているソリューションアーキテクトです。 鈴木 大樹 (Daiki Suzuki) アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト。データベース領域を得意としており、主に toC 向けのサービスを行っているお客様を支援しています。 西亀 真之 (Saneyuki Nishigame) アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト。好きな領域は IoT とロボット。趣味はボルダリングで、オフィスにあるボルダリングウォールにトライしています。
こんにちは。AWS プロフェッショナルサービスの Spatial Computing (空間コンピューティング) 領域の担当チームです。普段主に企業様向けのゲーム、シミュレーション、トレーニング等の用途で利用する 3D 空間の AWS 上への導入・企画支援を行っています。 AWS Summit Japan 2026 の AWS Village にて展示ブースを出展予定です。本ブログではそちらの展示内容をご紹介します。 AWS Summit Japan 2026 登録はこちら ブース A160:SDMA で繋ぐ現実世界とAIシミュレーション Physical AIを支える3Dアセット管理基盤を体験 SDMA (Spatial Data Management on AWS) から取得した 3D パーツで障害物コースを自動生成し、仮想ロボットが AI で走り方を学ぶ様子をリアルタイムで体験できます。大量のロボットが同時に試行錯誤する学習の様子や、学習済み AI の自律走行の体験など、シミュレーションからロボット制御へつなぐ AI 開発の流れを体感いただけます。 こんな方におすすめ 来場者像 ブースで得られること ロボットエンジニア   ロボットモデルの学習向けシミュレーション環境の効率的な構築方法 デジタルツイン推進担当   デジタルツイン環境の構築と AI シミュレーションへの活用例 展示内容 以下の 2 つの AI ロボットデバイスを題材に、仮想空間上でのデモをご紹介します。 自律走行車両 自律飛行ドローン 各デバイスは仮想空間上に構築されたシミュレーション環境で強化学習が行われています。その仕組みについて説明しながら、Spatial Data Management on AWS (SDMA) を活用したシミュレーション環境の効率的な構築方法についてご紹介します。 補足 : Spatial Data Management on AWS (SDMA) とは Spatial Data Management on AWS (SDMA) は、2025 年 12 月にリリースされた、3D アセットなどの空間データ (Spatial Data) 管理基盤を構成するための AWS ソリューションです。OBJ、GLB、USD、PLY といった空間を表現する多様なフォーマットのデータを AWS のベストプラクティス構成で一元管理でき、AWS サービスとシームレスに連携したパイプライン実行が可能です。 下の図が SDMA のアーキテクチャ図です。公式サイトで提供されている CloudFormation ベースのテンプレートから AWS サービス群をデプロイできます。他の AWS サービスとの違いとして、専用のデスクトップアプリケーションが用意されており、PC から簡単な操作でAWS 上に構成されたデータ管理基盤にアクセス可能です。 デモ 1. 自律走行車両 概要 障害物が散在する不整地環境を、AI が自律的にゴールまで走行するデモです。Aalborg 大学が開発したオープンソースの強化学習フレームワーク  RLRoverLab をベースに構築しています。 強化学習の仕組み 車両は強化学習により、障害物を避けながらゴールに到達するポリシー(状況に応じた自律的な行動の決定ルール)を獲得しています。NVIDIA の Isaac Sim を活用し、報酬を設定した上でパラメータを変化させながら、数百の車両が同時並列で強化学習を行います。 学習に関係する要素 説明 観測空間   車両周囲の地形の凹凸(LiDAR スキャン)、ゴールまでの方向と距離 行動空間   車両の側面についている 6 つの車輪の操舵角および角速度 報酬設計   ゴールに近づくほど高評価、到達でボーナス(加点)、障害物に衝突するとペナルティ(減点) シミュレーション環境の構成 車両が走行するシミュレーション環境は、 地面 と  障害物 の 2 つの要素で構成されています。地面は起伏のある 3D 地形、障害物は 3D モデルで作成された岩で、地面に無数に配置されています。 SDMA によるシミュレーション環境の自動生成 本デモでは、地面と障害物の組み合わせを変化させ、別のパターンのシミュレーション環境を構築します。地面と障害物に対応する画像から 3D データを生成するパイプラインを構築し、SDMA 経由で実行させる例をご紹介します。 SDMA のデスクトップアプリを使用し、地面と障害物に対応する画像をそれぞれ SDMA にアップロードします。 すると、事前定義した AWS Step Functions のワークフローが自動実行されます。 地面の画像から 3D Gaussian Splatting(写真や動画から高精細な 3D 空間を構築する技術 / 点群データで構成され、3次元ガウシアン分布で広がりのあるデータを持つ)形式で 3D 地形点群データを生成する(Image to 3DGS API を利用 – 例:Marble) 障害物の画像から 3D メッシュモデルを生成する(Image to 3D API を利用 – 例:Meshy AI) 生成した 3D 地形点群データから物理判定用のコリジョンメッシュ(車両が重力下の地面を走行し凹凸を認識するために必要)を生成する  3D 地形点群データとコリジョンメッシュを重ね、その表面に障害物の 3D メッシュモデルをランダムに配置し、シーンデータとして合成(USD 形式)した上で、 SDMA に登録する その後、EC2 インスタンス上から SDMA を経由して生成されたシーンデータがダウンロードされ利用されます。 新しいシミュレーション環境の利用 生成した新しいシミュレーション環境上で、学習済みモデルが自律走行する様子を確認できます。地形と障害物が異なる環境でどのように走行するかを見ることで、汎化性能(学習時と異なる環境でも適切に動作する能力)を評価できます。必要に応じて、そのシミュレーション環境で追加学習を行うことも可能です。 デモ 2. 自律飛行ドローン 概要 複数のゲート(通過ポイント)で構成されたコースを、AI ドローンが飛行しながらゲートを順番に通過するレースデモです。オープンソースの  isaac_drone_racer  をベースに構築しています。来場者はコントローラーでドローンを操縦し、AI とレースで対決できます。 強化学習の仕組み ドローンは強化学習により、ゲートを順番に通過しながらコースを完走するポリシー(状況に応じた行動の決定ルール)を獲得しています。最大 4096 機が並列にシミュレーションされ、大量の試行錯誤を短時間で行うことで高速に学習が進みます。 学習に関係する要素 説明 観測空間   機体の速度・角速度・姿勢、次ゲートへの相対位置・方向 行動空間   4 つのプロペラを駆動する各ローターの角速度(=推力) 報酬設計   ゲート通過で加点、ゲートへの接近・後退で進捗評価、衝突・コース逸脱で減点 シミュレーション環境の構成 ドローンが飛行するシミュレーション環境は、 ゲート と 障害物 の 2 つの要素で構成されます。ゲートはコースの経路を定義する通過ポイントで、障害物はゲート間の飛行経路上に配置されることで回避行動を要求します。 SDMA による障害物の配置 障害物の 3D モデルは SDMA で管理されています。SDMA のデスクトップアプリから障害物に対応した 3D モデル(GLB 形式)をアップロードすると、AWS Lambda によるフォーマット変換(GLB → USD:NVIDIA Isaac Sim で利用される3Dフォーマット)が自動実行されます。 変換された 3D モデルは、ブラウザ上の Web UI から SDMA 経由でダウンロードできるようになり、シミュレーション環境上での障害物の種類や配置を自由にカスタマイズできるようになります。 新しいシミュレーション環境の利用 カスタマイズした新しいシミュレーション環境上で、学習済みのモデルでドローンがどのように飛行するかを確認できます。ゲート配置や障害物の有無の影響を見ながら、AI の汎化性能を評価することができます。必要に応じて、そのコースで追加学習を行うことも可能です。 システムアーキテクチャ 利用している AWS サービス・ソリューション Amazon EC2 — GPU計算基盤 Spatial Data Management on AWS — 3Dアセットの管理・検索・配信基盤ソリューション Amazon API Gateway + AWS Lambda — バックエンド API Amazon S3 — 3D アセットデータストア Amazon DynamoDB — メタデータストア Amazon EventBridge — 3D アセット操作イベント通知 AWS Step Functions — ワークフローオーケストレーション Amazon Cognito — 認証・認可 その他技術要素 Amazon DCV — EC2 上でのシミュレーションツールのリモートデスクトップ配信 NVIDIA Isaac Sim + NVIDIA Isaac Lab — 物理シミュレーション・強化学習の実行環境 活用ユースケース 本デモで紹介した 3D のシミュレーション環境の構築パイプラインは、以下のようなユースケースでの活用が考えられます。 分野 ユースケース 物流・倉庫   AGV/AMR におけるパスプランニング、レイアウト変更時の再学習 建設・インフラ   ドローン点検の飛行経路最適化、現場 3D スキャンデータの活用 製造   工場フロアでの自律搬送ロボット導入シミュレーション エンターテインメント・スポーツ   カメラドローン自律飛行、スタジアム運営シミュレーション ブース情報 ブース ID   A160 エリア   AWS Village(AWS Expo エリア内) 日程   2026 年 6 月 25 日 (木)・26 日 (金) 会場   幕張メッセ まとめ AWS Summit Japan 2026 の AWS Village( ブース A160 )にて、2026年6月25日(水)・26日(木)の両日展示します。 デモを通して AI シミュレーションの概要をご覧いただきながら、AWS を活用したシミュレーション環境構築をお気軽にお立ち寄りください。 AWS Summit Japan 2026 公式サイト
みなさんこんにちは。ソリューションアーキテクトの山田です。2026 年 6 月 25 日(木)、26 日(金)の 2 日間に渡って開催される AWS Summit Japan 2026 では今年も製造業に関する展示を数多く行なわれています。製造業に関連する全体的な展示やセッションに関しては こちらのブログ に全体がまとめられておりますので参照ください。 本ブログではその中でも製品設計開発に関するデモ展示について紹介します。 コンセプト : 生成 AI 時代の製品設計開発 CAE 解析や CAD 操作、過去ナレッジの活用など、製品設計開発の現場にはエンジニアの専門性に強く依存する業務が数多く存在します。本展示では、フィジカル AI 時代の到来を見据え、エンジニアの設計開発を加速する 2 つの切り口で実機デモをご覧いただきます。 1. Engineering Development Hub( EDH )による PC / Workstation / HPC 環境の俊敏な立ち上げ 2. 設計開発の現場ですぐに実践できる生成 AI ユースケース 「フィジカル AI 時代の研究開発をどう加速するか」を、現場のエンジニア目線で体感いただける展示です。 1. Engineering Development Hub( EDH ) EDH は 専用 Web ポータルによって設計開発に従事する方が使用する PC / Workstation / HPC 環境をクラウド上にセルフサービスで立ち上げることができるシステムです。3D モデリング、大規模シミュレーション、 CAE 解析、 GPU を用いたモデル作成に至るまで、フィジカル AI 時代の研究開発においてはこれまで以上に多彩なツールチェーンと、それを効率よく実行する多種多様なコンピューティング環境が必要となります。EDH はクラウドの柔軟性を活かした多様な要件に対応できる仮想ワークステーション環境とスケーラブルな HPC 基盤を 1 つのシステムとして提供。専用の Web ポータルによりエンジニアは直感的に必要なデスクトップ環境を取り出し、大規模に CPU/GPU を使用した分散学習やシミュレーションを実行することができます。 EDH は以前 Scale-Out Computing on AWS(SOCA)として知られていたソリューションの後継で、2026 年 4 月にリブランドされ、新たにリリースされました。SOCAの派生としては RES (Research and Engineering Studio on AWS) もリリースされておりますが、RESはVDIに特化したソリューションです。VDIに加えてHPCの機能も統合して利用したい場合は今回ご紹介するEDHの利用をご検討ください。 Engineering and Development Hub (EDH) アーキテクチャ図 EDH の主な特徴 仮想デスクトップによるインタラクティブ処理 Amazon DCV を用いた高性能なリモートデスクトップ環境で、CAD ソフトウェアの 3D 描画もスムーズに操作できます。Windows と Linux の両方に対応し、GPU インスタンスを選択することで、>オフィスにいなくてもワークステーション級の作業環境にアクセスできます。 HPC を使った大規模バッチ処理 Slurm、OpenPBS、IBM LSF といった主要なジョブスケジューラに対応し、ジョブ投入に応じて計算ノードが自動的にスケールアウトします。EFA(Elastic Fabric Adapter)による低遅延ネットワークで、大規模並列処理のスケーリングも問題ありません。処理が完了すればノードは自動的に終了し、課金が停止します。  専用 Web インタフェースによる直感的な利用 EDH には専用の Web ポータルが付属しており、以下のような操作をブラウザから直感的に行えます。コマンドラインに不慣れなエンジニアでも、すぐに使い始められるのが特徴です。 仮想デスクトップの起動・停止 HPC ジョブの投入・状態監視 ファイルの管理とアップロード 利用状況の可視化とコスト確認 Amazon EC2 の高い汎用性 EDH の計算リソースは Amazon EC2 上に展開されるため、実行するアプリケーションや処理の規模に合わせて最適なスペックのインスタンスを選択できます。 CPU:x86(Intel / AMD)、Arm(Graviton) GPU:NVIDIA L4、A10G、A100、H100 etc. メモリ:数 GB から数 TB まで OS:Amazon Linux、RHEL、Ubuntu、Windows Server etc. EDH の仮想デスクトップ管理画面と HPC ジョブ投入画面 EDH のユースケース EDH は以下のような設計開発ワークロードで活用することができます。もちろんこれら以外にも仮想デスクトップや HPC 環境を必要とするワークロード全般に適用可能であり、汎用性の高いソリューションです。 CAD:3D モデリング、設計・製図 CAE:構造解析、流体解析、熱解析 材料シミュレーション:分子動力学、第一原理計算 EDA:半導体設計、論理合成、検証 フィジカル AI:ロボティクス開発、強化学習 EDH のリソース他 Engineering Development Hub(EDH)はオープンソースで公開されているため、すぐに試すことができます。 ソースコード: github.com/awslabs/engineering-development-hub ドキュメント: awslabs.github.io/engineering-development-hub-documentation AWS Summit Japan 2026 会場内の AWS for Industries Zone ブース (ブース ID:A021) で、EDH の実環境をご覧いただけます。ぜひ実際のデモをご覧ください。 2. 設計開発の現場ですぐに実践できる生成 AI ユースケース 自然言語による CAD/CAE 操作のアシストや、時間のかかるシミュレーションを AI で高速化するサロゲートモデルなど、明日からでも取り入れられる「使える AI」の活用例をご紹介します。 その場でご覧いただける動作デモに加え、後日体験できるワークショップもご用意しているので、AI が設計業務をどう変えるのかをじっくり実感いただけます。 生成 AI × CAD + CAE + NVIDIA Isaac による フィジカル AI シミュレーション 本デモでは、AWS の AI コーディングアシスタント Kiro に 自然言語で指示するだけ で、1 台の産業用 6 軸ロボットアームを題材に、 設計 → CAD 編集 → 強度解析(CAE) → ロボットの動作学習 までを一気通貫で実行する様子をご覧いただけます。 フィジカル AI 時代に求められる「設計してから、実際に動かして学習させるまで」の流れを、コードを 1 行も書かずに体感できる展示です。 設計開発の現場に多く存在する、専用ソフトの習熟や、複雑な製図・シミュレーションといった時間を要する業務を効率化する効果が期待できます。 注記:Kiro CLI の基盤モデルは検証を進めた期間中にアップデートが重なったため、工程ごとに Claude Opus 4.6 / 4.7 / 4.8 を使用しています(どの工程でどのバージョンを使ったかは、後述の詳細記事シリーズにそれぞれ明記しています)。 本デモ動画の撮影時点では Claude Opus 4.8 を使用しました。モデルのバージョンによって、生成されるコードの品質や挙動は変わる場合があります。 デモの流れ — 1 台のロボットアームを 4 ステップで設計 同じ 1 つの形状データを引き継ぎながら、すべての工程を Kiro への日本語の指示だけで進めます。 AWS Summit Japan 2026 展示動画(YouTube : 3分58秒) 1. 3D 形状をつくる 寸法を言葉で伝えるだけで、ロボットアームの 3D モデルを生成します。CAD ソフトを使わず Python だけで STL ファイル(※3D 形状のデータを見るのに向いた形式)を作り、関節角度から先端位置を求める順運動学(※各関節を何度曲げると腕の先端がどこに来るかを求めるロボット設計の基本計算)の検算まで Kiro が自動で実施。このモデリングを実時間 4 分 28 秒で完了しました。 技術詳細解説ブログ Kiro で AI 支援の設計開発 -自然言語指示だけで 3D モデリングや流体シミュレーション実行- プロンプト例: 産業用6軸多関節ロボットアームの3Dモデルを生成する generate_robot_arm.py という Pythonスクリプトを構築してください。 numpy-stl、numpy、matplotlib のみを使用してください。 ■ ロボットアーム構成(ベースから先端へ): 1. ベース(J1軸: 旋回) — 固定台座: 円筒 直径300mm 高さ50mm、旋回部: 円筒 直径250mm 高さ100mm 2. ショルダー(J2軸: 前後傾動) — 関節ハウジング: 直径200mm 高さ150mm 3. 上腕(リンク1) — 長さ500mm、断面: 150mm x 120mm 4. エルボー(J3軸: 上下傾動) — 関節ハウジング: 直径160mm 高さ120mm 5. 前腕(リンク2) — 長さ450mm、断面: 120mm x 100mm 6. 手首(J4/J5/J6軸) — 3段の円筒 7. エンドエフェクタ(ツールフランジ) — 直径63mm(ISO 9409-1準拠)、ボルト穴6個 ■ 姿勢パラメータ: - J1〜J6の関節角度を変数化し、順運動学(FK)で各リンクの位置・姿勢を計算 Kiro が 3D モデリング用のコードを作成し実行している様子 完成したロボットアーム 3D モデル STL ファイル 2. 形を編集する CAD で編集できる STEP ファイル(※3D 形状の CAD ソフトで編集するのに向いた形式)に作り直し、オープンソースの 3D CAD ソフト FreeCAD で、角の丸め(フィレット)や穴あけといった加工を追加します。GUI 操作だけでなく、Kiro が FreeCAD Python API を用いてヘッドレス(GUI なし、コマンドラインとスクリプトだけ)でも編集を実行できることを示します。 技術詳細解説ブログ CADソフトの操作を自然言語指示でAIに任せる — Kiro で STEP 生成から FreeCAD 編集まで Kiro が作成したロボットアーム図面をベースに、FreeCAD で人間が編集操作を行っている様子 Kiro が自然言語指示によりヘッドレスでロボットアーム図面編集操作を行った結果(編集前後比較) 3. 強度を確かめる 完成した形に荷重をかけ、応力やたわみを計算する構造解析(CAE)を実行します。今回は材料をアルミ合金 6061-T6、ベース底面を固定し、先端のフランジに 100 N(約 10 kg 相当)の下向き荷重をかける条件で解析しました。部品の結合からメッシュ分割、材料・拘束・荷重の設定、ソルバー実行、結果の可視化までを Kiro が担当し、最大応力(フォン・ミーゼス応力)約 0.13 MPa・最大変位は 5.76 μm という結果を得ています。途中でエラーが出れば自ら原因を切り分け、手法を見直しながら解析を完走させます。 技術詳細解説ブログ AI が設計して、AI が強度検証する — Kiro × FreeCAD FEM でロボットアームCAE構造解析 Kiro が FreeCAD で CAE 実行した結果を人間が GUI で確認している様子 4. 動かして学ばせる 設計したアームに吸盤を付け、NVIDIA Isaac Sim / Isaac Lab 上で「キューブを持ち上げて運ぶ」動作を強化学習(※ロボットに動きを試行錯誤させ、うまくいくほど報酬を与えて自分で上達させる AI の学習方法)させます。4096 体のロボットを 1 枚の GPU で同時に動かし、学習開始直後はほぼ 0% だった成功率を、学習後にはピックアップ(持ち上げ)成功率 91.5%、目標位置への運搬・保持も 77.9% まで引き上げました。 技術詳細解説ブログ AI で設計した自作ロボット、NVIDIA Isaac で 4096 並列強化学習させた結果 4096 体のロボットを NVIDIA Isaac Sim / Isaac Lab 上でキューブピックアップ強化学習している様子 AIを活用した設計開発のポイント つくりたいものを、言葉にするだけ 専用ソフトの習熟や環境構築も AI が肩代わり。設計の参入障壁が下がる。 時間がかかる作業が、速く・再現性高く 日々の製図も解析も手間を大幅削減。初期検討を素早く回せる。 未知の領域にも、踏み込める 強化学習のような未経験分野も AI が調べて試す。学びながら新スキルが身につく。 仕上げと判断は、人 本番品質には専門家の判断と検証が要る。AI は作業役、決めるのは人。 著者について 山田 航司 (Koji Yamada) AWS のソリューションアーキテクトとして、製造業のお客様を中心にクラウド活用の支援を行っています。製造業における業務課題解決や新規ビジネスにおけるクラウド活用の可能性をお客様と一緒に探求しています。

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