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こんにちは!Insight Edge リードコンサルタントの山田です。 私は普段から事業会社におけるAI/デジタル活用のご相談を多く受けているのですが、この記事では、生成AIで解くべきではない課題にフォーカスしながら、業務活用における生成AIの向き/不向きを整理してみたいと思います。 AI活用があらゆる企業で経営マターに 生成AI活用の肝は“課題選定” 業務パターンごとの生成AIとの相性を理解する ①定型プロセス × 許容幅 広い —— ◎生成AIの得意領域 ②非定型プロセス × 許容幅 広い —— ◎生成AIの本領を発揮しやすい ③定型プロセス × 許容幅 狭い —— △AIが適切でないケースあり ④非定型プロセス × 許容幅 狭い —— ★設計次第では効果大 AIには得意なことだけをやらせる 例:投資判断プロセス 相性がよいパターンであっても、「プロセスの長さ」には注意 実際の業務で適切な課題を設定するために AI活用があらゆる企業で経営マターに 2025年はAIエージェント元年ともいわれ、企業における生成AIやAIエージェントに関する活用事例はさらに増えました。「AI活用」が経営アジェンダの最上位マターに位置付ける企業も珍しくなくなり、弊社でも引き続きAIエージェント開発、AI CoE組織立ち上げ、教育/ワークショップなど、多岐にわたるAIプロジェクトを推進しています。 事業会社の経営層との会話でも「AIで何かできないか」というご相談は本当に多くいただいていますし、経営トップが旗を振ってAI活用を推進するケースも目に見えて増えてきました。 具体的には 前回記事 でもご紹介したような社内ナレッジ検索や投資判断への意思決定支援に加え、この1年はマルチAIエージェントによる事業開発・投資判断高度化プロジェクトなど、目に見える成果が出ている領域は確実に広がっています。 生成AI活用の肝は“課題選定” 一方で、様々な場面でAI活用ユースケースが生まれ、世の中がAIエージェント一色の状況でよくあるのが、「ハンマーを持つとすべてがクギに見える」ような、すべての業務課題にAIエージェントを適用しようとしてしまうことです。 Nano Banana Proを利用して作成 属人化している業務をAIがいい感じに判断し実行してほしい 一連の業務フローをAIで自動化したい このようなニーズも少なくないのですが、業務プロセスが明確でなかったり、業務知見や商習慣など考慮すべきコンテキストが与えられない状況だと、意図するアウトプットを得ることは非常に難しいです。 AIは強力なツールである一方で、向いていない/苦手な業務に適用しようとすると、期待した効果や精度が出ず、「業務では使えない」という判断になってしまうことにもなりかねません。AIの技術的な問題というより課題設定の問題であるにも関わらず、AI=使えないとなってしまうのが一番もったいないです。実際の業務においてはAIが向いているパターン、向いていないパターンがあり、課題選定の段階で正しいテーマ設定をすることが、生成AI活用がうまくいくための第一歩です。 業務パターンごとの生成AIとの相性を理解する 効率化・高度化したい業務においてAI活用するべきかを考える上で、以下の2つの軸で業務を分類することが有効です。 軸1:業務プロセスの定型度(定型 vs非定型 ) 手順やルールが決まっているか、状況に応じてプロセス自体が変わるか 軸2:アウトプットの許容幅(広い vs 狭い) だいたい合っていればOK(面的)か、正解が一意(点的)か Nano Banana Proを利用して作成 ①定型プロセス × 許容幅 広い —— ◎生成AIの得意領域 業務プロセスの手順が決まっていて、出力も「だいたい合っていればOK」な業務。生成AIの導入効果が出やすく、個人/組織の身近な業務で恩恵を感じやすいです。 会議の議事録要約 日報など定型レポート生成 FAQ・問い合わせへの一次回答 コード生成・リファクタリング ②非定型プロセス × 許容幅 広い —— ◎生成AIの本領を発揮しやすい プロセスも出力も「これが正解」が決まっておらず、アウトプットの幅の広さが価値となる業務。生成AIの柔軟性が最も活きる場面であり、使い方次第で効果が大きく変わってくる領域です。 新規事業・企画のアイデア出し 戦略仮説の壁打ち・論点整理 プロダクトのUX改善案出し ペルソナ作成・ユーザーシナリオ生成 ③定型プロセス × 許容幅 狭い —— △AIが適切でないケースあり 手順もルールも明確で、出力もブレてはいけない業務。この領域はルールベースやRPAなど従来型システムでシステム的に処理した方が適切なケースも多く、わざわざ確率的な振る舞いをするAIが最適とは限らない領域です。 経費精算・請求処理のデータ入力 発注・検収処理 条件分岐が明確な承認フロー判定 ④非定型プロセス × 許容幅 狭い —— ★設計次第では効果大 プロセスに決まった正解がなく状況に応じた判断が必要かつ、アウトプットには高い正確性が求められる業務。適切にワークさせる難易度が高い一方、設計次第ではAIによる恩恵が大きい領域です。 投資判断や経営の意思決定(Go/No-Go) 個別事象を加味した契約書レビュー 与信審査の最終判定 カントリーリスク評価やDDレポート生成 AIには得意なことだけをやらせる ③や④のような、出力の許容幅が狭い(≒正確性が求められる)パターンでも、設計次第で十分業務に活用できます。AIには得意なことだけをやらせる、逆に言えば苦手なことは何らか別の方法で補完することで、一連の業務を品質高く実行できます。 RAGや外部ツール利用による知識補完/スキル補完、人間のレビューを「仕組み」として組み込むこと(Human-in-the-Loop)などが有効です。 例:投資判断プロセス 情報収集・整理フェーズ(AI) 対象企業/マーケットに関する外部情報や社内の案件資料をRAGで検索し、様々な情報を収集・整理したり、過去の類似投資案件の議事録などをもとに当時議論された論点を抽出する 定量分析フェーズ(従来型システム) 財務モデルに基づくバリュエーション算出、感応度分析、各種指標の計算。「数字を正確に出す」ことが求められるため、ルールベースの計算エンジンを使用 論点整理・リスク洗い出しフェーズ(AI) 収集した情報と定量分析の結果を踏まえ、検討すべきリスク論点を構造化して提示する。「過去の類似案件ではカントリーリスクが争点になった」「この業界ではこの規制変更が影響しうる」など、人間が見落としやすい観点を補完する。 意思決定フェーズ(人間) AIが整理した判断材料と従来型システムが算出した定量データを踏まえ、Go/No-Goを最終決定する。 Nano Banana Proを利用して作成 相性がよいパターンであっても、「プロセスの長さ」には注意 また、いずれのパターンにおいても業務プロセスが長く連鎖する場合は、うまくいかないケースが出てきます。AIの出力は確率論でしかないので、1ステップの精度が90%であっても、それが10回続くとすべて成功する確率は35%まで下がります。プロセス全体を一気通貫でAIに実行させるのではなく、AIのタスクを分解してモジュール化(カタマリ化)し、各モジュールの間で人間の確認ポイントを挟むことで、全体の精度を担保する業務設計が必要になります。 実際の業務で適切な課題を設定するために とはいえ、実際の業務は複数のステップや要素が絡み合っているので、そのままマトリクスに当てはめられるほど単純ではないことがほとんどです。現場でAI活用の課題設定を行う際には、 ①業務プロセスを分解して可視化する 属人的/暗黙知化しているプロセス含め、業務フローを洗い出す ②ステップごとに「出力の許容幅」を確認する だいたい合っていればOKなのか、確実な正解が必要か ③AIと人間の役割分担を設計する 人が介在する余地を残し、AIにすべてを任せない この辺りを意識して業務を見直し、AI活用する場合の業務フローを設計していくことが重要です。ある意味地味なプロセスですが、業務で使われるAIを作るためにはとても重要なポイントだと思います。
本ブログは 株式会社アド・ダイセン 様とアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社が共同で執筆いたしました。 みなさん、こんにちは。ソリューションアーキテクト 瀬高 拓也です。 株式会社アド・ダイセンの理念は「”顧客”から”個客”へ」。付加価値を追求し、One to One コミュニケーションを具現化することを掲げています。目標を共有する二人三脚の戦略パートナーとして、顧客一人ひとりの「おもてなし」にフォーカスした”個客”戦略を打ち出しています。 このような理念を実現するためには、お客様ごとにカスタマイズされたソリューションを提供する必要があり、限られたリソースで多様な要求に応える柔軟性と、個別対応を可能にする技術基盤の構築が重要な課題となっていました。。本ブログでは、アド・ダイセン様が Generative AI Usecases (GenU) を活用し、非技術者が主導して業務効率化を実現した取り組みをご紹介します。 成熟業界で生き残るための現場主導 DX:マニュアルワーカーからナレッジワーカーへ アド・ダイセン様は、ダイレクトメール(DM)の企画・制作から配送までを一貫して手がける企業です。成熟業界において会社が生き残るために、生産性向上が必須の課題であると捉えていました。 同社が直面していた最大の課題は、「現場レベルの DX は現場の人間にしかできない」という現実でした。お客様ごとのリピートビジネスであることから案件ごとに異なる帳票形式や運用プロセスになっており、業務の個別最適化が自然と発生していました。 このような業務が無数に存在する中で、グループ会社を含めてエンジニアは在籍しているものの、無数にある案件ごとの課題全てにエンジニアを割り当てるのは現実的ではありませんでした。その結果、基幹システムやサブシステムを刷新しても、手元の業務プロセスの効率化までに至らないという状況に陥っていました。 この課題に対し、同社は 3〜4 年前から RPA を導入し、本業に近いところで活用するなど、業務改善に前向きに取り組んでいましたが、さらなる加速が必要であると考えていました。 GenU で始まった現場主導の業務効率化 当初、アド・ダイセン様には明確な AI 活用ビジョンはありませんでしたが、「取り残されないために AI を使わなければ」という危機感がありました。 社内では既に生成 AI をマクロのコーディングやブログ執筆などに利用していましたが、チャットによるテキストベースのやり取りに留まっていました。そこで Amazon Bedrock を活用するイベントをきっかけに、GenU をご紹介させていただき、より実践的な活用を模索され始めました。 Amazon Bedrock が利用料に応じた従量課金である点も、まずは触ってみるという姿勢にマッチしており社内での実践的な検証をすることになりました。 生成 AI チームの発足と初期の取り組み 同社は RPA、社内 Q&A ツール、生成 AI の 3 チームを基礎研究を目的として編成し、生成 AI チームが GenUを前提に活動を開始しました。 GenUの機能や、ビルダーモードという独自にユースケースの作成ができる機能を使い、以下のような取り組みを行いました: – 議事録の自動作成 : 会議内容の要約と整理 – 画像判定ツール : DM の封筒加工の向きや面付けチェックの自動化 – 営業数字の分析ツール : 売上データの可視化と分析 これらは新しい価値を提供できたものの、テキスト出力が中心である点や既存事業の中心である事務業務の効率化には直結していない点から「もっと実務に直結する形で活用できないか」という課題が残っていました。 転機:スケジュール管理ツールの開発に成功 転機となったのは、名古屋のメンバーが「業務効率化のためのツールを Python で作れないか」という課題に挑戦し、GenU で Excel と Python を組み合わせたツールの開発に成功したことです。 学生時代に Python に触れた経験のあるメンバーが、GenU の チャット機能を活用して、スケジュール管理ツールを開発しました。 – 機能 : 出荷日から逆算して並行する 5〜10 本のプロジェクトのスケジュールを自動生成 – 連携 : Excel への自動転記、VBA で Outlook のカレンダーに自動登録 – 効果 : 2〜3 時間かかっていた作業が 数分で完了 このツールは従来人間が手作業で目視をしながら行う、スケジュール調整と転記作業を自動化し、主要な事務作業の多くに共通する変数取得→情報処理→提出資料への反映というプロセスを自動化することに成功しました。また、業務時間の効率化だけでなく、人的ミスの削減にも大きく寄与し作業自体の品質向上にもつながりました。また、何より重要だったのは、「非技術者でも 生成AI を使えば実務に直結するツールを作れる」という現場レベルのDXにおける成功体験を得たことでした。 次のステップ: Kiro を活用したより複雑な課題への挑戦 GenU を用いた開発による成功を受け、Kiro の活用を進めています。Kiro は統合開発環境(IDE)として、Agentic AI との対話を通じてコードを修正し、指示を出しながら開発を進められるツールです。 GenU で培った経験を基に、生成 AI チームのメンバーが Kiro を試験的に使い始めました。最初に取り組んだのが、配送シミュレーションツールの開発です。 アド・ダイセン様では、民間の配送業者と郵便局を使い分けて DM を配送しています。従来は Microsoft Access で事前シミュレーション用の資産レポートを作成していましたが、数万~多いもので数百万レコードにもなるデータを1件1件、複数ファイルの配送マスターに当ててシミュレーションする作業は非常に負荷が高く、案件によっては丸 2 日かけて行う業務でした。 Kiro での開発と効果 Kiro を使って配送シミュレーションツールの開発に挑戦したところ、大きな改善効果が得られました: – 開発時間 : わずか 2 時間で基本機能が完成 – 処理時間 : まる 2 日かかっていた作業が約 30 秒に短縮 – 機能 : 約 10 社の宅配会社マスターから選択、ファイルが複数でも、どのようなファイルレイアウトでも一括照合、結果の可視化 Kiro の IDE 機能 + Agentic AI により、コードの編集、デバッグ、実行を一貫して行えたことが、開発スピードの向上につながりました。「このデータをこう処理したい」という業務要件を伝えることで、AI がコードを生成・修正していく対話的な開発プロセスが、非技術者でも高度なツールを作れる環境を提供しています。 今後の展開 現在、配送シミュレーションツールは実業務での社内リリースに向けて調整中です。リリースの判断基準や展開方法を検討しており、しかるべき担当者がツールを開発、検証し、経験者がチェックしてルールを作る体制を整えて全社のDXを促進していきます。 まとめ 今回は株式会社アド・ダイセン様の事例として、非技術者の方が生成 AI を活用して現場主導で業務効率化を実現した事例をご紹介させていただきました。 GenU や Kiro を使った取り組みは、AIを使った業務効率化だけでなく、現場主導のDXにおいて重要な組織のイノベーション文化促進へとつながるアプローチになります。 今回の事例は AWS Startup Loft Tokyo で開催された Amazon Q Developer Meetup #4 にて同社の吉田様に ご登壇いただいた際にもお話いただきました。会場の皆様から「技術的な専門知識がない中で、どうやって素 晴らしいイノベーションを実現されたのか?」といった質問を多くいただくなど、参加者の方々からも強い関 心を持たれており、多くの業種から注目されるご登壇内容となり、ご好評いただきました。 成熟業界において、マニュアルワーカーからナレッジワーカーへのシフトは生き残りの鍵です。エンジニアリソースの制約がある中で、現場の人間が自ら課題を解決できる環境を整えることが、真の DX 推進につながります。生成 AI を活用にご興味がある方は、 AWS までお問い合わせください 。 ソリューションアーキテクト 瀬高 拓也
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