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はじめに 本記事は、2026年3月10日に開催された Elastic{ON} Tokyo での発表「 『定型』を許さない製造業データへの挑戦 」の内容をもとにした連載の第2回です。 第1回:ビジュアル情報を活かす 第2回(本記事):分断されたデータを繋ぐ 第3回:止めずに進化させる 前回は、製造業の検索に「ビジュアル」が外せないこと、Elasticsearch の kNN 検索を使った類似図面検索について書きました。 今回は、次に立ちはだかる「データ規模と結合」の壁について掘り下げます。複数のデータソースを横断した検索を、どうやって高速に実現しているかという話です。 「探索」に必要なデータ横断 前回も触れた通り、私たちが実現したいのは「探索」です。たとえば調達部門が「より良い発注」を目指す場合、こういうプロセスを一気通貫で回したい。 発注予定の図面に対して、視覚的に似た過去の図面を検索する 見つかった図面に紐づく発注実績をシステム横断で確認する 集まった情報をもとに今回の発注額を適正化する この②「システム横断での実績確認」が、技術的にはかなり重い問題を含んでいます。 製造業データの「分断」 製造業の現場には、PLM、EDI、SCM、CRM といった業務ドメインごとのシステムが並んでいます。それぞれの業務には最適化されていますが、システム間でデータが分断されているのが常です。 この分断を解決するために ERP が導入されてきました。ただ、ERP はあくまで組織の「管理」が目的のシステムです。前回書いた「ビジュアルな情報をビジュアルなまま扱う」という発想にはなっていないので、ERP に実績データが集まっても、現場が判断の拠り所にする「モノの形」とは切り離されたまま。分断は形を変えて残り続けます。 CADDi Drawer は、こうしたバラバラのデータソースを統合し、一つの画面から横断的に探索できるようにするプロダクトです。 データ規模と「結合」の壁 日本の製造業は数十年、時には100年を超える歴史があり、蓄積されたデータは膨大です。図面だけで100万枚以上、受発注実績は1,000万レコード以上。仕様書やトラブル記録などの非定型な文書も含めるとさらに増えます。 これらを統合して扱うとき、RDB のようにテーブルを繋ぎ合わせる素朴な結合をやると、組み合わせは10兆件規模に達します。インデックスがなければ全件走査になるので、対話的な速度は到底出ません。 では、図面と実績をデータ種別ごとに別のインデックスに入れればいいかというと、それだけでは不十分です。片方のインデックスで検索した結果をもう片方と突き合わせる必要があり、突き合わせ側はインデックスが効かず全件走査に落ちるケースが出てきます。クエリの絞り込みが弱い場合や結合キーの値の種類が少なく多対多の組み合わせが膨らむ場合、この突き合わせのコストが支配的になって応答速度が崩れます。 この10兆通りの組み合わせを、検索エンジンが得意な形にどう落とし込むか。ここがアーキテクチャ上の大きな問題でした。 複数インデックス構造による解決 私たちがとったのは、複数のデータソースを統合したうえで、用途別のインデックス群を構築するアプローチです。 万能なインデックスは作れない 私たちも最初は「すべての要件を満たすインデックスをどう設計するか」と考えていましたが、うまくいきませんでした。 データソースごとにインデックスを分けると、前述の通りクエリ時の突き合わせで全件走査が走って遅いという課題があります。その一方で非正規化して複合インデックスにまとめれば検索は速くなりますが、あるデータソースの1レコードを変えただけで紐づく全ドキュメントに波及して大量更新が走る。検索を速くすると更新が重くなるし、その逆もまた然りで、一つのインデックスでは両立しません。 なので発想を変えて、万能なインデックスを作ろうとするのをやめました。代わりに要件を分解して、用途ごとに別のインデックスを持たせています。例えば、データソースごとにオンライン更新が走るインデックスと、データ鮮度には多少の遅延があるもののデータソースを横断して検索できるインデックスを分けて持つ、といった具合です。 動的なインデックス選択 ここで鍵になるのが、クエリ実行時の制御層です。ユーザーから投げられたクエリの内容をシステムが解析し、そのとき最も効率的なインデックスを自動で選択します。 単一データソース内の検索ならそのデータソースのインデックスを使い、複数データソースにまたがる検索なら横断用のインデックスを使う。こうした切り替えが裏側で動いています。 ユーザーから見ると、データがどこにあるか、どのインデックスが使われているかは一切見えません。透過的な検索体験を維持したまま、裏では用途に応じた最適化が走っている、という構成です。 類似検索 × フィルタリングの両立 データソース横断検索の難しさは、「類似検索」と「フィルタリング」を組み合わせたときに顕著になります。 そして現場では、この掛け合わせがないと使い物になりません。「この図面に似た形のもの」を探すだけでなく、「その中で、今取引のある会社に発注したことがあるものだけ」に瞬時に絞り込めなければ、実際の比較検討には使えないからです。 なぜ難しいのか 類似検索(kNN)はベクトル空間上の距離計算、フィルタリングは転置インデックスによる構造化データの絞り込みで、それぞれ背後のデータ構造もアルゴリズムも違います。素朴に組み合わせると、どちらかの速度が犠牲になります。 さらに、フィルタリング対象のデータが別のデータソースに由来する場合(発注実績は ERP、図面はファイルサーバーなど)、結合処理のコストも乗ってきます。 どう解決したか kNN 検索とフィルター条件を同一クエリ内で組み合わせることで、ベクトル検索の結果に対して構造化データの絞り込みをかけています。 加えて、前述の横断検索用インデックスで図面と実績の関連を事前に非正規化しているため、検索時のデータソース間結合は発生しません。 Elasticsearch が kNN とフィルタを同一クエリ内で同時実行できることと、事前結合による非正規化インデックスの組み合わせで、類似検索とデータソース横断のフィルタリングをサブセカンドで安定して返せるようになりました。 アーキテクチャの全体像 データが取り込まれてからユーザーに届くまでの流れを整理します。 PLM、ERP、ファイルサーバーなど複数のデータソースからデータを収集する AI による図面解析、メタデータの抽出、ベクトル化などの処理を行う 用途別のインデックスにデータを振り分ける ユーザーのクエリを解析し、最適なインデックスを動的に選択する サブセカンドで結果を返し、ファセットやハイライトとともに表示する 図面と実績は更新頻度も構造も違うデータですが、探索に最適な形に統合・変換してインデックスし続けることで、ユーザーはデータの所在を意識せずにあらゆる情報を横断できます。 まとめ 製造業のデータを素朴に結合すると10兆件規模の組み合わせになる。これをどう捌くかが今回のテーマでした。 私たちの答えは、用途別に最適化した複数のインデックスと、クエリに応じてそれらを動的に選択する制御層です。特に、非正規化による事前結合で検索時の結合コストをなくしたことと、Elasticsearch が kNN とフィルターをネイティブに統合できることが、類似検索とフィルタリングの両立を可能にしています。 ただ、ここまで作り込んだインデックス構造も、現場の変化に追従できなければ意味がありません。次回の最終回では、このインデックスを「サービスを止めずに進化させ続ける」ための仕組みについて書きます。
2026/4/20 – 4/24 に世界最大規模の産業向け展示会ハノーバーメッセが開催されました。AWS は今年も “Built for Industrial AI” というテーマを掲げ、フィジカル AI を筆頭に、AI とクラウドを活用し製造業の業務を変革するアイディアを提供しました。AWS の製造のリーダーである Ozgur Tohumcu から、”産業 AI は大規模展開してこそ意味がある”というメッセージを基調講演で語りました。イベント全体での AWS の活動は、別途 月刊 AWS 製造ブログ でもご紹介しています。このブログでは AWS ブースの概要と展示ソリューションについてご紹介します。 AWS の展示ブース AWS は “Built for Industrial AI” を体現するブースとして「スマート生産」「サプライチェーン」と「製品設計・開発」「スマートプロダクト」の4領域を2つに分けて展示しました。フィジカル AI やシミュレーションへの注目により製品開発系の展示が大きく増えています。 今年度も昨年同様、SIEMENS, QAD, Zoomilion といった様々な業界パートナーが AWS ブース内で展示を行うとともに、AWS 自身の展示を大きく増やしました。本年も、日本チームが現地で日本語でお客様をご案内しました。 本ブログでは、フィジカル AI と主要な4領域の展示についてご紹介します。 フィジカル AI 写真: フィジカル AI デモ “AI-Driven Product Journey” フィジカル AI は本年 AWS ブースで最も注目を集めたエリアの一つで、来場者の足が絶えない人気を博していました。目玉となったのが、”AI-Driven Product Journey” と題された大型デモです。このデモは、来場者がキオスク端末でデザインを選択・入力すると、生成 AI がオリジナルデザインを生成し、AMR(自律走行ロボット)・協働ロボットアーム・レーザー彫刻機・AI 画像検査装置・ヒューマノイドロボットが協調しながら金属製コースターを製造、最終的にヒューマノイドが完成品を来場者に手渡すという一連のプロダクトジャーニーを実演するものです。AMR が LiDAR で周囲を知覚し自律走行する、ロボットアームが 3D ビジョンで部材を認識し把持する、ヒューマノイドが強化学習で獲得した歩行で物を運ぶなど、それぞれが物理世界を知覚・理解し、直接作用するという フィジカル AI の異なる側面を体現しており、フィジカル AI が役割分担して働く姿を一望できる構成になっています。 写真: エージェント AI による工程のオーケストレーション 本デモのもう一つの注目点は、工程全体を エージェント AI が自律的にオーケストレーションしている点です。各装置・ロボットの操作がツールとして定義され、エージェント AI が状況をリアルタイムに判断しながら全工程を指揮します。事前にハードコードされたシナリオをなぞるだけではなく、状況に応じて柔軟に振る舞える点が従来の産業オートメーションとの大きな違いであり、産業 AI を実運用へスケールさせていく上での重要なステップを示すデモとなっていました。 スマート生産 (Smart Manufacturing) Smart Manufacturing エリアは今年も AWS ブースの中で最も広いスペースが割かれており、上記の AI-Driven Product Journey を中心に多くの来場者で賑わっていました。また Rockwell Automation、HighByte、Databricks、Snowflake、Palantir といったパートナー各社との協業展示が目立ち、AWS 単独ではなくエコシステム全体でスマート製造を実現するという姿勢が強く打ち出されていました。技術面では AI エージェントが自律的に複数システムを横断して分析・判断を行うアーキテクチャが前面に出てきたのが昨年からの大きな変化です。ここではその中から、Agentic Workflow Automation と Real-Time Plant Analytics の 2 つのデモをご紹介します。 写真: Agentic Workflow Automation — AI エージェントが製造現場の意思決定を自律支援する内容のデモ Amazon Bedrock AgentCore を基盤に、複数の AI エージェントが MES・ERP・CMMS・IoT を横断して製造データを分析するデモです。「3 工場の生産実績とオーダー目標を比較してほしい」「納期リスクのある顧客オーダーはどれか」といった質問を自然言語で投げかけると、エージェントがグラフデータベースの関係性を元に複数システムからデータを取得し、レポートを自動生成します。エージェントの推論過程がステップごとにリアルタイム表示される “Investigation Trace” 機能もあり、AI がどのデータソースにアクセスしてどう判断したかが透明に追跡できる点が印象的でした。 写真: Real-Time Plant Analytics — 工場 KPI(OEE、不良率等)のリアルタイム監視と、AI によるシフト交代レポートの自動生成デモ Amazon Quick を基盤とした Manufacturing Dashboard の展示です。Overview 画面では OEE や Defect Rate、First Pass Yield といった主要 KPI がリアルタイムで一覧表示されます。中でも注目したいのが Shift Handoff Report 機能で、シフト交代時に AI がワークセンター別の OEE・欠陥分布・保全状況を自動分析し、引き継ぎレポートを生成します。画面右側には Manufacturing Assistant チャットも統合されており、レポートの内容を対話形式でさらに深掘りすることも可能です。 サプライチェーン (Supply Chain) 写真:Supply Chain のデモ 今年も AWS ブース内の他のデモと連携した、Supply Chain のデモをご紹介しました。昨年も同じ AWS ブース内にある製造デモと情報連携し、Supply Chain に関わる情報の可視化や需要予測などを展示しておりましたが、昨年からの大きな変更点として、今回は Kiro で開発したアプリケーションを展示させていただきました。 業務仕様書とデータの構成を元にアプリケーションを自動生成することで、企業におけるカスタムアプリケーション導入/利用の柔軟性を上げ、開発/導入の時間および難易度を下げていく例をご紹介しました。また、同ブース内では、パートナー企業である QAD の ERP・Redzone の展示や、会期中には、こちらもパートナー企業である Infor が製造業における エージェント AI の活用に関する協業の発表を行い、パッケージアプリケーションとカスタムアプリケーションを選択していただく、または組み合わせて利用するといった、お客様の状況に合わせて選択していただける選択肢を AWS が提供している様子をお伝えしました。 製品設計・開発 (Product Engineering) 今回、フィジカル AI の注目により製品設計・開発領域の内容を大きく増やしました。Engineering & Development Tunnel という展示では、AI によるデザインの提案 –> エンジニアリングツールを仮想化 –> デジタルスレッドで設計開発データの連携 –> AI によるパラメータ空間探索(サロゲートモデル)という流れをご紹介しました。AI ( Amazon Nova ) が提案した意匠は、Smart Manufacturing のデモに連携され、レーザー加工によりコースターとして生産されます。 製品設計に必要な様々なエンジニアリングツールを仮想化する例として、 PTC の CAD (Creo) と、開発中の CAD へのアドバイスを行う紹介がありました。全体に、Engineering Development Hub (EDH) という新しいエンジニアリング環境が使われ、様々な CAD/CAE の環境を仮想化し、呼び出し、管理し、VDI で接続することで計算リソースやワークステーションを柔軟に増減させ管理の手間を減らすことができる様をご紹介しました。 写真:Engineering & Development Tunnel (左) と Creo のデモ (右) 設計されたデータはシミュレーションにより性能を検証しますが、設計パラメータを変更して都度シミュレーションを行うとそのための計算量やコストも膨大になります。そこで、過去のシミュレーション結果から異なる設計パラメータのシミュレーション結果を AI で予測する手法がサロゲートモデルです。パートナーの Neural Concept との共同展示で、データセンターの冷却を題材としたパラメータスタディを行うデモを展示しました。 SIEMENS との共同展示では、設計データから強度シミュレーションを行い、その結果を元に生成 AI に設計改善のアドバイスをさせるデモが示されました。また、“OT Modernization” という展示では、シミュレーションを製品開発だけではなく生産設備のエンジニアリングに活用し、生産ラインにおけるアームロボットの動作を生成 AI で最適化してタクトタイムを縮めるという提案を行いました。 写真:SIEMENS との共同展示 (左) と OT Modernization の展示 (右) 他にも、CAD の展示として完全クラウドベースのアーキテクチャにより無限 Undo や PDM の統合を可能にし、オペレーションを中間言語で記述することで AI による支援を容易にするといった意欲的な機能を搭載した PTC の Onshape が紹介されました。 スマートプロダクト (Smart Products & Services) 今年のスマートプロダクトエリアのトレンドは、「売って終わり」から「売った後も継続改善」への転換が現実的になってきたことです。開発面では、AI エージェントが設計からリリースまで全フェーズに介入し、組み込みソフトの開発サイクルを劇的に短縮。出荷後も迅速にアップデートを続けられる体制が整いつつあります。サービス面では、テレメトリ・保守履歴・顧客問い合わせなど複数データソースを AI が統合解析し、故障予兆検知やプロアクティブなサポートを実現。予防保守サブスクやリモート診断など新収益ストリームの創出と顧客関係強化につながっています。スマートプロダクトでも DevOps の継続改善サイクルが回せる時代に入った — これが今年最大の変化です。この記事では、”Accelerate embedded software development and equipment” と “Smart Products Telemetry Driven ‘X'”の 2 デモをご紹介します。 写真: Accelerate embedded software development and equipment — 組み込みソフトウェア開発の課題を示すスライドと、Kiro が 30 分以内で実装した 空調管理システム UI の実機(右下) Kiro (AI 駆動 IDE)による組み込みソフト開発ライフサイクル全体の加速デモです。空調管理システム(C++ で実装/ 7 インチ HMI 画面)を題材に、Research・Plan・Development・Release の 4 フェーズを一気通貫で実演します。注目すべきは、画像右下の空調管理システム実装において、リモートデバッグ・UI チェック・デプロイをすべて Kiro が自律実行し、30 分以内で完了させている点です。従来 1 週間以上かかる作業が、コード生成→デプロイ→スクリーンショット評価→改善のフィードバックループで劇的に短縮されています。 デモの内容を体験できるワークショップ も公開されています。 写真: Smart Products Telemetry Driven “X” — デバイス障害検知時に Amazon Connect へリアルタイムのテレメトリとアラートが自動連携される様子 AWS IoT Core と Amazon Connect を組み合わせたサービス改善の展示です。産業機器(デモでは 3D プリンター)のテレメトリをリアルタイム収集・監視し、エラー発生時にはデバイスデータがサポートエージェントに自動連携されます。顧客にシリアル番号や症状を確認する手間なく即座に問題解決に着手できます。AI エージェントが解決できない場合は自動でタスク生成し、熟練技術者や専門 AI エージェントへエスカレーションする仕組みも備えています。 まとめ 本年のハノーバーメッセでは、”Built for Industrial AI” のテーマのもと、フィジカル AI と エージェント AI が製造業のバリューチェーン全体に広がりつつある姿が印象的でした。生成 AI による意匠提案から エージェント AI による工程オーケストレーション、ロボットによる物理世界での実行までが一つのシナリオで繋がる “AI-Driven Product Journey” は、その象徴的な事例です。Smart Manufacturing・Supply Chain・Product Engineering・Smart Product の各領域でも、AI エージェントが複数システムを横断して人の意思決定を支援するアーキテクチャが共通の方向性となりつつあり、産業 AI が実証から実運用フェーズへ着実に進みつつあることを感じる場となりました。AWS は引き続き、産業 AI を実運用にスケールさせていくお客様の取り組みを支援してまいります。 なお、6 月 25, 26 日に開催される AWS Summit Japan 2026 でも フィジカル AI や産業 AI の展示をご用意しています。Summit 向けに企画した新たなデモを通じて、製造業における AI の可能性を体感いただけます。ぜひご登録のうえ、会場でお会いできれば幸いです。 AWS Summit Japan 2026 の登録は こちら 著者について 木村 直登(Naoto Kimura) AWS Japan のソリューションアーキテクトとして、製造業のお客様に対しクラウド活用の技術支援を行なっています。最近は AI エージェントと毎日戯れており、AI エージェント無しでは生きていけなくなっています。好きなうどんは’かけ’です。
本記事は 2025/10/10 に公開された “ Transform Supply Chain Logistics with Agentic AI ” を翻訳したものです。 AI はあらゆるサプライチェーンプロセスを変革する可能性があります。予測分析、モノのインターネット(IoT)、機械学習(ML)などの既存技術は、サプライチェーンの効率性と可視性を向上させましたが、組織は依然として重大な課題に直面しています。今日のサプライチェーン実務者は、地政学的緊張から自然災害に至るまでの複雑なシナリオに対応しながら、複数のシステムに散在するデータを管理しなければなりません。これらの課題は、大きなビジネスインパクトを生み出します。例えば、複雑な組立品で 1 つの締結部品(ボルト・ナット等)が欠けているだけで、納品が数週間遅れ、重大な財務損失と顧客体験の低下を招きます。他のすべてのプロセスが完璧に機能していてもです。エージェンティック AI(サプライチェーンエージェント)は、これらの根強い課題を解決できるでしょうか?このブログでは、Amazon Web Services(AWS)プロフェッショナルサービス(ProServe)が、組織が本番運用可能なレベルのエージェンティック AI ソリューションを実装し、サプライチェーン業務変革をどのように支援しているかを説明します。 サプライチェーンにおけるビジネス価値の機会 生成 AI は、サプライチェーンに大きな影響を与えると考えられています。マッキンゼーによると、サプライチェーンの総コストは運用コストの 3〜4%分、全産業合計で 2,900 億ドルから 5,500 億ドル削減可能とされています。この可能性により、EY(アーンスト・アンド・ヤング) はサプライチェーン組織の 40% が生成 AI 技術に投資していると指摘しています。これは、企業が生成 AI の価値を認識しており、アーリーアダプターがこの技術をサプライチェーンプロセスの中核に採用し始めていることを示しています。 生成 AI は、以下のようなビジネス成果を生み出す可能性があります: 関連する洞察や文書を速く見つけ、サプライチェーン専門家の時間を定型業務から解放し、労働生産性を向上させます。 原材料の状態の可視化と基礎データへの信頼性により過剰在庫を削減し、緊急配送や航空輸送の回数を減らします。 処理の自動化と自動生成される推奨事項により意思決定プロセスを最適化し、専門知識の活用、管理業務、ステークホルダーとの調整を効率化します。 エージェンティック AI システムが協力して複雑なタスクを解決 エージェンティック AI システムとは、独立して動作し、相互作用し、動的な環境で自律的な決定を下すデジタルシステムを指します。これらのシステムは、複数のエージェントを調整し、他の AI システムと通信してタスクを効率的に遂行し、複雑な問題解決と自動化を可能にします。生成 AI はエージェンティック AI システムとエージェントの基盤を提供し、AWS では顧客は Amazon Bedrock AgentCore を利用します。論理ベースの推論と文脈理解を通じて、エージェントはアクションを計画し、他のエージェントと協力し、タスクを効率的に実行し、人間の論理と推論を模倣します。サプライチェーン実務者がしばしば複数のシステムや部門横断的なチームやパートナーを扱うため、AI エージェントを使用することで、組織はより効率的になり、価値を生み出すことができます。 モデルベース、目標ベース、学習ベース、自律型、LLM、エージェンティックエージェントなど、異なるタスクを完了するためのエージェントタイプが増えています。これらのエージェントは、異なる機能を持ち、協力して目的の結果を達成します。例えば、顧客が納品を迅速化することを要求したとします。1 つのエージェントが納品のステータスを確認し、別のエージェントが在庫を確認します。さらに、別のエージェントが迅速化テーブルとコストを確認し、最後のエージェントはすべての情報に基づいて次の推奨アクションをまとめます。これらのエージェンティック機能は、複数のデータソースを組み合わせて、内外の顧客体験を向上させます。さらに、情報をまとめて推奨を行うだけでなく、組織が許可すれば、エージェントがシステム上のデータを更新することができます。 物流における AI エージェント 物流はリアルタイムでのステータス更新の必要性、絶えず変化するビジネス環境、そして異なる形式の複数のシステムとデータソースが存在するため、課題に溢れています。多くの企業は、アラートとプロアクティブなモニタリングでこれらの課題を解決していますが、これらのアラートには文脈情報が不足し、潜在的な解決策を提供せず、問題を 1 か所で解決する事ができません。 ガイドラインとして、AI エージェント(メイン)は物流エージェント、在庫エージェント、補充エージェント、調達エージェントなどの焦点を絞ったペルソナを持つことが推奨されます。これらのエージェントは共通の目標に向かって協力します。AI エージェントチームが協力して作業する様子を図 1 に示します。焦点を絞ったペルソナは、エンドユーザーがエージェント(メイン)の担当タスクを理解しやすくします。また、ユーザーデータアクセスを制限し、エージェントが処理する必要があるデータの量を減らします。特に物流では、倉庫、品質、文書生成、補充、関税/規制コンプライアンス、調達/契約、内部・外部の顧客体験など、様々なタイプのエージェントのユースケースがあります。焦点を絞ったペルソナを定義した後、次のステップは、エージェントが解決するべき問題とデータへのアクセス方法を定義することです。以下では、物流エージェントに焦点を当てます。 図 1: 協力して作業する AI エージェントチーム AWS ProServe が A*STAR 向けに物流エージェントを作成 2024 年 9 月、AWS はシンガポール貿易産業省(MTI)と科学技術研究庁(A*STAR)が設立した 製造セクター AI センター・オブ・エクセレンス (AIMfg)の立ち上げに参加しました。これはシンガポールの国家 AI 戦略 2.0 の一環です。このコラボレーションの最初の取り組みは「物流の未来」の探求に焦点を当てており、AWS ProServe は Amazon Bedrock を活用した物流エージェントを開発しました。 先進再製造技術センター (ARTC)は A*STAR 内の研究機関です。このセンターは航空宇宙、陸上輸送、消費財、バイオメディカル製造、エネルギーの 5 つの主要分野にわたる 96 のコンソーシアムメンバーで構成されています。この組織は、次の 4 つの戦略的テーマで研究開発を推進しています: 次世代製造プロセス 自律型製造 ネットゼロ製造(脱炭素製造) 強靭なバリューチェーン Industry 5.0 の人間中心的、持続可能、強靭な生産を重視する A*STAR ARTC は、プラントチームにエージェンティック AI を提供しています。これにより、仮想 AI エージェントが以下のような機会を創出します: 計画、実行、サプライヤー協業にわたる 組織の知識を集約 し、それを組織の業務 DNA に組み込む 目標駆動型の意思決定を行い、フィードバックループを通じて自己改善し、文脈の認識を維持することで、 自律的に運用する 。 AWS ProServe と共同で、A*STAR ARTC は物流の専門家とデータ分析者向けにカスタマイズされた AI エージェントを開発しました。このインテリジェントシステムにより、サプライチェーンの実務者は以下の項目を実現することができます: リアルタイムデータを集約・統合 します。ERP(基幹業務システム)、TMS(輸送管理システム)、WMS(倉庫管理システム)、顧客向けポータルからデータを収集します。 内部および外部の問い合わせに対して即時かつ正確な回答 を提供します。これにより、手動での検索と照合の作業負荷を最大 50% 削減します。 緊急配送コストを総物流費用の 3〜5%削減 し、逸失収益を軽減します。また、納品から配送までのサイクルを短縮します。 手戻り作業を最小化することで計画担当者の 生産性を向上させ 、例外管理、ネットワーク最適化、戦略的サプライヤー連携に集中できるようにします。 迅速で透明性の高い更新情報と予測到着時刻(ETA)のインサイトを通じて、 顧客満足度を向上 させます。 一時的な効率向上を超えて、この AI 駆動型アプローチは堅牢なデータ戦略を支え、キャパシティプランニングからアフターサービスまでのオペレーションバリューチェーン全体にわたり、物流をスマートで情報に基づく意思決定を促進する触媒として位置づけられます。 物流エージェントの構築アプローチと結果 AWS ProServe チームと A*STAR は協力して、エージェントが解決すべき複数の問題やタスクを定義しました。例えば、出荷最新の情報や影響を受ける発注書のアラートなどです。サプライチェーンの専門家は、自然言語と会話型 AI を使用してデータと対話します。これにより、問い合わせに対して変更、キャンセル、推奨を行うことができます。チームが様々な問題やタスクを定義した後、Amazon Bedrock やその他の AWS サービスを利用して物流エージェントを構築しました。 ビデオ 1:AI エージェント – 問題の定義から実行まで ビデオ 1 に示されているように、物流エージェントの導入により、チームは複数のソース(天気、出荷状況など)からより速く最新の情報を取得し、実行可能な対策についての洞察を得て、問い合わせに対する標準的な回答を受け取ることができます。例えば、ユーザーが発注書の更新を要求し、自然言語で質問を入力します。AI エージェントは質問を理解し、適切なデータソースを識別します。これには、構造化または非構造化データの分析が含まれます。これには、ERP システムや Excel スプレッドシートなどの内部データソース、または港湾のウェブサイトや航空貨物運送業者へのアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)接続などの外部ソースが含まれます。次に、AI エージェントは関連データにアクセスし、自然言語処理を使用して質問に答え、正確な回答を提供します。データ接続とエージェントのセットアップがどのように設定されているかの可視化については、図 2 を参照してください。 図 2:内外のデータへのアクセスを持つエージェントセットアップの例 要約すると、ロジスティクスアナリストは手動で情報を検索し、洞察を導き出したりする必要がなくなり、より戦略的なタスクに集中できるようになりました。これは一つの例ですが、サプライチェーン全体で適用可能な例は多くあり、生成 AI とサプライチェーンエージェントが組織の運営方法を変革しています。AI エージェントは洞察を即座に導き出し、エンドカスタマーの問い合わせに数秒で回答し、セルフサービスの問い合わせを可能にし、カスタマーエクスペリエンスの向上に役立ちます。 まとめ エージェンティック AI 機能は、物流の実務者が日々の業務を遂行し、エンドカスタマーエクスペリエンスを向上させる方法を変革しています。物流 AI エージェントにより、サプライチェーンチームは自然言語で対話し、組織のコンテキストを理解し、適切なデータソースを自動的に識別し、AI 推論を利用して結論を導き出したり、次の最善のアクションを推奨したりすることができます。ビジネス価値を基礎とする取り組みにより、サプライチェーンのあらゆる機能において、生産性の向上、収益の増加、速度の向上、コストの削減、無駄の排除につながる機会があります。エンドカスタマーの要求がさらに厳しくなる中で、この分野のリーダーは、価値を早期に得て、競争優位性に変えることができるでしょう。 この技術を導入する企業は、ビジネス価値をより早く実現し、すぐに競争優位性を獲得できます。AWS のお客様は、Amazon Bedrock サービス群やその他の利用可能なサービスで、今日から構築を始めることができます。変革の旅を加速させたいお客様は、 AWS プロフェッショナルサービス のアカウントエグゼクティブまたは AWS アカウントマネージャーにお問い合わせください。 物流エージェントの初期構築に貢献した Sam Gordon、さらなる開発と継続的なサポートを提供した Annie Naveh、追加のサポートとガイダンスを提供した Emily O’Kelly に特別な感謝を申し上げます。 翻訳は、ソリューションアーキテクトの山本が担当しました。 <!-- '"` --> Joe Pazak Joe Pazak は、アジア太平洋・日本(APJ)のエンドツーエンドのサプライチェーンとデジタルトランスフォーメーションを支援する責任者です。Joe は、需要計画、供給計画、生成 AI、高度な分析、物流、調達をカバーする複数の業界との大規模な変革プロジェクトから、深いサプライチェーンの専門知識をもたらします。彼は顧客を支援することを熱望しており、次世代のサプライチェーンツールとテクノロジーに移行するにつれて、大きなアイデアを考えるよう促します。Joe はシドニーを拠点としています。 Dr. Manuel Baeuml Dr. Manuel Baeuml は、ASEAN の AWS 製造・小売プラクティスをリードしています。Manuel は、スマート製造、顧客体験、サプライチェーンに注目し、製造および小売企業が重要なデジタル機能の定義・構想・実装を支援しています。過去 15 年間、Manuel はアジア太平洋とヨーロッパの業界リーダーと働いてきました。Manuel はシンガポールを拠点としています。

















