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こんにちは! KINTOテクノロジーズ(以下、KTC)のAIファーストグループで、生成AIの活用推進を担当している和田です。 先日、JDLA(日本ディープラーニング協会)の資格合格者コミュニティ「CDLE」の業種別勉強会にお招きいただき、「個人の発見を、組織の知恵に」というテーマで登壇してきました。本記事は、その内容を再構成したものです。 https://jdla.connpass.com/event/393970/ 1. はじめに KTCはトヨタ自動車のグループ会社で、クルマのサブスク「KINTO」をテックの力で支える内製開発の会社です。 2023年の春、GPT-4とAPI版が出てきたタイミングで内製の生成AIチャットを立ち上げて以来、3年以上にわたって生成AIの活用推進を続けてきました。最近ではKTC/KINTOで培った技術力を、トヨタグループの各社へとアドバイジングや開発支援を通じた提供もしています。 その立場から国内の状況を眺めると、対照的な数字があります。生成AIを「導入済み」と回答した国内企業は57.7%^[ NRI「IT活用実態調査(2025年)」 ]。導入の壁は、もうほとんど越えられています。一方で、AIが利益(EBIT)に5%以上効いていて、かつ大きな価値を生んでいると答えられる企業は6%^[ McKinsey "The State of AI in 2025" ]。導入はしたが、成果を出していると言い切れる会社はまだ一握りです。 おそらくこの記事を読んでいるような、新しい技術への感度が高い方は、すでに仕事が大きく変わっているはずです。メールの下書き、議事録の要約、コーディング支援。少なくとも、これらを全てカタカタ手で打っている人は、かなり減っているのではないでしょうか。しかし問題はその先です。あなたの「周りの人」はどうでしょうか。個人としては価値が出ている。でも、組織としてはどうでしょう。今回のテーマは、個人の成果と組織の成果の間にある、この溝についてです。 2. キャズムのどこに手を打つか ― 今日は「B」の話 本題に入る前に、組織へ新しいものを広げるときのイメージを共有させてください。何度も見たであろう、キャズム理論^[ジェフリー・ムーアが提唱した、新技術の普及プロセスを説明する理論。利用者をイノベーター/アーリーアダプター/アーリーマジョリティなどの層に分け、層の間にある溝(キャズム)を越えることの難しさを論じたものです。]の図です。 新しい技術や文化を組織へ広げるときの手法。A・B・Cのどこに手を打つか これは生成AIの話だから持ち出した図ではありません。DXのときも、RPAのときも、新しい技術や文化を大きな組織に入れる場面では、いつもこの概念を使ってきました。 図にはA・B・Cという3つの矢印を描いています。それぞれが別の打ち手です。みなさんの組織は、いまどの矢印に手を打っているでしょうか。そしてご自身はどの層にいて、どの矢印ならコミットできそうでしょうか。そんなことを考えながら見てもらえればと思います。 A:イノベーターに自由を渡す。 新しいものは、放っておいても勝手に調べ、勝手に始め、勝手に実験してしまう人たちがいます。彼らにできる限り自由な環境を渡す。ただ自由なだけでなく、ガードレールを敷いて「ここでなら安心して遊んでいい」という空間にするのがAです。 B:キャズムに橋をかける。 イノベーターやアーリーアダプターが見つけた価値に、アーリーマジョリティ以降の人たちが追従できるよう、崖になっているキャズムへ橋をかける取り組みです。 C:後ろ向きな層を動かす。 配ってもなかなか触ってくれない、興味を持ってもらいにくい層に、どう使ってもらうか。ここに悩んでいる会社さんは、きっと多いはずです。 今日お話しするのは、このうちBが中心です。Bをやるには、その手前でAも回っている必要があるのですが、本記事では「見つかった価値を、キャズムの向こう側へどう渡すか」に軸足を置きます。 3. 価値創出の両輪 ― 探索と実装 組織で価値を出すには、2つの循環が要る、と私は考えています。 1つは探索。イノベーターやアーリーアダプターにあたる人たちが自由に価値を探せる環境を用意し、「この使い方は効く」という発見を生んでもらうフェーズです。もう1つは実装。見つかった0→1の発見を、組織に固定して10にも100にもするフェーズです。藪まみれの中をしらみつぶしに歩いてゴールを見つけるのが探索だとすれば、見つかった道を舗装して誰でも歩けるようにするのが実装です。 探索だけでは、個人の発見で止まります。IRレポートに載るようなインパクトは、個人技からは出ません。逆に、発見のない組織でいきなり実装(仕組み化)から入ると、舗装すべき道がどこにあるのか分からないまま工事が始まります。これらは両輪であってどちらが欠けても前進することはできません。 ここからは、KTCがこの両輪をどう回しているか、探索→実装の順でお話しします。 4. 探索:トークンマキシング ― 自転車の乗り方は、本では学べない 探索の打ち手の一つとして「トークンマキシング(Tokenmaxxing)」^[あるものを極限まで盛るというネットスラング "-maxxing" を、トークン消費にくっつけた言葉です。]を紹介します。社内のAIのトークン消費を、とにかく最大化する。価値創出はいったん脇に置いて、まず使う量を増やす施策群のことです。 なぜ価値創出にこだわると言っておきながら、消費量に注目するのでしょう。生成AIの正しい使い方は、机上で学べないからです。私はよく自転車の乗り方に例えるのですが、自転車の乗り方を本で学んだ人は、おそらくいません。補助輪をつけて、サポーターをつけて、河原で何度も転んで、身体で覚えたはずです。「AIにこう頼むとうまくいく」「これはAIには苦手だ」という感覚も同じで、試行錯誤からしか生まれません。だから、まずたくさん漕いで、たくさん転ぶことで、AIと効率よく協業する感覚が磨かれます。 トークンマキシングを構成する施策は、「消費を増やす施策」と「消費量を観測する施策」で構成されます。 消費を増やす施策の例としては「手作業コーディング禁止」があります。一定期間、人手でのコーディングを禁止して実装はAIエージェントに任せ、人間は指示と検証に集中する、というものです。コーディング界隈で広まった施策ですが、「手作業での資料作成禁止」のように事務系へのアレンジも利きます。 私自身は資料作成へのこだわりが強く、今でもつい手作業で熱中してしまう時があるのですが、最初の1割は人間が作り、そこから7〜8割まではAIに持っていかせて、最後にまた、人間のこだわりを入れるようにしています。何度も失敗しながら最近ようやくちょうど良いAIとの協業感覚を掴めてきています。 KINTOテクノロジーズで実施した手作業コーディングを禁止する施策「Vibe Coding Week」については、Findyさんによるインタビューブログでも取り上げていただきました。 https://jp.findy-team.io/blog/ai-casestudy/kintotechnologies_vibecodingweek/ もう1つの要素が観測です。増やしっぱなしではコストが爆発するので、誰が・どれだけ使っているかを可視化する。この文脈で有名になったのがMetaの「Claudeonomics」で、8.5万人超の従業員がトークン消費量でランク付けされ、上位250名にはRPG風の称号が与えられていたそうです^[ Fortune「A Meta employee created a dashboard so coworkers can compete to be the company's No. 1 AI token user」(2026/04/09) ]。KTCでも、Claude Codeのメトリクスを各ユーザーから収集し、個人と組織それぞれの使い方を分析する仕組みを動かしています。ツールは配ったけれどその後を見ていない、という組織は、まずここから始めるのを勧めます。 KTCで運用しているClaude Codeメトリクスのダッシュボード(数値はダミーデータ) 5. ただし、トークン消費はハック可能 ・・・ただしトークン消費量は、あくまで間接指標です。 たくさん使った≠価値が出た。実際、Metaの番付では、順位のためにAIを空回しして消費量を水増しする従業員が現れたという情報もあります。そりゃそうですよね。指標は必ずハックされます。入力量で成果を測るのは、印刷したページ数で文章の質を測るようなものなので、報酬や人事評価に直接ひもづけるのは慎重であるべきです。トークンマキシングは、短期的に組織のモメンタムを作る旗印としては効きますが、ずっと続けるものではありません。習熟が進んで消費が落ち着いてくるところまでがセットです。 消費量はあくまで間接指標。指標は必ずハックされる そしてもう1つ、この打ち手には賞味期限があります。これまでのコーディングエージェントの多くは月額定額、いわば携帯のパケ放題のような契約でした。「とにかく使え」が安心して言えたのは、この建て付けがあったからです。ところが課金体系は従量制へ動いています。 GitHub Copilotは2026年6月1日から使用量ベースの課金へ移行します し、他のエージェントも続々と後を追っています。 Uberが2026年のAI予算をわずか4か月で使い果たし、コーディングエージェントの利用に従業員一人当たりの月額上限を設けた という報道も出始めました。 従量課金の世界で大事になるのは、トークンマネジメントや最適化、つまり妥当なコストで成果を増やす考え方です。難しいのは、マキシングを経験しないまま従量課金に入ってしまった組織で、転んだことのないまま管理から始めることになります。もしいま手元に使い放題のプランがあるなら、それは最後のモラトリアムかもしれません。プランが生きているうちに、探索をやり切ることをお勧めします。 定額制(パケ放題)から従量課金へ。「とにかく使え」が言えた時代は終わりつつある ここまでが探索の話。次は、見つけた発見をどう組織に固定するかです。 6. 実装:発見をAgent Skillに固める ― 発見した本人に、文書化まで背負わせない どの組織にも、キャズムでいうイノベーターやアーリーアダプターにあたる人たちがいます。新しいものを勝手に調べ、勝手に試し、「この頼み方ならうまくいく」という良い使い方を見つけてくる人たちです。問題は、その発見が本人の中にしかないことです。 そこでKTCで今増えているのが、 Agent Skill です。Agent Skillとは、AIエージェントに特定タスクの「やり方」を教える再利用可能な手順書のことで、いつ何をするかを書いた指示書(SKILL.md)、手順とOK/NGの線引き、テンプレートやスクリプトといった参照ファイルを1つのパッケージにまとめたものです。属人的だったカンコツを取り出して、誰でも再現できる形に固める。暗黙知やワザを、Skillという形で全員に配ることができます。 Agent Skillは指示書・手順/判断基準・参照ファイルの3点セット KTCの例でいうと、トヨタグループには「物と情報の流れ図(物情)」という業務の可視化手法があるのですが、このドラフトをAIに作らせるSkillを固めて、社内に配布しています。先行する人たちの発見を、お湯を注げば誰でも食べられるインスタント食品に加工して配る、というイメージです。 一方でこうした探索の担い手は、新しい使い方を探すこと自体は好きでも、それを手順書に書き起こすことには関心が薄かったりします。であれば、横串の推進組織が本人のところへ出向いて、「文書化はうちらが代わりにやります」と引き受けてしまうのはどうでしょうか。発見した本人に、文書化の手間まで負わせる必要はないかもしれません。 7. 運用と文化 ― 「手でプロンプトを打たない」という逆説 Skillは作っておしまいではなく、運用が必要です。誰でもSkillを探して使える場所(Plugin Market)を作る。命名ルールを決める・・・検索できないSkillは、存在しないのと同じだからです。ブランチ名や関数名に払っている気遣いを思い出してください。あれと同じ気遣いがSkillにも必要です。ただ、Skillの命名規則のベストプラクティスはまだ世の中に整備されていないので、会社ごとに独自で決めてしまうのが有効だと思います。それから、定期的なメンテナンス。数か月で前提が変わる領域なので、古いSkillは放置すれば負債になります。 Skill運用を支える4つの仕組み(Plugin Market・命名ルール・定期メンテ・対象発掘) そして、そのメンテナンスをどう回すか。ここが地味に大変なところなのですが、KTCではSkillの保守そのものをSkillにしてしまうことを試しています。いわば、Skillを点検・整備するためのSkill群です^[公開されているmizchiさんの「 waxa 」を参考にしています。]。役割を分けた、4つのモードがあります。 検証する:書いたばかりのSkillを、まっさらな別セッションに白紙で読ませ、「ここが伝わらない」という曖昧さや暗黙知を炙り出す。 棚卸しする:Skill群ぜんぶを複数の観点で健康診断し、どれから手を入れるべきかのリストを作る。迷ったら、まずここから。 命名を整える:名前とdescriptionだけを命名規則に合わせて直す。何をするSkillか一目で理解でき、検索で見つかる状態を保つための整備になる。 本文を直す:古いSkill名やモデル名、URLといった陳腐化した参照を、機械的に一括置換する。 コツは、各修正のポリシーきっちり分けて、1つのセッションに何もかもやらせないこと。さきほど「検索できないSkillは存在しないのと同じ」と書きましたが、その状態を保つ作業自体を、人間の根性ではなくSkillに肩代わりさせるわけです。運用とは、こういう地味な仕組みの積み重ねなのだと思います。 Skillの保守そのものをSkillにする。役割を分けた4モードで運用を回す(参考: mizchiさんのwaxa) 文化の面では、事例共有会や勉強会といった地道な取り組みを続けてください。「こんな効くSkill作ったぜ」を見せ合う場は、評価制度ではなく、つい誰かに見せたくなる気持ちで回り始めます。地味ですが、文化醸成はこういう積み重ねでしか進まないと思っています。 最後に1つ、逆説的な話を。個人の仕事を組織の仕事にする上で、プロンプトエンジニアリングのスキルが邪魔をすることがあります。個人が勘とコツでプロンプトを丁寧に調整し、エージェントをいい感じに動かすのは、良いようでいて横展開が非常にしにくい。プロンプト頼みの業務は、それ自体が属人化です。なのでKTCでは最近、組織の仕事にする場合は手でプロンプトを打つのをできるだけやめて、スラッシュコマンドやSkillの呼び出しだけで完結させることを推奨しています。上手に打てる人ほど、打たない。妙な話ですが、組織化とはそういうことだと考えています。 なお、ここまでの打ち手は、KTCがクラウド・AI領域で新しいことに踏み込みやすい立場にある、という前提と切り離せません。新しいことを試し、うまくいったものを少しずつ周囲へ広げていく——そんな意識で取り組んでいるので、キャズムでいう上位層に意識的に時間を寄せています。どの層にどれだけ時間をかけるかのポートフォリオは、自社の立ち位置や方針に従って決め、経営層と握っておくのが筋だと思います。 8. まとめ ― 個人の発見を、組織の知恵に 「個人の発見を、組織の知恵に」今回お伝えしたかったのは、結局この一行です。探索のフェーズでは、トークンマキシングでたくさん試して、転ぶことを恐れない。正しい使い方は、試行錯誤からしか生まれないからです。実装のフェーズでは、発見をAgent Skillのような形に固め、誰でも再現できるようにして配る。そして、仕組みと文化で回し続ける。 探索→実装→仕組み・文化。個人の発見を、組織の知恵に G検定やE資格を持っているような方は、すでに一本のスペシャリティがある状態です。AIは自力にレバレッジをかける道具なので、自力が10の人と100の人では、掛けた後の差がまるで違います。ご自身のドメイン知識と、資格を通じて学んだ知識と、生成AIやAIエージェントを掛け算して、まずはたくさん転ぶところから。そして、転んで見つけた発見を、ぜひ組織に配ってください。 ここまで読んでいただき、ありがとうございました! あなたや周囲の人の発見が、組織の知恵になっていくことを願っています。
はじめに 株式会社medibaの横断システム部のずーんです。 弊社では今までGitHub Copilotを社内のエンジニア向けに提供していましたが、エンジニア以外もClaude Codeなどを利用する機会が増えてきています。 GitHub Copilotはツールを配布するときに必要な監査ログの収集や認証周りなどが備わっていますが、利用に際しては今年6月の料金体系変更によって実質従量課金になったもののシート単位での契約が必要で利用量を問わずシートごとに月額費用が掛かってしまいます。 代替策としては普通にAmazon Bedrock経由で従量課金で利用することも考えられるわけです。しかし
こんにちは。 アプリケーションサービス本部、DevOps担当の兼安です。 本記事はMac 上で AI コーディングツールから GitHub を操作できる GitHub MCP Server を、 Docker コンテナ経由で Claude Code や Kiro CLI に接続する方法をまとめています。 本記事の検証環境 なぜ GitHub MCP Server を Docker コンテナで動かすのか Docker イメージでの実行が公式の推奨方法 GitHub Copilot の場合は Docker 不要 Mac におけるコンテナ動作基盤:Colima Docker Desktop を避ける…
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