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こんにちは。メルカリ ハロのSoftware Engineer (Engineering Head)の @napoli です。 連載:Mercari Hallo, world! -メルカリ ハロ 開発の裏側- の2回目を担当させていただきます。 2024年3月上旬にメルカリハロという新しいサービスが公開されました。メルカリ ハロは好きな時間に最短1時間から働ける「空き時間おしごとアプリ」です。 この記事ではメルカリ ハロを作るにあたり、どういった技術スタックやアーキテクチャを選定したのか、さらにその背景と意思決定をご紹介したいと思います。 この記事で得られること メルカリ ハロで採用されている技術スタックやアーキテクチャの全体像 その意思決定の理由とプロセス これから新規サービスを立ち上げるうえでのヒント 主な技術スタック メルカリ ハロで利用されている主な技術スタックは以下のとおりです。 バックエンド Go Google Cloud Platform (GKE, Cloud SQL for PostgreSQLなど) GraphQL gqlgen ent. フロントエンド React / TypeScript Next.js Apollo Client (React) モバイルアプリ (メルカリ ハロ専用アプリ) Flutter / Dart また、バックエンドのアーキテクチャとしてはモジュラーモノリスを、リポジトリの管理方法としてはmonorepoを採用しています。 モジュラーモノリス (Modular monolith) メルカリグループとして「スポットワーク領域」と呼ばれる領域に参入するため、2023年4月頃に新しいチームを立ち上げました。発足当初はあくまで「PoC (Proof of Concept)」という立ち位置で、この領域でメルカリならではの価値を提供できるかどうか、その検証をしてからサービスを成長させていくという戦略で進められたため、サービスを少ない人数で急速に立ち上げることが求められました。(最初期はエンジニアが1~2名ほどしかいませんでした) こういった背景を踏まえ、バックエンド(サーバ)はモジュラーモノリスのアプローチを採用しました。メルカリグループの主力サービスであるフリマアプリ「メルカリ」は成長過程でモノリスからマイクロサービスに進化してきました。モジュラーモノリスはこれら2つのアプローチの中間に位置する戦略で、端的に言うとモノリスシステムの中にマイクロサービスの戦略を統合する考え方です。結果的に、この選択は正解だったと思います。 容易なサービス間連携 モジュラーモノリスではひとつのサーバにAPIサーバとして求められるすべての機能を含めます。すべての機能は同じプログラムで動いていますが、サーバの中では実際には「モジュール」という単位で機能は独立しています。そして各モジュールが連携することでAPIとしての機能を提供しています。(「モジュール」はメルカリ ハロでは実際には「サービス」と呼んでいます) ここでいうひとつとは「サーバプログラムとしてひとつ」という意味です(「デプロイの単位としてひとつ」とも言えます)。ひとつのサーバにすべてのサービスが実装されているため、当然ながらサービス間のRPC (Remote Procedure Call)は不要です。ひとつのAPIを提供するために複数のRPCを利用する可能性のあるマイクロサービス アーキテクチャとは異なり、プログラム内で関数を呼ぶことで機能を完結させることができます。サービス間のプロトコル定義やネットワークエラー時のハンドリングなどを考慮する必要がなくなり、実装量や設計の難易度を大幅に減らすことができます。 単一のデータベースとトランザクション バックエンドがモジュラーモノリスであることに加え、メルカリ ハロではメインとなるデータベースのインスタンスはひとつです。この構成の場合、データベースのトランザクション機能をフル活用することができます。メルカリ ハロにおいてもお給料に関する情報など、データの整合性が重要なケースがあります。その点でデータベースのトランザクション機構はやはり非常に強力で、マイクロサービスアーキテクチャで大きな悩みごとであったサービス間のデータ不整合の問題の大部分を気にしなくて良くなります。こちらも実装量と設計の難易度を大いに減らしてくれました。 少ないインフラの記述量 メルカリ ハロではIaaSとしてTerraformを採用しています。モジュラーモノリスは基本的に1つのサーバで運用するためマイクロサービスと比較してインフラ関連の記述量を減らすことができます。APIなどアプリケーションに専門性を持つエンジニアにとってはインフラの設定やその動作確認は思ったよりも時間が掛かることが多いと思います。少ない記述量でAPIの実装に集中できることはメルカリハロのクイックな立ち上げにおいて大きなメリットがありました。 気をつけるべきこと モジュラーモノリスはメルカリ ハロにおいて良い選択肢だった一方で、気をつけるべきこともあります。 大きな懸念のひとつは初期設計の難易度が上がりやすいという点です。何も考えずに作ってしまうと、単なるモノリスなシステムになってしまう可能性が大いにあります。正確に言うとモノリスであること自体が問題なのではなく、システムのモジュールやサービスが適切な責任範囲で分離されていないことが大きな問題になり得ます。適切な分離が行われていないシステムでは機能の再利用が難しかったり、一部の改修が思ってもみないところに影響を及ぼしたりします。複雑に相互依存した(絡み合った)システムは理解も難しいですし、テストも難しくなります。理解もテストも難しいということは障害が発生する可能性も高くなるということです。結果として時間が経てば経つほどスピーディな機能開発が困難になってきます。 マイクロサービスアーキテクチャの利点の一つは、この「モジュール/サービスの分離」がインフラレベルで「強制される」点だと思います。プログラムの単位が違うことに加え、データベースも一般的にはマイクロサービスごとに独立していることが多いため、あるサービスの変更は別のサービスには直接影響を与えません。もちろんどの粒度でマイクロサービスを分けるかにも依りますが、開発者は半ば強制的に「モジュール/サービスの適切な単位」を考えなければいけません。サービスとして独立しているため、責任範囲が明確にもなりやすいです。大規模組織にも相性が良く、例えば「このマイクロサービスはこのチームがオーナーを持つ」と言った戦略を取りやすくなります。 一方で、モジュラーモノリスではこの「強制」が良くも悪くもありません。ですが「モジュール/サービスの適切な分離」はマイクロサービスと変わらず重要な関心事です。モジュラーモノリスでは初期の設計者が慎重に設計を行い、各開発者が節度と理解を持って機能を実装していく必要があります。この点に難しさがあると思っています。 とはいえ、メルカリ ハロのように一定規模の新規プロダクトをクイックに開発するうえではモジュラーモノリスはおすすめできるアプローチだと思います。最初から大規模になることが約束されたプロダクトを作るのであればマイクロサービスアーキテクチャのような分散システムを採用するのも効果的だと思いますが、ほとんどの場合、システムを物理的に分離させるのはビジネス的にもプロダクトの規模が大きくなってからでも遅くはないでしょう。 なお、メルカリの別プロジェクトにおいてもモジュラーモノリスの採用例があります。メルカリ ハロの事例とは異なる「既存のモノリスからモジュラーモノリスへ移行する」というアプローチですが、こちらも参考にして頂ければと思います。 メルカリの取引ドメインにおけるモジュラーモノリス化の取り組み monorepo メルカリハロではmonorepoを採用しています。monorepoは、バックエンドやフロントエンドなど、システムを構成する複数のコンポーネントの独立性を保ちつつ、全てのコンポーネントをひとつのリポジトリで管理する手法です。 monorepoを採用してよかったと思う点をいくつか挙げてみます。 システム全体の見通しの良さ monorepoはシステムに必要なコンポーネントが全てひとつのリポジトリに集約されていることが大きな特徴です。これはシステム全体の見通しがとても良くなります。メルカリ ハロの立ち上げ期は開発メンバーの数が少なかったため、ひとりのエンジニアがバックエンドやフロントエンド、モバイルアプリを横断して実装することもありました。その際にコードが集約されていることは開発のしやすさに大きなアドバンテージがあります。「フロントエンドの仕様どうなっているんだろう?」といった確認を行いときに、自身のIDEやEditorのファイル検索機能を使えばすぐ該当の実装に辿り着きます。「別リポジトリに切り替えて、git pullして、ウインドウを切り替えて…」といったことをする必要がありません。言語の違いによる理解の難しさは当然ありますが、素早くシステム全体を調査することができます。 コードレビューのやりやすさ ひとつのGitHubリポジトリ上にプルリクエストが集まるため、異なる職種間でもレビューがしやすくなります。専門的な実装に関しては専門の知識を持つメンバーがレビューしたほうが良いですが、簡単な修正なら他の職種でも可能なことが少なくありません。メルカリ ハロではmain branchへのマージはプルリクエストへのApproveを必須としているので、レビューの速さは重要です。mainにマージできるまでの時間が短いとコンフリクト解消に掛ける時間も減り、QAもしやすく、本質的な作業に集中しやすくなります。もちろん複数レポジトリ(Multi Repository)でもできないことはないですが、monorepoのほうがやりやすいのは間違いないと思います。 GraphQLスキーマファイルの共有 メルカリハロではバックエンドとフロントエンド/モバイルアプリとの通信に(後述する)GraphQLを採用しています。バックエンド側で生成したGraphQLのスキーマを同一のリポジトリで共有できるため、それをもとにフロントエンドのGraphQLのクライアントコードを自動生成したりなど、楽に連携をすることができました。GraphQLスキーマファイルに限らず「必要なファイルをリモートから取得する必要がない」というのは何かと便利ですし、開発環境が安定します。 一緒に開発している感 急にふんわりとした話になってしまいますが、バックエンドやフロントエンドといった職種間でもなんとなく「一緒に開発している感」が出るような気がします。「システム全体の見通しの良さ」にも繋がる話ですが、他の職種の人達がどういった頻度、温度感で日々作業しているかがわかりやすくなります。この感覚は密にコミュニケーションが必要な開発では意外と重要だと思います。目には見えなく数値化しづらいですが、メルカリ ハロの開発体制では良い効果をもたらしていたと思います。 monorepoのリポジトリ構成 メルカリ ハロではGo, dart, TypeScriptが主な言語として使われており、リポジトリルートの直下に各言語ごとにディレクトリを配置しました。これによりエコシステムやCI/CDの管理をしやすくなります。また普段の開発においても、例えばバックエンドを開発する人間は基本的にgoディレクトリ以下のみに絞って作業することができ、同じリポジトリでも独立した環境のように開発できるメリットがあると思います。 独立したビルド環境 メルカリ ハロのmonorepoではバックエンドやフロントエンドなどの各コンポーネントでのビルドの手段は基本的に独立しています。 Bazel のようなビルドを一元的に管理できるツールもありますが、メルカリ ハロでは採用していません。幸いなことにメルカリ ハロの立ち上げ期には各職種で専門性の高いメンバーが居たため、馴染みのある(標準的な)ビルドの手法を採用していました。各メンバーにとっては追加の技術を学習するコストがない分、スムーズにビルド環境を構築できたと思います。運用面でも今のところ大きく困ったことはありません。コンポーネント間でビルドを一元的に管理する手法はメリットもありつつ、かなりの難しさもあるため、明確な理由がなければ各コンポーネントごとに独立してビルド環境を構築するアプローチのほうがおすすめできるかなと思います。 — monorepoについて、いくつかのメリットやメルカリ ハロでの具体的な構成例を挙げました。monorepoの一般的なデメリットはリポジトリサイズが大きくなりやすいところですが、昨今のネットワーク環境やローカル環境を踏まえると相当に大規模なサービスにならない限りほぼ気にすることは無いかなと思います。他にも細かいデメリットはありますが、総じてメリットのほうが大きく上回っていると感じます。新規サービスの立ち上げにおいてはおすすめできるアプローチだと思います。 インフラの全体像 メルカリ ハロではインフラストラクチャにGoogle Cloud Platformを全面的に採用しており、簡単な全体像は以下のようになっています。 バックエンドとなるGraphQLサーバ(Go)はGoogle Kubernetes Engine (GKE)を利用してひとつのサーバとして動いています。同じくNext.jsと、APIの前段となるGateweyもGKE上で動いてます。データベースはCloud SQL for PostgreSQL、メモリストアにはRedisを利用しており、CDNはFastly、 画像最適化(変換)サービスにはCloudflareを採用しています。 Google Kubernetes Engine (GKE) メルカリ ハロではバックエンドのインフラにGoogle Kubernetes Engine (GKE)を採用しています。主に下記の2つの理由で選定を行いました。 メルカリグループでの実績とノウハウ メルカリグループでは多くのサービスをGKEにて運用しており、Platformと呼ばれるチームが運用・保守を行っています。一般的にGKE(kubernetes)はインフラを専門としないエンジニアにとっては難解なことも多いですが、メルカリグループでは初期設定や開発を効率的に行うためのツールやドキュメント、ベストプラクティスが充実しており、Platformチームからの手厚いサポートを受けることもできるため、この点において困ることは比較的少なかったと思います。 エコシステムとの統合 メルカリグループの多くのサービスがGKEを採用しており、同じクラスタ内でgRPCによるサービス間通信を行っています。これにより、既存のサービスをセキュアかつ効率的に利用することが可能です。メルカリ ハロはいくつか既存のメルカリのマイクロサービスを利用する必要があったため、簡単かつセキュアにサービスを利用できることには大きなアドバンテージがありました。 他の選択肢 上記のとおり、メルカリ ハロではグループ内のサポートが充実していたことと、既存のエコシステムとの連携が重要だったためGKEを選択しました。ただ、やはり構築と運用において難易度の高さはあるため、ゼロから独立したサービスを作る場合や、専門のエンジニアが居ない場合はCloud Runのような構築や運用が簡単なServerless環境も選択肢としては大いにありだと思います。 バックエンド / Go バックエンドの実装はGoを採用しています。メルカリグループでの標準的な言語であり、メルカリ内で開発を行う上ではノウハウやリソースアロケーションの面で多言語と比べ圧倒的な優位性があります。また、API開発に適した言語であり、実行速度が速く、Go routineによる並列処理は非常に強力です。 シンプルで読みやすいことも良い点で、そのシンプルさゆえに誰が書いても同じようなコードになります。これは多人数開発ではメリットが大きく、実装の理解やコードレビューの負担を大きく下げてくれます。コードに問題がある場合も比較的気付きやすいと思います。 複雑なコードは、たとえ自分自身が書いたコードでも何を意図してそうしたのか、時間が経つとすぐ分かりづらくなります。そういった意味では「書き手より読み手にやさしい」言語かもしれません。読み手に優しいことは長期的にサービスを運営するうえで大きなアドバンテージになります。個人的にもGoは好きな言語なので、仮にメルカリ以外でAPIを開発するとなっても当分は最有力候補になると思います。 Cloud SQL for PostgreSQL / ent. / atlas DatabaseにはCloud SQL for PostgreSQLを採用しています。メルカリグループではGoogle CloudのSpannerを採用するケースが多いのですが、以下の理由でCloud SQL for PostgreSQLを採用しました。 学習コストの低さ PostgreSQLのようなRDBMSの知識や経験を持つエンジニアは多く、そういったエンジニアとっては新たに学習すべきことは少ないです。それはつまり新しいメンバーが開発に入りやすく、即戦力になりやすいということに繋がります。 充実したエコシステム PostgreSQLは歴史が長く、サードパーティ製のツールやライブラリが豊富です。ツールやライブラリが豊富であることは効率的な開発に繋がりやすく、小さくないアドバンテージとなります。高機能なGUIツールも提供されているため、データを直接調整しながらデバッグを行いたいときなどに非常に役に立ちます。 ポータビリティ性 PostgreSQLはDockerイメージとして提供されており、ローカルのDocker上で簡単に動かすことができます。そのためデータベースを利用するユニットテストもやりやすくなりますし、ローカルでもリモートの開発サーバと近い環境を構築しやすくなります。 メルカリ ハロのサービス特性 メルカリ ハロのサービスの特性上、Readが多く、Writeは比較的少ないです。そのため単一のインスタンスでも相当な期間、問題なくWriteを捌けるだろうと判断しました。ReadにおいてはRead replicaを必要に応じて増やしていくことでかなりのトラフィックを捌けるだろうと考えています。 — 一般的にはこれらに加えて「初期コストの低さ」もメリットになりうると思います。メルカリ ハロでは当初から一定以上の規模のお客さまを想定していたためあまり判断の基準にはなりませんでしたが、多くの新規サービスにとっては重要な観点ではないでしょうか。 ORM ORM(Object-Relational Mapping)としては ent. を採用しています。Go言語向けの強力なORMフレームワークであり、メルカリグループ内でもいくつか採用事例があることから採用しました。コードファーストのアプローチを取っており、高度なクエリ生成機能もあるので、効率的にGoからDatabaseの操作を行えていると感じます。 一般的にはORMを採用すると最適化された柔軟なクエリを書きづらくなりますが、メルカリ ハロでは基本的に非常にシンプルなクエリの組み合わせでAPIを実現しています。その分クエリの発行数が冗長になることもありますが、一方で「理解しやすく、実装しやすい」という大きなメリットがあります。冗長なクエリが多いと心配なのはパフォーマンスですが、基本的にReadの処理はRead replicaを増やすことでスケールしますし、アクセスの頻度が相当多いAPIで無い限り、インデックスさえ適切に貼られていればクエリの数を多少増やしても問題になることはほぼありません。シンプルなクエリは正しくインデックスを貼るのも楽です。実際においても、いまのところメルカリ ハロはデータベースのパフォーマンスは大きな問題にはなっていません。 データベース マイグレーション データベースのマイグレーションには atlas を採用しています。ent.もauto migrationの機能を持っており、差分のDDLを自動で適用してくれたりしますが、いざサービスの運用が始まるとent.のauto migrationだけでは要件を満たさないケースが多く、基本的にはatlasによる管理に統一しています(本番環境においてent.のauto migrationはOffにしています)。atlasはent.と連動してスキーマの差分を自動的に生成してくれるなど、強力な機能を持っており、効率的にmigration作業を行うことができます。DMLにおいてもatlasを使って一部migrationしています。 GraphQL モバイルアプリ含むフロントエンドとバックエンドとの通信にはGraphQLを採用しています。GraphQLはAPI開発においてモダンな選択肢のひとつであり、世の中の多くのサービスでも採用されています。フロントエンド側でフェッチするデータを動的に制御することができ、フロントエンドの仕様が変更になった際もバックエンド側の修正が不要になるケースもあります。クエリをネストすることができるため、フロントエンドはその画面において必要な情報の多くをひとつのAPI Callで取得することができ、不要なAPI Callを減らすことができます。また、静的な型システムを持つスキーマによってI/Fが定義されるため、バックエンドとフロントエンド間で厳密なデータのやりとりすることができます。IDE/Editorによる補完が効きやすいところも嬉しいポイントです。 gqlgen バックエンド側ではGoのGraphQLサーバ実装のひとつである gqlgen を採用しています。シンプルかつ必要十分な機能が揃っており、学習コストも低く使いやすいと感じます。 gqlgenはスキーマファーストのフレームワークであり、基本的にひとつのスキーマファイルでQuery/Mutationを定義するスタイルのため、メルカリ ハロでもひとつのSchemaファイルにすべてのQuery/Mutationが集約されています。そのため現時点でもかなり行数の多いファイルになっており若干の扱い辛さを感じるときもありますが、graphql-eslintを導入してファイルを自動整形したりアルファベット順にType/Query/Mutationを自動ソートするなどして、できるだけメンテナンス性が落ちないように工夫しています。 一方で、スキーマがひとつのファイルに集約されているメリットも多いと思います。見通しが良く、コード自動生成もしやすく、他チームにメルカリ ハロが持つAPIを紹介する際も「このスキーマファイルを見てください」と言えば済むこともあります。 シンプルで扱いやすいPlaygroundが提供されている点も大きいと思います。Playgroundを使うと実装したGraphQLのQuery/Mutationを実際に試すことができます。入力の補完が効いたりQuery/MutationのAPI Reference(Document)も自動で生成してくれます。これが非常に快適で、デバッグや動作確認でとても役立っています。gqlgenでは複雑な設定もなく簡単にPlaygroundを構築することができます。 一方で、gqlgenに限らずですが、GraphQLサーバ実装においてはいわゆるN+1問題に気をつける必要があります。この点においてはRESTなど比べて学習コストと実装コストはやや増えますが、GraphQLを採用する上でそこまで大きなデメリットにはならないかなと思います。対処法としてはdataloaderの採用が一般的で、メルカリ ハロでは graph-gophers/dataloader を採用しています。 なお、メルカリグループで広く採用されているプロトコルにProtocol Buffers(gRPC)があり、こちらも優れた機能を持っています。ただ一般的なWebサービスを作るうえでは、フロントエンドとバックエンド間の通信プロトコルとしてはGraphQLのほうが総合的に扱いやすいのかなと感じます。(もちろんどういったサービスを作るかにも依りますが) あとはRESTも候補になり得ますが、今の時代、明確な理由がない限り敢えてそれを選択するメリットは少ないかなと思います。 React / TypeScript / Next.js メルカリ ハロではWebベースのフロントエンドも実装されています。メルカリアプリ内の「はたらく」タブはWebViewで提供されており、事業者様向けの「事業者管理画面」もPC向けにWebベースで提供されています。 メルカリアプリ内「はたらくタブ」と事業者管理画面 Reactの採用はすぐに決まりました。メルカリグループの他のプロジェクトで採用されているという点で、Vueも候補に挙がりましたが、初期の開発メンバーがReactに慣れていたことと、作りたいサービスに対して十分な機能を備えており、効率的に開発を進められるだろうと判断して採用しました。業界的なトレンド、人材のプールという意味でもReactにアドバンテージがあるだろうと判断しました。 TypeScriptについても迷うことはありませんでした。フロントエンドにおいても昨今の開発では静的型付けは必須と言って良いですし、開発を効率的に進めていく上でさまざまなメリットがあります。Javascriptと比較して若干の難しさはあるかもしれませんが、いまや情報も豊富ですし、一定以上の知識や経験がある開発チームにおいてはほぼ問題にならないでしょう。 Next.jsはメルカリグループでの利用実績や使いやすさ、Reactをベースとしていること、パフォーマンスの良さなどから採用を決めました。 「はたらく」タブに関しては、メルカリアプリとして高いレベルの体験の良さが求められるので、必然的に描画速度も求められます。いまはまだそこまでフル活用されていませんが、Next.jsはパフォーマンス向上のための設定が柔軟にできるため、今後必要に応じて積極的に活用していきたいと思います。 GraphQLのClientとしてはApollo Clientを採用しています。Web フロントエンドにおける人気のフレームワークのひとつで、優れた機能を豊富に持っており、効率的に開発を進めることができます。社内でも採用実績があったため今回も採用しました。Reactとの統合にはReact Hooksを利用しています。 Flutter / Dart メルカリ ハロはメルカリアプリ内のサービスだけでなく、iOS/Android向けの独立したモバイルアプリも提供しています(ストアで「メルカリ ハロ」と検索してみてください)。 メルカリとは独立した「メルカリ ハロ」アプリ その基盤としてFlutter / Dartを採用しています。開発初期の検討時点では他にも以下の選択肢がありました。 iOS / Androidネイティブ (Swift/Kotlin) React Native WebViewベースのアプリ モバイルアプリの技術選定にはWebフロントエンドに比べかなり時間がかかりました。それぞれ同じくらいメリット/デメリットがあり、特に1. 2.についてはメンバーや立場によって意見が様々で、メルカリ ハロのチームだけでなく、メルカリグループ横断的に議論を重ねる必要があったため、決断が難しかったです。主に以下のような点が論点となりました。 開発コスト メンバーの習熟度 パフォーマンス 社内的なリソースアロケーション サードパーティ製のライブラリを含む、エコシステムの充実度 採用のしやすさ メルカリグループとしてのノウハウの集約/分散 色んな論点はありましたが、その中でもやはり「開発コスト」はとても大きな関心事でした。開発初期のチームのメンバーは少なかった一方で、やはり昨今の市場状況を踏まえてクイックなリリースが求められていました。iOS/Android両方をネイティブで開発するとなると単純に考えて2倍近くのコストが掛かりますし、両プラットフォームを同じタイミングでリリースできるとも限りません。チームとしては独立した専用のモバイルアプリの提供と、iOS/Android同時リリースはなんとしても達成したかったため、ネイティブでの開発はスケジュール面でのリスクが大きいと感じていました。 一方で(メルカリ ハロアプリではなく)メルカリアプリはiOS/Androidネイティブで実装されています。リソースアロケーションという意味ではメルカリグループ内では圧倒的な優位性がありました。社外にも当然ながら開発できる人は多いです。しかし前述のとおり初期メンバーは数が少なく、当時は様々な事情により他のチームからメンバーを確保できる保証もありませんでした。(なお、US版のメルカリはReact Nativeで実装されており、こちらもノウハウの面で優位性がありました) パフォーマンスについて懸念する意見もでました。この点についてはiOS/Androidネイティブが一番優れていることに議論の余地はありません。「Flutterのようなクロスプラットフォームで作っても結局ネイティブで作り直す必要があるのではないか」といった指摘もありましたが、現時点では最高のパフォーマンスを追求するよりもまずはリーズナブルにサービスを立ち上げ、お客様に利用してもらうことが何より大事だと判断しました。幸いにもサービスの特性上、iOS/Androidのパフォーマンスをフルに求められるケースは今のところ多くありません。なお、「メルカリアプリ」もサービス開始してから4年ほど経った頃にフルスクラッチでアプリを再開発しています。まずはサービスがそこまで軌道に乗ることが大事ですし、数年後にやってくるかもしれない再開発のタイミングで必要があればiOS/Androidネイティブに切り替えるでも良いだろうという判断になりました。 最終的にはこれらの論点を総合的に踏まえ、Flutterがメルカリ ハロにとっては一番マッチしそうという判断をしました。 メルカリ ハロというサービスだけでなく、メルカリグループとしてみたときにこの判断が本当に正解だったかは今も分かりません。ただ現状から考えると開発コストやパフォーマンスなど、総合的にバランスの取れた開発環境になっていると感じるので、妥当な決断だったのかなと思っています。 おわりに メルカリ ハロで使われている技術スタックやアーキテクチャ、その意思決定に至るプロセスについて、ほんの一部ではありますが簡単にご紹介しました。 新規サービスを立ち上げるうえで技術選定は非常に難しいことだと思います。ビジネスを成功させるために様々な観点から意思決定を行う必要があります。さらに一度決めたものをあとから変更するのは現実的に不可能なことがほとんどであるため、責任は重大です。ただ、同時に多くのエンジニアにとって「楽しく、やりがいのある瞬間」でもあるはずです。 会社の規模やそれぞれの状況によって判断の基準が変わってくるため正解はありませんが、メルカリ ハロではこのように技術選定してきました。これからサービスを立ち上げるみなさんにとって少しでも参考になれば幸いです。 Links 連載:Mercari Hallo, world! -メルカリ ハロ 開発の裏側- メルカリではメンバーを大募集中です。メルカリ ハロの開発やメルカリに興味を持った方がいればぜひご応募お待ちしています。詳しくは以下のページをご覧ください。 Software Engineer, Frontend – Mercari/HR領域新規事業 (Mercari Hallo) Software Engineer, Backend – Mercari/HR領域新規事業 (Mercari Hallo) Software Engineer, iOS/Android (Flutter) – Mercari/HR領域新規事業 (Mercari Hallo) Software Engineer, Site Reliability – Mercari/HR領域新規事業 (Mercari Hallo) QA Engineer – Mercari/HR領域新規事業 (Mercari Hallo)
こんにちは。メルカリのVPoE Workの @godriccao です。『 連載:Mercari Hallo, world! -メルカリ ハロ 開発の裏側- 』の1回目を担当させていただきます。スピードがクリティカルであるメルカリ ハロの展開を支えるエンジニアリングを紹介いたします。 実現したい世界は「新しい出会いを繋ぎ、信頼と機会をひろげる」 メルカリのミッションは「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」です。フリマアプリ「メルカリ」でのモノの循環に始まり、これまで「お金」「信用」「暗号資産」を循環させてきました。 今年3月には空き時間おしごとサービス「メルカリ ハロ」を一都三県で提供を開始し、わずか1ヶ月で登録者数250万人に到達、 4月16日より全国展開 しました。いつもお使いのメルカリに「はたらく」タブが追加されると共に、「働く」機能に特化した専用アプリもリリースし、「時間・スキル」を循環の輪に追加しました。 メルカリ ハロのミッションは「新しい出会いを繋ぎ、信頼と機会をひろげる」です。スポットワークの新しい働き方で、「人、場所、おしごと」と新しい出会いを作り、社会課題を解決しながら、新しい価値の循環を広げたいと考えています。 とにかくスピードが重要 スポットワーク市場はネットワーク効果が働いています。おしごとを探す側とおしごとを提供する側、数が多ければ多いほど需給のマッチング効率が上がり、おしごと成立のチャンスが増えます。 またスポットワーク市場は発展途上で、すでに一定のプレイヤーが存在しています。この市場では、ネットワーク効果の強さによって、初めて成長できるプレイヤーが勝つことができます。だからこそ、スピードが最も重要です。 新しいサービスを展開するとき、完璧に作ることよりも、お客さまの声を聞きながら高速にイテレーションするほうが大切です。 爆速開発スピードと品質を両立したメルカリ ハロのエンジニアリング メルカリ ハロのサービス開発に着手したのは2023年の4月からです。2023年10月までは極少人数でサービスの基礎をしっかり作り、10月からチームの人数を一気に増やしました。その後、「メルカリ ハロ」アプリ、事業者管理画面、カスタマサポートツールの機能をさせると同時に、フリマアプリ「メルカリ」の6つ目のタブである「 はたらくタブ 」も開発を鋭意に進めました。2024年3月6日には、上記のすべてのコンポーネントがメルカリ ハロサービスのローンチとともにリリースされ、更に多くの機能を追加し、4月16日に全国展開しました。 2200万超のMAUを持つフリマアプリ「メルカリ」のお客さま基盤をメルカリ ハロで活用するためには、機能面と性能面で一定以上の品質を担保することが必要です。では、なぜ爆速なリリースを実現しながらも品質を担保できたのでしょうか。 メルカリグループの All For One な総力戦 メルカリ ハロの成功は、メルカリグループ全体の総力戦によるものです。各チームの協力がなければ、短期間で高品質なサービスを提供することはできませんでした。具体的には、以下のチームが重要な役割を果たしました。 Architectチーム :開発初期のアーキテクチャー選定とリリース時の品質保証(PRC)に協力。彼らの専門知識と経験により、堅牢なシステム設計と高品質なリリースが実現しました。 Platform、Network、SREチーム :インフラ構築やトラブルシューティングに協力し、スケーラブルで信頼性の高いインフラを提供。これにより、サービスのパフォーマンスと可用性が確保されました。 メルペイとメルカリのFoundationチーム :IDP、KYC、加盟店基盤、決済基盤、- Growth基盤などのFoundation系サービスを提供。これにより、複雑なシステムも短期間にメルカリ ハロにインテグレートでき、品質も保証されました。 これらのチームからの手厚い且つプロフェッショナルなサポートと、しっかり整えられた基盤サービスの提供があったからこそ、短期間で高い品質の意思決定とサービスレベルの担保が可能となりました。 メルカリ ハロ組織の Move Fast と All For One メルカリ ハロの初期メンバーは、ほとんどが元々株式会社ソウゾウのメンバーです。ソウゾウのメンバーは、ベンチャー精神を誰よりも持ち、「 Move Fast 」というバリューを大切にしています。個々のエンジニアがオーナーシップを持って意思決定できるよう、ソウゾウのメンバーはメルカリ ハロのProduct、Design、Backend、Frontend、Mobile、QA、SREチームの骨組みを作り上げました。 メルカリ ハロ組織全体は初期から一丸となり、異なる職種間でも密に連携し、成功のためにあらゆる行動を取りました。エンジニアチーム内やProductチームとの連携はもちろん、Marketing、Customer Support、Sales、Partner Successチームとも密に連携できました。Customer SupportからのVoice of Customer、Partner SuccessからのVoice of Partnerを毎日シェアし、ソリューションを一緒に考えながら、開発の優先度を柔軟に調整してきました。 さらに、Salesの事業者商談にエンジニアも参加し、デモで企業のお客さまの心を捕まえた事例も、この組織の日常的なものになっています。このように一丸となることで、高速なイテレーションが実現しました。 No “Major” Incident メルカリ ハロはリリース後、2200万超のMAUを持つフリマアプリ「メルカリ」のユーザーにリーチ可能なサービスです。これだけの規模でサービスを提供するためには、一定以上の品質が求められます。品質の低いリリースは、ネガティブインパクトも非常に大きくなります。 そこで、私たちはリリース目標として「No “Major” Incident」を掲げました。この目標の背後には、大きなインシデントを発生させないという意図もありますが、同時に、スピードと両立するために、あえて「小さなインシデントは起こしても良い」という方針をチームに宣言しました。これは、スピードを重視しつつ、重大な問題を未然に防ぐための戦略です。 この方針により、チームは細かいトラブルを通して学び、システム全体の可用性を高めることができました。結果として、リリース後には大きなインシデントは発生せず、一定の品質を維持することができました。 メルカリ ハロエンジニアリングのこれから サービスローンチしたばかりなので、やりたいことはたくさんあります。 技術面から言うと、アルゴリズム、ML、LLMなどの技術を含めてうまく活用し、今まで存在しなかった感動的な「人、場所、おしごと」との「出会い」を作りたいと考えています。メルカリの強みであるお客さま基盤とデータをうまく活用し、メルカリ ハロで蓄積した新しいデータを含め、「新しい信頼と機会」をひろげたいと思います。 組織面から言うと、開発のボリュームと複雑度が指数的に増えている中、事業成長スピードと共にスケールする組織体制を作ることが個人的に一番楽しめる課題です。 長期的には、「働き方」や「雇用の方法」そのものが変わっていく転換期に突入していくと感じています。スポットワークを始め、「はたらく」という概念の転換を牽引するサービスになりたいです。そして、個人的にはメルカリ ハロ事業の海外進出の可能性にも期待しています。 最後に メルカリ ハロ開発チームから、より具体的なエンジニアリングエピソードをこれからお送りいたしますので、お楽しみにしてください! Links 連載: Mercari Hallo, world!  -メルカリ ハロ 開発の裏側- メルカリではメンバーを大募集中です。メルカリ ハロの開発やメルカリに興味を持った方がいればぜひご応募お待ちしています。詳しくは以下のページをご覧ください。 Software Engineer, Frontend – Mercari/HR領域新規事業 (Mercari Hallo) Software Engineer, Backend – Mercari/HR領域新規事業 (Mercari Hallo) Software Engineer, Site Reliability – Mercari/HR領域新規事業 (Mercari Hallo) Software Engineer, Machine Learning Leader – Mercari/HR領域新規事業 (Mercari Hallo) QA Engineer – Mercari/HR領域新規事業 (Mercari Hallo)
こんにちは!メルカリのQA Engineering Managerの @____rina____ です。先日、3月6日にメルカリグループの新規事業「 メルカリ ハロ 」がオープンされました。 メルカリ ハロは好きな時間に最短1時間から働ける「空き時間おしごとアプリ」です。仕事を探して、働いて、給与をもらうすべてをスマホで簡単に行うことができます。 またメルカリ ハロは、2023年4月に立ち上がったメルカリWorkチームという、メルカリグループの中の独立した組織で開発が行われています。システムもメルカリのメインのシステムからは独立したかたちで構成されており、メルカリグループとしての技術基盤を活かしつつ、さまざまな技術的なチャレンジを積極的に行っています。 そんなメルカリ ハロのオープンまでの約1年間の開発の裏側を、これから毎週公開していきます! 初日は、 @godric が執筆予定です。 公開に関しては、メルカリ公式DevX(旧Twitter) @mercaridevjp jでも随時お知らせします。ハッシュタグ #メルカリハロ開発の裏側 で検索してみてください。 メルカリの新しい事業での技術的チャレンジを広く届けられたらと思っていますので、どうぞお楽しみに!
こんにちは。メルペイ Engineering Engagement チームの mikichin です。 メルカリは、5月25日から開催される技術書典16にゴールドスポンサーをしています! メルカリ技術書典部では、有志メンバー5名による業務や趣味の技術についてまとめたものとメルペイ立ち上げ当時に戻れたらどんな技術選択をしていたかを振り返るインタビューをまとめた、ここでしか手に入らない2つの新刊を準備しています。 本記事では、新刊とメルカリ技術書典部が販売している本の購入方法についてご紹介します。 技術書典 について ITや機械工作とその周辺領域について書いた本を対象にした同人誌即売会。 技術者たちの「コミケ」とも言われています。 メルカリでは、技術書典3からスポンサーをしており、直近3連続ゴールドスポンサーです。また、有志メンバーで構成されたメルカリ技術書典部では、定期的に新刊を販売しています。 技術書典 16 オンライン開催:5月25日(土)〜6月9日(日) オフライン開催:5月26日(日)池袋・サンシャインシティ 展示ホールD(文化会館ビル2F) 新刊について 技術書典16では、メルカリ技術書典部は新刊を2冊準備しています。 Unleash Mercari Tech! vol.3 有志メンバー5名による業務や趣味の技術についてなどをまとめた一冊。 それぞれが非常に濃い内容となっているので、どれか1つでも興味を持っていただけるとうれしいです。 〈目次〉 第1章 AI時代にひねくれた選択? – 業務委託から正社員への変化球 第2章 CUEでBrainfuckインタープリターを作る 第3章 Goのエラーハンドリングを考える 2024 第4章 真剣に商業登記簿APIを作った話 第5章 OAuth 2.0 ClientをTerraform Custom Providerで宣言的に管理してみた URL: https://techbookfest.org/product/4JE8riJdXX5y1vBEYq7v8L Unleash Mercari Tech! vol.4〜メルペイ立ち上げ当時に戻ったら?〜 メルペイがリリースしてから丸5年。その当時、最善の選択をし開発をしてきていますが、メルペイのサービス拡充はもちろん、ビットコインが売買できるメルコインができるなど、(おそらく)想定していなかった状況に発展してきています。 そこで、「今の知識を持ったまま、メルペイ立ち上げ当時に戻るとしたらどうしてたか?」をテーマにインタビューを行い、まとめました。 各技術領域で、自社サービスの拡大や開発する上で提供されている機能のアップデートなど今の状況を踏まえ、今だったらあのときの開発をどのように進めていたかを振り返っています。 〈目次〉 第1章 Payment Platform編 第2章 iOS / Android編 第3章 Engineering Manager編 第4章 Platform Engineering編 第5章 SRE編 第6章 Architect編 第7章 元メルペイCTO編 URL: https://techbookfest.org/product/uVmfrDWUZd5JD5wJkPndxL オフライン会場で販売します! 5月26日、オフライン会場新刊含め、メルカリ技術書典部の本を販売いたします!入口入ってすぐの「協04」でお待ちしてます。 オンラインでも購入が可能です。 https://techbookfest.org/organization/47710001 執筆したメンバーの多くはブースにいる予定です。オフラインでご参加される方は、ぜひ会場でお会いしましょう!
search infra teamのmrkm4ntrです。我々の運用するElasticsearchにはFunction Score Queryを使ったリクエストが送られてきます。Function Score Queryはサブクエリのスコアに任意の関数を適用できるというもので、とても便利な機能ですが、同時にTop K(スコアが大きいものからK個を取得する場合)クエリ処理の最適化の恩恵を受けられなくなるという欠点もあります。この記事では、Function Score Queryに用いる関数の性質を利用し、Function Score QueryとTop Kのクエリ処理の最適化を両立させる方法について説明します。本記事は読者が検索エンジンの仕組みにある程度詳しいことを想定しています。 Top Kのクエリ処理の最適化 Elasticsearchの検索機能を提供しているライブラリLuceneには、Top Kを取得する際に、Top Kに入る見込みのないもののスコア計算をスキップすることで、パフォーマンスの最適化を図る機能が存在します。 例えば( ”search” OR “engine”)のようなクエリがあり、”search”というtermに対応するposting listの最大スコアが5.0、”engine”というtermに対応するposting listの最大スコアが3.0だとします。 BM25 ( https://ja.wikipedia.org/wiki/Okapi_BM25 ) にて各termに対するドキュメントはスコア付けされるため、indexの構築時に最大スコアが決まります。両方を含む文書のスコアは5.0 + 3.0 = 8.0になります。 ここでスコアの高い順にTop 10を検索することを考えます。この時大きいものから10番目のスコアがmin competitive scoreと呼ばれるものになります。つまり、このmin competitive scoreよりも大きいスコアをとりえない文書はスコア計算する必要がありません。 仮にmin competitive scoreが3.0より大きい値とします。この場合”engine”のみを含む文書のスコアはmin competitive scoreより大きくはならないので”engine”のみを含む文書のスコア計算はスキップできます。本来ならばORはそれぞれのtermのposting listを全て走査する必要があるのですが、”search”のposting listに存在する文書のみのスコア計算をすれば良いことになります。このような手法によりクエリのパフォーマンスを向上させることができます。 Function Score Query Function Score Queryは以下のようなクエリです。クエリを実行した結果はそのまま使うのではなく、サブクエリを実行した結果にfunctionsで指定された関数の戻り値を結合したスコアを最終スコアとして利用します。デフォルトの結合方法は乗算ですが、 score_mode の値によって動作を変更できます。 { "query": { "function_score": { "query": { … // サブクエリ }, "functions": […], "score_mode": … } } } 上記のTop Kクエリ処理の最適化は最大スコアがindex構築時に決まることが前提でした。Function Score Queryを使った場合、サブクエリのスコアに任意の関数の戻り値を結合することができるため、文書の最終スコアがクエリの実行時に決まることになります。このような状況下では先ほど説明したTop Kクエリ処理の最適化を使うことができません。 Function Score Queryを使うとTop Kクエリ処理の最適化がされていないのは、コードを確認すると明白です。min competitive scoreをLuceneのScorerに伝えるには setMinCompetitiveScore というメソッド( https://github.com/apache/lucene/blob/releases/lucene/9.10.0/lucene/core/src/java/org/apache/lucene/search/Scorable.java#L48-L57 ) を使うのですが、ElasticsearchのFunction Score QueryのScorerである FunctionFactorScorer においては setMinCompeitiveScore を呼んでいません。これによりTop Kクエリ処理の最適化がされていないことがわかります。 https://github.com/elastic/elasticsearch/blob/v8.13.2/server/src/main/java/org/elasticsearch/common/lucene/search/function/FunctionScoreQuery.java#L371-L487 TopKクエリ処理の最適化が可能な関数 確かに任意の関数に対してTop Kクエリ処理の最適化を実現するのは不可能です。しかし、利用する関数によってはTop Kクエリ処理の最適化の恩恵を受けれるものも存在します。例えばよく使われる、作成日時からの時間経過でスコアを指数関数的に減衰させる以下のようなFunction Score Queryです。 { "query": { "function_score": { "query": { … // サブクエリ }, "functions": [ { "exp": { "created_time": { "scale": "10d", "decay": 0.8 } } } ], "score_mode": "multiply" } } } このクエリでは、最終スコアは (指数関数的減衰 * サブクエリのスコア) となります。 重要なのはこの減衰は現在日時と作成日時の差において単調減少であるということです。 Luceneでは、posting listをあるフィールドの値で構築時にソートすることができます。posting listを作成日時の降順にソートすることで、上記の減衰関数を用いる際に、posting list内の前のドキュメントよりも必ず減衰値が大きくなることが保証できます。 これにより、サブクエリのみのmin competitive scoreが5.0、今の評価しているドキュメントの減衰が0.7だとすると、実質min competitive scoreを 5.0 / 0.7 = 7.14として扱うことができます。これは単にTop Kクエリ処理の最適化が使えるだけではなく、min competitive scoreがposting listを進むたびに増幅していくことになり、より多くのドキュメントの評価をスキップできる可能性が高まります。 PoCの実装とLuceneへの貢献 それをふまえて、前述の減衰関数を受け取りTop Kクエリ処理の最適化を実現するElasticsearchの新しいクエリをElasticsearchのpluginとして実装しました。基本的にはElasticsearchのFunction Score Queryと同じですが、サブクエリのScorerの setMinCompetitiveScore を適宜呼び出す部分が異なります。 実装自体は簡単でしたが、いざ動作確認すると全くパフォーマンスに変化がありませんでした。リモートデバッグで確認したところ、サブクエリ内のBoolean QueryにTop Kクエリ処理の最適化に必要な WANDScorer ( https://github.com/apache/lucene/blob/releases/lucene/9.10.0/lucene/core/src/java/org/apache/lucene/search/WANDScorer.java ) や BlockMaxConjunctionScorer ( https://github.com/apache/lucene/blob/releases/lucene/9.10.0/lucene/core/src/java/org/apache/lucene/search/BlockMaxConjunctionScorer.java ) が使われておらず、代わりに使われていたのは、それぞれ DisjunctionSumScorer ( https://github.com/apache/lucene/blob/releases/lucene/9.10.0/lucene/core/src/java/org/apache/lucene/search/DisjunctionSumScorer.java ) と ConjunctionScorer ( https://github.com/apache/lucene/blob/releases/lucene/9.10.0/lucene/core/src/java/org/apache/lucene/search/ConjunctionScorer.java ) でした。 調べてみたところ、 WANDScorer や BlockMaxConjunctionScorer はオーバーヘッドが大きいためトップレベルの句の場合でしか利用されないようです。つまり ((A AND B) OR (C AND D)) のようなクエリの場合はORは WANDScorer が使われますが、ANDには ConjunctionScorer が使われることになります。サブクエリをトップレベルの句と認識させるためには、新しく追加したクエリからサブクエリの ScorerSupplier の setTopLevelScoringClause メソッド( https://github.com/apache/lucene/blob/695c0ac84508438302cd346a812cfa2fdc5a10df/lucene/core/src/java/org/apache/lucene/search/ScorerSupplier.java#L46-L54 ) を呼ぶ必要があります。そのように修正したところ、無事に WANDScorer と BlockMaxConjunctionScorer が使われるようになりました。 これでパフォーマンスが改善するかと思われましたが、相変わらず変化がありません。さらに調べると、 WANDScorer の下の ConjunctionScorer (ORの下のAND)と BlockMaxConjunctionScorer の下の DisunctionSumScorer (ANDの下のOR)が最大スコアとしてInfinityを返していました。 Luceneの実装を見ると確かにInfinityを返すようになっています。何故Infinityを返すのか全く意図が掴めずに頭を抱えましたが、トップレベルの句以外は最適化をしないという修正( https://github.com/apache/lucene/pull/12490 ) での漏れだということがわかりました。そこで、それぞれ最大スコアに正しい値を返すように修正したところ、ようやくパフォーマンスが大きく改善することが確認できました。同様にprofile APIにおいても修正漏れがあったため、以下のプルリクエストをLuceneのupstreamに送りました。今は全てmergeされています。 https://github.com/apache/lucene/pull/13031 https://github.com/apache/lucene/pull/13043 https://github.com/apache/lucene/pull/13066 上で実装したpluginを使って我々のワークロードを模したパフォーマンステストを実施したところ、既存のクエリの95pが約35%、99pが60%下がりました。さらにコストも約1/3削減できることがわかりました。 ただし、この最適化の恩恵を受けるためにはリクエストパラメータのtrack_total_hitsをfalseにする、もしくは十分小さい値(1,000以下)に設定する必要があります。というのも最低でもこの件数はヒットするドキュメントを検索する必要があるため、スキップ対象が少なくなるからです。歴史的経緯により、この値をすぐに小さくすることは難しく、また最近この最適化ができない形のクエリがテストされているため、この最適化を実際に我々の本番環境に適用できるかは検討中です。 さいごに この記事ではElasticsearchのFunction Score Queryに使われる関数の単調減少性を利用してTopKスコア処理の最適化の恩恵を受ける方法について述べました。このタスクでLuceneのスコアリング周りの内部実装についての理解が深まりました。また、仮説を実装し、何度もうまくいかない原因を潰していくサイクルは大変でしたがエキサイティングでした。もし仮にこのような最適化を適用できるクエリを利用されている場合は、試してみていただけると幸いです。
*Security & Privacy Divisionの原動力となっているバリュー、それは「By design, by default and at scale(設計で叶える、デフォルトに組み込む、スケールに対応する)」です。 Oktaのユーザーアクセス権の棚卸し作業をPlatform Security Teamに率いてほしいという依頼が寄せられました。このプロジェクトを進める中、私たちは過去の設定や慣習と向き合わなければなりませんでした。なぜなら古いやり方が残っていることで「by design」と「by default 」な管理が難しい状態だったからです。そのような状況にも関わらず、私たちは「at scale」で組織全体を網羅した検査を実施する必要がありました。 この記事では、これらの課題に私達がどのように挑んだかを説明します。 使用したテクノロジー: Neo4j: https://neo4j.com/ Okta: https://www.okta.com/ Slack: https://slack.com 概要 メルカリでは、従業員のSaaSへのアクセスのほぼすべてをOktaを使って認証しています。アクセス権とは、許可するのは簡単ですが取り消すことが難しいものです。 不要なアクセス権を一掃するため、Neo4jを使用して組織とアプリケーションへのアクセスをグラフ化し、ユーザーインターフェースにはSlackを使って調査を実施しました。 全社的に提供しているアプリケーション以外で、現在付与されているアクセス権がすべて必要なものかを全社員に聞き取り調査。 その後、各マネージャーにそられのアクセス権がそれぞれの職責と照らし合わせて妥当かを確認。 情報を集約後、自己申告に基づいて不要なアクセス権をOkta APIを通じて直接削除。 これらをこれらを実装することで社内全体を対象とした大規模な検査を行うことができました。 これまでの道のり メルカリは今年創業11年を迎えました。今でこそ中堅企業に成長したものの、多くの10代が思春期を通過するように、成長痛に似たいくつもの苦労を乗り越えてきました。会社の拡大に伴い新たな従業員の入退社を経験し、アクセス管理に関するニーズも変化していきました。新たに導入されるサービスもあれば、廃止されるサービスもありました。過去にアクセス権の付与を決定した根拠や理由も、現在に至る過程で失われてしまいました。 メルカリはSaaSに大きく依存しているため、IDを管理するソリューションとしてOktaとGoogle Workspaceを使用しています。今回、アクセスレビューのプロジェクトに着手した時点で、Oktaのみですでに約8000のユーザー、500のアクティブアプリケーション、1400のグループが存在していました。アクセス権の削除は退職のケースであれば比較的簡単です。しかし、社内異動の場合は細心の注意を必要とする作業です。また勤務年数の短い従業員であればアクセス権の整理も比較的簡単にできますが、勤務年数が長い場合は長年の間にアクセス権が増えてしまっており見直しが大変な場合もあります。その結果、秩序が失われ、そのせいで複雑さも増してクリーンな状態にするのが難しくなっていました。 プロジェクトの目標 Security teamの最終的な目標は、アクセス権の乱用よって引き起こされる潜在的な被害を可能な限り減らすことです。 アクセス権のクリーンアップによりさまざまな副次的効果が期待できます。 認証システムにおける無秩序さを減らす 各従業員/チームがどのようなシステムを使用しているか、より明確に理解できるようになる システムオーナーにその人のアクセスがまだ必要なのかについてヒアリングし、その調査結果をドキュメント化するというSecurity teamメンバーのストレスを軽減する どのように管理されているのか、それはなぜなのかについて理解するための時間を減らす もう必要ない可能性のあるSaaSを特定する クリーンな状態に基づいて、より優れたアカウントライフサイクル管理のパターンを作成する その他 考えうる戦略 「最小特権の原則」は、事故やインシデントのリスクを軽減する最善の方法のひとつであるものの、その適用と維持には相当な労力が必要であることが予想できました。 「最小特権の原則」を適用して最終目標を達成できるということは、私たちが以下のことを理解している(または把握している)という意味でもあります。 社内にどのようなシステムがあるか それらのシステムオーナーと管理者は誰か 誰がどのアクセス権を使ってこれらのシステムにアクセスできるか 各システムが処理し保存しているデータの種類は何か これらシステムが使用される可能性のあるビジネスプロセスは何か 各社員とシステム、また取り得る行動とそれに伴う結果との間にあるつながり Oktaのデータをもとに簡単に計算してみましょう。アプリケーションは500個あり、ユーザー数は8000です。それらが直接割り当てられている、または1400のグループを通じて割り当てられています。各アプリケーションには複数のユーザーがおり、各グループにも複数のユーザーがいます。アプリケーションによっては複数のグループが存在するものもあり、それを組織体制と全ユーザーにリンクさせると、メルカリ社内には20万を超える関係性が存在するという計算になります。この段階では、各ユーザーのアクセスレベル、各システムで処理・保存されるデータの種類、ユーザーにとってどのようなアクションが可能かすらも分かりません。 仮にOktaから得られる情報のみを起点としましょう。1秒間で判断を下すために必要な情報はすべて揃っているという前提の下、1件の関係性につき1秒かかるとします。それでも前述の20万件の関係性をレビューするには丸々55時間かかってしまいます。したがって、一人の人間が全員分のアクセス状況を見ることは明らかに合理的ではありません。 では、他にも実践できそうな方法はないか見ていきましょう。 戦略1:重要なシステムのみにスコープを絞る 重要なシステムはどれなのか?どのような条件に従って決めるのか?これらの条件を定義しようとすると、考えうる要素が多すぎて誰もが容易に迷子になってしまいます。でも魔法なんて存在しないのですから、どこかしら複雑さが残るのもやむを得ないことです。もし、重要なシステムや機密性の高い情報を含むシステムを特定するという方法を選んでも、誰か(またはどこかのチーム)がすべてのシステムに目を通し、それらが何に使われ、どのようなユーザーがアクセスすべきかを理解して分類しなければなりません。 ただ同時に、私たちは社内にあるシステムを大体把握できています。とりあえず手をつけて始めてみたほうが、一通り情報をかき集めてから目の前にそびえ立つ到底登れそうにない頂に絶望するよりも理にかなうはずです。そうでもしないと、いざ山頂に辿り着いたとしても、全員が疲れ果てているか、すでに会社を辞めた後かのどちらかになっていることでしょう。 もうひとつの問題は、このレビューを行っている間も社内の環境は変化し続けるということです。レビューが完了するまでの間に新たなシステムが導入され、そこにユーザーが追加され、それらシステムは新たなユースケースのために使用されることでしょう。川の流れを止め、その間に魚を数えるようにはいかないのです。 戦略2:フルスコープ、システムオーナーに依頼する システムオーナーに依頼するというのはどうでしょう?アプリの数は500。ユーザー数は1人の場合もあれば全従業員+業務委託が含まれる場合もあります。各システムオーナーが平均10システムを担当するとしても、50人がそれぞれ約4000件のアクセスを確認し、職務内容やサービスの性質、アクセスされるデータに基づき、これらユーザーがアクセスすべきか否かを判断をしなければならないことになります。どこかの時点で、少なくともいくつかの重要なシステムにおいては必要かもしれませんが、秩序のない初期の状態においては有効なアプローチとは言えません。 また、システムオーナーの多くはマネージャーやディレクターです。彼らの時間は貴重です。時間のない人は優先順位を意識するため、この業務はどんなに重要でも後回しにされる可能性が高いでしょう。 戦略3:まずユーザーに質問し、マネージャーにその回答を確認してもらう 他の誰かに聞く前に、まだシステムへのアクセスが必要かどうかをユーザー本人に質問することは可能です。 今回採用した方法はまさにこれで、まずは従業員に以下のように聞いてみます。 これらシステムすべて対してまだアクセス権は必要ですか?はい/いいえ/分からない 回答が集まったら(または期限が過ぎたら)、彼らのマネージャーに質問します。 各メンバーの役割と責任を考慮した上で彼らの回答をレビューし、それらアクセス権が適切かどうかを確認してください。 今回はそこまで実施しなかったものの、3段階目のレビューとしてシステムオーナーへの質問も考えました。 これらのチームはあなたの管理するシステムを使用しています。このシステムの用途を考えると、彼らがアクセスすることに問題はありませんか? この方法の場合、アクセス権を維持するか取り消すかの判断をアクセス権を実際に使用する人に委ねることになります。また、権限の確認を全従業員に割り振ることができるという利点もあります。残念ながらマネージャーにはメンバーがアクセスの必要性を主張しているアプリケーションをすべて確認してもらわなければなりませんが、求められているのは確認だけなので検査は比較的早く終わるはずです。妥当かどうかを簡単に確認するだけなら、通常ひとり5分もかかりません。場合によってはもう少しかかるかもしれませんが、DM(ダイレクトメッセージ)で確認することが可能です。 このプロセスを通して私たちは「Security TeamのAさんが給与システムのアクセス権を持っている」といった、本来であれば例外的なケースを発見したいと思っていました。もし本人が「必要だ」と言ったとしても、少なくともマネージャーにその妥当性を確認してほしいからです。 このプロセスを実施している間、「このアクセス権が付与されているなんて知らなかった」「そもそもこのサービスってなに?」といったコメントが数多く寄せられました。 Oktaの使われ方からして、今回選択した方法が完璧とはいえないことは分かっています。ですが、私たちはOktaでアプリケーションのアクセス権を付与しています。メルカリの場合、アプリケーション内で権限を付与することはほとんどありません。そしてこれはシステムオーナーに委ねられています。​​このようなやり方のため、そもそも最初からアクセスできる対象を制限することでかなりの違いが出てきます。さらに追加のクリーンアップは後からでもできます。その時に、いくつか重要なシステムを優先的に対応することも可能です。 プロセスの実施方法 さて、ここまでに「なぜ検査を行うのか Why 」、「どのシステムを対象とするか What 、「誰が回答し、誰がレビューするのか Who 」が明確になりました。次は、「どうやって全員に質問し、回答を集めるのか How 」です。 スプレッドシートでの検査(現実的ではありません) すべてのユーザー/グループ/アプリを含めると20万行になってしまいGoogleスプレッドシートには収まらないし、全員に開いてレビューするようお願いするのもばかげています。シートの完全性を確保することは可能ではあるものの、さらに多くの作業が必要となります。 Webベースでの検査(現時点では見送る) うまくいくとは思いつつも、少なくともこの段階では検査を実施するためのウェブページは作らないことにしました。 OktaのIdentity Governance Access Certificationキャンペーン機能(我々には有効ではありません) Oktaには Identity governance access certification という機能があります。Oktaが将来的にアクセスレビューとして使用されることを承知の上で一から設定されているのであれば、この機能を利用する方法はうまくいくでしょう。ここではオーナーは特定グループに割り当てられ、そのグループはアプリケーションに割り当てられます。キャンペーンを実施している間、グループオーナーはグループのメンバーがアクセス権を所有すべきかを確認するよう依頼されます。この方法は、グループオーナーがそのユーザーがアクセス権を持つべきかを判断できることを前提としています。グループは多くの場合チームを意味するため、メンバーの管理はマネージャーに委ねられるでしょう。そのチームグループは、アプリケーションオーナーから必要なアプリケーションに割り当ててもらう必要があります。しかし、Oktaには(現時点では)アプリケーションオーナーを定義する属性がありません。 通常のケースはこの方法で問題ないのですが、例外ケースの場合は他のグループを通じて管理する必要があり、その例外を理解できる人に割り当てる必要があります。 私たちの今の状態で考えると、グループ=チームではなく、通常(必ずではないものの)アプリケーションへのアクセスを許可するために使われているので、この方法は有効な策ではありませんでした。この状態は、これらグループにオーナーが割り当てられていないという意味でもあります。システムオーナーに Slack + バックエンド + Neo4j(選んだ方法) 私たちはユーザーインターフェイスとしてSlackを、バックエンドデータベースとしてNeo4jを使うことに決めました。バックエンドにグラフデータベースを使うことで、チーム、メンバー、そのマネージャーに対する問い合わせと、彼らがどのグループを通じてどのようなアクセス権を持っているかを(比較的)簡単に照会できるからです。とりあえず今回は、アプリケーション内で付与されたアクセスのレビューは対象外にすることも決めました。 このブログ記事の残り部分では、私たちが実施したプロセスを説明します。 検査を進めるためには、いくつかのステップを経る必要がありました。 組織構造を復元する Okta上のアプリケーション、グループ、ユーザー、すべてのメンバーシップとそれらの関係を復元する 組織とアクセスを記したグラフを作成する 各チームと従業員向け:Slackのフォームを作成し、どのアクセスがまだ必要かの確認を依頼する ユーザーからの回答を集める 各マネージャー向け:Slackのフォームを作成し、メンバーが必要だと申告しているアプリに同意するかどうか質問する。ユーザーからの応答がない場合はマネージャーに決めてもらう マネージャーからの回答を集める 妥当性の確認:明らかにおかしな回答がないかレビューする Okta APIを通じてアプリケーションへのアクセスやグループメンバーシップを取り消す 変更を記録する ステップ8を除く上記のすべての操作はコードを通じて行います。そうすればこのプロセスを確実に再現することができるからです。 組織構造とアクセス権をデータベースで表す Oktaのユーザーは、チームとマネージャーを示す属性を持つように設定することができますが、いくつか実際の組織構造との相違点が見られたため、最終的には別のソースから完全な構造を抽出し、その構造をOktaのユーザーとリンクさせなければなりませんでした。組織構造をグラフ化することで、Okta上の関係ではなく実際の組織構造を明らかにすることができたので非常に便利でした。 その後、Oktaから特定の組織単位や チームにおけるアプリ、グループ、ユーザー間の関係を抽出することができました。 イメージ1:Oktaと人事データをNeo4jグラフデータベースに統合し、Mermaid.jsで可視化 スキーマ:組織、チーム、マネージャー、メンバー、グループ、アプリケーション間の関係性 オーバーエンジニアリングを防ぐために、少なくとも最初のうちはいくつかショートカットを採用し、各従業員の単位としてOktaUserノードを使用することにしました。現実はもっと複雑な権限が付与された対象を特定する必要があるのですが、この段階ではこれで十分でした。 イメージ2:Mermaid.jsを使って視覚化したデータベース内における関係性の概略図 Neo4jデータベースへの書き込みが終わると、組織、チーム、各チームが使用しているアプリケーションを照会できるようになりました。組織構造のグラフはこのような様子でした。 イメージ3:Neo4jのウェブインターフェイスを使って作成したメルカリの組織構造図 以下のクエリは以下のような意味を表します: 「Platform Security」チーム直下のメンバーで、有効なOktaアプリにアクセス権があるすべてのメンバーに対して: マネージャーを取得する 直近90日間にこれらのアプリを使用したかどうかを取得する ユーザー・アプリ間の関係性のOrgノード、マネージャーノード、関係性のプロパティ、最終使用のプロパティ、およびアプリノードを返す これを元に再度、グループメンバーシップによるアプリへのアクセスを考慮します。 // Team: Platform Security MATCH (o:OrgUnit {name: "Platform Security"})<-[:IS_MEMBER_OF]-(u:OktaUser)-[r:HAS_ACCESS_TO]->(a:OktaApp {status: "ACTIVE"}) WITH o, u, r, a MATCH (u)-[:IS_REPORTING_TO]-(m:OktaUser) WITH o, m, u, r, a OPTIONAL MATCH (u)-[p:HAS_USED]->(a) RETURN o, m, u, PROPERTIES(r) AS r, PROPERTIES(p) AS p, a MATCH (o:OrgUnit {name: "Platform Security"})<-[:IS_MEMBER_OF]-(u:OktaUser)-[r:IS_MEMBER_OF]-(g:OktaGroup)-[:HAS_ACCESS_TO]->(a:OktaApp {status: "ACTIVE"}) WITH o, u, r, g, a MATCH (u)-[:IS_REPORTING_TO]->(m:OktaUser) WITH o, m, u, r, g, a OPTIONAL MATCH (u)-[p:HAS_USED]->(a) RETURN o, m, u, PROPERTIES(r) AS r, PROPERTIES(p) AS p, g, a Query1:Neo4j Cypherを使用して、特定のチームのアプリケーションとグループのアクセスリストを取得 プロセスを開始する コントローラー(アプリ)はユーザーを特定するためにチームのリストを使用しています。チームの再帰的リストは、次のようなクエリでNeo4jデータベースから簡単に抽出できます。 MATCH (t:OrgUnit)-[:IS_PART_OF*]->(o:OrgUnit) WHERE o.name = "Security & Privacy" AND t.status = "active" RETURN t.name AS team, t.orgId AS orgId, o.name AS orgName クエリ2:Neo4j CypherでSecurity & Privacyカテゴリの再帰的チーム階層を復元 ここからスコープ内のチームリストに基づいて、コントローラーから検査開始がマネージャーに通知されます。各チームメンバーにが作成され、SlackのDMで調査フォームが送信されます。 メンバーに調査フォームを送信する Image 4: Sequential flow chart detailing the member campaign process, illustrated with Mermaid.js. The assessment form sent to members is kept simple and is meant to be quick to fill. A user can click on the application name to connect to the app and confirm if they still need access to it, then select “Access needed” or “No need anymore”. イメージ4:メンバーのキャンペーンプロセスのフローチャート 回答収集用のバックエンド 調査フォームが送られたら、あとは回答を待つだけです。バックエンドで回答を受け取り、その回答に従ってNeo4jデータベースを更新する準備は整っています。 イメージ6:調査フォームからの回答を収集する手順のフローチャート 調査を実施している間、手動でマネージャーに進捗状況を送信し、未回答の場合はチームメンバーに確認してもらうよう依頼することができます。 マネージャーによる回答のレビュー 回答の回収が済んだら、未回答・未完了のメンバーがいたとしても、マネージャーにアクセスのレビューを依頼します。メンバーからの回答は一目瞭然であり、チームに関係するアプリケーションもよく知られているはずなのでこのステップは通常すぐに終わります。 マネージャーが対応しない場合は、その上司に進捗がないことを報告することができます。 マネージャーのレビューの流れは以下です: イメージ7:Mermaid.jsを使用して、マネージャーのレビュー作業のシーケンス図 マネージャーに送信されるフォームはユーザーに送られるフォームと似ていますが、必要だと回答されたアプリだけが表示されています。マネージャーはメンバーの回答を確認し、メンバーによりアクセスが必要だと判断されたアクセス権に対して、保持か削除を選択することができます。 イメージ8:Slack内のマネージャーレビューフォームのインターフェイスの例 不要なアクセスのクリーンアップ この段階では、メンバーからの回答が集まり、マネージャーからの確認も回収済みです。個別のアクセスレビューではなく、チーム単位でのアクセス権付与に同意するかの確認をシステムオーナーに依頼することもできましたが、これは今後の検査に回すことにしました。 Okta APIによるアクセス取り消しフローは比較的シンプルです。 イメージ9:アクセス取り消しメカニズムに関するステップのフローチャート まとめ 今回のプロジェクトを通して、従業員やマネージャーが正直に回答してくれると信じることで、従業員がどのアクセス権を持ち、どのアクセス権を必要としているかをレビューすることができました。多くの規格、フレームワーク、規制、ベストプラクティスでは、企業が定期的にこういったレビューを実施することが求められています。しかし、得てして複雑な組織構造や歴史的背景がからみあい、こういったレビューはすぐに手に負えなくなるものです。そこで、従業員とアプリケーション間の複雑な関係性をグラフデータベースに移行し、まず従業員にアクセス権が必要かどうかを質問することで、会社の規模に応じて検査の規模を拡大することができました。また、今回の検査は、システム分類作業に長い時間をかけることなく実施することができました。Oktaに大きく依存しているからこそ、Oktaに焦点を当てることで、大半のシステムをカバーすることができたのです。 このフローにもまだまだ改良の余地はあり、他のシステムへの拡張も可能だと考えています。アクセス許可のルールと確認をより厳格にし、プロビジョニングプロセスに組み込むこともできるかもしれません。 一方、今回私たちはすでに、アクセス中断のリスクを負うことなく、不要となった膨大な量のアクセス権を削除することができました。これは、アクセス権を取り消すか否かを判断する際に、こちらで決めたルールを使用するのではなく、従業員とマネージャーの回答に基づいて行ったからです。
こんにちは、メルカリの生成AIチームで ML Engineer をしている ML_Bear です。 以前の記事[1]では商品レコメンド改善のお話をさせていただきましたが、今回は、大規模言語モデル (LLM) やその周辺技術を活用して30億を超える商品のカテゴリ分類を行なった事例を紹介します。 ChatGPTの登場によりLLMブームに火がついたということもあり、LLMは会話を通じて利用するものだと認識されている方が多いと思いますが、LLMが有する高い思考能力はさまざまなタスクを解決するためのツールとしても非常に有用です。他方、その処理速度の遅さや費用は大規模なプロジェクトでの活用にあたっての障壁となり得ます。 本記事では、こうしたLLMの課題を克服するためにさまざまな工夫を施し、LLM及びその周辺技術のポテンシャルを最大限に引き出して大規模商品データのカテゴリ分類問題を解決した取り組みについて説明します。 課題 まずは今回のプロジェクトの背景と技術的な課題を簡単に説明します。 メルカリは2024年にカテゴリリニューアルを行い、階層構造を見直すとともに商品カテゴリの数を大幅に増やしました。しかしカテゴリ数やその階層構造がかわるということは、それに紐づく商品のデータも変更する必要があります。 通常であれば商品のカテゴリ分類は機械学習モデルやルールベースモデルを利用します。しかし今回のケースでは過去の商品に対する「新しいカテゴリ階層での正解カテゴリ」がわからないため、機械学習を使用した分類器を作成することができませんでした。また、カテゴリ数が非常に多いため、ルールベースモデルの構築も困難でした。そこで、この課題に対してLLMを活用できないかというアイディアが出てきました。 解決策: LLMとkNNによる2ステージ構成の予測アルゴリズム 結論としては以下のような2ステージ構成のアルゴリズムを組むことで今回の課題に対応しました。 ChatGPT 3.5 turbo (OpenAI API[2])で過去商品の一部の正解カテゴリを予測する 1.を学習データとして過去商品のカテゴリ予測モデルを作成 全てをChatGPTで予測できれば楽だったのですが、メルカリの過去商品は30億商品を超えるため[3]、全てをChatGPTで予測するのは処理時間的にもAPIコスト的にも不可能でした。そのため、紆余曲折を経てこのような2ステージのモデル構成としました。(すべての商品をChatGPT 3.5 turboで分類するとコスト見積もりは約100万ドル、処理時間見積もりは1.9年という非現実的な数字でした) 以下にモデルの内容を簡単に説明します。詳細については「工夫した点」で述べるため、一旦はシンプルな解説に留めます。 1. ChatGPT 3.5 turbo (OpenAI API)で過去商品の一部の正解カテゴリを予測する まず、過去に出品された商品を数百万点サンプリングし、ChatGPT 3.5 turboにその商品の「新しいカテゴリ構成での正しいカテゴリ」を予測させました。 具体的には、各商品の商品名や商品説明文、元のカテゴリ名をもとに新しいカテゴリの候補を10個程度作成し、その候補の中から正解を答えさせました。 2. 1.を学習データとして過去商品のカテゴリ予測モデルを作成 次に、1. で作ったデータセットを正解データとして、シンプルな kNN モデル[4] を作成しました。 具体的には、まず、1.で正解カテゴリを予測した商品のEmbeddingと正解カテゴリをベクトルデータベースに保存しておきます。その後、予測したい商品のEmbeddingを元に、ベクトルデータベースから類似商品をX個抽出し、そのX個の商品の最頻カテゴリを正解カテゴリとしました。 Embeddingは各商品の商品名、商品説明文、メタデータ、元のカテゴリ名などを連結した文字列をもとに計算しました。より複雑な機械学習モデルも検討しましたが、シンプルなモデルで及第点の性能が出たためシンプルなモデルを採用しました。 工夫した点 さて、ここからは今回のプロジェクトで工夫した点をご紹介します。以下のような点を工夫したので、ひとつづつ説明します。 OSSのEmbeddingモデルの活用 Sentence Transformers ライブラリによるMulti-GPUの活用 Voyager Vector DBによるCPU上での高速な近傍検索 max_tokensとCoTの活用によるLLM予測の高速化 Numba・cuDFの活用 1. OSSのEmbeddingモデルの活用 第2ステージのモデル (kNN) では商品のEmbeddingの計算が必要でした。自前でニューラルネットワークを組むことも可能でしたが、OpenAI Embeddings API ( text-embedding-ada-002 ) [5]で十分な精度が出ることが確認できたので、当初はこのAPIを利用する方針としていました。 しかし、試算してみたところ、すべての商品にOpenAI Embeddings APIを利用するのは処理時間的にもコスト的にも少し厳しいということがすぐにわかりました。 そんな中、MTEB[6]やJapaneseEmbeddingEval[7]を眺めていると英語以外の言語でもOpenAI Embeddings APIに匹敵するOSSのモデルが多数あることに気づきました。自分たちで評価用データセットを作って試してみたところ、OpenAI Embeddings API同等の精度が出たためOSSのモデルを利用することにしました。 私たちがこのプロジェクトを行なっていた2023年10月時点のデータでは、以下のモデルが高い精度を示しており、最終的には計算コストと精度のバランスを鑑み intfloat/multilingual-e5-base を利用しました。(MTEBのランキングは常時入れ替わっているため、2024年4月現在はもっと強いモデルがあると思います) intfloat/multilingual-e5-large [8] intfloat/multilingual-e5-base [9] intfloat/multilingual-e5-small [10] cl-nagoya/sup-simcse-ja-large [11] このように、OSSでも非常に高性能なEmbeddingモデルが存在しているため、Embeddingを利用するプロジェクトを行う場合は、シンプルな問題を作成して、OSSでも十分な性能を持つモデルがあるかどうかを確認してみることをお勧めします。 2. Sentence Transformers ライブラリによるMulti-GPUの活用 OSSモデルを利用することで OpenAI Embeddings APIに比べて飛躍的に処理速度が上がったものの、数十億商品を処理するにはもう少し改善が必要でした。 A100などの強力なGPUを利用できれば話が早かったのですが、世界的なGPU枯渇の影響を受けてか、プロジェクト実施時の2023年11-12月時点では強いGPUを掴むことはなかなか困難でした。(現在もあまり状況は変わっていないかと思います) そのため、V100やL4などのGPUを複数台並列で利用して対応することにしました。幸いなことに、Sentence-Transformers[12]ライブラリを利用すると以下のようなシンプルなコードで複数台のGPUを簡単に並列化できたため、非常に助かりました。 from sentence_transformers import SentenceTransformer def embed_multi_process(sentences):     if 'intfloat' in self.model_name:         sentences = ["query: " + b for b in sentences]     model = SentenceTransformer(model_name)     pool = model.start_multi_process_pool()     embeddings = model.encode_multi_process(sentences, pool)     model.stop_multi_process_pool(pool) 強力なGPUを大量に使えれば理想的ですが、それが難しい状況でも工夫次第で処理を高速化することができます。Sentence-Transformersのようなライブラリを活用して、限られたリソースを最大限に活用することが重要だと感じました。 3. Voyager Vector DBによるCPU上での高速な近傍検索 kNNを利用する際にはベクトルデータベースが必要でした。サンプリングしたとはいえ数百万商品の学習データになったため、GPUのメモリに載らない状況でした。A100 80GBなどの大きなメモリを持つGPUを使えば載ったかもしれませんが、前述の通り強力なGPUは確保が困難だったので試すことすらできませんでした。 そんな折、Spotify社製のVoyager[13]がCPUでも高速に動作すると聞いたので試してみたところ、実用に足る速度を簡単に実現できました。Embedding計算に比べると近傍探索の時間はそれほど影響が大きくなかったため厳密に他のプロダクトと比較していませんが、十分な速度を出すことができていました。 Voyagerにはメタデータ管理機能がなかったので自分たちでクライアントを書く必要がありましたが、それでも全体的には良い選択だったと思っています。 4. max_tokensとCoTの活用によるLLM予測の高速化 今回のプロジェクトでは ChatGPT 4 はコスト面から利用できず、ChatGPT 3.5 turboを使わざるを得ませんでした。ChatGPT 3.5 turboはコストの割に賢いとは思いますが、精度には少し不安がありました。そのため、Chain of Thoughts[14]を利用して説明を生成させることで精度向上を図りました。 皆さまもご存知かと思いますが、ChatGPTに説明を行わせるとずっと喋り続けることもあり、処理時間が問題となりました。そこで、 max_tokens パラメータを利用して長い話を途中で打ち切ることで処理時間の短縮に努めました。 回答を打ち切ると(Function Callingの) JSONが壊れるので、LangChain[15]のllm.stream()を利用したり、もしくは自分でJSONを復元してパースする必要があり少し手間がかかります。厳密な比較はしていないものの、この手法によって処理時間短縮と精度向上の良いバランスを取れたと感じています。 以下がLangChainの llm.stream() を利用した場合のサンプルコードです。 from langchain_openai import ChatOpenAI from langchain_core.prompts import ChatPromptTemplate from typing import Optional from langchain_core.pydantic_v1 import BaseModel, Field class ItemCategory(BaseModel): item_category_id: int = Field(None, description="商品説明から予測したカテゴリID") reason: Optional[str] = Field(None, description="このカテゴリIDを選択した理由を詳しく説明してください") system_prompt = """ 与えられる商品情報を元に、商品のカテゴリを予測してください。 商品のカテゴリは候補から選んでください。選んだ理由も説明してください。 """ item_info = " (商品データと新カテゴリ候補などを入れる) " llm = ChatOpenAI( model_name="gpt-3.5-turbo", max_tokens=25, ) structured_llm = llm.with_structured_output(ItemCategory) prompt = ChatPromptTemplate.from_messages( [ ("system", system_prompt), ("human", "{item_info}"), ] ) chain = prompt | structured_llm # streamingの最後の要素だけ取り出す # - 通常、max_tokensで回答を打ち切るとjsonが壊れてパースの処理が必要 # - langchainのstreamで実行すると常にjsonを完成させてくれるため、 # max_tokensで回答を打ち切ってもjsonをパースする必要がない for res in chain.stream({"item_info": item_info}): pass print(res.json(ensure_ascii=False)) # res: ItemCategory # {"item_category_id": 1, "reason": "商品名に「ぬいぐるみ」が含まれ"} 5. Numba・cuDFの活用 数十億商品を処理する際は些細な処理でも処理速度が気になるため、可能な限りすべての処理をcuDF[16]およびNumba[17]で高速化しました。 正直なところ Numba を書くのは苦手だったのですが、Pythonの素のコードをChatGPT 4に見せると書き直してくれるため、ほとんど自分で書く必要がなくコーディング工数を大幅に削減することができました。 まとめ ChatGPTは会話形式で利用されることが多く注目を集めていますが、その高い思考能力を活用することで、これまで面倒だったり不可能であったタスクを簡単に解決できるようになります。私たちのプロジェクトでは、膨大な商品データを新しいカテゴリに短期間で分類し直すという面倒な課題を、ChatGPTを活用することで解決することができました。 また、OSSのEmbeddingモデルやマルチGPUの活用、高速な近傍検索が可能なベクトルデータベースの採用、ChatGPTでの予測の高速化、Numbaを用いた処理の高速化など、様々な工夫を行うことで、限られた時間とリソースの中でも最大限の成果を出すことができました。 今回の事例が、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデルの可能性の一端を示し、皆様のプロジェクトの参考になれば幸いです。ぜひ、様々な場面でLLMを活用し、これまでは難しかった課題にチャレンジしてみてください。 Refs 協調フィルタリングとベクトル検索エンジンを利用した商品推薦精度改善の試み OpenAI API フリマアプリ「メルカリ」累計出品数が30億品を突破 k-nearest neighbors algorithm OpenAI Embeddings API Massive Text Embedding Benchmark (MTEB) Leaderboard JapaneseEmbeddingEval intfloat/multilingual-e5-large intfloat/multilingual-e5-base intfloat/multilingual-e5-small cl-nagoya/sup-simcse-ja-large Sentence-Transformers Voyager Chain-of-Thought Prompting Elicits Reasoning in Large Language Models (Wei et al. 2022) LangChain rapidsai/cudf Numba: A High Performance Python Compiler
Merpay Engineering Productivity Team の goccy です。 gRPC Federation は、gRPC で通信する複数のサービスから得た結果を合成して返すようなサービスを簡単に作成するための仕組みです。DSL ( Domain Specific Language ) を Protocol Buffers 上で記述することで利用します。まずは、 GraphQL(Apollo) Federation の gRPC 用のものだと考えるとわかりやすいと思います。2023年8月に OSS として公開し、先日 Public Roadmap を公開しました。2024/6月末を目標に Version 1.0 ( GA版 ) をリリースする予定です。また、最近は Protocol Buffers のエコシステムに参加しました。 Protobuf Global Extension Registry への登録 や Buf Schema Registry への登録 、 Buf Plugin のサポート が終わり、既存のエコシステムに従って gRPC Federation を利用できます。 本稿では、Version 1.0 を目前に控えた gRPC Federation をどのような思想のもとで設計したかを説明し、現在の gRPC Federation の表現力やプラグインシステム、周辺ツールなどの機能について触れ、今後の予定を紹介します。 2023年8月の Merpay & Mercoin Tech Fest で紹介したもの から多くのアップデートがあります。ぜひ、新しいアーキテクチャを考える際の材料にしてください 設計方針 Protocol Buffers を進化させる gRPC Federation は DSL を Protocol Buffers 上に記述することで利用します。本項では、私たちがこの選択を選んだ理由を説明します。 従来、Protocol Buffers は主にAPIやデータ構造を定義する設計用途で利用されてきました。コード生成と組み合わせることで、設計に対応した実装を生成でき、設計と実装を乖離させることなく保守・運用できることが強みです。さらに、プラグインの仕組みとそれを利用したツールによって、Protocol Buffers 上で定義されたAPIやデータ構造に対してカスタムオプションを利用して付加情報を与えることができ、これにより多様な自動生成が可能になっています。 gRPC Federation はこの点に着目し、gRPC サービスを動作させるために必要十分な実装を DSL として Protocol Buffers 上で記述できるようにしました。これによって、Protocol Buffers は自身のもつ情報だけで gRPC サービスを構築できる言語へと進化します。 DSL を Protocol Buffers 上で記述すべきか、別の専用のファイルで記述すべきかは議論を重ねました。DSL を専用のファイルで記述する場合、言語のシンタックスを自由に調整でき、書き味を向上させやすいメリットがあります。しかしその反面、独自の言語を利用する場合は Parser の実装が必要になり、ソフトウェアの複雑度が飛躍的に増加する懸念や、専用のファイルをどのように管理すべきか考える必要があります。Protocol Buffers と分離することで、設計と実装を乖離させることなく保守・運用できるという恩恵を受けづらくなるともいえます。 また、開発者が普段慣れ親しんだ汎用プログラミング言語でコードを書くことに比べて、gRPC Federation のような DSL を利用する効果とは何かについても考えました。 DSL を利用することで必要最小限の記述でやりたいことを表現できるという側面はあります。ですが、DSL 自体に学習コストがあるため、慣れ親しんだ言語で書いた方が効率よく開発できそうな気がします。また、定型化できる部分をライブラリなどで提供すれば、より少ない記述で実装することもできそうです。 私は、DSL のメリットは「多様な表現ができない」こと自体にあると考えています。DSL を利用する以上、汎用プログラミング言語のように自由にコードが書けるわけではありません。逆を言えば、DSL を利用して制約のある中で生成するコードはすべて予測可能で、知らないミドルウェアやサービスにアクセスしたり、ファイルシステムにアクセスするようなことはありません。これは DSL を利用して作成されたサービスのビルドやデプロイを管理する立場からすると重要な意味を持ちます。例えばビルド時に特別な依存がないことが保証されている場合、より高速にビルドしたりビルドプロセスを自動化したりといった手段が選択できます。同様にデプロイに関しても、アプリケーションが動作するために必要十分な環境を用意しやすい、動作環境をセキュアに保ちやすいといった側面があります。 こうした理由から、私たちは Protocol Buffers 上で DSL を書く方法を選択しました。シンタックスの融通が効かないデメリットを差し置いても、すでに Protocol Buffers 上で定義されている API やデータ構造をそのまま Protocol Buffers 上で参照できるメリットは大きいと考えています。また、gRPC Federation の利用過程でサービス間の依存関係が明示されることで、サービスの循環参照の有無や、問題発生時の影響範囲の特定、APIレベルでの実行コストの計算といった様々な解析を行うことが Protocol Buffers だけでできるようになります。 DSL の限界とプラグインシステム gRPC Federation を作る上で、「DSL でどこまで表現できれば十分か」を考えることが一番難しい点でした。様々な機能をサポートしていく過程で DSL の表現力は向上していきますが、どこまでいっても DSL では実現不可能なロジックは存在します。また、DSL で表現できる範囲だったとしても、再実装せずに、すでにある3rd party製のライブラリを利用したい場合も考えられます。そこで私たちは、DSL には限界があることを理解した上で、Protocol Buffers 上で最低限記述すべき内容を決め、それ以外は DSL の外で実装する選択ができるようにしています。 Protocol Buffers 上で最低限記述すべき内容は「gRPC メソッド呼び出しの記述」としました。gRPC Federation の機能を簡潔に書くならば、「gRPC メソッドを呼び出す」ことと「メソッド呼び出しの結果を加工する」 ことを Protocol Buffers 上で書くことです。このとき、「どのgRPC メソッドを呼び出しているか」が Protocol Buffers 上に書かれなければ、Protocol Buffers を見ただけではどのサービス(のどのメソッド)に依存しているのかわからなくなってしまいます。私たちは経験上、マイクロサービス開発においてサービスの依存関係を把握することがとても重要であることを知っています。そのため、最低限「gRPC メソッド呼び出しの記述」は Protocol Buffers 上で行い、Protocol Buffers を解析するだけでサービス間の依存関係を把握できるようにしています(下図)。 DSLの外で実装する手段として、いくつかの方法を用意しています。まず、gRPC Federation では DSL で表現できない部分だけを Go 言語によって実装することができます。しかし Go で実装する部分が多くなると Protocol Buffers と Go で実装が分離し、あまり嬉しくありません。そこで、もうひとつの選択肢としてプラグインの仕組みを提供しています。Go で書く場合と違う部分は、DSL で式の評価に利用している CEL( Common Expression Language ) の API を拡張できる点です。この仕組みを利用することで、Protocol Buffers 上で独自の API を使った表現が記述でき、Go で書く場合に比べて Protocol Buffers 上に実装を集中させやすくなります。また、複数の Protocol Buffers ファイルから共通の処理を利用したい場合にも有効です。 gRPC Federation の活用場面 gRPC Federation を利用することでサービス間の依存関係が明確になり、Protocol Buffers 上で把握できる情報を増やすことが可能です。また、gRPC Federation によって生成されたコードを利用することで、サービス開発における定型化された作業に割く時間を大きく減らし、ビジネスロジックの実装に集中できるようになります。 そのため、複数のマイクロサービスの結果を合成して返すことが主な責務である BFF ( Backends For Frontends ) や Public API のような toB 向けのサービスは gRPC Federation を採用する例として最も適していますが、通常のマイクロサービス開発でも十分に利用できると考えています。 gRPC Federation がもつ表現力 次に、現状の gRPC Federation の表現力について、重要な機能をいくつか簡単に紹介します。 gRPC Federation では service / message / field など Protocol Buffers上の各要素に対して専用のオプションを用意しています。簡単な例を利用した説明は こちらに記載しました 。 本稿では、長くなりすぎてしまうので基本的な使い方については省略しますが、各項目の例を見ていただければ、なんとなく何ができるのか理解していただけると思います。 公式リファレンスはこちらです 。 変数定義と式の評価 gRPC Federation の開発を進めていくにあたって、変数や式の評価を行う仕組みが必要になりました。式の評価には、 Kubernetes の Custom Resource Definition でも利用されるようになった 、Common Expression Language (CEL) を採用しました。 こちらに言語仕様がとまっています 。 CEL は式を評価することに特化した言語で、小さくかつ洗練された仕様と豊富な拡張性をもっています。四則演算や論理演算、三項演算から関数、マクロまで様々な機能がある他、gRPC Federation では独自に CEL の機能を拡張し、例えば google.protobuf.Timestamp に対して Go の time ライブラリの機能を適応 したり、 reduce や first といったマクロ を使用できるようにしています。CEL は Protocol Buffers と親和性高く設計されており、gRPC Federation のように Protocol Buffers 上の定義を CEL の中で利用したい場合に適しています。ですが、CEL は変数の定義ができないため、gRPC Federation の仕様として 「CEL の評価結果を変数に代入できる機能」と「定義済みの変数をCELの評価式の中で参照できる機能」を追加しました。 次のように、 def キーワードを利用して式を評価した結果に名前を付けることで変数を定義できます。 grpc.federation.message option で定義された変数は grpc.federation.field option で参照することができ、次のように参照した変数の値をそのままフィールドに代入することができます。 message M { option (grpc.federation.message) = { def [ { name: "t" // 2024/4/01 00:00:00+0 by: "grpc.federation.time.date(2024, 4, 1, 0, 0, 0, 0, grpc.federation.time.UTC())" }, { name: "sum" by: "[2, 3, 4].reduce(accum, cur, accum + cur, 1)" }, // sum = 10 { name: "v" by: "[1, 2, 3, 4].first(cur, cur % 2 == 0)" } // v = 2 ] }; google.protobuf.Timestamp time = 1 [(grpc.federation.field).by = "t"]; int64 sum = 2 [(grpc.federation.field).by = "sum"]; int64 first = 3 [(grpc.federation.field).by = "v"]; } このように、message option の中でフィールドに割り当てる値を作り、 field option でその値を参照して代入するというのが基本の使い方です。 現在 gRPC Federation で利用可能な CEL API は こちらにまとめました 。 gRPC メソッドの呼び出し 必ず Protocol Buffers 上に記述してもらいたい、gRPC メソッドの呼び出し方法について説明します。 リファレンスはこちらです 。 使い方の前に、呼び出し対象のメソッドが次のように定義されているとします。 メソッドへの FQDN は foopkg.FooService/GetFoo となり、メソッドを呼び出すためには GetFooRequest メッセージの内容を作る必要があります。返り値は GetFooResponse です。 package foopkg; service FooService { rpc GetFoo(GetFooRequest) returns (GetFooResponse); } message GetFooRequest { FooParam param = 1; } message FooParam { string x = 1; } message GetFooResponse { Foo foo = 1; } message Foo { string bar = 1; } このとき、メソッドを呼び出すには、次のように call{} を記述します。 message M { option (grpc.federation.message) = { def { name: "res" call { method: "foopkg.FooService/GetFoo" request { field: "param" by: "foopkg.FooParam{x: 1}" } } } def { name: "f" by: "res.foo" } // f = foopkg.Foo{} }; string result = 1 [(grpc.federation.field).by = "f.bar"]; // assign foopkg.Foo.bar field to result field. } method に呼び出したいメソッドの FQDN を記述し、 request で GetFooRequest メッセージの各フィールドの値を指定します。ここでは CEL を使って foopkg.FooParam の内容を作成しました。 メソッドの呼び出し結果は res 変数に格納します。 次の変数定義で res 変数の foo フィールドへアクセスしているので、 foopkg.Foo の値が変数 f に代入されます。最後に、フィールドバインディング時に変数 f を参照し、 bar フィールドの値を取り出して result フィールドに代入しています。 メッセージへの依存 メソッドを呼び出した結果を欲しい形に加工する上で重要になるのが、メッセージ間に依存関係を作る機能です。 リファレンスはこちらです 。 あるメッセージは別のメッセージに依存することができます。依存関係は gRPC Federation のオプションを利用して明示的に記述することができます。例えば、 次の例にある M というメッセージを構築することが目標である場合、 M メッセージのフィールドに存在する Dep メッセージの値を作る必要があります。ここで、 Dep メッセージが GetFoo メソッドの呼び出し結果の値を利用することで作れるとすると、次のように記述することができます。 message M { option (grpc.federation.message) = { def { name: "res" call { method: "foopkg.FooService/GetFoo" request { field: "param" by: "foopkg.FooParam{x: 1}" } } def { name: "dep" message { name: "Dep" args { name: "f" by: "res.foo" } } } }; Dep dep = 1 [(grpc.federation.field).by = "dep"]; } message Dep { string bar = 1 [(grpc.federation.field).by = "$.f.bar"]; } message{} を利用することで他のメッセージの値を作ることができます。メッセージの値を作る際は args{} を利用して自由に依存先のメッセージに対して引数を渡すことができ、 name で名前を指定することで、依存先のメッセージ側で $. というプレフィックスを付けて引数にアクセスすることができます。 この例では、 res 変数から取得した foo フィールドの値に対して、 f という名前の引数を作って Dep の値を作っています。 Dep メッセージ側では、CEL の評価式の中で $.f と記述することで引数にアクセスしています。 バリデーション サービスを実装する上で、メソッドを呼び出した結果に対するバリデーションは常に意識しなければいけません。バリデーションの結果、エラーを返す場合は gRPC の慣習に従ってエラーを作る必要もあります。Protocol Buffers でバリデーションと聞くと、 protovalidate が有名だと思います。これはリクエストパラメータのバリデーションに利用するものですが、 gRPC Federation の場合はリクエストに限らず、参照可能なあらゆる変数に対して行うことができます。また、gRPC エラーを返すために特化した機能も用意しています。 リファレンスはこちらです 。 例えば次の例のように、 GetFoo メソッドを呼び出した結果が期待値かどうかを確認することが可能です。エラーは google.rpc.Status を作るようになっており、 error_details.proto で定義されているものがサポートされています。加えて、独自のメッセージを作ってエラーに含めることも可能です。 例えば Go 言語では、 errdetails パッケージを使って grpc.Status を作る処理に該当します。 message M { option (grpc.federation.message) = { def { name: "res" call { method: "foopkg.FooService/GetFoo" request { field: "param" by: "foopkg.FooParam{x: 1}" } } } def { validation { error { if: "res.foo.bar != 'xxx'" code: FAILED_PRECONDITION message: "'unexpected foopkg.Foo.bar value'", } } } }; } ここで紹介した機能は全体のごくわずかです。gRPC Federation は他にも多くの機能が存在するので、お時間のある際にぜひ見てみてください。 WebAssembly を利用したプラグインシステム gRPC Federation では、DSL 中に記述する CEL API や gRPC Federation がもつコード生成パイプラインを WebAssembly を利用して拡張することができます。プラグインを WebAssembly として実行することで、WebAssembly ランタイム側で制約を設けることができます。これにより、例えばネットワークやファイルシステムへのアクセスを禁止することで、プラグインによる予期しない動作を防止しています。 DSL からコードを生成する際に、Logger や gRPC Interceptor など、ドメイン固有の実装を同時に生成したい場合があります。そのような場合にコード生成パイプラインをプラグインによって拡張することで、gRPC Federation がもともとコード生成に使用している情報と全く同じものをプラグインで受け取り、自由にコード生成を行うことができるようになります。 Protocol Buffers からコード生成を行って gRPC サーバをビルドするまでの過程とプラグインの関係を図にすると次のようになります。 周辺ツール DSL を提供する上で、周辺ツールの整備も重要だと考えています。今回は Protocol Buffers のプラグインとして動作するため、 protoc のプラグインを用意するのはもちろんですが、他にも専用の Linter や Language Server 、コード生成ツールを用意しています。今回はこの中から、Language Server と コード生成器について紹介します。 protoc-gen-grpc-federation: protoc プラグイン grpc-federation-linter: Linter grpc-federation-language-server: Language Server grpc-federation-generator: コード生成器 Language Server DSL を書いてもらう上で当初から Language Server の提供は必須だと考えており、 専用の Language Server を提供しています。専用といっても、通常の Protocol Buffers の開発で最低限必要な Syntax Highlight や コードジャンプなどは実装済みなので、Protocol Buffers の Language Server としても利用することができます。 コードエディタによって Language Server の利用方法は様々ですが、VSCode では利用しやすいように、 すでに Extension を公開しています 。他の IDE 向けの対応も現在進めていますので、どうぞご期待ください。 Language Server によって Syntax Highlight された Protocol Buffers は次のようになります。文字列中の CEL の式などが適切にハイライトされているのが確認できると思います。 コード生成器 コード生成に関して、 protoc を利用した方法 以外に、 Buf を利用する方法 や、 gRPC Federation 独自のコード生成ツールによる方法 をサポートしています。 独自のツールを作った背景には、Protocol Buffers を編集した瞬間に gRPC サービスが立ち上がるような開発体験を提供したいという思いからでした。独自のツールには -w オプションを付けることで Protocol Buffers の変更を検知して即座にコンパイル、コード生成を実行する仕組みがあります。この機能と Air などのホットリローダを組み合わせることで、コード生成された側から Go のコンパイルを行う仕組みを作れるため、他に gRPC サービスを起動するために必要な情報をプラグインの形で外から与えさえすれば、Protocol Buffers を編集した瞬間に gRPC サービスが立ち上がる状態を作ることができます。 個人的にはこれを Protocol Buffers Driven Development と呼んでおり、スキーマ駆動開発を促進できると考えています。図にすると以下のようになります。 今後 メルペイ社内では、 gRPC Federation を使ったサービスがそろそろ本番環境で稼働し始めようとしています。そこで、最終的な機能の精査を行い、6月末を目標に Version 1.0 ( GA版 ) を提供する予定です。 1.0 以降は、基本的に破壊的な変更を入れず後方互換性を保ち、どうしても変更したい場合は十分な変更期間をとるなど社外のユースケースを想定してメンテナンスしていくことを考えています。 そのため、gRPC Federation の導入を考えるとてもいい機会だと考えています。導入のご相談は随時受け付けていますので、ぜひお気軽にご連絡ください。また、 OSS に関しても積極的にコントリビューションを受け付けています。こちらもあわせてよろしくお願いします。
はじめに こんにちは、mercari.go スタッフの hiroebe です。 3月21日にメルカリ主催の Go 勉強会 mercari.go #25 を YouTube でのオンライン配信にて開催しました。この記事では、当日の各発表を簡単に紹介します。動画もアップロードされていますので、こちらもぜひご覧ください。 Learning TLS1.3 with Go 1つめのセッションは @shu-yusa さんによる「Learning TLS1.3 with Go」です。 発表資料: Learning TLS1.3 with Go TLS1.3 におけるハンドシェイクのプロセスについて、Go のコードを交えて説明しました。TLS1.3 では TLS1.2 から多くの変更が入っていて、ハンドシェイクの改善もそのうちの1つです。Go において TLS に関連する暗号技術は crypto/ 以下のパッケージで提供されていて、発表ではこれらのパッケージを用いたコード例が多く紹介されています。 個人的に普段触れる機会の少ないパッケージも多く、とても興味深かったです。コードとともに理解することで、ハンドシェイクの各ステップにおける処理の流れがつかみやすくなっていると感じました。 Exploring Go Runtime Metrics 2つめのセッションは @Chin-Ming さんと @mohit さんによる「Exploring Go Runtime Metrics」です。 発表資料: Exploring Go Runtime Metrics Go の runtime/metrics パッケージについて、導入された背景や内部実装について紹介しました。Go における従来のランタイムメトリクスの取得方法にはいくつかの問題点があり、それが runtime/metrics パッケージによってどのように解決されたかについて説明されています。 将来的なランタイムの変更にも対応するためにどのような API デザインとするか、という点は非常に興味深かったです。発表の後半では、現在サポートされているメトリクスの一覧とそれらのユースケースについても紹介されていました。 Securing Code with Govulncheck 3つめのセッションは同じく @Chin-Ming さんと @mohit さんによる「Securing Code with Govulncheck」です。 発表資料: Securing Code with Govulncheck Go プログラムの脆弱性チェックを行うための Govulncheck というツールについて紹介しました。ツール自体の利用方法に加えて、チェック対象とする脆弱性が Go においてどのように収集・管理されているか、という点についても説明されています。 Go Vulnerability Database についての説明など個人的にも知らなかった点が多く、とても勉強になりました。Govulncheck は CI にも容易に組み込めるそうなので、興味のある方は試してみてはいかがでしょうか? おわりに 今回は Go の標準ライブラリやツールを題材とした3つの発表をお送りしました。Go を通して TLS の仕組みやソフトウェアの脆弱性についても知ることができて、運営としても非常に勉強になりました。 ライブで視聴いただいた方も録画を観ていただけた方も本当にありがとうございました! 次回の開催もお楽しみに! イベント開催案内を受け取りたい方は、connpassグループのメンバーになってくださいね! メルカリconnpassグループページ
こんにちは。メルペイ Engineering Engagement チームの mikichin です。 3月22日から3日間開催された「 try! Swift Tokyo 2024 」にメルカリはPLATINUMスポンサーをしており、会場ではブースを出していました。今回は参加レポートをお届けします! try! Swift Tokyo 2024 について try! Swift Tokyo は、Swiftを使った開発のコツや最新の事例を求めて、世界中から開発者が集うカンファレンスです。 開催概要 開催日時 カンファレンス:2024年3月22日(金) 〜 23(土) ワークショップ:2024年3月24日(日) 場所 ベルサール渋谷ファースト 当日の様子をご紹介 メルカリブース メルカリブースでは、iOSメンバーでアイディアを出し合って作成したクイズを準備しました。 クイズは全部で9問、平均の正答数は約5問でした。 ご参加いただいた方々からは「難しかった」「勉強になった」「すごく楽しかった」と感想をいただきました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました! クイズとは別に、「ビルド時間が長い場合、どのような工夫をしますか?」というお題に対して、いろいろなアイディアを書いてもらいました。 今回のイベントにあわせて、メルカリブースに遊びにきていただいた記念に撮影してもらえればとフォトフレームを準備。 本当に多くの方々にブースにお越しいただき、ありがとうございました 🙂 スポンサーブース 今回、17社のスポンサーブースがあり、わたしも全ブースに遊びにいきました! 各社いろいろなコンテンツが準備されていて、とても楽しく、たくさんかわいいオリジナルグッズをいただきました。 中でも、わたしが個人的に印象に残ったのはZOZO社のコンテンツです。 社内企画で、普段からSlackで共有されているというみんなの失敗。何かしらの失敗を投稿すると、トイレットペーパーをもらえるということでそれを今回のイベントでも実施していました。 ZOZO社の社風も伝わるコンテンツであり、失敗を水に流すということでトイレットペーパーをグッズにするというユーモアもくすっと笑えて素敵なコンテンツだなと思いました 🙂 セッションについて わたしは基本的にずっとスポンサーブースにいたため、今回はひとつもセッションをきいておりません。(残念….) ちょうどメルカリブースの目の前に「Ask the Speaker」のスペースがあり、毎回多くの人がきて情報交換をされている様子をみており、どのセッションも盛り上がったことを感じていました。次回はひとつくらいはきけるように、シフトを調整しようかなと思います。 Party try! Swift Tokyo で名物 @jollyjoester の「カー→ンパ↑ーイ!(※)」でスタート! After Partyでは、いろいろな方と交流することができて楽しかったです。Xでつながっていたり、一方的に認知していたりする方と直接お会いしてお話ができて大満足。 会場でもいたるところで会話が盛り上がっていました。特に、本イベントは海外から参加している方々も多かったので、コロナ前の日常を取り戻したんだなとしみじみ実感しました 🙂 △※:弊社Slackのbotででてくる表現を引用。 まとめ わたしはTech PRという仕事柄、いろいろなカンファレンスに参加しています。 5年ぶりの開催ということもあり、try! Swift Tokyoは初めての参加で、こんなにも海外の方が多く参加するとは思っていなかったのでいい意味で驚きました!お話をしてみると、このイベントのために日本にきているという方も多かったです。 個人的には最近英語の勉強をさぼっていたので(笑)、このイベントに参加したことで刺激になりました。 最後に、try! Swift Tokyo 2024の企画運営、おつかれさま & ありがとうございました! また、次回を楽しみにしています!
iOSエンジニアの takecian です。 株式会社メルカリでは YOUR CHOICE という「働く場所・住む場所」を自由に選択できる制度があります。そのため同僚とはリモートワークでコミュニケーションを取りながら仕事を進めることが多いです。(六本木にオフィスはあるので出社して仕事をすることも可能です) リモートワークで働いている時にアプリのバグを見つけたり、気になる挙動を見つけた時にアプリの画面を録画して共有することがあります。「ここの動作がおかしい気がする」「この順で操作すると画面表示が変になる」など、操作中の画面を録画してもらい、ビデオを受け取って確認してみます。ですが画面にはどこをタッチしたかは表示されないので、「どういう操作をしているか」「どこをタップしたか」が分かりにくいと思った経験が iOS エンジニアだと誰もがあるのではないでしょうか。 このエントリでは、iOSアプリで見つけたバグの再現手順をリモートワーク中にスムーズに共有するために行った取り組みについて紹介します。 例としてメルカリのアプリを操作をした画面を録画してみました。 Your browser does not support the video tag. この例ではマイページからいくつかの項目をタップして別の画面に遷移していますが、どこをタップしたのか分かりにくいですよね。 そこでタップした箇所が表示されるようにしてみたいと思います。iOS のタップイベントは UIWindow の sendEvent メソッドで送られてくるので method_exchangeImplementations を使って sendEvent メソッドを自前のメソッドに差し替えてみます。 private static func swizzleSendEvent() { guard let originalMethod = class_getInstanceMethod(UIWindow.self, #selector(sendEvent)), let swizzledMethod = class_getInstanceMethod(UIWindow.self, #selector(swizzledSendEvent)) else { return } method_exchangeImplementations(originalMethod, swizzledMethod) } すると画面をタップした時に差し替えたメソッドが呼ばれるようになるので、そのメソッドの中で元の UIWindow.sendEvent を呼び出しつつ、画面に触れている場所の座標を取得します。(この処理をおこなわないとタップしたというイベントが伝搬せず止まってしまいます) @objc func swizzledSendEvent(_ event: UIEvent) { // 自身を呼び出すことで差し替え前のメソッド(`UIWindow.sendEvent`)を実行します swizzledSendEvent(event) guard case .touches = event.type, let touches = event.allTouches else { return } // UITouch の画面に触れているものを集合に追加する(複数箇所の同時タップを想定) let beganTouches = touches.filter { $0.phase == .began } UIWindow.touches.formUnion(beganTouches) // 画面から離れた分を集合から取り除く let endedTouches = touches.filter { $0.phase == .cancelled || $0.phase == .ended } UIWindow.touches = UIWindow.touches.subtracting(endedTouches) // 座標に変換する let touchLocations = UIWindow.touches.map { $0.location(in: self) } // touchLocations に入っている座標が画面に触れている場所なので描画する。 // コードは省略。 } 取得した座標上に UIView を表示することでタッチしている箇所が分かるようにしてみました。先ほどと同じ操作を録画してみたのがこちらです。 Your browser does not support the video tag. どういう操作をしているかが簡単に分かりますね。この機能を実現するために使用した method_exchangeImplementations はメソッドの呼び出し先を変更してしまうというとても強力なものなので、大人数で開発している環境ではできるだけ使うのは避けたいものです。そこでこの機能は compiler directives (#if DEBUG という書き方で特定の環境でのみコードが動作する仕組み) を使って開発中のアプリでのみ動作するようにしています。 この機能を紹介したところ、特にQAチームの人から喜ばれました。Bug の再現手順を分かりやすく共有できるようになったのではないかと思います。 このようなちょっとした工夫を入れることでリモートで仕事をしていても効率的に仕事を進めることができます。 株式会社メルカリには全国様々な場所から働いている同僚がいて、新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創るために日々楽しみながら開発しています。興味のある方は こちら から募集を見てみてください。
こんにちは。メルペイ Engineering Engagement チームの mikichin です。 2月29日に開催された「 DeNA TechCon 2024 」のオフライン会場にご招待いただきましたので、参加レポートをお届けします! DeNA TechCon 2024 について DeNA TechCon(テックコン) は、DeNA のエンジニアが業務で得た知見を発信することで社会の技術向上に貢献する目的で、2016年より開催している技術カンファレンスです。 今年はオンライン、オフラインの同時開催。「POLYPHONY」というテーマでゲーム、ライブストリーミング、AI、Web3、ヘルスケア、メディカルなど幅広いトピックに触れながら、各事業のチャレンジをご紹介。また、セッションだけではなく体験ブース、技術コミュニティイベントもありました。 オフラインに関しては、久しぶりの開催ということで招待制となっていました。招待制って特別感があって招待いただいたほうもとてもうれしいですね 🙂 参考記事: https://dena.com/jp/press/5084/ 当日の様子をご紹介 オフライン会場は、渋谷ストリームホールでした。方向音痴のわたしには、駅チカでとても助かりました。 セッションについて 3トラック同時進行で24セッションありました。オフラインで参加していると、「体験ブースに行きたい」「技術コミュニティイベントにも行きたい」となり、ききに行くセッションを絞るのが大変でした。最終的にはアーカイブ動画が公開されると思うのでそちらも確認しようと思います。 個人的に一番おもしろかったのは、「 LIGHTNING TALKS 」です。5分という時間制限の中、すべての内容をききたいという気持ちはありますがドラが鳴るかなというわくわく感も楽しいですよね…! LIGHTNING TALKSでは、3名の方がLTをされました。 「新卒による全社横断コミュニティと社内外勉強会の運営への挑戦」 わたしもTech PRとして社内外勉強会の企画をしています。「わたしも同じようなこと思っている!」「そこ、難しいよね…」など、話をきいていてすごく共感していました(笑) TechConでも5つの技術コミュニティイベントが開催されていました。現場のエンジニアが課題感を持ち、自発的に勉強会を企画して楽しんでいる方々が多いからこういった幅広い技術コミュニティのイベントが継続開催されているんだなぁと様子や社風が伝わる素敵なLTでした。 「新人インターン生が海外 Web3 ハッカソンに参加した話」 インターン生が海外で開催されているハッカソンに参加し、賞を受賞してくるというLT自体が素晴らしいのですが、顔出しがNGということで黒衣姿で登壇をしていたのがとても新鮮でおもしろかったです(笑) 「TechCon 2024 ハイブリット開催の舞台裏:ネットワーク構築編」 すべて内製で運営しているというDeNA TechConならではのLTだなと思います。今回のイベントでは、当たり前のようにWiFiが提供されていましたがどのフロアでも問題なく使用することができました。 こういったイベントでWiFiが使えるというのは、全然当たり前ではなく素晴らしい準備があったからこそだなと思い、大変感謝しています。 体験ブースやスタンプラリー 6つの体験ブースがありました。どのブースも大変盛り上がっていました!(写真は人があまりいないときに撮影しました) 音声変換AI体験ブースでは、男性の声になった自分の声をほぼリアルタイムで感じることができたり、新感覚Vtuberアプリ「IRIAM」の体験では自分の動きにあわせて動く様子を体験できたりとおもしろかったです。 セッションをきいたり、体験ブースに行くとスタンプを押してもらえます。スタンプラリーでは8つ集めるとClosing Keynoteで行われる豪華景品のあたる抽選会に参加できるということで、8つ集めました!(はずれました。残念…) After Party 4Fは屋台、5FはDJブースにビュッフェ形式と違った雰囲気を楽しむことができました。 After Partyもみなさんそれぞれ会話を楽しみ、すごく盛り上がっていました! わたしも他社のTech PRの方とTechConの感想を共有しあうことはもちろん、いろいろ情報交換ができとても有意義な時間でした。 まとめ 最近、企業カンファレンスやコミュニティカンファレンスが完全オンラインからオフラインに移行してきています。オンラインはオンラインのよさ、オフラインはオフラインのよさがありますよね。TechConはハイブリットでそれぞれのよさを活かしながら開催されているように感じました。 昨年の「 Merpay & Mercoin Tech Fest 2023 」では完全オンラインで開催しました。ハイブリッド開催をするということは考えなくちゃいけないことが膨大に増えるので、かなりのチャレンジになりますが、わたしもそろそろオフラインでメルペイの魅力を伝えていきたいなーと思っています 🙂 最後に、DeNA TechCon 2024の企画運営、おつかれさま & ありがとうございました!社員の方々がTechCon自体を楽しんでいる様子を直接感じることができ、とても素敵なイベントでした。また、次回を楽しみにしています!
目次 はじめに eBPFとは? eBPFのCTFチャレンジ Flagの獲得 おわりに はじめに 初めまして、Threat Detection and ResponseチームのChihiroです。昨年の7月に株式会社メルカリに入社して、主にクラウド向けのDetection Engineeringや、インシデントレスポンスを担当しています。また、メルカリで自社開発している SOAR (Secuirty Orchestration Automation and Response)プラットフォームの開発や運用も担当しています。 メルカリには、 部活 を支援する社内制度が存在し、様々な部活があります。その部活の一環として、私は最近、CTF(Capture The Flag)と呼ばれるサイバーセキュリティの競技を楽しんでいます。そこで今回は、参加したCTFの中で面白かった eBPF に関するリバースエンジニアリングの問題を例にして、eBPFプログラムがどのように構成されており処理されていくのか解説します。 eBPFとは? eBPFは、Linuxカーネル空間で動作し、パケットフィルタリングやパフォーマンス調査のためのトレーシングなどに活用されている技術です。また、近年はクラウドやセキュリティといった文脈でも活用されています。例えば、CNCFのプロジェクトとして有名なCNI(Container Network Interface)の1種である Cilium や、コンテナのランタイムセキュリティのツールである Falco などに利用されています。 eBPFのプログラムは、Linuxカーネル上にて、サンドボックスのような仮想マシン上で実行されルため、独自の命令仕様をもっています。そこで、簡単にeBPFのバイトコードを実行する仮想マシンの仕様についてご紹介します。詳しい仕様は、 eBPF Instruction Set に記載されているので、合わせてご覧ください。 通常プログラム言語には、変数のような算出された数値を格納するための場所があります。今回の仮想マシンでは、それに相当するレジスタと呼ばれる小規模な記憶領域が利用されます。eBPFの命令セットでは10個の汎用レジスタが存在します。 R0: 関数からの戻り値や、eBPFプログラムが終了するときのステータスコードを格納 R1 – R5: 関数の引数が格納される R6 – R9: 汎用的に用いることができる R10: スタックフレームのアドレスを格納する 次に、命令について見ていきます。eBPFの命令はRISCアーキテクチャで使われる命令のように固定長です。1命令は、64bitになっています。具体的には、下記のように構成されています。 オペコードとは、命令の種類を表しており、数値を転送先レジスタ代入する命令や、加減算をする処理、条件分岐のための処理などが存在します。そして、このオペコードはさらに細かく構成されています。即値には、実際に代入する数値のデータが格納されることがあります。 1つ例を見てみましょう。下記のような64bitの数値の命令を明らかにしていきます。リトルエンディアンの表記になっているため一番左が下位byteな点に注意してください。 b7 01 00 00 44 04 05 1c まず、b7の部分がオペコードの8 bitsになります。b7を2進数に直すと1011 0111となります。下位3bitの111、つまり7はBPF_ALU64という命令の種類を表します。 1011は、BPF_ALU64においては、BPF_MOVという命令として定義されており、転送元レジスタから転送先レジスタへ代入をする命令となります。残りの4bit目の0は転送元レジスタが、32bitの即値であるかレジスタであるかを決めるパラメータとなっています。この値が0の場合は、即値が利用されます。 次に2byte目の01です。これは、2進数として表すと0000 0001となります。図に示したように、それらは4bitずつ転送元と転送先レジスタに分割されます。つまり、転送先が1すなわちR1レジスタ、転送元がR0レジスタとなっています。 しかしながら、先ほど見たように転送元はレジスタではなく即値を使うため、0x1c050444という即値をR1レジスタに代入する命令だと解釈することができます。 eBPFのCTFチャレンジ 本問題は、Backdoor CTFというCTFの初心者向けのリバースエンジニアリング問題になります。 CTFtime.org によると、Backdoor CTFは2013年頃から開催されているようです。 CTFでは、様々なコンピュータサイエンスやサイバーセキュリティに関するクイズを解いて、フラグと呼ばれる特定のフォーマットの文字列、 FLAG{COOL_FLAG_NAME} を見つけ出すことがゴールになります。例えば、リバースエンジニアリングの問題では、バイナリファイルを解析することで、隠されているフラグを得ることができる問題が一般的です。 リバースエンジニアリングの問題では、LinuxやWindowsのバイナリファイルを解析することが多いです。しかし、別のファイルフォーマットを解析することもあります。そのため、最初に file コマンドを使って、ファイルタイプを特定することが有用です。下記の通り、このファイルは、eBPFのプログラムだと判明しました。 root@6d1def7da3d3:~# file babyebpf.o babyebpf.o: ELF 64-bit LSB relocatable, eBPF, version 1 (SYSV), not stripped この問題に対しては、2つのアプローチがあります。1つ目は実際にこのeBPFのコードを動かすことです。そしてもう1つは実際にどんな命令が記載されているのかを読んでいく手法です。今回は、興味のために、後者のアプローチでやっていこうと思います。 しかしながら、先ほど見たように、バイナリファイル内に含まれるすべての命令を手作業で解析していては大変です。そこで、これらの作業を自動化するための手法である逆アセンブルと呼ばれる変換作業をします。逆アセンブルでは、機械語を人間が読みやすい ニーモニック と呼ばれる機械語に対応する文字列命令に変換します。 eBPFバイトコードの場合は、 llvm-objdump コマンドがおすすめです。 -d フラグを使うことで対象ファイルの逆アセンブルをすることができます。通常、ニーモニックと同時に16進数も表示されるのですが、ここでは冗長なので --no-show-raw-insn フラグを使って非表示にしています。 root@6d1def7da3d3:~# llvm-objdump --no-show-raw-insn -d babyebpf.o babyebpf.o: file format elf64-bpf Disassembly of section tp/syscalls/sys_enter_execve: 0000000000000000 <detect_execve>: 0: r1 = 0x1c050444 1: *(u32 *)(r10 - 0x8) = r1 2: r1 = 0x954094701340819 ll 4: *(u64 *)(r10 - 0x10) = r1 5: r1 = 0x10523251403e5713 ll 7: *(u64 *)(r10 - 0x18) = r1 8: r1 = 0x43075a150e130d0b ll 10: *(u64 *)(r10 - 0x20) = r1 11: r1 = 0x0 0000000000000060 <LBB0_1>: 12: r2 = 0x0 ll 14: r2 += r1 15: r2 = *(u8 *)(r2 + 0x0) 16: r3 = r10 17: r3 += -0x20 18: r3 += r1 19: r4 = *(u8 *)(r3 + 0x0) 20: r2 ^= r4 21: *(u8 *)(r3 + 0x0) = r2 22: r1 += 0x1 23: if r1 == 0x1c goto +0x1 <LBB0_2> 24: goto -0xd <LBB0_1> 00000000000000c8 <LBB0_2>: 25: r3 = r10 26: r3 += -0x20 27: r1 = 0x1c ll 29: r2 = 0x4 30: call 0x6 31: r0 = 0x1 32: exit 簡単に逆アセンブル結果での命令の読み方を解説します。例えば、 r1 = 10 の場合は、r1レジスタに10を代入するという例です。他にメモリにデータを代入する際には *(u32*)(r10) = r1 のような表記を用います。これは、r10レジスタの値をアドレスとして捉えて、そのアドレスが指すメモリにr1の値を代入するという意味になります。 では、実際に detect_execve 関数から処理を読んでいきます。 0000000000000000 <detect_execve>: 0: r1 = 0x1c050444 1: *(u32 *)(r10 - 0x8) = r1 2: r1 = 0x954094701340819 ll 4: *(u64 *)(r10 - 0x10) = r1 5: r1 = 0x10523251403e5713 ll 7: *(u64 *)(r10 - 0x18) = r1 8: r1 = 0x43075a150e130d0b ll 10: *(u64 *)(r10 - 0x20) = r1 11: r1 = 0x0 はじめに、r1レジスタに0x1c050444(10進数で470090820)を代入しています。次に、そのr1をr10-8が指すアドレスのメモリに格納しています。なお、r10レジスタはスタックフレームのアドレスを指すレジスタであることに注意してください。そのため、この処理は関数のローカル変数に値を代入しているコードだと読み解くことができます。そして似たような、データの代入をするコードがその後続いているのがわかります。また、最後にr1レジスタに0が格納されています。この処理が終わった後のスタックのイメージは下記の図の通りです。 さらに、逆アセンブル結果を読み進めていきます。ここでは先に関数の末尾の方を見てみましょう。 0000000000000060 <LBB0_1>: 12: r2 = 0x0 ll 14: r2 += r1 15: r2 = *(u8 *)(r2 + 0x0) 16: r3 = r10 17: r3 += -0x20 18: r3 += r1 19: r4 = *(u8 *)(r3 + 0x0) 20: r2 ^= r4 21: *(u8 *)(r3 + 0x0) = r2 22: r1 += 0x1 23: if r1 == 0x1c goto +0x1 <LBB0_2> 24: goto -0xd <LBB0_1> そこには、 if 文があり、r1レジスタと0x1c(10進数で28)と比較しています。これらの値が等しかったら、LBB0_2ラベルにgotoします。そうでなければ、LBB0_1ラベルの先頭に戻ります。こうした処理は、高級言語におけるループ構文として認識することができます。事実、 if 文の前では、比較対象であるr1レジスタに1を加算する処理、つまりインクリメントが行われています。 では、このコードブロックにはループ文があるという前提で先頭から読んでいきます。まずr2レジスタに0を代入し、さらにr1レジスタの値を加算しています。初めはr1レジスタは detect_execve 関数で言及したように0が格納されているため、r2は加算されても0のままです。次にr2レジスタをアドレスとして使って、脱参照しr2レジスタに格納されているメモリ上の実際のデータを格納しています。 次に、命令の対象はr3レジスタへと変わります。r3レジスタにr10レジスタ、つまりスタックフレームのアドレスを格納します。その後、32を減算しています。この32は、ちょうどスタックフレームのアドレスから、先ほど代入したローカル変数のアドレスへのオフセットとなっています。さらに、そのアドレスに対してr1レジスタの値を足して、脱参照し、ローカル変数の値をr4レジスタに格納しています。そして、r2レジスタとr4レジスタの値をXORして、その結果をr2レジスタに格納し、最終的にr3レジスタが指す先、つまりローカル変数のアドレスが指すメモリ上のデータを、計算結果で書き換えています。 それ以降は、先ほど述べたように、r1レジスタを加算して、ループ処理の if 文へと続きます。これにより、1byteずつずれながら、メモリ上の二つのデータへアクセスして、各1byteをXORして、ローカル変数の中身を上書きする処理が実行されていきます。つまり、何かしらのデータに対して、ローカル変数を使ってデータをデコードしている処理がこのeBPFプログラムの本質だとわかります。また、r1が28と比較していることから、両者のデータの想定されるデータ長は28byteだと推定することができます。 さて、少し話を戻します。r2レジスタにはどんなデータが入っているのでしょうか。逆アセンブル結果だけだと判断ができないため、少し視点を変えてバイナリを調査してみます。一般に、バイナリファイルには、特徴的な文字列などが含まれていることが多いです。そこで、GNU Binary Utilitiesの strings コマンドを使って文字列を調査してみます。 root@6d1def7da3d3:~# strings -tx -a babyebpf.o 5c G T { 148 marinkitagawamarinkitagawama 16e W>@Q2R 179 G T D 2a5 .text 2ab detect_execve.____fmt 2c1 _version 2ca .llvm_addrsig 2d8 detect_execve 2e6 .reltp/syscalls/sys_enter_execve 307 _license 310 baby_ebpf.c 31c .strtab 324 .symtab 32c .rodata 334 LBB0_2 33b LBB0_1 342 .rodata.str1.1 いくつか特徴的な文字列はありますが、先ほど得た28byteというデータ長に着目して見ると、 marinkitagawamarinkitagawama という文字列は興味深いです。実際、byte数を確認してみると28byteでした。 root@6d1def7da3d3:~# echo -n marinkitagawamarinkitagawama | wc -c 28 では、最後にLBB0_2ラベルの処理を読んでいきます。 00000000000000c8 <LBB0_2>: 25: r3 = r10 26: r3 += -0x20 27: r1 = 0x1c ll 29: r2 = 0x4 30: call 0x6 31: r0 = 0x1 32: exit このコードブロックで注目すべきは、 call 命令です。本命令の引数は6となっています。 call 命令は、eBPFプログラム内で定義したローカル関数とは別に、引数の整数値によって特定の関数を実行することができます。それらの関数と整数値のマッピングは、Linuxの ソースコード 上で定義されており、6は trace_printk 関数のようです。つまり、このコードは、何かしらデータを表示するコードだとわかります。また、r3レジスタに、ローカル変数のアドレスを格納しています。したがって、このプログラムは、XOR処理をしたデータを表示しようとするものだと推測することができます。 Flagの獲得 ここまでで、わかったことをスクリプトとして作成してみます。私は普段CTFで問題を解く際に、Rubyをよく使っているので、ここではRubyで書いたスクリプトを下記に示します。どんな言語でも問題ありません、ご自身の好きな言語で作成してみてください。 #!/usr/bin/env ruby encoded = [ 0x43075a150e130d0b, 0x10523251403e5713, 0x954094701340819, 0x1c050444 ].pack('Q*').chars key = "marinkitagawamarinkitagawama".chars key.zip(encoded) do |k, e| print (k.ord ^ e.ord).chr end 上記のRubyのスクリプトは、ローカル変数に代入されていた値と、バイナリファイル内に含まれていた文字列をバイト毎にXORした値を表示します。 これを実行すると、下記のように最終的にフラグを得ることができました。 root@6d1def7da3d3:~# ruby solve.rb flag{1n7r0_70_3bpf_h3h3h3eh} おわりに この記事では、CTFの問題を題材に、eBPFプログラムの内部を解説しました。eBPFを間接的に使っている人は多いと思いますが、こうした裏側について知っている人は多くないと思います。本知識を直接的に、業務で使う機会は少ないかもしれませんが、デバッグやかなり細かい調査になってくると、もしかしたら役に立つ機会はあるかもしれません。 最後まで読んでくださってありがとうございました。本記事が何かの役に立てば幸いです。
search infra teamのmrkm4ntrです。我々のチームではElasticsearchをKubernetes上で多数運用しています。歴史的経緯によりElasticsearchのクラスタは全てElasticsearchクラスタ専用のnode pool上で動作していました。ElasticsearchのPodは使用するリソースが大きいため、このnode poolのbin packingが難しくコストを最適化できないという問題がありました。そこで全てのElasticsearchクラスタを専用のnode poolから他のワークロードと共存可能なnode poolへ移行しました。ほとんどのクラスタが問題なく移行できたのですが、唯一移行後にlatencyのスパイクが多発してしまうものがありました。 この記事では、その原因を調査する方法と発見した解消方法について説明します。 発生した現象 共用node poolへ移行後にピーク時間帯において95pのlatencyが下図の青線のようにスパイクしました。 一旦このクラスタを専用node poolに戻すと、latencyは元どおりに落ち着きました。各メトリクスを見てもsearch thread poolのキューのサイズが上がっている他は特に怪しいものは見当たりません。CPUやmemoryのリソースが不足しているわけでもありません。search thread poolのキューのサイズが上がっているのはlatencyが上がったことによりキューのサイズが上がったと考えられるため原因ではなく結果だと思われます。該当クラスタのElasticsearchのversionは7.10.2でした。 プロファイラの利用 メトリクスを見ても原因がわからなかったため、プロファイラを使ってflame graphを表示することにしました。まずはkube-flame ( https://github.com/yahoo/kubectl-flame )を使ってJVMのprofilerであるasync-profiler ( https://github.com/async-profiler/async-profiler )を動かします。以下が得られたflame graphです。 Elasticsearchの検索処理にはquery phaseとfetch phaseという二つのphaseがあり、query phaseでは各シャードにて転置インデックスを使って検索処理を行い、実際にヒットしたドキュメントのidのリストを取得します。一方fetch phaseではそのドキュメントのfieldを取得します。上のflame graphからはこのクラスタにおいてはfetch phaseが支配的ということがわかります。多くの場合はquery phaseが支配的になるため少々特殊な使用方法です。 何度かプロファイラを動かすと怪しそうなグラフが取得できました。 黄色の箇所をズームするとCPUがNativeThreadSetのaddとremoveにおいてスピンロックを取得しようとしていることがわかります。 下記の syncrhonized(this) の箇所ですね。 https://github.com/AdoptOpenJDK/openjdk-jdk15u/blob/49dc2dfcefa493a9143483e11144343e83038877/src/java.base/share/classes/sun/nio/ch/NativeThreadSet.java#L50 https://github.com/AdoptOpenJDK/openjdk-jdk15u/blob/49dc2dfcefa493a9143483e11144343e83038877/src/java.base/share/classes/sun/nio/ch/NativeThreadSet.java#L75 とはいえこのコード自体におかしいところはありません。 ここで調査が暗礁に乗り上げるかと思われましたが、async-profilerについて調べている際にLINEヤフー社のKafkaチームの方が発表された下記の資料を見つけました。 https://speakerdeck.com/line_developers/time-travel-stack-trace-analysis-with-async-profiler こちらによるとasync-profilerによって出力されるJFRファイルを基に、各threadが各時点において何のメソッドを実行していたのかを可視化するツール( https://github.com/ocadaruma/jfrv )を作って公開されたそうです。 早速async-profilerにJFR形式で出力させ、jfrvで読み込んでみました。 NativeThreadSetでフィルタリングした結果、確かにlatencyのスパイクが発生した時点でNativeThreadSetのaddやremoveがロックを待機しています。 次はこれらのメソッドを呼び出している箇所でlatencyのスパイク中に出現回数が上がったものを探します。以下のとおり、LuceneのDataInputクラスのskipBytesというメソッドが見つかりました。 これはElasticsearchのドキュメントの_sourceが入っているLZ4圧縮されたLuceneのStoredFieldを読み込む際に呼び出されています。 https://github.com/apache/lucene-solr/blob/2dc63e901c60cda27ef3b744bc554f1481b3b067/lucene/core/src/java/org/apache/lucene/codecs/lucene87/LZ4WithPresetDictCompressionMode.java#L110-L118 ではなぜこのメソッドの出現回数が増加したのでしょうか?この現象が発生する直前に下図のように大きなmerge処理が走り、refreshによってそれが検索可能になったことがわかります。 Elasticsearchにおいて新しく追加されたデータは、refreshによってセグメントと呼ばれるファイル(実際はpage cacheですが)に書き出されます。これらのファイルはimmutableであり、小さなセグメントがrefreshのたびに新しく次々に書き出されるのですが、バックグラウンドで複数のセグメントはmergeされ、新しく大きなセグメントとして書き出されます。このクラスタではインデックスは新しい順でソートされており、基本的にクエリにヒットするのは新しく追加されたばかりの小さなセグメントに入っているドキュメントでした。 ここで仮に新しく追加されたばかりのセグメントが、大きなセグメントにmergeされた場合を考えてみます。その場合、query phaseではインデックスはソートされているためlatencyは変わらないでしょう。しかし、fetch phaseではLZ4の辞書の後ろに_sourceが格納されているため、大きなセグメントでは辞書も大きくなり、ヒットしたドキュメントの_sourceを取得するためには毎回大きな辞書の分をskipする必要がでてきます。skipBytesは内部で1024バイトずつループでskipするため,これがskipBytesの出現回数を増やす原因だと考えました。 MergePolicyのパラメータ変更 Elasticsearchでは、LuceneのTieredMergePolicyというmerge policyを用いてどのセグメントをmergeするべきかどうかを選んでいます。このmerge policyではmergeするセグメントのサイズの差をskewという尺度で定義し、そのskewが小さいものを選択します。つまり基本的には上記のようなmergeはほとんど起きないはずです。 TieredMergeのパラメータを調べたところ、 floor_segment と max_merge_at_once というものを見つけました。前者はskewを計算する際にその値よりも小さいセグメントを floor_segment の値まで切り上げて計算するというもので、後者はその名のとおり一度にmergeできるセグメントの最大数を表します。 新しく追加されたセグメントが floor_segment より小さかった場合、 floor_segment (デフォルト値は2MB)のサイズとして計算されるため、より大きなセグメントにmergeされる可能性が上がってしまいます。またskew計算時の分母はmerge後のトータルサイズなので max_merge_at_once が大きければ小さいセグメントと大きいセグメントを含んだmergeのskewがあまり大きくならない可能性があり、そのようなmergeが選択されてしまう可能性が上がります。そこでこれらのパラメータの値を小さな値に変更することとしました。結果が下図です。 破線が変更前である前日のもの、実線が変更後です。見てのとおりスパイクが綺麗になくなっています。仮説が正しかったであろうことがわかりました。 DataInputのskipBytesの詳細 NativeThreadSetのaddとremoveはJVMからpread64システムコールを呼ぶ際に使われています。DataInputのskipBytesは不要な箇所をスキップするためにpread64で読んだものを捨てるという処理を実行しています。_sourceが格納されているStoredFieldのファイルはmemory mappedファイルなので不要な場所をスキップするためにファイルを読む必要など全くなく、現在のアドレスを加算するだけで事足りるはずです。実はこの修正は既にLuceneに入っており、Elasticsearchのv8以降にはその実装が使われています。 https://github.com/apache/lucene/commit/84a35dfaea27581174c1104e239187112a1b5d43 可能な限りElasticsearch v8を使いましょう。 先ほどはfetch phaseでパフォーマンス問題が発生する話でしたが、別のElasticsearch v7を使っているクラスタではquery phaseにおいてDataInputのskipBytesによりパフォーマンスが悪化する現象が起きていました。DataInputのskipBytesは転置インデックスのposting listをskipする際にも使われています。該当のクラスタのインデックスにはstatusがon_saleのものしか入っていなかったのですが、クエリのfilterにstatus=on_saleが指定されていました。これは全てのドキュメントが入っているposting listをスキャンすることを意味しますが、posting listはスキップリストで実装されているためそれほど高コストではないはずです(勿論ないに越したことはないですが)。ところがskipBytesはpread64を何度も呼ぶため非常に高コストな処理となってしまっていました。そこでstatus=on_saleのfilterをクエリから削除するとlatencyが以下のように劇的に改善しました。 さいごに この記事ではJVMのプロファイラを用いてElasticsearchのlatencyのスパイクの原因を調査する方法と発見した原因とその対処法について述べました。jfrvを使って必要な部分のみ抜き出したflame graphは眺めていると色々な発見があり、またソースコードリーディングにも役立つのでおすすめです。 またlatencyスパイクの原因となったmergeについては発見できましたが、共用node poolに移行すると望ましくないmergeが発生する具体的な原因についてはまだ特定できていないので、今後究明していきたいと思います。 さいごにjfrvという素晴らしいツールを公開してくださったocadarumaさん( https://github.com/ocadaruma )ありがとうございました!
Platformチームでエンジニアをしている sanposhiho です。メルカリのPlatformチームでオートスケーリング周りの課題の解決を担当しており、Kubernetes UpstreamでもSchedulingやAutoscaling周りの開発に参加しています。 メルカリでは全社的にFinOpsに取り組んでおり、Kubernetesリソースは最適化の余地があるエリアです。 メルカリではPlatformチームとサービスの開発チームで明確に責務が分かれています。Platformではサービス構築に必要な基礎的なインフラストラクチャを管理し、それらを簡単に扱うための抽象化された設定やツールなどの提供を行っています。サービスの開発チームは、それらを通してサービスごとの要件に応じたインフラストラクチャの構築を行います。 サービスやチームの数も多く、そのような状況での全社的なKubernetesリソースの最適化には多くの課題がありました。 この記事ではメルカリにおいて、これまでPlatformが行ってきたKubernetesリソースの最適化の取り組みと、その取り組みの課題から生まれた Tortoise と呼ばれるオープンソースのツールの紹介をします。 これまでの Kubernetes リソースの最適化の取り組み Kubernetesリソースの最適化は以下の2つに分解することができます。 Podレベルの最適化: サービスの信頼性を損なわない範囲で、1Podあたりのリソース割り当て量やPod数を調節し、サービス全体で見た時の割り当てられるリソースの量を減らす。 Nodeレベルの最適化: 各Podから割り当て要求されたリソースをできるだけ安いコストで動作させる。 後者に関しては、PlatformがKubernetesクラスターレベルの設定を変更することで最適化をできる部分が大きく、クラスター全体のスケジューリングの調節(bin packing)や価格の安いインスタンス(spot instance)への移行などが手法として存在します。直近のメルカリにおける施策だと、 Instance TypeのT2Dへの変更 もありました。 対して前者のPodレベルの最適化では、サービスごとのリソースの使用の仕方の特性に応じて、Resource Request/Limitを変更したり、オートスケーラーの設定を調整する必要があります。 リソース最適化には、サービスの信頼性を損なうことなく、リソースの使用を効率化することが求められ、そのように安全な最適化を行うためにはしばしばKubernetesに関わる深い知識が必要です。 他方、メルカリではマイクロサービスのアーキテクチャーを採用していることもあり、1000以上のDeploymentが存在し、マイクロサービスごとに開発チームも独立して存在しています。 このような状況で個々のサービスの開発者にKubernetesの深い知識を要求するのは難しく、その一方でPlatformが各サービスごとに最適化して回るには限界があります。 そのため、Platformチームがツールの提供やガイドラインの策定を行い最適化をできるだけ簡略化し、それぞれのサービスの開発チームはそれらに沿って最適化を行う、という形を取り全社的なKubernetesリソースの最適化を推進してきました。 メルカリにおけるオートスケーラーの現状 Kubernetesが公式に提供しているオートスケーラーには以下の二つが存在します。 Horizontal Pod Autoscaler(HPA): Podのリソース使用量に応じて、Podの数を増減する。 Vertical Pod Autoscaler(VPA): Podのリソース使用量に応じて、Podが使用できるリソース量を増減する。 メルカリではHPAがかなり普及しており、ある程度の規模を持ったDeploymentはほぼ全てHPAで管理されています。対して、VPAに関してはほとんど使用されていません。HPAはCPUに対してのみ設定されていることが多く、Memoryは手動で管理されているケースがほとんどです。 記事の理解が進みやすいように、HPAの設定についてのみ軽く紹介します。 HPAではそれぞれのコンテナのそれぞれのリソースに対して、理想のリソース使用率(閾値)を設定することができます。以下の例では、 application という名前のコンテナのCPUに対して、理想の使用率を60%と定義しており、HPAはPodの数をリソース使用率が60%に近くなるように調整します。 apiVersion: autoscaling/v2 kind: HorizontalPodAutoscaler metadata: name: <HPA_NAME> namespace: <NAMESPACE_NAME> //… metrics: type: ContainerResource containerResource: name: cpu container: application target: type: Utilization averageUtilization: 60 その他、 minReplicas と呼ばれる、Podの最低数を決めるパラメータなど、多くの補助的なパラメータが存在します。より詳細な内容は 公式のドキュメント を参照してください。 Resource Recommender Slack Bot リソースの最適化に対して、メルカリのPlatformが内部で独自に提供している代表的なツールがResource Recommenderと呼ばれるものです。これはSlack Botで月に一度最適なリソースのサイズ (Resource Request) を計算し、サービス開発チームにお知らせします。これによりリソースの最適化を簡略化することを目的にしています。 内部的には前述のVPAを使用しており、過去数ヶ月のVPAの推奨値から最適で安全な値を算出しています。 ただ、このResource Recommenderにはいくつかの課題点がありました。 まずは、 推奨値の安全性 です。推奨値は本来送られた瞬間が賞味期限で、時間が経つほど推奨値の正確性は薄れていきます。アプリケーションの実装の変更やトラフィックのパターンの変化によって、推奨値が大きく変わる可能性もあり、OOMKilledなどの危険な状況につながる危険性がありました。 そして、 サービス開発者がこれらの推奨値を適応してくれるとは限らない 点です。前述の危険性の観点から、開発者は推奨値を適応する前にその推奨値が安全か、適応後に何も問題が起こっていないかを注意深く確認する必要があり、エンジニアの時間を少なからず取ってしまうことになります。また、例えばメモリを3 GBから1 GBに減らすように推奨値が送られてきた場合、段階的に2GBを適応する、といったケースもあり、単純に推奨値がどれほど役に立っているのかの計測が難しいという観点もありました。 最後に、 最適化はサービスが動き続ける限り終わらない 点です。前述のように様々な状況の変化により、推奨される値というのは変化し続けます。開発者は一度Resource Recommenderに即してResource Requestを調整したら最適化が終了するのではなく、定期的に調整し続ける必要があります。 HPA の最適化 上記のResource Recommenderの課題とは別に、大きな問題点となっているのがHPAの最適化です。 HPAに管理されているリソースに関しては、基本的にリソースのサイズではなく、HPAの設定を最適化する必要があります。しかし、Resource RecommenderはHPAの設定の推奨値の算出に対応していません。 前述のように、メルカリでは規模の大きなサービスはほぼHPAを持っており、CPUをターゲットにしていることから、クラスターで使用されているCPUのほとんどはResource Recommenderによって最適化できないことを意味しています。 まず、最適化のためにはHPAに設定している理想のリソース使用率(閾値)をサービスの信頼性を損なわない範囲で上げる必要があります。 また、設定された閾値が十分に高いとしても、実際のリソース使用率が閾値に達していないというシナリオは多く存在し、その場合閾値以外のパラメータやResource Requestなどを調節する必要が出てきます。 HPAの最適化はかなり奥が深く、別でもう一本記事がかけるくらいにはかなりの知識を要します。( このスライド ではHPAの最適化について難しさと考慮すべきシナリオが軽く説明されています。興味のある方は確認してみてください。) その複雑性からResource Recommenderに単純に組み込むことは難しく、とはいえ膨大な数のHPAに対して多くのチームに定期的に手動の最適化を行い続けてもらう、というのは現実的ではありません。 …ここまで辿り着いて私たちは気がつきました。「…無理じゃね?」と。 現状のHPAとResource Recommenderの構成では、クラスターを最適化された状態に維持するにはどうしても 手動 で 複雑 な作業が全てのチームで 定期的に 、そして 永遠に 必要になります。 Tortoiseを用いたリソース最適化 そこで開発されたのが、 Tortoise です。(Tortoise: 日本語でリクガメの意味です) このTortoiseは可愛いだけではなく、Kubernetesのリソース管理と最適化を全て自動で行なってくれるように訓練されています。 Tortoiseは過去のリソースの使用量や過去のレプリカの数を記録しており、それを元にHPAやResource Request/Limitを最適化し続けます。詳しいリコメンデーションのロジックが知りたい方は、 公開されているドキュメント を参照してみてください。Tortoiseが単なるHPAやVPAのラッパーではないことが理解できると思います。 前述のようにこれまでサービスの開発チームがリソース/HPAの設定や最適化を行なっていましたが、Tortoiseはそれらの責務をサービスの開発チームからPlatformチームに完全に移すことを意図しています。サービス開発チームはTortoiseを一度セットアップすることでリソースの管理のことを完全に忘れることができ、もしTortoiseによって十分に最適化されていないマイクロサービスがあればPlatformがTortoiseの改善を行います。 Platformでは、メルカリの全てのPodをTortoiseによって最終的に管理することを目標にしています。 ユーザーは以下のようにCRDを通して、Tortoiseを設定します。 apiVersion: autoscaling.mercari.com/v1beta3 kind: Tortoise metadata: name: lovely-tortoise namespace: zoo spec: updateMode: Auto targetRefs: scaleTargetRef: kind: Deployment name: sample Tortoiseは非常にシンプルなユーザーインターフェースにデザインされており、ほとんどのサービスに対する設定は上記で完了します。その後、Tortoiseは自動でHPAやVPAなどの必要なものを作成し、オートスケールを開始します。 HPAは複数のパラメーターがユーザーに対して公開されています。これはユーザーに対して柔軟な設定を可能にする一方、現状のメルカリのように、HPAの設定やResource Requestを改善しないとHPAが本来のパワーを発揮できない、という状況に繋がり得ます。 メルカリでは運の良いことに、ほとんどのマイクロサービスがGoで書かれており、gRPC/HTTP サーバーであり、内部で公開されているマイクロサービスのテンプレートをベースに作成されています。そのため、HPAの設定もほとんどのサービスで非常に似ており、サービスのリソース使用量の変化やレプリカ数の変化などの特性も非常に似ています。 そのため、HPAの複数のパラメーターをTortoiseの背後に隠し、Tortoise側で共通のデフォルト値を与え、内部のリコメンデーションのロジックを通してそこから最適化をし続ける、というのがうまく働いています。 また、シンプルなユーザーインターフェース(CRD)とは打って変わり、Tortoiseは クラスター管理者向けの多くの設定 を備えています。 これによって、そのクラスターにおけるサービスの振る舞いを元に、クラスター管理者が全てのTortoiseの挙動を管理するということが可能になっています。 Tortoiseへの安全な移行と検証 前述のようにTortoiseはHPAやVPAの代替となるツールです。Tortoiseを作成することでHPAは必要がなくなる一方で、前述のようにMercariには非常に多くの数のDeploymentがHPAと共にすでに動作しています。 この状況でHPAからTortoiseに移行するには、Tortoiseの作成からHPAの削除など、煩雑なリソース操作を安全に行う必要がありました。 そのような移行をできるだけ簡略化し安全な移行を確保するために、Tortoiseには「既存のHPAをTortoiseに管理させる」ための機能が実装されています。 apiVersion: autoscaling.mercari.com/v1beta3 kind: Tortoise metadata: name: lovely-tortoise namespace: zoo spec: updateMode: Auto targetRefs: # 既存のHPAを指定することで、Tortoiseは新たなHPAを作成する代わりに、このHPAを最適化し続ける。 horizontalPodAutoscalerName: existing-hpa scaleTargetRef: kind: Deployment name: sample horizontalPodAutoscalerName を使用することで、既存のHPAをTortoise-managedなHPAにシームレスに移行することができ、移行のコストを下げています。 現在私たちはメルカリの開発環境で複数のサービスをTortoiseに移行して、安全性の検証を行っています。TortoiseはDryRunを行うための updateMode: Off を備えており、 Tortoise Controllerから公開されているメトリクス を通して、推奨値の妥当性を検証することができます。 開発環境では、かなり多くの数のサービスですでにOffモードのTortoiseによる検証が始まっており、50ほどのサービスではすでにTortoiseを用いたオートスケーリングが使用され始めています。 本番環境での検証、そしてTortoiseへの移行も近い将来に計画されており、Tortoiseはより洗練されたツールとなっていくことでしょう。 まとめ この記事ではメルカリのこれまでのKubernetesリソース最適化の取り組みと、そこに見えた課題から生まれたTortoiseと呼ばれるツールを紹介しました。 メルカリではPlatformで一緒に働く仲間を探しています。 一緒にCI/CDを改善したり、抽象化を色々作ったり、リクガメを飼育したり(!?)しませんか? 興味のある方は こちら からどうぞ!
こんにちは、メルカリのQAエンジニアのFunakiです。今回は品質改善と可視化のための取り組み、特にバグ管理(Bug Management)に焦点を当てて、QAチームがどのような活動を行っているのかをご紹介します。 我々は2018年頃からバグ管理の取り組みを始め、試行錯誤を重ねてきました。製品の品質に関する課題を抱えた方や、品質の可視化を進めたいと考えている方にとって、当ブログが現状を改善するきっかけになれば幸いです。 (出典: https://loosedrawing.com/ ) なぜBug Managementを実施しているのか? 我々はプロダクトの品質を推測するために、バグチケットの管理や可視化するすることを目指しています。品質を推測するために、品質の可視化するための環境構築(ダッシュボード)や、バグのチケット管理ルール(Bug Management Guideline)を作成しています。 もともと、メルカリでは各開発チームが独自にバグの管理をしていました。多くのチームではJIRAを使用してしましたが、JIRA以外で管理をしているチームもありました。 また、チームストラクチャの再編により軽微なバグの担当者がいなくなり、長期間未対応のまま放置されることがありました。 それらの影響でバグチケットの全容が十分に把握できなくなっていました。 これらの問題を改善していくためにBug Mnagement を実施しています。 Bug Management Guideline とは? 我々はバグチケットを健全に管理出来るようにして、品質の見える化をするために、Bug Management Guideline を作成して開発チームへ展開をすることにしました。 ルールを作ると、守らなければならない事項が多くなりがちで、結果として誰もルールを守れなくなることがあり得ます。そうならないよう、私たちは以下の最低限の目標を設定しました。 目標: 1. バグ管理環境をJIRAへ統一 2. バグの発生状況や修正の優先順位が判断できること 3. バグが長期間放置されないこと 目標1を達成するために、まずは各開発チームが使用しているバグ管理ツールを調査し、JIRAを使用していないチームにはJIRAへ変更をお願いしていきました。 目標2を達成するために、バグ修正の優先順位やバグの発生傾向などを分析が出来るように、バグチケットに情報を記載するフィールドを追加しました。 目標3を達成するために、バグチケットの有効期限を設定しました。有効期限が切れたバグチケットが無いか定期的チェックし、期限が切れたチケットはクローズするか、優先順位を上げてすぐにに修正するかを判断するルールを策定しました。 Bug Management Guideline を作成し、各チームが共通の環境とルールを使用することで、Bugチケットの全容が把握するための準備が整いバグチケットの状態の可視化をすることが出来るようになりました。 バグチケットの状態の可視化 JIRAにもチケットの情報を可視化するダッシュボードの機能がありますが、我々がチェックしたい情報を可視化する事は出来ませんでした。そのため、当初はJIRAで管理されたバグチケット情報をLookerで可視化していました。 JIRAのバグチケットの情報は直接Lookerで利用することが出来ないため、JIRAのバグチケット情報を trocco を利用してBigQueryにインポートし、BigQueryの情報からLookerで様々なグラフを作成してダッシュボーを構築していました。 以下の画像は、取り込まれたデータの流れと作成したダッシュボードのサンプルです。 過去の取り組みについて少し紹介した関連記事については、以下のURLをご覧ください。 関連記事: メルカリのQAエンジニアの取り組み2020 可視化(ダッシュボード)の改善 ダッシュボードは開発チーム毎に作成し運用していましたが、メルカリの開発体制やメンバーが頻繁に変動するため維持管理が大変でした。さらに、troccoやBigQueryの環境はQAチームが構築した環境では無かったため、環境のメンテナンスやアクセス権管理、グラフの更新・追加のためのデータ変更が複雑になってしまいました。そのため、メンテナンスがしやすい環境に切り替えることを検討しました。 バグ管理を更に効率化する方法を調査していたところ、データ取得が手軽で、グラフの資料作成も簡単に行える新しい手法を見つけました。具体的には、「 Jira Cloud for Sheets 」というスプレッドシートのアドオンと、「 Looker studio 」 というデータの分析や管理、レポート作成が簡単に行えるBIツールを使うことに決めました。 Jira Cloud for Sheetsは、JIRAの開発元であるAtlassianが提供している拡張機能で、JIRAで管理しているバグ情報をスプレッドシートに直接取り込むことが可能になります。スプレッドシートに取り込んだJIRAの情報は、関数を使い情報を分類したり、集計することで自分たちの知りたい情報を作成することができま。 またJIRAは今の情報しか取得することが出来ません。そこでGoogle Apps Script(GAS)を使用して集計データの履歴を日別に作成しました。履歴を作成したことで、バグチケットの作成や対応件数の傾向を確認することが出来るようになりました。 Looker Studioは、スプレッドシートからデータを直接読み込んでグラフや表を好きなレイアウトでダッシュボードを作成することが出来ました。そのため、他チームに依存することが無くなったため、任意のタイミングでダッシュボードメンテナンスが可能にりました。 また、データの取得や表示データの更新は、アドオンの機能やGASのスケジューリング機能を使って定期的に実行しているため、毎日自動的に情報が更新されるようになっています。 これらの改善により、マニュアルでのメンテナンが最小限になり、バグ追跡と分析もスムーズに行えるようになりました。 今後の Bug Management Bug Management Guidelineを作成し、Looker Studioでの可視化のおかげで、バグチケットが修正されずに残っている場合や、いつ何件のバグチケットが作成され、クローズされたかなどが一目でわかるようになりました。定期的にバグチケット作成からの経過時間をチェックし、優先順位の見直しをすることで、バグチケットが長期間放置されなくなりました。 これらの取り組みにより、適切にバグチケットが管理することができるようになりつつあります。しかし、開発体制の再編や新しいメンバーの増加など影響で、取り組みがリセットされないようにBug Managementの周知が必要です。さらに、バグ発見の傾向や件数から製品の品質を推測し、バグの作り込みを防止する施策の検討などを続けていく予定です。
はじめに こんにちは、メルカリの日本リージョンのCTOを担当している@kimuras と申します。2023年4月にCTOに就任して現在Marketplace、Merpay、Mercoinの技術的な責任者を担当しています。本稿では、この1年間で注力してきた、Engineering Roadmapの作成についてお話したいと思います。内容によっては、ある程度の組織の規模感にならないと適さない内容となってしまうかもしれませんが、サービスの方向性やそれに合わせたエンジニアリング組織の作成について、今後整理しなければならない局面でご参考にしていただけたら幸いです。 メルカリのロードマップとは メルカリには、グループ全体の指針となるグループロードマップ(以下ロードマップと呼びます)があります。このロードマップのおかげで、私たちは今後進むべき方向が明確になり、社員全員が提供したい価値についての共通の認識を持つことができます。ロードマップは単なる実現したい事項のTODOリストではなく、私たちのミッションやビジョンを正確に理解するための重要なツールです。メルカリのロードマップについては、こちらの メルカンの記事 を参照してください。 Engineering Roadmapの必要性 ロードマップがうまく運用されていることで、わたしたちはこれまでに多くの新しい価値を提供してきました。その中にはメルカードやMerpayのような時間もかかり、難易度も高いプロジェクトも含まれています。しかし、エンジニアリング組織としては、このロードマップに対してより先行して技術的な準備ができていたら、より高速かつ計画的にビジネス展開をできたのではないかと感じることがありました。 事業の未来がロードマップで示されているので、エンジニアリングとしてはその道標に対して、それを実現するための Foundation やPlatformを事前に提供できることが理想的です。しかし、これまでメルカリグループでは各Divisionごとに個別のEngineering Roadmapが存在していたものの、全社横断でのものは存在しませんでした。(※ 12/26 10:30 初稿ではロードマップが一切存在しないようにとれる表現になっていましたが、正しく修正しました) メルカリではビジネスや開発者をスケールさせるためにMicroservices Architectureを導入したり、 インドの開発拠点 を作ったりと、チャレンジングなことを通じて継続的なエンジニアリングの改善を行ってきました。しかし、事業のロードマップに対して、Engineering Roadmapも同時に用意することで、よりエンジニアリングも含めたVisionがクリアーになり、効率性が上がるのではないかと考えました。 Engineering Roadmapがあることのメリット 前提として、私たちの開発のレイヤーは主にProduct、Foundation、Platformの3つのレイヤーに分かれています。Product開発は主にBFF、BackendやFrontendの開発を含めたFeature開発となります。そのひとつ下のレイヤーであるFoundationはLogisticsやTrsansactionやPaymentなどのProductとは疎結合ではあるものの、さまざまなサービスから呼ばれる重要なバックエンドのAPI群となります。そして、Platformはさらに一番下のレイヤーであり、Microserviceを容易に作るためのMicroservices PlatformやCI/CD、Infrastracture、Networkなどのすべてのサービスを支える基盤となっています。したがって、下のレイヤーになるほど支えているサービスが多くなるため、PlatformやFoundationは上位レイヤーのことを考慮しなくてはならないことが多く、開発や変更の時間軸は長くなってしまいます。 このような私たちの状態を前提として、Engineering Roadmapが存在することの意義を以下に述べていきます。なので、序盤にも述べたように、スタートアップのような開発の初期段階のフェーズやFoundation領域が小規模なサービスでは、本稿で述べるEngineering Roadmapの作成する意義や戦略とは違った打ち手の方が良い可能性があることをご容赦ください。 スケジュールに対する期待値調整が容易になる 抽象的な表現となってしまいますが、何か新しい価値提供を実現するためのリアーキテクチャや、新たにFoundation/Platformを開発をするには、想定以上に時間がかかってしまうことが一般的に多くあります。開発を計画的に行わず、間に合わせでライブラリを少し修正するだけですませてしまったり、本来であればアーキテクチャを改修しなければならないところを、改修せずに無理に既存のアーキテクチャに新機能を詰め込んでしまったがゆえに、後のメンテナンス性が落ちてしまったり、リファクタリングが困難になることが起こりがちです。 したがって、エンジニアリングとしては極力新しい要件仕様に対して、適切なFoundation/Platformを新規で開発したり、リアーキテクチャをしたうえで新規機能を実装することが理想的です。しかし、これらの開発には調査や設計、実装方針について関係者とコンセンサスをとるなど、実現するのに数日どころか数ヶ月、あるいは年単位で時間がかかってしまうという問題があります。 このため、新規サービスの開発を始めるタイミングで、Product開発と並行してリアーキテクチャやFoundation/Platform改善をおこなうと、時間軸が合わなかったり、スペックの調整をしながら開発することで要件漏れや大きなバグを作ってしまうことの原因となってしまいます。加えてProduct開発に対してFoundation/Platform側の対応が遅れてしまい、リリーススケジュールに悪影響を与えてしまうこともしばしば発生してしまいます。 ただ、上述のように事業のロードマップが示されている状況においては、エンジニアリングとしてもそれを実現するためのFoundation/Platform開発を事前に計画性をもって行うことができれば、よりスムーズに開発することができるし、メンテナンス性や安全性もより担保された開発を行うことができます。 Engineeringの改善施策のコンセンサスを得ることができる 上述のようにリアーキテクチャやリファクタリング、Foundation/Platform開発などのエンジニアリングに関する改善施策は中長期にわたることがしばしばあります。このため、明確な目的意識を持って施策を実施しなければ、途中経過でプロジェクトの意義を問われることや、プライオリティを下げざるを得ない状況となってしまうことが、残念ながらよく発生します。エンジニアリングには各改善プロジェクトの意義について説明責任はあるものの、事前にコンセンサスがとれておらずに説明の難易度が上がったり、プライオリティが変更されてしまうことは生産性に悪影響があるし、モチベーションにも大きな影響を与えてしまいかねません。 しかし、エンジニアリング主導の改善施策についても、始める前にそれぞれの意義やゴールを明確化して、かつロードマップにアラインできていれば、たとえ中長期な開発であってもステークホルダーからも賛同を得られ、サポートを得ることができるはずです。時には事業のロードマップにアラインすることが難しい中長期の改善施策、例えばMicroservices Architectureの根本的なアーキテクチャの改善や、BCPの改善などについても、ゴール設定と得られるメリットを明確化して、Engineering Roadmapとして事前にステークホルダーや経営から同意を得られていれば、ストレスなく改善プロジェクトを継続することができます。 先を見通したアーキテクチャを作ることができる 基本的にシステムアーキテクチャはビジネスの成長やエンジニアリング組織の規模感、ビジネスの方向性などにあわせて常に改善を続けなければなりません。加えて、極力メンテナンス性や拡張性を高くすることで継続的に新たなニーズに応えられることが理想的です。 しかし、ビジネスの方向性が定まっていなければ、ある程度は想像でシステムの拡張性を担保しなければならず、仮にニーズを満たすことができなれけば、近い将来にリアーキテクチャを実施しなければならなくなります。 一方、事業ロードマップやEngineering Roadmapが作成されていれば、3年ほどの近い将来については概ね方向性がわかっているため、拡張性の観点で確度の高い設計をすることができます。これは、設計を担当するアーキテクトやTech Lead(技術的なリーダーのことであり、以下TLと呼ぶ)に限らず、エンジニアが日々のコーディングでの細かい意思決定を手助けすることができるため、すべてのエンジニアが意識的に将来を見据えた設計を心がけられるようになることが好ましい。 例えばIDに関する設計をしているときに、将来的にどのような事業展開をするのか、またパートナー企業が存在するようなビジネスをするときにパートナーアカウント、あるいはID連携が必要になる事業計画がある、といった計画が事前にわかっていれば、それらのニーズに合わせたアーキテクチャの設計ができます。これはFoundation/Platformやインフラストラクチャなどさまざまな要素技術にとっても重要であり、ビジネス成長には欠かせないことです。 Visionに対する解像度が深まる Visionを作ることは、組織にとってとても大事なことです。Visionを示すことによって、これから先に新たにお客さまに提供したい価値や、組織のありたい姿などを掲げて、組織で一体感を持ってタスクに取り組むことができます。 しかし、Visionだけではそれをどういう手順や手段で実現していくかはわからず、説明される方もうまく咀嚼できないことがあります。ありたい姿をVisionで示し、それに対してどのようにそれを実現していくかをEngineering Roadmapに記載することで、Visionに到達するまでのストーリーが各エンジニアにも伝わり、より理解を得ることができます。 これは説明する側のコストも下がりますし、ミスコミュニケーションを防ぐためにも重要だと考えています。 Engineering Roadmapを作るためのTips Engineering Roadmapの必要性や効果がわかったところで、次に実際にロードマップを作るためのTipsについて説明します。ここでは主に2通りのアプローチを突き合わせる手法について紹介します。 まずは大胆な理想像とVisionを作る 自分の場合は、あまり多くのことを気にしすぎて進められなくなるよりも、まずは実現可能性や周りの考えなどは考慮せずに、大胆な理想像を決めてしまいます。 実際にVisionやEngineering Roadmapを作ることは容易ではありません。理想的なゴールは何なのか、ステークホルダーはどのようにゴールを考えているのか、お客さまは何を求めているのか、それを実現することが可能なのか。それらの多くの関連する要素を考慮すると、なかなかVisionやロードマップを定めることができなくなってしまいます。 ただ自分は、あえて実現することが難しいのではないかと思うくらいの大胆で理想的なゴールを決めます。それから、それを実現するためのロードマップを作りながら実現可能性を考慮して、Visionを少しずつ現実的なものに落とし込んでいくことで、多少難易度が高いが、納得感のある形に落ち着くことができます。万人には当てはまらないとは思いますが、まずはあまり固くならずに、大胆で理想的なVisionを書き出してみると良いと思っています。 TLとのコミュニケーション強化 ある程度の組織規模のCTOの立場になると責務のスコープが広くなり、開発現場での解くべき課題や理想的な状態などが把握しづらくなってしまうことがあります。 普段からVPoEやEMとのコミュニケーションを取ることで、組織課題を把握することができますが、より開発現場に近い課題感を把握するためにはTL(TLを指定していない場合はエンジニアチームをリードしている立場の方が良いでしょう)とのディスカッションをすることで情報を得ることができます。 TLとEMとのディスカッションをすることで開発現場でも納得感の高く、かつ的確に組織課題を捉えたRoadmapを作成することができると、自身の経験から強く感じています。 理想は「現実的でワクワク感」があること ここまで2つのアプローチについて紹介しましたが、進め方としては、まずはフィージビリティを気にせずに、技術的にチャレンジングでかつビジネスに貢献するようなVisionを「トップダウンのアプローチ」で作成してみます。しかし、これだけでは現実離れしすぎてしまうかもしれませんし、本質的な開発現場の課題をとらえられず多くのエンジニアから共感を得られないかもしれません。そこで、各領域での本質的な課題を把握しており、強いVisionを持っているTLや、組織課題を理解しているVPoEやEMからの「ボトムアップ」の意見をぶつけあうことで、チャレンジングでかつ現実的なVisionやEngineering Roadmapを作成できることが理想的です。 このトップダウンとボトムアップの意見をすり合わせることによって、私たちのこれからの開発を一人一人のエンジニアが自分事として捉えて、積極的にコメントをくれるようになり、かつコミットしてくれるようになります。CTOとしては、エンジニアがこれまでに挑戦したかったけど、挑戦できなかったような難しくもおもしろい課題に挑戦するための理詰めを支え、最終的にその挑戦に対してスポンサーとなって一緒に実現しようとする姿勢が大事なのだと思います。このように難しい課題であっても、みんなで同じ方向を見て、一緒に解決していくことで、エンジニアたちのワクワク感が生まれ、結果的に自信を持って自分たちで誇りに思える技術を使い、お客さまに新たな価値を提供できるのだと信じています。 最後に 最後までお読みいただき、ありがとうございました。Engineering Roadmapは作っただけではなくて、今後どのように運用していくか、進捗させていくか、あるいはEngineering Roadmap自体を更新していくかもとても大事だと思います。運用していく中での困難や発見があれば、また記事にしてまとめてお伝えしていきたいと思います。
この記事は Merpay Advent Calendar 2023 の 24 日目の記事です。 こんにちは、メルコインの @pooh です。 メルカリグループでは金融事業を営んでいるメルペイとメルコインのEngineering Manager(EM)で普段とは別の場所に集まって1日集中して議論をするOffsitesを定期的に実施しています。 この投稿ではOffsitesそのものを紹介するのではなく、Offsitesでよく実施されるワークショップ(参加型作業)についての4つの工夫を紹介します。 複数人が集まって、何かのテーマについて意見を出し合い、意見をまとめて発表するというワークショップはよくあると思います。これから紹介する方法を使用することでより活発な成果が望めます。 本記事では私の経験とメルカリという組織での実践上の知見を書いています。そのため、組織ごとに別のよりよいやり方もあると思いますので、参考程度にそういう考えもある、ぐらいの気持ちで読んでください。 1.付箋に書いてから発表する ワークショップではチームに分かれて、チーム内でディスカッションをして意見やアイディア出しをしていきます。例えば、EM Offsitesでは「2023年10月〜12月を振り返って良かったこと・悪かったこと」といったテーマを設定し意見を出しあいました。このときに思いついた人から口頭で順次発表していくことがあります。ここで1つ目の提案となります。 最初に時間をとって各自で意見やアイディアを手元の付箋に書く 各自で書き出しをした後に発表をしていくとよいかもしれません。最初に付箋に書き出すことによる期待効果は次の通りです。 考えて書き出しているので意見がまとまる 発表に時間がかからない 書いている間は他人の意見が見えないこと 1人ずつ書かずに口頭で発表する場合、2、3人目からは「私もそうなんですけど…」という意見が出やすくなったり、他の人の意見に左右される可能性があります。最初に付箋に書いて発表することで、主体的に自分で考えたアイディアや意見を発表できるようになります。 付箋にあらかじめ書いてあることを読み上げるので、1つの発表が長くなったり、発表の始めと終わりで内容が異なる状態を防ぐことができます。 オンラインとのハイブリッド開催の時 オフラインとオンラインのハイブリッド開催をする時には、付箋ではオンライン参加者には見えずに不便でした。ハイブリッド開催の時にはオンラインホワイトボードを使いました。オンラインホワイトボードを使う場合でも、各自で考えている時には別のファイルやPC上のエディタを使って他の人から見えないようにすると付箋に手書きと同じ効果を得られそうです。 この投稿の本題ではないのですが、ハイブリッド開催の時にはPCのマイクとスピーカーでは音量面でオンライン、オフライン相互に聞き取りにくいことがあります。外付けのスピーカーとマイクの用意をお勧めします。マイクロソフトの「Modern USB-C Speaker」は持ち運びがしやすく、音量も大きく良かったです。 2.順番に1つずつ発表する グループディスカッションでは付箋に書き出して発表します。発表する際には1人ずつ順番に発表していき、最終的に各自で書いたものをまとめてグループの成果として発表する形式を取ります。ここで2つ目の提案となります。 順番に1つずつ自分の書いた付箋を読む。1つ読んだら次の人が読んで、を繰り返して何周か回す。自分の番がきて、もうすべて自分の書いたものを読んでしまった人はパスしていい この方法で発表していくと1人の意見で全体の雰囲気が動くのではなく、みんなの意見が順番に出てくるので発言の機会が均一になります。意見が平均的に出せるようになるため雰囲気が悪くなりません。「けっこういい」とみんなが共感できる意見が色々な人から出てくるため、雰囲気がよくなります。 発表するときには書いたことを発表し時間をかけないようにします。書いた理由や背景などの説明はせずに付箋に書いたことを発表します。小さな付箋を使うと単語しか書けないので大きな付箋を使い単語ではなく発表する内容を書いておきます。 EM Offsitesでは「良かったこと」ではつぎのような発表がありました。 メルペイのTech PRで新しい取り組みができている リリースした口座入金経由で直接メルコイン口座に残高反映する機能が使われている メルコインのEngineer All-Hands(エンジニアメンバーを対象とした毎月開催している全社会)が前回評判よかった気がする 「悪かったこと」ではつぎのような発表がありました。 リソース不足でPJのスケジュールが遅延したり厳しいスケジュールになった プラットフォーム機能開発が進まなかった 情報共有が不足していた 3.問題を「どのようにすれば」に置き換える ワークショップでは「xxxxに関してどんな問題点や懸念点があるか」や「悪い点」などをリストアップすることがあります。それをリストアップしていくと、当然ながら「なかなか難しいね」となることがあります。ここで3つ目の提案になります。 問題を発表した後、それぞれを「どのようにすれば〜〜〜か?」の疑問に言い換える 効果を説明する前に具体例を出してみます。 「プラットフォーム機能開発が進まなかった」という問題を発表した場合、「どのようにすればプラットフォーム機能開発ができるか?」となります。 このように「どのようにすれば」の質問文にすることで、答えを考えられるようになります。「問題なのはわかったから、改善策を言って欲しい」という言葉をたまに耳にすることがあります。課題を質問文に言い換えてもらうことで、自然と答えを考え始められます。 4.もっと面白い質問にする 「どのようにすれば」の質問文にすることで、答えを考えてしまう状況を作れました。もう一歩進められるようにします。 もっと面白い質問のかたちにして、もっといろんな人が考えてくれるようにする もっと面白い質問にするために次のようにします。 「これが起こったらいいな〜」と思うような文章にする 「日本一」「世界一」と言った言葉をいれる 先ほどの質問文「どのようにすればプラットフォーム機能開発ができるか」を「どのようにすれば日本一便利なプラットフォーム機能を開発できるか?」に変えてみます。これでただ単に課題を解決するだけではない、ベストな素晴らしい解決策を多くの人が考え始めたはずです。 まとめ この記事では、つぎの4つの工夫を紹介しました。 付箋に書いてから発表する 順番に1つずつ発表する 問題を「どのようにすれば」に置き換える もっと面白い質問にする これらの工夫のうち、1つ目と2つ目は実際に私がワークショップでファシリテーターをする時にしていることです。EM Offsitesのときにも利用しました。3つ目はOffsitesで使ったわけではないですが、日頃心がけています。自分で使用したり、問題を提起してくれた人に使ったりしてます。4つ目はなかなかできていないです。 実際に1つ目と2つ目について利用したメンバーに感想を聞いてみました。 みんなの意見を聞くことができる & たくさん話したい人は後半話す時間がある、ということで時間効率を最大化できてると思いました 参加者の意見を満遍なく聞けることと、意見の数によってはスキップする自由みたいなところもあったので、意見が出やすくてよかったのでは無いかと思いました ワークショップの目的の認識合わせが不十分だったので、手法以前の改善ポイントがあったように思います。その点からワークショップとしては消化不良でした。 手法としてはポジティブなフィードバックをもらえました。一方でワークショップのゴールが何か、ワークショップが終わった後に何を達成したいのかの認識合わせを最初に実施することの重要性を再認識しました。 ここで紹介したことは、大橋禅太郎氏の「すごい会議」で紹介されていたものになります。この投稿を書くにあたって改めて読みましたが、同僚にも勧めたいと思える書籍です。 書籍では手法も紹介していますが、ワークショップの目的の認識合わせをする「このワークショップが終わったときにどんな成果をあげることを期待しているか」から意見出しをしていました。 会議進行は方法によって効果的になったり非効率になったりします。効果的になる方法については全員で共有していければと思います。 明日の記事は kimurasさんです。引き続きお楽しみください。
こんにちは。メルカリMarketplace, Foundation EngineeringのDirector, @mtsukaです。日々新しい技術を追い求め、挑戦を続けるMercari Engineeringですが、そんな部門にしては少し毛色の違った部類のチームです。どちらかというと、中長期の視点から、より良いビジネス貢献であったり、より良い開発体験を支える基盤開発を中心に、じっくり腰を据えた仕事をしています。 この記事は、 Mercari Advent Calendar 2023 の23日目の記事です。 メルカリは2021年10月から既存のシステムの解析、改善を大規模かつスピーディに行うという、難易度の高い全社的なリファクタリングプロジェクトRobust Foundation for Speed (RFS) に中期的に取り組んできました。本取り組みは、2023年7月末に各ドメインの改善が無事一段落し、プロジェクトという形は一旦解散としました。こういった取り組みの主要な結果は、具体的な成果として認知されるまでに、数ヶ月数年を要することもままあります。幸運なことに、すでにいくつか具体的に成果として示せることがありますので、昨年に引き続き、うまくいったところ、うまくいかなかったところ、今後の方針など、RFS全体をプロジェクトのオーナーの視点で振り返っていきたいと思います。また、各ドメインについては、ドメイン知識・疎結合化・文化醸成の観点からプロジェクトの成果を解説しています。 プロジェクト発足の背景 改めて、RFSプロジェクトは2021年10月に正式な中期プロジェクトとして発足しました。詳細な説明は 連載:技術基盤強化プロジェクト「RFS」の現在と未来 | メルカリエンジニアリング に譲りますが、事業に関わる共通基盤をうまく抽象化していく、保守性を良くしていくことで、機能実装のリードタイムを一定以下に維持し、これによって間接的に事業貢献をしていこうという取り組みです。このプロジェクトへ参画したいという意思表明が多くのドメインからありましたが、結果的にビジネスインパクトなどを鑑み、Transactions & Checkout(以降Transactionsと呼称)、CSTool, Logistics, ID Platform(以降IDPと呼称)の4ドメインでこの取り組みを行うことにしました。 プロジェクトスコープの設定 リファクタリングなどの改善プロジェクトを発足するときに、改めて気付かされるのはあらゆる資源は有限であるということです。こういったプロジェクトは、ともすれば全てを作り替えてしまいたい衝動に駆られるのが人の性でしょう。特にエンジニアであればそういう気持ちになる方は多いのではないでしょうか。もちろん気持ちとしてはとてもよくわかるのですが、やはりこの取り組みも事業の一環ですから、あれもこれも全てに資源投下というわけには参りません。また、 人月の神話で言われているセカンドシステム症候群 のようなことも避けねばなりません。これらのポイントを考慮して、最終的にはシステムの変更頻度や他システムとの結合度合いを考慮してスコープを決めました。この点については、人によっては不満もあったと思いますし、実際に一部ドメインの調査・分析や関連する議論が収束するまでには半年位の期間がかかってしまいました。個人的には、現場のメンバーが一番知見をお持ちなので、それを尊重しつつ納得感をある程度持ってもらいたかったのですが、正直少し時間をかけすぎてしまったので、明確なしきい値や基準など、もう少し具体的に事前に提示したほうが良かったと感じています。 プロジェクトの定点観測 スコープが決まればロードマップを引いて、OKRを設定し、あとは手を動かしていくだけですが、ビジネスグロースの案件などとバランスをとりながら、うまく説明責任を果たしていく必要がありました。このため、あまり好まれるやり方ではないにせよ、週に一度の定期チェックインミーティングを用意し、CTO/VP同席のもとプロジェクトの進捗を管理しました。原則としてOKRとその進捗をDivision全体で共有し、トラッキングすることでプロジェクトの透明性担保や早期のブロッカー除去に務めました。また、最初期にはカンパニーのOKRとして経営層への定期的な進捗インプットも行いました。 担当チームが解散してしまっていたり、メイン開発者が退職していてドキュメントも存在しないようなコンポーネントを含むドメインでの作業なので、透明性を担保しながら情報を共有し続けることは極めて重要であったと思います。一方で、忘れられた仕様が発見されたりするなど、スケジュールを遵守するという観点では苦労も多かったです。スケジュールマネジメントの観点ではThe Six Week Cycleの Tracking Work on the Hill Chart の考え方を大いに参考にしました。 プロジェクト全体の振り返り さて、このようなプロジェクトでは成果を既存事業への貢献として評価することはとても難しいです。定量的に計測したものは、リードタイムの増減、データベース分離数、マイグレーション数、削除したコードや廃止したAPI, それぞれの費用対効果などを計測しました。その他、定性的にはリファクタリングのマイルストーン達成状況や実際のチームの体感等などを集計しました。このような取り組みを経て、RFSが会社の期待にどのように答えたのか、振り返りを実施しました。かんたんなプロジェクトの総括としては、今後の事業計画・成長を見据えた基盤そのものと基盤維持の仕組みがある程度構築されたので、この取り組み自体は将来へ繋がる意味のある投資であったと確信しています。その旨をMercari Engineering Boardへ報告する形で説明責任を果たしました。個別の詳細については、後述の「各ドメインの振り返り」を参照ください。 各ドメインの振り返り 以下に、各ドメインでの取り組みと振り返りをまとめていますので、ご覧ください。 Transactions Transactionsはお客様が商品を購入してから手元に届くまでの各ステップを司るメルカリのビジネスを構成するAPI郡(以降mercari-apiと呼称)のいちコンポーネントです。複雑化したモノリシックなmercari-apiからこれら関連するコンポーネントを切り離し、保守性を担保しながら抽象化、単純化していくことでプロダクト開発の後押しをするために、チームの組成から着手しました。チームの成り立ちがRFS起因のため、スコープの決定や抽象化のプランの検討は比較的スムースでした。 Transactionsドメインとして mercari-apiから切り離された機能は以下のとおりです: チェックアウト (モジュール化完了) 購入履歴 (モジュール化完了) チェックアウト料金計算機能 (Golangの独立したマイクロサービスとして実装) 配送 (モジュール化完了) これらのモジュール化やリファクタリングを通じて下記のような成果を得ました。 ドメイン知識 綿密なコード解析とリバースエンジニアリングを行い、アプリケーション全体の中で最もビジネス上複雑で重要なドメインに関する知識を、組織として得ることができました。 疎結合化 TransactionsドメインはC2C Marketplaceシステムの中心的なコンポーネントなので、多くの新機能が恒常的にTransactionsドメインの連携を必要とします。このMonolithicな実装のサブコンポーネント郡をモジュラーモノリスとしてリファクタリングすることで、その後の開発に多くの良い影響をもたらしました。例えば機能境界が明確になったので、不具合の発見やリスクのコントロールがしやすくなり、Transactionsドメインに変更を加える成果物の品質が向上しました。また、本取り組みにおける調査の結果が知見として蓄積されたことに加え、認知的負荷の軽減により、オンボーディングも比較的簡単になりました。 上記から派生した効果として、新しい機能や要件実装のリードタイムを大幅に短縮できるようになりました。実例をあげると、チェックアウト料金計算機能によって料金管理が一本化されたため、料率の変更や新しい決済方法の導入などの実装工数が最大3ヶ月から1週間未満に短縮されました。また、CSToolやLogisticsなどの他のドメインとの依存関係を切り離すことができたので、より独立してシステムを維持していくことができるようになりました。 文化醸成 リバースエンジニアリングとリファクタリングと並行して、チームには "reading parties" という独創的で魅力的なコード分析の文化が生まれました。ここから生まれたドキュメントはオンボーディングへ応用されるだけでなく、他のチームとドメイン知識を共有するためにも活用されています。また、今後もTransactionsドメインの変更には多くのチームが関与し続けていくことになるため、将来に渡って意味のある成果になるでしょう。 参考記事 Understanding and Modernizing a Legacy Codebase メルカリの取引ドメインにおけるモジュラーモノリス化の取り組み クライアント・サーバサイドに分散する計算ロジックのマイクロサービス化 Logistics メルカリは多様な配送手段をサポートしています。Logisticsは言葉通りこれらの配送方法を司るコンポーネントです。ご存知の通り、配送方法はメルカリというサービスの成長とともに時間をかけて増えていったものなので、Logisticsコンポーネントも時間の経過とともに複雑さが増してきました。そのため、スコープの確定は早かったものの、他ドメインと比較してゴールの設定難易度が非常に高かったです。最終的にLogisticsドメインでは、重複しているクラスを排除してシンプルにするなど、主にシステムの再設計を行いました。具体的には、メルカリの歴史とともに育ってきた22のコンポーネントの疎結合化を目指したかったのですが、これらすべてを疎結合化するには現実的な時間が足りませんでした。そのため、将来につながるメンテナンスの一環としてインターフェースやデザインを極力共通化することにしました。すでに動いており、しかもビジネスの根幹を担うシステムを改善するわけなので、そういう観点でも難易度は相当なものです。成果自体は次に繋がる良いものでありつつも、残念ながら、この取り組みの見た目的な成果はドメインの中では一番物足りないものでもありました。このあたりは、より良いアプローチを模索していきたいです。 取り組みを通じて下記を達成しました。 ドメイン知識 重複排除などの作業を通じて新しい配送方法の追加、配送料金の変更方法などが統一され、結果としてチームのドメイン知識が増しました。配送手段の仕様はパートナー企業の仕様に依存するものの、社内で扱うインターフェースをある程度共通化することで、全体の把握がしやすくなりました。また、共通化の恩恵として学習コストも格段に下がりました。 疎結合化 Logisticsドメインはパートナー企業との関係もあるので、利用料金の変更や提供プランの変更などが発生した場合、直ちに対応を行わなければなりません。このため、システムの複雑さを解消することは極めて重要な取り組みでした。結果として、疎結合化自体は進みませんでしたが、デザインパターンの適用と再設計を通じて、機能追加や変更が簡単になりました。実際に、配送サービス利用料改定に関わるリードタイムは、チェックアウト機能との連携も完了し、期間も約3ヶ月から1/3の約1ヶ月に短縮されました。今後も新しい配送方法の追加、料金改定、その他将来発生するであろうユースケースについても同じような対応ができることでしょう。 文化醸成 チームがリファクタリング用のバックログを持つようになりました。このバックログは定期的に内容の確認と改善の検討が行われ、必要に応じてメンバーがアサインされるようになりました。 CSTools CSToolsはいわゆる顧客対応ツールです。お客さま対応のためのツールですから、その機能やサポート範囲は多岐にわたり、システムは年々複雑化していく一方でした。このため、スコープの策定議論は一番紛糾したのではないでしょうか。そもそもお客さま対応のためのデータベース数が膨大なため、これをどこまで疎結合化するのかなどが論点になってしまい、スケジュール的にもマイルストーン的にも難しい展開が発生していましたが、最終的に他3ドメインの改善に関わるブロッカー除去を優先するという前提でスコープを設定することで、議論を収束しました。 ドメイン知識 重複排除などの作業を通じて新しい配送方法の追加、配送料金の変更方法などが統一され、結果としてチームのドメイン知識が増しました。配送手段の仕様はパートナー企業の仕様に依存するものの、社内で扱うインターフェースをある程度共通化することで、全体の把握がしやすくなりました。また、共通化の恩恵として学習コストも格段に下がりました。 疎結合化 詳細は後述のブログポストに譲りますが、注力ドメインとの関係性と変更頻度を軸にDBの疎結合化を行いました。これによりCSTools開発に関わる調整相手が減って、クイックに改善活動ができるようになりました。また、追加で古くから一部のQA業務が依存していたシステムのGKEマイグレーションとサービスアウトを実施できました。これにより、QAやテスト環境の統合が進み、システムのコスト面でも貢献することができました。 文化醸成 Post RFSの一環としてCSToolsドメインにFoundationチームが組成されました。このチームはCSToolsドメインの共通基盤やフレームワークをパッケージとして各エンティティに提供することで、個別のエンティティに個別のツールを作らなくても良い状況をもたらすことに責任を負っています。正式にこういった組織を持つことを認められたのも成果の一つと言って良いかもしれません。 参考記事 メルカリCSツールにおけるDBの疎結合化への取り組み GKE 移行を進める上で発見したシステムの問題をどの様に解決したか CS Toolのフロントエンドのリプレイスプロジェクトについて ID Platform ID Platform(以降: IDP)は、メルペイ創業前後にmercari-apiから認証認可の機能を中心にスピンオフしてPlatform化したものです。チームの組成当初からビジネスプランを後押しすべく、然るべきタイミングで然るべきことをやっていくという方針でチームが運営されていたと記憶しています。一方で、どうしても急ぎの実装や設計が先行しがちなことは変わりません。内外各ステークホルダーとのアカウント連携など、常に現状のビジネスを改善する業務に追われている状況で、後々に判明した考慮漏れの修正、リファクタリングなどの時間を確保することが簡単ではない状況でした。RFSでの注力対象にピックアップされたタイミングのIDPチームは、当時メルコインサービスの開発をサポートしていました。もともとチームの思想がRFSに近く、ある程度成熟していたチームなので、RFSとして直接何かの機能改善やリファクタリングをお願いするようなことはせず、メルカリグループ全体の方針などをシェアしながら、現在の設計や実装が今後の抽象化にうまく繋がるように支援しました。 ドメイン知識 IDと認証認可の領域は比較的専門家が少ないため、知見が偏る傾向があります。現在チームはTLの育成と知見の共有などを行いやすい構造になりました。RFSの取り組みと考え方は、この文化醸成の一助になったと信じています。 疎結合化 IDPはもともとはメルカリとメルペイというサービスだけが存在する世界線で実装されたものですから、比較的明確に密結合な場所がありました。日々メルカリを利用してくれるお客さまに新しい価値を提供するためには、この密結合が段々と足かせになりつつあります。今後の取組次第でどうなるかはわかりませんが、この結合度合いをある程度疎に維持できるようになりました。 文化醸成 元来IDPでは、一部の専門家が特定のユースケースを基に知恵を絞って将来を視野に入れたデザインを行う傾向が強いのですが、外部の専門家も交えたドメイン知識の共有や議論などを行えるようになりました。直接は関係ないですがFIDO AllianceのAuthenticate 2023 Conferenceにてメルカリの取り組みを紹介するなどの機会にも恵まれました。 参考記事 Applying OAuth 2.0 and OIDC to first-party services Using the OAuth 2 token exchange standard for managing the identity platform resources まとめ さて、ここまで日々進化するメルカリのアプリケーションを支える基盤開発のエピソードを、長期プロジェクトの振り返りを通じてお伝えしました。 メルカリのFoundation Engineeringチームは、これからもRFSで得られた知見やユースケースを参考に、重要な共通基盤技術の保守性を維持ながらし、プロダクト開発エンジニアがサービス開発を行っていく上で不可欠なコンポーネントを提供し続けます。 明日の記事はQAチームのjyeさんです。引き続きお楽しみください。
こんにちは。メルコインのバックエンドエンジニアの iwata です。 この記事は、 Merpay Advent Calendar 2023 の23日目の記事です。 私はいまメルコインのCoreチームに属しています。Coreチームでは主にお客さまからの暗号資産の売買注文を受け付ける部分のマイクロサービスを開発運用しています。 メルコインではCI環境として GitHub Actions self-hosted runner を使用しています。またCIだけでなく、さまざまな自動化のためのワークフローの構築もこの環境を用いて実行しています。この記事では私の所属しているCoreチームにおいてGitHub Actions上に構築しているオートメーションについて紹介したいと思います。 PR-Agent PR-Agent はOpenAI APIを使って、PRのコードレビューなどを自動化してくれるActionです。 LayerXさんの紹介記事 を読んで導入しました。 機能はたくさんあるのでここでは詳細は割愛しますが、主に活用しているのはPR作成時にコメントしてくれるコードレビューと /describe コマンドで生成されるPRのタイトルと説明の自動生成です。 PR-Agentによるコードレビュー あまり具体的な例を記事中にだすことができませんが、例えば上記画像のような内容をコメントしてくれます。これによりレビュアーがぱっとこのPRの内容を理解するのに役立つことができます。また /describe を使うと自分のようにSSIAなどで説明文を端折ってしまう面倒くさがりな人でもいい感じのタイトルと説明文をAIが考えてくれて非常に便利です。 /add_docs を使うとコードコメントをSuggestしてくれてこれも便利です。 OpenAIのAPI Keyさえあれば簡単に導入できる点もよいです。一方でGitHub自体にも 似たような機能 がリリースされているので試してみたいなと思っています。 Lint いくつかのLintツールを併用していますが、ここではYAMLで記述されるGitHub Actions(GHA)のワークフローファイルに対するLintについて紹介します。実際のワークフローは以下です。 name: Actions Lint on: pull_request: paths: - ".github/workflows/*.yml" concurrency: group: ${{ github.workflow }}-${{ github.event.pull_request.number || github.ref }} cancel-in-progress: true jobs: actionlint: runs-on: self-hosted permissions: checks: "write" contents: "read" pull-requests: "write" steps: - uses: actions/checkout@b4ffde65f46336ab88eb53be808477a3936bae11 # v4.1.1 - uses: reviewdog/action-actionlint@82693e9e3b239f213108d6e412506f8b54003586 # v1.39.1 with: fail_on_error: true filter_mode: nofilter level: error reporter: github-pr-review ghalint: runs-on: self-hosted permissions: contents: "read" steps: - uses: actions/checkout@b4ffde65f46336ab88eb53be808477a3936bae11 # v4.1.1 - name: Setup aqua uses: ./actions/setup-aqua with: aqua_version: v2.21.0 - name: ghalint run run: ghalint run このワークフローでは actionlint と ghalint の2つのLinterを実行しています。それぞれセキュリティを含めたベストプラクティスに則っているかをチェックしてくれるので非常に有益です。 ワークフローについては 社内のセキュリティガイドライン に準拠する形で記述しています。3rd Party ActionはFull Change Hashで固定(このフォーマットでも Dependabot および Renovate を使うことで自動更新可能) し、 permissions は最低限の権限を使うようにしています。(以後記載するワークフローファイルはすべてこのガイドラインに則って記述してあります。) また ghalint のバージョン管理には aqua を使っています。 aqua はCLIツールのバージョンマネージャで チェックサムの検証 ができたり、Lazy Installなど便利な機能もあるため使用しています。 ghalint 以外にも golangci-lint や gci など開発に必要なさまざまなCLIツールを aqua で管理しています。( aqua についてより詳しく知りたい方は aqua CLI Version Manager 入門 をご参照ください) したがって aqua は他のさまざまなワークフローで利用することになるため、以下の Composite Action を作って再利用しやすいように工夫しています。 name: Setup aqua with caching describe: Install tools via aqua and manage caching inputs: aqua_version: required: true description: | aqua version for installer, e.g. v2.9.0 aqua_opts: required: false default: -l description: | aqua i's option. If you want to specify global options, please use environment variables policy_allow: required: false default: "" description: | If this is true", the aqua policy allow command is run. If a Policy file path is set, aqua policy allow "policy_allow" is run require_checksum: required: false default: "true" description: | Set an environment variable as `AQUA_REQUIRE_CHECKSUM` cache_version: description: The prefix of cache key required: false default: "v1" runs: using: "composite" steps: # ref. https://aquaproj.github.io/docs/products/aqua-installer/#-caching - name: Restore aqua tools uses: actions/cache@704facf57e6136b1bc63b828d79edcd491f0ee84 # v3.3.2 id: restore-aqua with: path: ~/.local/share/aquaproj-aqua key: ${{ inputs.cache_version }}-aqua-installer-${{hashFiles('.aqua/*.yaml')}} restore-keys: | ${{ inputs.cache_version }}-aqua-installer- - name: Aqua install uses: aquaproj/aqua-installer@928a2ee4243a9ee8312d80dc8cbaca88fb602a91 # v2.2.0 with: aqua_version: ${{ inputs.aqua_version }} aqua_opts: ${{ inputs.aqua_opts }} policy_allow: ${{ inputs.policy_allow }} env: AQUA_REQUIRE_CHECKSUM: ${{ inputs.require_checksum }} - name: add path shell: bash run: | echo "$HOME/.local/share/aquaproj-aqua/bin" >> "$GITHUB_PATH" Auto Correct Lintとともに goimports などのコードフォーマッタの活用も重要です。 golangci-lint によって goimports などのフォーマッタのかけ忘れを弾くことは可能ですが、GHA上でフォーマットしてあげて自動でコミットをしてあげるとさらに便利です。コードフォーマッタだけでなく、 wire など自動生成ツールも使っているのでそれらもあわせて実行し、差分があればGHA上でコミットするようにしています。使っているツールをまとめると以下のようになります。 コードフォーマッタ goimports gofumpt gci Linter golangci-lint (auto fix) 自動生成 wire gomockhandler yo GitHub Workflow pinact これらのツールはすべて aqua でバージョン管理しています。 pinact はワークフローファイル内のバージョンをFull Change Hashに自動で固定してくれるツールでとても有用です。Auto Correctのワークフローは以下になります。 name: Correct codes by auto generation on: pull_request: paths: - ".github/**/*.ya?ml" - "**.go" - "**/go.mod" - "**.sql" concurrency: group: ${{ github.workflow }}-${{ github.event.pull_request.number || github.ref }} cancel-in-progress: true defaults: run: shell: bash jobs: auto-correct: runs-on: self-hosted permissions: contents: "read" steps: - name: Check out uses: actions/checkout@b4ffde65f46336ab88eb53be808477a3936bae11 # v4.1.1 - uses: actions/setup-go@0c52d547c9bc32b1aa3301fd7a9cb496313a4491 # v5.0.0 with: go-version-file: "go.mod" cache-dependency-path: "**/go.sum" - name: Setup aqua uses: ./actions/setup-aqua with: aqua_version: v2.21.0 - name: Auto generation run: make gen # make taskでformatter, linter, code generationを実行 - name: pinact run run: pinact run - name: Generate token id: generate_token uses: suzuki-shunsuke/github-token-action@350d7506222e3a0016491abe85b5c4dd475b67d1 # v0.2.1 with: github_app_id: ${{ secrets.GH_APP_ID }} github_app_private_key: ${{ secrets.GH_APP_PRIVATE_KEY }} - name: Push diff run: | set -euo pipefail if git diff --quiet; then echo "::notice :: There is no difference." exit 0 fi echo "::notice :: There are some differences, so a commit is pushed automatically." if ! ghcp -v; then echo "::error :: int128/ghcp isn't installed. To push a commit, ghcp is required." exit 1 fi branch=${GITHUB_HEAD_REF:-} if [ -z "$branch" ]; then branch=$GITHUB_REF_NAME fi git diff --name-only | xargs ghcp commit -r "$GITHUB_REPOSITORY" -b "$branch" \ -m "chore(gen): auto correct some files" env: GITHUB_TOKEN: ${{ steps.generate_token.outputs.token }} このワークフローは複雑になっているので順をおって説明しようと思います。 Protected Branchの設定 マージ先のブランチは Protected Branch で保護されています。このワークフローに関連する設定としては、 署名つきコミット と ステータスチェック を必須にしている点です。すなわちAuto Correctによるコミットがこれらを満たせるようにワークフローを構築しておかないとマージできなくなってしまいます。 署名つきコミット ワークフロー内でgitコマンドを使ってコミットをすると署名がつきません。これを簡単に回避する方法としては GitHub APIを使う方法 があります。GitHub API で生成したコミットにはGitHubが署名してくれます。 ghcp を使うとGitHub APIを使ったコミットを簡単に作成できるのでこれを使ってコミットするようにします。次のコードが実際にコミットをしている部分になります。 git diff --name-only | xargs ghcp commit -r "$GITHUB_REPOSITORY" -b "$branch" \ -m "chore(gen): auto correct some files" 差分がでたファイル名をパイプで渡してコミットを生成しています。 GitHub Appを使ったトークンの生成 コミットに使うGitHubトークンにも注意が必要です。 GitHubのドキュメント に以下のような記述があります。 When you use the repository’s GITHUB_TOKEN to perform tasks, events triggered by the GITHUB_TOKEN, with the exception of workflow_dispatch and repository_dispatch, will not create a new workflow run. つまりよく使われる secrets.GITHUB_TOKEN を使ってコミットをするとそのコミットをトリガーに他のワークフローを起動できません。ワークフローが起動しないということはCIが実行されず、したがってProtected Branchのステータスチェックをパスすることができません。 これを回避するためにGitHub Appから生成したトークンを使ってコミットをする必要があります。上記のワークフローでは suzuki-shunsuke/github-token-action を使ってトークンを生成しています。 - name: Generate token id: generate_token uses: suzuki-shunsuke/github-token-action@350d7506222e3a0016491abe85b5c4dd475b67d1 # v0.2.1 with: github_app_id: ${{ secrets.GH_APP_ID }} github_app_private_key: ${{ secrets.GH_APP_PRIVATE_KEY }} このGitHub Appには次の権限が必要になります。 contents:write workflows:write リポジトリに自分で用意したGitHub Appをインストールして使います。GitHub Apoの準備は最初は面倒ですが、一度設定すると自動化ができることが格段に増えるので便利になります。 aquaの自動更新 CLIツールは aqua で管理しています。バージョンの更新は公式に提供されているRenovate Presetを使うことで可能です。詳細は Renovateによる自動update を参照してください。( GitHubのDependabotl にはPresetのような機能がないため、 aqua の自動更新はRenovate前提になっています。) 前述しましたが、 aqua ではチェックサムの検証ができます。 aqua では aqua-checksums.json でチェックサムを管理しており、バージョン更新時でもチェックサム検証をパスするためには、一緒にこのファイルのチェックサムも更新する必要があります。便利なことにそのための Reusable Workflow が公式に提供されているのでこれを使うことでチェックサムの更新も自動化することができます。 name: Update aqua-checksums.json automatically on: pull_request: paths: - .aqua/aqua.yaml - .aqua/aqua-checksums.json - .github/workflows/update-aqua-checksums.yaml jobs: update-aqua-checksums: uses: aquaproj/update-checksum-workflow/.github/workflows/update-checksum.yaml@3598c506108a2e0e9e31a0c6ef9c202c77049420 # v0.1.9 permissions: contents: read with: aqua_version: v2.21.0 prune: true secrets: gh_app_id: ${{ secrets.GH_APP_ID }} gh_app_private_key: ${{ secrets.GH_APP_PRIVATE_KEY }} このワークフローにおいても前述のコミットの問題が発生するので、GitHub Appを使う必要があります。このAppには contents:write 権限があれば十分です。 リリースフローに関する自動化 ブランチ管理 Coreチームでは git-flow を簡素化したブランチ管理を採用しています。main、develop、feature、hotfixブランチはそのままですが、releaseブランチは作成せず、リリースの際にdevelopブランチをmainブランチにマージしてリリースするようにしています。これらのブランチのうち、Protected Branchの設定しているのはmainとdevelopブランチになります。 オリジナルのgit-flow、releaseブランチに違いがある (出典: atlassian.com ) 定期的なリリースタイミングでdevelopをmainブランチにマージし、タグを作成すると本番環境にデプロイできるようになっています。 develop to mainのPull Request作成 リリース時にはdevelop to mainのPRが必要になるため、developブランチへPushがあると自動でmainブランチへのPRを作成するようにしています。 name: git-pr-release on: push: branches: - develop jobs: git-pr-release: runs-on: self-hosted permissions: contents: read pull-requests: write container: image: ruby:3.2@sha256:e3f503db7f451e6fd48221ecafbf1046ad195cddec98825538b35a82538b8387 steps: - name: Check out uses: actions/checkout@b4ffde65f46336ab88eb53be808477a3936bae11 # v4.1.1 with: fetch-depth: 0 # git-pr-release needs the git histories - name: Install git-pr-release run: gem install --no-document git-pr-release --version 2.2.0 - name: Update git config run: git config --global --add safe.directory "$(pwd)" - name: Create PR run: git-pr-release --squashed env: GIT_PR_RELEASE_TOKEN: ${{ secrets.GITHUB_TOKEN }} GIT_PR_RELEASE_BRANCH_PRODUCTION: main GIT_PR_RELEASE_BRANCH_STAGING: develop GIT_PR_RELEASE_LABELS: Release GIT_PR_RELEASE_TEMPLATE: .github/PR_RELEASE_TEMPLATE.erb TZ: Asia/Tokyo PRの作成には git-pr-release を使っています。このワークフローにより次の画像のようなPRが自動で生成されるようになります。各PR毎にチェックボックスがつくので、リリース時にPR内容を確認してもらって問題なければチェックをいれるようにしてからリリースしています。 リリースの作成 mainブランチにマージした後はGitHub UI上からリリースをパブリッシュすることでタグを作成します。この際のリリース作成も自動化しています。 name: Release Drafter on: pull_request: branches: - main types: - closed jobs: release-draft: runs-on: self-hosted if: github.event.pull_request.merged permissions: contents: write pull-requests: write steps: - name: release drafter uses: release-drafter/release-drafter@09c613e259eb8d4e7c81c2cb00618eb5fc4575a7 # v5.25.0 env: GITHUB_TOKEN: ${{ secrets.GITHUB_TOKEN }} mainブランチへのPull Requestがマージされると、 release-drafter を使ってリリースをドラフト状態で作成します。これはかなり便利で、 release-drafter 導入前はマニュアルでリリースを作成していましたが次のような課題がありました。 バージョン番号を自分でインクリメントしないといけないのが地味に面倒 デフォルトブランチがdevelopになっているので、ターゲットブランチをmainに切り替え忘れるとインシデントになってしまう 自動化によりこれらは解消することができました。 Hotfixに関する自動化 hotfixブランチはdevelopブランチを経由せず、直接mainブランチにマージします。hotfixブランチのマージの際はpatchバージョンをインクリメントするようにしています。 name: Release Drafter Label on: pull_request: branches: - main types: - opened jobs: release-draft-label: runs-on: self-hosted if: github.event.pull_request.head.ref != 'develop' permissions: contents: read pull-requests: write steps: - name: detect version label uses: actions-ecosystem/action-add-labels@18f1af5e3544586314bbe15c0273249c770b2daf # v1.1.3 with: labels: patch このワークフローによってhotfixブランチのPRが作成されると patch ラベルがつくようになっています。このラベルがつくと release-drafter がpatchバージョンをあげるように 設定して あります。 またhotfixの差分はdevelopブランチにもマージする必要があります。この作業は面倒は意外と面倒です。なぜかというと、直接mainからdevelopへのPRを作成することができないためです。またこの作業はよく忘れてしまうので自動化しておくのが得策です。それを実現するのが以下のワークフローです。hotfixがmainにマージされると起動します。 name: Create a pull request to merge hotfix into develop on: pull_request: branches: [main] types: [closed] concurrency: group: ${{ github.workflow }}-${{ github.event.pull_request.number || github.ref }} cancel-in-progress: true defaults: run: shell: bash jobs: create-pull-request: runs-on: self-hosted if: github.event.pull_request.merged == true && github.head_ref != 'develop' permissions: {} steps: - name: Generate token id: generate_token uses: suzuki-shunsuke/github-token-action@350d7506222e3a0016491abe85b5c4dd475b67d1 # v0.2.1 with: github_app_id: ${{ secrets.GH_APP_ID }} github_app_private_key: ${{ secrets.GH_APP_PRIVATE_KEY }} - name: Decide a branch name id: decide-branch run: | branch=main-to-develop/hotfix-${{ github.event.pull_request.head.sha }} echo "branch=${branch}" >> "$GITHUB_OUTPUT" - name: Create a pull request uses: actions/github-script@60a0d83039c74a4aee543508d2ffcb1c3799cdea # v7.0.1 with: github-token: ${{ steps.generate_token.outputs.token }} script: | const {owner, repo} = context.repo const mainBranch = "main" const devBranch = "develop" // fetch commit sha of develop branch const {data} = await github.rest.git.getRef({ owner, repo, ref: `heads/${devBranch}`, }) // create a new branch const branch = "${{ steps.decide-branch.outputs.branch }}" await github.rest.git.createRef({ owner, repo, ref: `refs/heads/${branch}`, sha: data.object.sha, }) const {actor, payload} = context const {title, number} = payload.pull_request // merge main into a new branch await github.rest.repos.merge({ owner, repo, base: branch, head: mainBranch, commit_message: `Merge ${title}`, }) // create a pull request const pull = await github.rest.pulls.create({ owner, repo, base: devBranch, head: branch, title: `Merge hotfix to ${devBranch}: ${title}`, body: `Merge #${number} for ${devBranch} branch, too`, }) // assign an actor as reviewer github.rest.pulls.requestReviewers({ owner, repo, pull_number: pull.data.number, reviewers: [actor], }) github-script 用のScriptが長いですが次のことをやっています。 developブランチからPR用のブランチを作成 作成したブランチにmainブランチをマージ 上記ブランチからdevelopへのPRを作成 hotfixをマージしたアカウントをPRのレビュワーにアサイン このワークフローにおいてもコミットの問題が発生するので、GitHub Appからトークンを生成しています。このAppでは次の3つの権限が必要になります。 contents:write pull-requests:write workflows:write レビューワーも設定しているのでマージ忘れがないように工夫しています。 まとめ GitHub Actionsを使った自動化の事例を紹介してきました。セキュリティと自動化とは相反するところもあるので、両立するためにはバランス感覚と知識の更新が不可欠だなと思っています。だいぶ長い記事になってしまいましたが、そういった面で参考になれば幸いです。 明日の記事は poohさんです。引き続きお楽しみください。